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高齢者の介護をする女性
2023.12.06

前頭側頭型認知症とは?症状の変化、原因、特徴を解説

認知症には、複数の種類があり、それぞれ特徴や症状が異なります。その違いを理解しておくことで、万が一身近な人が認知症になっても、適切なケアをすることにつながります。

本記事では、前頭側頭型認知症について解説します。原因や特徴はもちろん、症状の変化や他の認知症との違いについてもご紹介します。


目次
・前頭側頭型認知症とは?
・前頭側頭型認知症の原因
・前頭側頭型認知症の特徴的な症状
・前頭側頭型認知症と他の認知症との違い
・前頭側頭型認知症の初期症状から末期症状への経過
・前頭側頭型認知症の進行速度
・前頭側頭型認知症の検査と診断について
・前頭側頭型認知症の治療やケア方法
・まとめ

執筆者画像
【監修】精神科、心療内科医、認知症診療医 ブレインケアクリニック名誉院長 ・一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所所長 今野裕之先生
順天堂大学大学院卒業。老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。大学病院や精神科病院での診療を経て2016年にブレインケアクリニック開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立。 著書・監修に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術(青春出版社)」など。 医師+(いしぷらす)所属。

前頭側頭型認知症とは?

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉と側頭葉の障害により神経細胞が失われることで生じる認知症です。人格の変化や行動の変化、言語能力に関する障害などの症状が現れます。


前頭葉と側頭葉とは
前頭葉は社会性や人格、判断力、言語機能を担っており、側頭葉は言語理解、聴覚、味覚、記憶、感情などを担っています。前頭葉・側頭葉は脳の4割を占める重要な器官であり、その機能が低下すると日常生活にさまざまな影響を及ぼします。


前頭側頭型認知症は、前頭側頭葉変性症と呼ばれる病型の1つであり、国の指定難病に登録されています。認知症のなかでは、アルツハイマー型認知症が最も多く全体の6~7割を占めますが、前頭側頭型認知症は全体の約1割程度となります。


前頭側頭型認知症は、多くの場合50〜65歳前後の比較的若い年齢で発症する傾向があり、比較的緩やかに症状が進行していきます。近年の若年性認知症における原因疾患のうち、全体の9.4%を占めています。

※出典:「わが国の若年性認知症の有病率と有病者数」



前頭側頭型認知症の原因

前頭側頭型認知症の原因について、完全には解明されていませんが、近年の研究でタウたんぱく、TDP-43、FUSなど特定の異常たんぱく質の影響が大きいことが明らかになっています。


これらのたんぱく質は正常な脳機能に必要ですが、性質が変化して異常が生じると脳内で蓄積し、神経細胞の機能障害や死滅を引き起こすことが知られています。特に、これらが脳の前頭葉や側頭葉に蓄積すると、前頭側頭型認知症の典型的な症状が発現します。



前頭側頭型認知症の特徴的な症状

怒っている高齢者のイメージイラスト

一般的な認知症の症状としては「物忘れ」や「人の名前や顔を間違える」などが想像されやすいのではないでしょうか。しかし、前頭側頭型認知症では違った症状が目立ちます。行動や言語に関わる具体的な症状を見てみましょう。


言語障害

知っているはずの言葉の意味が分からなくなり、物の名前が出にくくなります。また、文字を読み間違う場合があったり、単語の理解はできても複雑な文章が理解できなくなることがあります。文章を構造化して話すことができなくなるため、「僕……食べる……ごはん……今」といった会話が見られるようになります。


社会性がなくなる

礼節や社会通念に対する関心が薄れ、他の人からどう思われるかを気にしなくなります。身だしなみに無頓着になって部屋着のまま外出したり、万引きをするなど反社会的な行動を取ったり、質問しても真剣に答えようとしない、などの行動が見られます。


抑制が効かなくなる

刺激に対する反応や自分の欲求が抑えられず、本能のまま行動するようになります。他人に対して遠慮なく話をしたり、相手の話を聞かずに一方的に話し続けるなど、自分に対する抑制が効かなくなります。


同じ行動を繰り返す(常同行動)

毎日同じコースを散歩する、同じ物を食べ続けるなど、同じ行動を繰り返す症状が見られます。これを常同行動といいます。決まった時間に毎日同じことをする時刻表的な生活も現れることがあります。


食生活の変化

常同行動の影響から、食生活にも変化が現れます。味の濃いものや甘いものを過剰に好む嗜好の変化がみられます。食事のメニューにこだわり、同じものをいくつも食べたり、盗み食いをしたりすることもあります。


共感や感情移入が難しくなる

感情が鈍くなり、他人への共感や感情移入ができなくなります。たとえば、相手に対して無関心になったり、病気で寝ている家族に対し、普段と同じように食事の支度を要求するなど、周りへの気遣いができなくなります。


自発性の低下

自分や周囲に関心がなくなり、自ら何かに取り組む姿勢がなくなります。家事をしなくなる、質問しても真剣に答えない、ぼんやりとして何もしない、外出をしなくなる、引きこもるなどの症状が出てきます。


集中力の低下

集中力がなくなり、周りの状況を考えずに突然立ち去ることがあります。話の最中にその場を離れてしまったり、診察中に突然診察室を出て行くこともあるでしょう。



前頭側頭型認知症と他の認知症との違い

前頭側頭型認知症は、他の認知症であるアルツハイマー型認知症と比べて多くの点で異なります。


前頭側頭型認知症は通常50〜60代で発症し、主に脳の前頭葉と側頭葉の萎縮により起こります。一方、アルツハイマー型は65歳以降に発症するケースが多く、脳の海馬という記憶を司る部分から萎縮していくことが特徴です。前頭側頭型認知症の主な症状は、人格や行動の変化、言語障害への影響が大きく、アルツハイマー型認知症の記憶障害や見当識障害、実行機能障害とは異なります。


また、一般的に前頭側頭型認知症・アルツハイマー型認知症のどちらも徐々に進行しますが、前頭側頭型認知症の方がアルツハイマー型認知症に比較して症状の進行が早いといわれています。

アルツハイマー型認知症についての詳細は、こちらの記事(アルツハイマー型認知症とは/原因や症状、治療法について)で解説しています。


前頭側頭型認知症の初期症状から末期症状への経過

前頭側頭型認知症は緩やかに進行していきますが、進行によってさまざまな変化が見られます。


初期段階では、無関心や自発性の低下、常同行動、感情の変化など少しずつが見られるようになります。今までよりも物事への関心低下に加え、感情移入や共感することが減り、食生活の変化なども少しずつ見られます。一方、初期は、記憶や詩空間認知は保たれるため、基本的日常生活動作そのものに問題が生じにくいでしょう。加えて、自分自身の言動の変化を認識していないケースが多いため、周囲の理解が大切になります。


中期段階では、言語障害や行動の異常が顕著になり、同じ行動を繰り返すなどの変化が出てきます。


末期には、全般的な身体機能の衰えが目立ち、重度のコミュニケーション障害が生じ寝たきりになることもあります。一時的に、人格の変化や常同行動が弱まることがありますが、症状の回復ではありません。



前頭側頭型認知症の進行速度

症状の進行は個人差がありますが、初期から末期への進行は、おおよそ6年~10 年程度といわれています。日常の生活習慣や疾患、環境などさまざまな要因が進行速度に影響を与えます。

認知症の進行についての詳細は、こちらの記事(認知症の症状が一気に進む原因とは?進行の流れや対応策を解説)で解説しています。



前頭側頭型認知症の検査と診断について

前頭側頭型認知症の診断には、CT、MRI、SPECTなどの脳画像検査が用いられます。


●CT(Computed Tomography)
CTスキャンは、X線を用いて脳の断面画像を撮影します。これにより、脳の形状、大きさ、脳組織の密度など、脳の物理的な構造を詳しく調べることができます。脳全体や記憶に関連する海馬の萎縮状況を調べることによって、認知症の判断をすることができます。しかし、認知症の初期段階で起こる微細な変化を捉えるには、CTだけでは限界があり、問診や神経心理検査などの結果と合わせて診断をします。

●MRI(Magnetic Resonance Imaging)
MRIは強力な磁場とラジオ波を利用して、脳組織の微細な構造まで詳しく観察することができます。特に、脳の萎縮を検出するのに有効で、アルツハイマー病などの認知症の初期診断に広く用いられています。しかし、脳が萎縮していても、認知機能が低下していないケースもあるため、あくまで判断材料のひとつとして活用されます。

●SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)
SPECTは、放射性物質を用いて脳の血流や代謝を評価します。脳のどの領域で活動が低下しているか、といった脳の機能的な異常を検出することが可能であるため、特定の認知症が引き起こす脳の活動パターンを観察することができます。

●PET(Positron Emission Tomography)
PETは脳の機能や代謝を評価するための画像検査で、脳の神経細胞の活動や血流を観察し、異常を検出します。放射性同位元素を含むトレーサーを静脈注射させ、脳内で集め、放射線の放出を検出して画像を生成します。脳の特定の領域で異常な活動や血流が見られる場合、疾患の可能性が高いです。

認知症の検査についての詳細は、こちらの記事(【認知症の検査方法とは】検査の内容や流れ、病院を紹介)で解説しています。


前頭側頭型認知症の治療やケア方法

病院の検査によって、前頭側頭型認知症と診断された場合、適切な治療や対応が必要になります。


治療方法

前頭側頭型認知症の治療は、症状を緩和し、認知症の方の生活の質を向上させることに重点が置かれます。現在、特定の薬物治療による根治法は存在しませんが、行動や言語の障害に対しては、抗うつ薬や精神安定剤を投与し、行動異常を和らげることがあります。


非薬物療法として、ルーチン化療法という手法があります。

前頭側頭型認知症の特徴である常同行動で日常生活や健康に問題がある場合、その行動を別の支障をきたさない行動へ置き換える方法です。たとえば、毎日決まった時間に散歩をしてその度に甘いものを買ってしまうという行動を繰り返す場合には、その時間をデイサービスにするといったことで、問題がある常同行動を防ぐことができます。ルーチン化療法は、家庭でも実施することができます。


日常のケア方法

前頭側頭型認知症は、日常生活にさまざまな影響をもたらすため、家族や介護者は戸惑いや不安を感じることも少なくありません。しかし、周囲の方が適切に対応することが、本人の性状態の安定にもつながるため、日常的な対応では、以下の点を意識するとよいでしょう。


・自然体で接する
・病気を理解し症状の特徴をケアに活かす
・周徊(毎日同じコースを同じパターンで繰り返し歩くこと)を放置しない・そのままにしない
・しっかり行動観察をする
・本人を知るために、本人の生活史を振り返る
・コミュニケーションの方法を工夫する
・無理強いや強引な制止をしない
・持っている力を活用する
・食の欲求、食行動の変化を見落とさずに対応する

そのほか、認知症の方への対応ポイントについて、こちらの記事(【認知症の方への対応】こんなときどうする?介護の心がまえと接し方)で解説しています。


まとめ

前頭側頭型認知症は、他の認知症との違いがあるものの、初期段階で見分けることは簡単ではありません。そのため、家族や身近な人に言動の変化が見られた場合は、なるべくはやく専門家に相談することをおすすめします。早期発見をすることで、進行を遅らせることができ、本人の生活の質向上にもつながります。

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