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家族と食事を食べる高齢者の男性
2023.12.01

認知症の初期症状の特徴とは? チェックリストで簡単に判別

「物忘れが多くなった」

「同じことを何度も言うようになった」

「急に怒りっぽくなった」


家族や身近な人に、上記のような変化が見られたとき、一時的な症状なのか、認知症によるものなのか、その判断は簡単ではありません。急な言動の変化によって、不安に感じることがあるかもしれません。


本記事では、認知症の初期段階で現れる症状について解説します。代表的な初期症状の例やチェックリスト、疑いが見られた場合の対応法や相談先まで、詳しく紹介します。


目次
・認知症の基礎情報_症状や原因について
・認知症の代表的な初期症状
・初期症状で見られる「思い込み」について
・初期症状のチェックリスト
・初期症状が見られた場合はどう対応すべき?
・認知症は初期症状からどう進行するのか?
・認知症の進行を遅らせるには?
・初期症状が見られた場合の相談先
・まとめ

執筆者画像
東京都健康長寿医療センター 岩田淳 医師
東京大学医学部附属病院神経内科の専門外来「メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD)やレビー小体病、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診断、治療に当たっていた。特に超早期段階でのAD、レビー小体病の診断、新薬の開発が専門。2020年4月より東京都健康長寿医療センターの脳神経内科部長として赴任。2023年より副院長。

認知症の基礎情報_症状や原因について

認知症は、脳の疾患によって記憶や判断力、日常生活の自立性を低下させる脳の機能障害です。アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症などの複数の種類があり、脳の老化や病気、生活習慣や環境要因、遺伝的要素などさまざまな要因が複雑に絡み合って発症します。


代表的な症状として、記憶力の低下、判断力や計画能力の減退、言語能力の障害、日常生活の困難さなどが見られます。

認知症についての詳細は、こちらの記事(【認知症とは】基本を知ろう!原因・症状・治療や予防法について)で解説しています。


認知症の代表的な初期症状

認知症の初期段階には、さまざまな兆候が現れ、少しずつ日常生活に影響が及んできます。

初期症状ではそれが一時的なものなのか、認知症によるものなのか、判別することが難しいケースもありますが、症状例を知っておくことで、早期発見のきっかけになります。ここでは、代表的な初期症状を紹介します。


物忘れ(記憶障害)

認知症の初期症状として記憶障害があり、その影響によって物忘れが起こります。

具体的な物忘れの症状例
・約束したことを忘れる
・食事をしたことを忘れる
・物を置いた場所や閉まった場所を忘れる
・過去に旅行に行ったことを忘れる
・ニュースなどで全国的に話題になったようなことを忘れる


物忘れが起こった際、それが認知症によるものか、加齢によるものか、判断が難しいケースがあります。加齢による物忘れでは、自身が見たり聞いたり体験した出来事や事実の一部を忘れてしまうことがありますが、ヒントがあれば思い出すことができ、物忘れをした自覚があります。しかし、認知症の物忘れでは、出来事や事実そのものを忘れ、物忘れをした自覚がありません。

加齢による物忘れと認知症による物忘れの違いについて、こちらの記事(加齢による物忘れと認知症の違いは)で詳しく解説しています。


同じことを何度も言う

会話をしているなかで、同じ話を何度もしたり、同じ質問を繰り返したりする場合は、認知症の疑いがあります。直前に言ったことを忘れてしまう、見当識障害から自身の置かれている状況が理解できない、不安感を解消するため、など複数の要因が関わっています。


理解力や判断力の低下

理解力や判断力の低下によって、質問に答えられなくなったり、善悪の判断ができなくなるなどさまざまな言動の変化が出てきます。

具体的な症状例
・これまで一人で使うことができていた家電や電子機器が使用できなくなる
・複数の選択肢がある質問に対して答えられなくなる
・スーパーやコンビニでお金を払わずに商品を持って帰ろうとする


正確に時間の認識ができなくなる

認知症の中核症状の1つである見当識障害の影響から、正確に時間の認識ができなくなります。

>具体的な症状例
・予定に合わせて準備をすることが難しくなる
・待ち合わせや予約をした時間に遅れるようになる
・季節に合わせた服装を選ぶことが難しくなる


急に感情が変化する

認知症になると、それまで穏やかな状態だったにも関わらず、急に感情が変化することがあります。感情のコントロールが難しくなったり、理解力・判断力の低下などさまざまな要因があります。

具体的な症状例
・急に不機嫌な状態になる
・大声をあげて威嚇するような態度をとる
・不安な表情をする
・そわそわとした様子で、落ち着かなくなる


初期症状で見られる「思い込み」について

認知症の初期段階では、現実との区別がつきにくくなることで、さまざまな思い込みや錯覚が生じることがあります。これらの思い込みには、以下のような特徴が見られます。

具体的な事例
・貴重品や日用品が盗まれたと疑う。
・過去の出来事を現在起こっていると思い込む。


思い込みは、認知症における記憶と判断力の低下により起こります。これは過去の記憶と現在の状況が混同してしまうことによるものです。また、感覚の錯覚も一因であり、視覚や聴覚の誤解釈が思い込みを引き起こすことがあります。さらに、不安や恐怖などの感情の変化が原因で、現実との区別がつかなくなることもあります。


初期症状のチェックリスト

認知症の初期症状を理解し、早期発見につなげるためには、チェックリストを用いて状態を把握することができます。


自分でできる認知症の気づきチェックリスト

自分でできる認知症の気づきチェックリスト

1~10の質問項目に対して、当てはまる回答項目を選び、点数を合計してみてください。

合計点数が20点以上の場合は、認知機能や社会生活に支障が出ている可能性があります。

出典:東京都_知って安心認知症


「公益社団法人認知症の人と家族の会」の初期症状チェックリスト

以下は「公益社団法人 認知症の人と家族の会」が、認知症が疑われる言動を会員の経験をもとにリストにまとめたものです。医師や専門家による診断基準ではありませんが、認知症の疑いがあるか否かの判断の参考にしてください。気になる項目がいくつか出てきた場合は、すぐに受診しましょう。医学的な診断基準ではありませんが、暮らしの中での目安として参考にしてください。いくつか思い当たることがあれば、一度専門家に相談してみることがよいでしょう。

「認知症」早期発見の目安表

初期症状が見られた場合はどう対応すべき?

認知症の初期症状が見られた場合、まず本人の状態や心情に寄り添い、共感を示すことが重要です。本人を驚かせない、急がせない、自尊心を傷つけないという「3つのない」を心がけるようにしましょう。


物忘れが見られた場合

本人は物忘れをした自覚がないため、忘れていることを指摘したり問いただすことなく、忘れている内容を正確に教えるようにしましょう。日常的にカレンダーやメモ帳を活用し、重要な予定や情報を書き留め、見える場所に貼っておくとよいでしょう。


同じことを何度も聞く、同じ話を何度もする場合

忍耐強く優しく対応することが重要です。話の内容が繰り返される場合には、話題をそらして本人の関心を別の事柄に向けることも効果的です。


予定に合わせて行動ができなくなる場合

予定がある日は、その時間や準備の予定を早い段階で本人に伝え、一緒に準備をするようにしましょう。目につきやすい場所にカレンダーを貼ってその日の予定を時間単位で記載したり、時計を見えやすい位置に設置しておくことをおすすめします。


怒りっぽくなっている場合

対立を避け、落ち着いた声で話すことが効果的です。安心できる環境を提供し、必要であれば専門家に相談することも重要です。


認知症は初期症状からどう進行するのか?

認知症の進行は個人差があり、原因となる疾患や生活習慣・環境などの状況によって進行速度が変わっていきます。一般的に以下の段階を経て進行します。


認知症の進行過程について

軽度認知障害(MCI)
認知機能は低下していますが、日常生活への支障はほとんど見られない状態を指します。MCIの人は年間約5〜15%が認知症へ移行すると言われていますが、早期発見・治療により、正常な状態へ戻るケースもあります。

軽度認知症
認知機能障害が進行し、日常生活活動に支障が出始める状態を指します。移動や金銭管理、日付や時間の把握・管理に影響が出てきます。

中等度認知症
さらに症状が進行し、基本的な日常生活活動に支障が生じた状態を指します。入浴、更衣などが難しくなり、新しく覚えようとしたことも忘れやすくなります。また、自身がいる場所がどこからなくなるなど、見当識障害も進行します。

重度認知症
全面的な日常生活活動が困難となり、常に介助が必要になります。断片的な記憶のみ残り、家族や身近な人の名前や顔も認識できなくなります。

認知症の進行過程について、こちらの記事(認知症が寿命に与える影響とは 症状の進行と生活の心得)で詳しく解説しています。


認知症の進行を遅らせるには?

認知症の進行を遅らせるためには、早期発見・早期対応が大切です。ここからは、早期発見の大切さと対応ポイントを紹介します。


早期発見の大切さ

認知症の早期発見は、進行を遅らせることにもつながるため、非常に重要です。初期症状を見逃さないためには、初期症状のチェックリストを活用しながら、症状が見られたら、すぐに専門医に相談することが大切です。そのためには、日頃から定期的な健康チェックを行い、認知機能の低下や言動の変化が把握しやすい状況をつくっておくことをおすすめします。


早期発見をすることで、早期の治療やケアを行うことができ、症状の進行を遅らせることができます。早期からの適切なサポートによって、当事者の日常生活の質を保つこともでき、家族の介護負担を軽減させることにもつながります。


認知症の進行を遅らせるための対応ポイント

認知症は早期発見・早期対応によって進行を遅らせることができます。進行を遅らせるための具体的な対応方法を紹介します。


専門医の治療を受ける

認知症の症状に合わせた薬物療法や原因となっている症状の治療を受ける。


生活習慣の見直す

健康的な食生活と適度な運動を心掛けることで、生活習慣病を予防し、認知症のリスクを減少させます。


生活環境を見直す

転倒等による骨折で入院が必要になれば、認知症を進行させる可能性があるので、安全な生活環境を確保し、転倒リスクを減らす。


運動量を増やす

定期的な運動により脳の機能を維持し、認知症の進行を遅らせる。


難聴の改善

聴覚刺激の減少が認知機能に影響を及ぼすため、難聴の治療や補聴器の使用を検討する。


禁煙

喫煙をしている場合は、禁煙をする。


飲酒量の適正化

日常的にお酒を飲んでいる場合は、飲酒量を見直す。


初期症状が見られた場合の相談先

認知症の疑いや対応に不安がある場合、専門家への相談は大変有効です。以下の相談先を利用することで、適切なアドバイスやサポートを受けることができます。


かかりつけ医…日常的な健康管理と相談。認知症の初期段階の検討や専門医への紹介が期待できます。


専門の医療機関…認知症専門医が診断・治療を行い、症状の詳細な評価や管理プランの提供が行われます。

こちらのページ(認知症に関連する医療機関検索)で、お近くの専門医療機関を検索できます。


地域包括支援センター…地域の高齢者支援の中心として、認知症ケアに関する相談や情報提供を行います。

地域包括支援センターの詳細について、こちらの記事(地域包括支援センターの役割とは?活用方法や相談事例をわかりやすく解説)で解説しています。


認知症の人と家族の会…認知症の人とその家族が互いに支え合うコミュニティ。経験者からの助言や情報交換が可能です。


電話相談窓口…匿名での相談が可能で、気軽に専門家の意見を聞くことができます。地域によっては専門のホットラインが設けられています。

こちらのページ(認知症サポートダイヤルのご案内)より、電話相談をご利用いただけます。


まとめ

この記事では、認知症の初期症状の識別、その進行の過程、そしてこれらに対する適切なケア方法について解説しました。認知症についての適切な理解と、認知症の当事者の方だけでなく、家族や周囲の人々にとっても大切なことです。もし身近な人に、初期症状の疑いが見られた場合は、焦らず寄り添いながら、専門家へ相談するようにしましょう。

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