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医師の診察を受ける高齢者
2023.08.23

【認知症の検査方法とは】検査の内容や流れ、病院を紹介

認知症は、早期発見とケアによって症状の進行を遅らせることができます。早期発見のためには適切な検査をすることが重要です。


本記事では、認知症の検査をする際の相談先や検査の流れ、注意すべきポイントなどを紹介します。「認知症かもしれない」と不安を抱えている方は参考にしてみてください。


目次
・認知症は症状を知り、早期発見が大切
・認知症についての相談先や医療機関について
・認知症の検査の流れ
・神経心理検査について
・脳画像検査について
・検査費用はいくらかかる?
・検査の際の注意点や心構え
・まとめ

執筆者画像
東京都健康長寿医療センター 岩田淳 医師
東京大学医学部附属病院神経内科の専門外来「メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD)やレビー小体病、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診断、治療に当たっていた。特に超早期段階でのAD、レビー小体病の診断、新薬の開発が専門。2020年4月より東京都健康長寿医療センターの脳神経内科部長として赴任。

認知症は症状を知り、早期発見が大切

自分自身や家族が、物忘れや約束を忘れるなどの症状が繰り返し見られるようになってきた場合、その変化を見逃さないことが重要になります。その症状が一時的なものか、認知症の初期症状の可能性があるのか。具体的に、以下のような兆候が複数回見られる場合は、専門機関へ相談することをおすすめします。


● 繰り返し同じ話をする

● 約束したことをたびたび忘れる

● 物の置き場所を忘れてしまう

● いつも作っていた料理の手順がわからなくなる

● 通い慣れた場所で迷子になる

● 家族の顔がわからない

● そのほかに、「一人歩き」「抑うつ」「幻覚」「暴言・暴力」など


認知症は症状が進行すると日常生活にも影響が出てきますが、早期に発見し、適切なケアを行うことで、進行を遅らせることができます。


認知症についての相談先や医療機関について

認知症の疑いが見られた場合、誰に相談すればよいか迷うこともあるでしょう。そこで、気軽に相談できる身近な窓口から、専門的な検査ができる医療機関を紹介します。


気軽に相談ができる身近な窓口

認知症の疑いがある場合に、すぐに医療機関へ行くことに抵抗を感じる人もいるでしょう。そこで、認知症についての理解を深めて、正確な初期症状を把握するとともに、適切な医療機関を探すためのアドバイスを受けたい方に向けて、専門機関の窓口を紹介します。将来、自分自身や身近な人に認知症の疑いが出たときに備えて、情報収集をする場所としてもおすすめです。


● 地域包括支援センター

地域の高齢者やその家族が生活に関する相談を行うことができます。認知症についての情報提供や、支援サービスの紹介などを行っています。

以下のサイトにて、近隣の地域包括支援センターの場所を探すことができます。

厚生労働省 地域包括ケアシステム 全国の地域包括支援センターの一覧(都道府県のホームページへリンク)


● 認知症の人と家族の会

認知症になった当事者や家族が、社会の中で孤立することなく、お互いに支え合うための組織として、さまざまなサポートの提供、情報発信や啓発活動を行っています。日本各地に支部があり、介護の相談、情報交換、勉強会などを行っています。

認知症の人と家族の会 ホームページ


● 認知症カフェ

認知症の人やその家族、地域の人や専門家などの方々が集まり、情報交換や相互支援を行う場所です。地域の公的機関、介護施設、専門家やボランティアなどにより運営されており、参加者が抱える悩みや疑問に応じた支援や情報提供を行い、参加者同士の交流の場を提供しています。

認知症カフェについての詳細は、以下の記事で紹介しています。

認知症カフェとは?概要や行われていること、参考事例などを紹介


● 認知症サポートダイヤルによる相談

『SOMPOケア認知症サポートダイヤル』では、認知症の疑いがある方や家族の方に向けて、悩みや疑問解消のための電話相談サービスを実施しています。認知症に関する知識や介護サービスについてなど、無料で相談することができます。

認知症サポートダイヤルのご案内


医療機関での検査のススメ

専門的な検査・診断を受ける際は、医療機関を受診する必要があります。医療機関を選ぶ際は、認知症の診断や治療に対して専門的な知識と経験を持っているか、また、スタッフが患者や家族に対して適切な対応ができるかがポイントです。上記の窓口やかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらうことをおすすめします。


一般的には、「神経内科」「神経科」「精神科」「心療内科」「脳神経外科」などの医療機関で診察可能であり、近年は「もの忘れ外来」「認知症外来」など専門外来も増えています。以下のページにて、全国の専門外来を紹介しています。

認知症に関連する医療機関検索


そのほかにも、認知症の疑いがある人の診断、治療、リハビリテーションの提供、家族への支援などを行う、認知症疾患医療センターもあります。

以下のサイトにて、近隣の認知症疾患医療センター場所を探すことができます。

厚生労働省 認知症疾患医療センターの整備状況について


認知症の検査の流れ

ここからは、医療機関における認知症検査の流れを紹介します。


問診・診察…専門の医師が、認知症が疑われる本人の健康状態や生活状況、認知症に関連する症状を聞き取ります。本人から聞くだけでなく、家族からの情報を聞くこともあります。

身体検査…問診・診察に加え、健康状態より詳しく・正確に把握するために、心電図検査・血液検査・レントゲン検査などを実施します。認知症と関連性のある生活習慣病などの診断にもつながります。

神経心理検査…脳の損傷や認知症などにみられる知能・記憶・言語などの機能障害を数値化し、定量的・客観的に評価します。

脳画像検査…CTやMRI、SPECTなどの検査により、脳の構造や機能の異常を可視化し、さまざまなタイプの認知症とその原因を特定します。

診断…認知症の診断や症状の説明、今後の対応やケア方法を医師から説明してもらいます。


神経心理検査について


認知症検査の質問シートの画像

医療機関で実施される認知症の検査方法に、神経心理検査があります。本項目では、代表的な6つの検査方法を紹介します。


● 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

1974年に聖マリアンナ医科大学・神経精神科教授だった長谷川和夫氏らによって開発され、記憶力の評価に重点が置かれた検査です。全9つの評価項目によって、30点満点で構成されており、20点以下だった場合、認知症の可能性が高いとされます。

長谷川式簡易知能評価スケールについての詳細は、以下の記事で紹介しています。

認知症の診断に使われる長谷川式認知症スケールとは|認知症の基礎知識


● ミニメンタルステート検査(MMSE)

言語能力や記憶、注意力など認知機能の点数化により客観的に認知機能レベルを把握する検査です。質疑応答に加え、計算をしたり、文章を書いたり、図形を模写するなど11の項目で評価します。

【MMSEについて】具体的な評価項目や採点基準、カットオフ値は?


● CDT(時計描画テスト)

時計の絵や指定された時刻に針を配置した絵を描く、描画検査です。構成能力や視空間能力,言語理解能力,知的機能,視覚性記憶想起および視覚イメージの再構成や遂行機能の判断が可能です。短時間で手軽にできるため、検査に抵抗を感じる方にもおすすめです。


● ABC-DS(ABC認知症スケール)

評価者が認知症の疑いのある本人の介護者や観察者(情報提供者)に対し、13項目の質問からなる半構造化インタビュー※を実施。それぞれの項目において、9段階(1~9点)で評価する検査です。

※あらかじめ質問をいくつか決めておいて話の流れで当初想定していなかった質問もする方法


● Mini-Cog

3つ単語の記憶確認と時計描画テストを組み合わせた検査で、簡易的に認知症をスクリーニングできる検査。3つの単語の記憶確認は3点、時計描写テストは2点であり、合計点が3以上の場合、認知障害の可能性が低いことを示します。


● MoCA

8項目の質疑応答や模写、描写などを実施し、それぞれの正誤を判定して30点満点で評価する検査手法。軽度の認知機能低下を評価するツールとして活用されるケースが多い。


脳画像検査について

認知症の診断方法には、神経心理学的評価だけでなく、脳の画像検査も行います。ここでは、主に用いられる3つの脳画像検査について解説します。


● CT(Computed Tomography)

CTスキャンは、X線を用いて脳の断面画像を撮影します。これにより、脳の形状、大きさ、脳組織の密度など、脳の物理的な構造を詳しく調べることができます。脳全体や記憶に関連する海馬の萎縮状況を調べることによって、認知症の判断をすることができます。しかし、認知症の初期段階で起こる微細な変化を捉えるには、CTだけでは限界があり、問診や神経心理検査などの結果と合わせて診断をします。


● MRI(Magnetic Resonance Imaging)

MRIは強力な磁場とラジオ波を利用して、脳組織の微細な構造まで詳しく観察することができます。特に、脳の萎縮を検出するのに有効で、アルツハイマー病などの認知症の初期診断に広く用いられています。しかし、脳が萎縮していても、認知機能が低下していないケースもあるため、あくまで判断材料のひとつとして活用されます。


● SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)

SPECTは、放射性物質を用いて脳の血流や代謝を評価します。この検査により、脳のどの領域で活動が低下しているか、脳の機能的な異常を検出することが可能です。これにより、特定の認知症が引き起こす脳の活動パターンを観察することができます。


検査費用はいくらかかる?


※記載の金額は目安となります。

医療機関、検査内容により異なりますが、保険適用の場合は、250円~30,000円ほどになります。認知症と診断され要介護度認定を受けた場合、検査費用は介護保険サービスを適用できるため、自己負担額は所得に応じて1~3割負担になります。


検査の際の注意点や心構え

認知症の検査を受け、その後の対応やケアにつなげるためには、なるべく検査結果を受け入れられる状況をつくることが重要です。検査を受ける際の注意点やポイントを紹介します。


● 心の準備をする

認知症の診断はときに、疑いのある本人や家族にとって精神的なストレスとなることがあります。しかし、症状の確認や進行度の把握は、今後のケアを行っていくうえで必要不可欠です。そのため、結果が思わしくない場合でも冷静に対処する心の準備が必要です。


● 家族と同伴する

認知症の初期段階では、疑いのある本人が自分の症状に気づいていないことがあります。また、「自分が認知症であるはずでない」と思い込み、検査の必要性を感じていなかったり、結果を受け入れられないケースもあります。そのため、本人が診察や検査の内容をすべて正確に理解・記憶するのは難しい場合もあります。信頼できる家族と一緒に診察に臨むことで、診察内容を確認し、適切なケアを行う上で役立ちます。


● 認知症の診断を受けたときの対応を想定しておく

診断結果が認知症であった場合、その後のケアについても考慮することが大切です。すぐに対応することは難しいかもしれませんが、事前に対応の流れを把握しておくと、医療機関や専門家からのアドバイスを受け入れ、日常生活の支援や介護の計画を立てることが重要です。

認知症のケアの詳細について、以下の記事で紹介しています。

・認知症のケアで心がけることとは

・認知症の介護サービスとは?介護サービスの種類や対象者、費用について詳しく解説


まとめ

自分自身や家族に認知症の疑いがあると感じた場合、まずは専門窓口や医療機関に相談をし、適切な検査を受けることをおすすめします。そのために、検査の詳細を把握することはもちろんですが、認知症の理解を深めることも重要です。万が一認知症と診断されても、症状の進行を遅らせ、生活の質を保つことにつながっていきます。


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