{{ header }}
{{ body }}
スキップ
2023.04.24

【MMSE(ミニメンタルステート検査)について】評価項目や採点基準、カットオフ値は?

MMSE(ミニメンタルステート検査)を利用すれば、認知機能がどの程度低下しているか簡易的に検査できます。日本でも広く使われており検査に特別な機器も必要ないため、ご家族の認知機能が低下しているかもしれないと不安を感じている場合は、実施してみるのもよいでしょう。


本記事では、MMSEとはどのような検査なのか、具体的な検査項目や出題される問題の例、評価基準などをご紹介します。同じく認知機能の低下について検査する「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」との違いやMMSEの注意点もお伝えしますので、ご家族の認知機能が気になっている方はぜひ参考にしてみてください。


目次
・MMSEとは
・MMSEの具体的な評価方法と採点基準
・MMSEカットオフの点数
・「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」とMMSEの違い
・MMSEの注意点
・まとめ

執筆者画像
【監修】医療法人社団 赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック 東京脳ドック 院長 伊藤たえ先生
脳神経外科、脳卒中専門医として、脳ドック、頭痛、認知症、頭部外傷、脳卒中などの診療に励む。患者様が安心でき、笑顔になれるよう丁寧な説明がモットー。

MMSEとは

MMSE(Mini Mental State Examination:ミニメンタルステート検査)は認知機能の点数化により客観的に認知機能レベルを把握する検査です。認知能力の診断には、問診や診察での病歴・症状の確認、神経心理検査で認知機能を評価する方法、血液検査や画像検査で認知機能を低下させる原因を検査する方法(鑑別診断)などがあります。MMSEは神経心理検査にあたり、世界中で用いられています。


最終的にはMMSEの結果だけでなく、問診・診察や鑑別診断も行ったうえで総合的に判断し、認知機能がどれぐらい低下しているかを診断します。 MMSEの特徴は10〜15分程度と短時間で実施でき、特別な機材が必要ありません。MMSEの評価用紙や筆記用具、時計または鍵、白紙の4点を用意すれば実施できるので、手軽に検査を実施できます。


MMSEの具体的な評価方法と採点基準

MMSEの具体的な評価方法と採点基準表

MMSEでは7つの認知機能について、下記の11項目で評価します。


・時間の見当識
・場所の見当識
・即時想起
・計算
・遅延再生
・物品呼称
・文の復唱
・口頭指示
・書字指示
・自発書字
・図形模写



1問の制限時間は10秒で、返答がなければ不正解となり次の問題に移ります。正解すると1点、不正解なら0点として採点し、満点は30点です。得点をスコアシートに当てはめて評価・判断します。 それでは実際にどのような問題が出題されるのか、具体的な内容を見てみましょう。

質問1. 時間の見当識(5点)

認知機能が低下すると、今は朝なのか夕方なのか、何年の何日なのかといった時間感覚にずれが生じる「見当識障害」が見られることがあります。この項目では以下のような時間に関する問いかけを行い、回答の内容により時間の見当識を検査します。


「今日は何日ですか」 

「今年は何年ですか」 

「今日は何曜日ですか」 

「今は何月ですか」 

「今の季節を教えてください」


日にちについては1日でも間違っていたら不正解ですが、制限時間内に正しい日に言い直した場合は正解となります。年については「令和何年ですか」と、和暦で聞いても問題ありません。季節は「春夏秋冬」だけでなく「梅雨」や「初夏」「初冬」などでも正解です。正解の場合はそれぞれ1点が加点され、合計5点で計算します

質問2. 場所の見当識(5点)

認知機能が低下した場合には、自分がいる場所を正確に認識できなくなることもあるため、場所の見当識についての検査も行います。以下のような場所に関する問いかけに対する回答から判断します。
「ここは都道府県でいうと何ですか」
「ここは何市(町・村・区など)ですか」
「ここはどこですか」(正答は建物名のみ。回答が地名の場合、この施設の名前は何ですか、と質問を変える)
「ここは何階ですか」
「ここは何地方ですか」(「青森県は東北地方ですが、ここは何地方ですか」のように聞く)
施設の名前は正確な名称以外の通称や略称でも正解です。各1点で合計5点です。

質問3. 即時想起(3点)

認知機能が著しく低下した場合、短い記憶を保つことが難しくなることもあります。この項目では下記のように、出題者が言った3つの言葉を記憶できるか検査します。


出題者は3つの言葉を1秒に1つずつ伝え、その後被験者に繰り返してもらいます。1つ正解したら1点で、合計3点です。さらに、この3つの言葉は少し時間を置いて質問5で再び思い出せるかチェックするので、この時点で被験者が3つとも答えられなかった場合は全部答えられるようになるまで繰り返します。繰り返すのは6回までです。

質問4. 計算(5点)

簡単な計算ができるかチェックをすることで、脳が記憶力や情報に対してどのように処理するかを評価する項目です。


「100から順番に7を繰り返し引いてください」と出題します。「93」と正解したら「それからもう一度7を引いてください」と聞きます。さらに「86」と答えられたら「それからもう一度7を引いてください」と聞き、5回繰り返しましょう。このとき、出題者は「93から7を引いてください」などと、現時点での数字を言ってはいけません。計算を間違えた時点で終了です。1つ正解すると1点で、合計5点となります。

質問5. 遅延再生(3点)

少し時間が経過しても記憶を思い出せる「遅延再生課題」をチェックする項目です。質問3を思い浮かべ、「さっき私が言った3つの言葉は何でしたか」と出題し、提示した言葉を再度復唱してもらいます。順番は違っていてもかまいません。答えが出てこない場合は「動物」「植物」「乗り物」のようにヒントを出すこともできます。正解すると各1点で合計3点です

質問6. 物品呼称(2点)

物品の正しい名称を思い出せるか検査し、物の名前がわからなくなる「健忘性失語」や目の前にある物を認識できない「視覚失認」がないかチェックする項目です。時計または鍵を見せながら「これは何ですか」と聞き、次に鉛筆を見せて「これは何ですか」と質問します。時計や鉛筆以外の身の回りの物品でも代用可能です。正式名称でなく通称でも正解とし、1つ正解すると1点で合計2点となります。

質問7. 文の復唱(1点)

下記のように出題者が言う文章の内容を正確に記憶できるかチェックし、長文に対する即時記憶に問題がないか評価する項目です。


「今から私が言う文を覚えて、繰り返し言ってください。『みんなで力をあわせて綱を引きます』」と、出題者は被験者が聞き取りやすいよう、ゆっくりはっきりと伝えます。少しでも言い間違えたら不正解で、正確に答えられたら1点となります。この質問は、1回限りの回答で評価します。

質問8. 口頭指示(3点)

言葉の内容を、理解してそのとおりに行動できるかチェックします。日常的に行っている動作や操作ができない「失行」の症状がないかを確認する検査です。


紙を机に置いた状態で、出題者は「今から私が言うとおりにしてください」と言ってから、「右手にこの紙を持ってください」と相手の正面に紙を差し出します。紙を右手で持ったことを確認したら「それを半分に折りたたんでください」と言います。紙を折りたたんだことを確認したのち「私に渡してください」と指示をしましょう。被験者の耳が聞こえにくい場合は指示を繰り返します。途中で混乱したらその時点で指示を中止し、各段階ごとに正しく作業できたら1点ずつ、合計3点を加算します。

質問9. 書字指示(1点)

書かれた文字が読めなかったり理解できなかったりする「失読」の症状がないかチェックする項目です。出題者は「この文を読んでください」と言い、『目を閉じてください』と書かれた仮名をふったボードを提示します。読むのは音読でも黙読でもかまいません。読んだことを確認したら、出題者は「その動作をしてください」と指示し、被験者が実際に目を閉じれば正解で1点となります。字が読めないことなどを理由に実行できなかった場合は不正解となります。

質問10. 自発書字(1点)

字を書くことができなかったり、違う字を書いてしまったりする「失書」の症状がないかを検査する項目です。出題者が「この部分に何か文章を書いてください。どんな文章でもかまいません」と言い、鉛筆と白紙を渡します。名詞だけでなく主語や述語も使って、意味のある文章が書けたら正解です。状態などを示す四字熟語でも正解となります。正解すると1点が加算されます。

質問11. 図形模写(1点)

目から入った視覚情報を処理して全体的なイメージを掴む「視空間認知」は、アルツハイマー病などによって障害されやすい機能です。この項目では描かれた図形を描写できるかチェックして、視空間認知に問題がないか検査します。2つの五角形の一部が重なったイラストを渡して「この図形を正確にそのまま書き写してください」と出題者が指示します。五角形は角がそれぞれ5つあり、2つの五角形が交差していれば正解です。手指の震えなどがあっても問題ありません。正解なら1点です。


MMSEカットオフの点数

MMSEのカットオフ値の表

MMSEは30点満点で、認知機能の低下が加齢によるものか病気によるものか、判断基準となるカットオフ値は23点とされています。24点~27点で軽度認知症の疑いがあると評価され、23点を下回る場合はどちらかというと認知症の疑いが強いと評価されます。


しかしこの評価基準はあくまで目安であり、MMSEの結果だけで認知機能がどのくらい低下しているか正確な診断はできません。MMSEでは異常なしと評価されても日常生活で不安や違和感があれば、CT検査で脳に異常がないか確認したり、MRIなどの精密検査を受けたりするとよい場合もあります。また、MMSEが23点以下で認知症が疑われる場合には、早めに対策することが大切です。放置すると症状が進行して治療が難しくなることもあるので、医師からの指示やアドバイスをもとに早期治療を心がけましょう。


「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」とMMSEの違い

長谷川式認知症スケールとMMSEの比較表

MMSEと似たスクリーニング検査に「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R / 以下、長谷川式)」があります。長谷川式はアルツハイマー病を原因とした認知機能低下の検出に優れており、日本では知名度が高くさまざまな場面で用いられている検査です。長谷川式は見当識や記憶、計算などの認知機能を評価するための9つの項目から構成されています。すべて口述で検査が行われ、MMSEのような記述や動作、模写の項目はありません。


 MMSEと比較すると長谷川式は記憶力を重視しており、遅延再生機能などが低下している場合には点が取りにくい設計になっています。満点はどちらも同じ30点ですが、長谷川式では20点以下であれば認知機能が低下している疑いがあるとみなされ、評価基準は異なります。 検査実施時間はMMSEが10~15分程度で、長谷川式は5~10分程度です。また、MMSEが世界中で用いられているのに対して、長谷川式は主に日本で活用されている点も違いのひとつです。

認知症の診断に使われる長谷川式認知症スケールとは|認知症の基礎知識

MMSEの注意点

前述のとおりMMSEの結果はすべてではないため、過信しすぎないように注意しましょう。認知機能が低下する原因にはさまざまな要因が考えられ、うつ病などを患っている場合にも、その影響が見られることもあります。認知機能低下の原因を性格に診断する場合は、今までの病歴や血液検査・画像検査なども踏まえて総合的に評価します。最終的な診断をもとに必要に応じて医師と相談し、対策を考えましょう。


そのほかの検査方法を含め、認知症の検査方法についての詳細は、こちらの記事(【認知症の検査方法とは】検査の内容や流れ、病院を紹介)で紹介しています。


ご家族の勧めでMMSEを行う場合、ご本人が認知機能の低下を疑われていることにショックを受けてしまう恐れもあります。ご本人の感情にも配慮し、点数が低くても本人がショックを受けないようご家族がケアすることも大切です。



まとめ

MMSEは認知機能レベルを客観的に測定することを目的とした神経心理検査です。時間や場所の見当識、即時想起や遅延再生などの記憶力、計算能力や言語・図形的能力といった認知機能を11の項目で診断する検査です。満点は30点で、得点数に応じて認知機能を測定します。同様のスクリーニング検査に「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」がありますが、検査項目や評価基準などが異なります。認知機能の低下についての診断はMMSEの結果だけではできないため、参考のひとつとして捉え、過信しすぎないよう注意しましょう。


楽しく、あたまの元気度チェック(認知機能チェック)をしましょう

あたまの元気度チェックへ

メール会員のおもな特典

メール会員には、「あたまの元気度チェックの結果記録」に加え、以下のような特典があります。

身長や体重・運動習慣等を入力するだけで、将来の認知機能低下リスクをスコア化できます。

認知症や介護に関する最新のニュースやお役立ち情報を月2回程度お知らせします。