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悩んでいる夫婦
2023.04.11

若年性認知症(若年性アルツハイマー)とは? 原因や症状、治療法を紹介

「認知症は高齢者の問題」というイメージがあるかもしれません。しかし、30代や40代の若い人が発症する「若年性認知症」もあります。 若年性認知症は、初期症状に気付いていても、「まさか自分が認知症になるなんて」と考えてしまうため、早期発見が難しいとされています。この記事では、若年性認知症について、65歳以上の高齢者が発症する認知症との違いや、症状、原因、治療法、若年性認知症と診断されたらすることなどを解説します。 

目次
・若年性認知症とは
・若年性認知症の原因
・若年性認知症の症状
・若年性認知症当事者が語る初期症状
・若年性認知症の初期症状をチェック
・若年性認知症の診断と治療法
・若年性認知症の介護やサポート制度
・まとめ

執筆者画像
【監修】精神科専門医、認知症診療医 ブレインケアクリニック名誉院長 ・一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所所長 今野裕之先生
順天堂大学大学院卒業。老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。大学病院や精神科病院での診療を経て2016年にブレインケアクリニック開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立。 著書・監修に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術(青春出版社)」など。医師+(いしぷらす)所属。

若年性認知症とは

認知症を発症する人のほとんどは65歳以上です。一方、65歳未満の人が発症する認知症のことをまとめて「若年性認知症」と呼んでいます。この「若年性認知症」について詳しく見ていきましょう。

若年性認知症の現状 

日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業による若年性認知症実態調査の「わが国の若年性認知症の有病率と有病者数」(2017年度~2019年度調査)では、全国における18歳~64歳の若年性認知症者数は3万5,700人、人口10万人当たりだと50.9人と推計されています。


若年性認知症の発症は働き盛りの世代で、病気によって働けなくなってしまうと家族が経済的に困窮するケースが多いのも特徴です。そのため、厚生労働省を中心に、若年性認知症コールセンターの設置や支援コーディネーターの配置、雇用継続や就労の支援などさまざまな施策が行われています。 

高齢者の認知症との違いは

若年性認知症は、発症年齢の若さから高齢者とは異なる問題を引き起こします。以下に、若年性認知症と高齢者の認知症との違いをまとめてみました。


・若年性認知症は発症年齢が若く、発症平均年齢は51.3歳

 (厚生労働省「若年性認知症支援ガイドブック」)

・高齢者の認知症は女性に多く、若年性認知症は男性に多い


若年性認知症は働き盛り世代で発症する人が多いため、一家の大黒柱が働けなくなったり、配偶者が介護にあたることで配偶者の収入が減収してしたりするなど、家族が経済的に困窮してしまうケースが少なくありません。 また、多くの配偶者が子育てや家事、仕事に加えて介護を一手に負うことになり、親の介護と配偶者の介護が重なってしまうケースもあります。 


若年性認知症の原因

若年性認知症は病名ではなく、65歳未満で発症する認知症の総称であり、種類も原因となる疾患もさまざまです。

若年性認知症の原因疾患のグラフ

日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業によって2017年度~2019年度に実施された若年性認知症の調査によると、若年性認知症の原因疾患には、アルツハイマー型認知症(52.6%)が最も多く、血管性認知症(17.1%)、頭前頭側頭葉変性症(9.4%)、頭部外傷による認知症(4.2%)、レビー小体型認知症/パーキンソン病による認知症(4.1%)、アルコール関連障害による認知症(2.8%)、そのほか(9.8%)がそれに続くことが明らかになりました。 


アルツハイマー型認知症や、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症(前頭側頭型認知症)などは、脳内に特殊なたんぱく質の蓄積が起こり、それが脳の神経細胞を傷害することが分かっています。一方 血管性認知症は、主に脳梗塞や脳出血により起こると考えられています。

若年性認知症の症状

若年性認知症の症状について、段階別に紹介します。

認知症の初期症状 

若年性認知症も含めた認知症の初期症状は、認知症の種類で異なります。


アルツハイマー型認知症の場合

もの忘れ、短気になる、置き忘れやしまい忘れ、趣味などに関心がなくなる、時間や場所の感覚が衰える、匂いがわかりにくくなる、片付けが苦手になるなど。


血管性認知症の場合

障害を受けた血管の場所によって症状が異なる。計算力や理解力・記憶力などの障害、運動まひ、歩行障害、排尿障害、のみ下すことに支障がある、感情のコントロールが難しくなる、抑うつなど。


前頭側頭型認知症の場合 

人格の変化や非常識な行動が目立つ、失語、共感・感情移入ができない、食事の好みが変化、社会性の低下、同じことを繰り返すなど。


レビー小体型認知症の場合 

幻視、手足の震えなどのパーキンソン症状、軽度のもの忘れ、1日の中で症状が変動するなど。

認知症の中核症状

「中核症状」とは、脳の障害が原因で起こる以下のような症状です。これらの症状は、認知症の進行とともに重くなっていきます。

✓記憶障害…物事を記憶する力が低下する。
例)食事をしたことを忘れる、何度も同じ話を繰り返すなど。

✓見当識障害…見当識(時間・場所)が低下する。
例)時間や日付が分からない、慣れた道で迷うなど。

✓遂行機能障害…手順通り、計画通りに行う機能が低下する。
例)仕事を期日通りに終わらせられないなど。

✓失語…人やものの名前が分からない。
例)会話中に「あれ」「それ」が多いなど。

✓失行…身につけた動作を行う機能が低下する。
例)衣服の着脱ができない、道具の使い方が分からないなど。

✓失認…五感が正常に働かなくなる。
例)ものを見間違えるなど。

原因疾患特有の症状としては、アルツハイマー型認知症では「最近あった出来事を思い出せない」など、前頭側頭型認知症では「社会性の欠如や抑制が効かなくなる、同じことを繰り返す」など、血管性認知症では「手足のまひやしゃべりにくさ」などがあります。 

認知症の行動・心理症状(BPSD)

「行動・心理症状(BPSD)」とは、本人の性格や周囲の環境などが影響して、二次的に引き起こされる以下のような症状です。

✓行動症状…暴力、暴言、一人歩き、拒絶、不潔行為など。

✓心理症状…抑うつ、不安、幻覚、妄想、睡眠障害など。


若年性認知症当事者が語る初期症状

ここからは、若年性認知症当事者の方々が体験した初期症状のエピソードを紹介します。

電話で話をした記憶を忘れる

ある日、自宅に突然、ガス業者の方が点検作業に来ました。家の中が片付いていなかったので「また改めて予約をして来てください」と伝えました。ところが、業者の方からは「奥さんが事前に予約をされたので今日来たんですよ」と。自分が電話で予約をしたという記憶がすっぽりと抜け落ちていたのです。それまでは、ぼんやりとでも自分がしたことを思い出すことができていたのに、全然思い出せず、記憶が欠落している感覚がありました。

「若年性認知症当事者 さとうみきさんからのメッセージ(前編)」より)


道を間違える、忘れ物をする、人の名前が出てこなくなる

大手の鮮魚専門店で一緒に勤務していた仲間とともに新たな鮮魚店を立ち上げ、これからいろいろチャレンジしていこう、そんな希望にあふれていた真っ只中での、突然のできごとでした。「7月ごろから、店に行くまでの道を間違えたり、忘れ物が増えたりして、そのうちに一緒に働いている仲間の名前が出てこなくなりました。これはおかしいと思って受診しました」

(「【若年性認知症当事者 下坂厚さんインタビュー】」より)


人の名前や顔がわからなくなる

丹野さんが記憶力の低下に気づいたのは33歳のころ。最初は付箋にメモをしていましたが、あまりに多くなりすぎてノートに書くようになりました。それとともに、相手の名前に「TEL」と書けば、どこのだれに何のために電話をするかがわかっていたのに、次第にそれだけではわからなくなっていきました。「これはおかしいと思ったのは、38歳のクリスマスのころ。同僚の顔と名前がわからなくなって声をかけられず、自分の席に戻って組織図を確かめ、ようやく声をかけたということがあったんです。

(「~若年性認知症当事者 丹野智文さんインタビュー~」より)


場所が分からなくなる、仕事上のミスをする

住宅設備機器の修理業務をしていましたが、車を止めたコインパーキングの場所が分からず困りました。その後、料金の計算ミス、報告書の日付がバラバラなど、今までできていたことができなくなっている自分が怖くなりました。

(「【本人登場】若年性アルツハイマー型認知症の診断を受けて~前編~」より)


若年性認知症の初期症状をチェック

若年性認知症は、日常生活の状況と照らし合わせることで、初期症状のチェックができます。以下のシートを参考に、チェックしてみましょう。

若年性認知症の診断と治療法

若年性認知症の診断方法や治療薬、治療法について紹介します。原因によっては治せるものもありますし、進行を遅くできるケースもあるので、早期発見・早期治療をするようにしましょう。

受診に際してのポイント 

働き盛り世代がなる若年性認知症の場合、「もの忘れ」や「仕事でミスが増える」などの異変を認知症だとは思わず、「疲れやストレスのせいでは?」と考えてしまいがちです。また、うつ病や更年期障害などとも間違われることがあります。 そのため、病院の受診を後回しにされたり、更年期障害やうつ病などと誤診されたりしてしまうことも少なくありません。 


若年性認知症は、原因疾患によっては薬で進行を遅らせることができるため、早期受診・早期診断が重要です。 少しでもおかしいと思ったら、かかりつけ医や職場の産業医に相談しましょう。かかりつけ医がない場合は、各地方自治体でも相談を受け付けています。地域の認知症疾患医療センター、認知症専門医、認知症サポート医などについて教えてもらうこともできます。 


受診する科は「もの忘れ外来」など、認知症を専門に診ている科になります。脳神経外科、神経内科、精神科などでも診てもらえますが、その場合は認知症専門の医師がいるかどうか、前もって病院に確認しましょう。受診にあたっては、家族や周囲の人から見た普段の様子や行動も診断材料となるので、付き添いをおすすめします。また、病歴や症状の経過など書き留めておき、医師にわかりやすく伝えられるようにしましょう。

若年性認知症の検査内容と診断

若年性認知症の診断は、高齢者の認知症と同じように、次のような手順・検査によって総合的に行われます。


1.問診…本人、家族から症状や経過を聞き取り。

2.神経心理検査MMSE(ミニメンタルステート検査)長谷川式認知症スケール(HDS-R)などを用いて認知機能を調べる。

3.脳画像診断検査…脳に萎縮がないかを調べるMRIやCT、PET検査など。

4.一般的身体検査…必要に応じて血液検査や心電図検査、感染症検査、X線撮影など。


認知症の検査方法についての詳細は、以下の記事で紹介しています。

【認知症の検査方法とは】検査の内容や流れ、病院を紹介

若年性認知症の治療

一部の症状は早期診断・早期治療により改善する場合があり、治療法の研究や新薬の開発が進んでいます。しかし、現時点では若年性認知症を含む認知症のほとんどにおいて根本的な治療法は確立されていません。薬物療法やリハビリなどの非薬物療法、生活習慣の見直し・改善、環境調整といった方法を組み合わせて、進行を遅らせたり、症状を軽減させたりする治療が行われています。


アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では、中核症状である認知機能障害などに対して症状を軽くする薬があります。また、それ以外の認知症でも、うつ症状や睡眠障害など、薬で改善できる症状がある場合は、医師の判断で使用されることがあります。 一方、理学療法や作業療法のリハビリテーションなどによる非薬物療法では、行動・心理症状の軽減の効果が期待できます。 


なお、若年性アルツハイマーを発症してからの寿命は、個人差があり一概には言えませんが、平均して10〜15年とされています。寿命を延ばすためには、適切な治療を行って症状の進行をコントロールすることが大切です。

医師に相談する夫婦
認知症で行われる治療とは?

認知症になってしまったら、どんな治療をするのでしょうか?薬物療法のほか、重要な役割を担うのが、非薬物療法と家族のケアです。具体的にどのような治療が行われているのか、その内容を紹介します

若年性認知症の介護やサポート制度

若年性認知症と診断された人や、その家族にはどのような支援があるのでしょうか。利用できるサービスや制度について紹介します。


若年性認知症と診断されたらすること一覧 

若年性認知症と診断されたら、まずは次のようなことを考えてみてください。


【本人がすること】 

・会社へ相談…若年性認知症であることを説明し理解を得るとともに、今後の雇用について話し合いましょう。いったん退職すると再就職は難しいため、まずは今の会社に相談することをおすすめします。認知症と診断され一定の症状が認められた場合には「精神障害者保健福祉手帳」や「身体障害者手帳」を取得し、障害者雇用枠での勤務ができる場合があります。


・生活を支える社会制度の確認や利用手続きを行います。


・介護保険サービスの確認や利用手続きを行います。


・運転免許の返納…病状の進行とともに運転は大変危険なため、運転免許は返納しましょう。


・住宅ローンの確認…高度障害と認定された場合、返済が免除されることがあります。


・生命保険の確認…高度障害と認定された場合、死亡保険金と同額を受け取れる場合があります。また、掛け金が負担になりそうな場合には、減らす相談をします。


【介護者がすること】 

・介護体制を考える…行政や民間のサポート制度を積極的に利用し、介護の負担を1人で負わないことも重要です。


・日常生活を工夫…家族の連絡先を書いたものを持ってもらうなど日常生活で困りごとを減らす工夫をします。


・同じ立場の人とのネットワークを持つ…家族会、民間非営利団体(NPO)、ボランティアなどで同じ立場の人たちが交流できる場を設けているところが多くあります。交流や情報交換をすることで、家族だけで孤立しないように心がけることも大切です。


・経済状態を確認する…収入減を想定して、今後の家計を見直します。


若年性認知症の方をサポートする制度 

自身や家族が若年性認知症になったら、とても不安だと思います。若年性認知症へのサポートは厚生労働省や民間での取り組みがさまざまにありますから、積極的に利用しましょう。


若年性認知症について相談できる機関として、以下のようなものがあります。 


・地域包括支援センター…保健師や社会福祉士、ケアマネジャーなどが相談対応。

・若年性認知症コールセンター…厚生労働省の「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」により設置。専門の教育を受けた相談員が対応。電話番号:0800-100-2707(フリーダイヤル)

・各都道府県の相談窓口…若年性認知症支援コーディネーターが対応。


また、国などの経済支援の制度も活用できます。障害に対する医療費負担を軽減する公費負担医療制度の「自立支援医療」、障害が認定された場合に受けられる「障害年金」、全国健康保険協会または健康保険組合に加入している本人が病気で働けないときに生活保障を受けられる「傷病手当金」などの利用も考えてください。 ほかに、介護保険制度に基づく「介護サービス」や障害者自立支援法に基づく「障害福祉サービス」、判断力が不十分な人を法律的に保護し財産管理などを行う「成年後見制度」などもあります。 

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まとめ

若年性認知症は、認知症だとは思わないうちに症状が進行してしまうケースが少なくありません。早期発見、早期治療につなげるためには、本人だけでなく周囲による気付きも重要です。

認知症は自分自身や家族など、誰もがなる可能性があることを念頭に置き、病気に対する理解を深めておきましょう。



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