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「仕事と介護の両立」の企業事例イメージ画像
2025.03.21

「仕事と介護の両立」による企業の変化とは 【大成建設 取り組み事例】

育児介護休業法の改正などによって、「仕事と介護の両立」に関する動きが広がりつつあります。一方、まだ取り組みができていない企業からは「どのように推進すればよいかわからない」という声が挙がることも少なくありません。


今回は「仕事と介護の両立」において、先進的な取り組みを行っている大成建設株式会社の事例を取材。これまでの歩みや、現在の取り組み状況、組織の変化を伺いました。


大成建設株式会社 人財いきいき推進室
2007年、女性社員が働きやすい職場環境づくりのために「女性活躍推進室」が発足。2024年「人財いきいき推進室」に改名。
・構成…総合職6名、担当職7名(うち障がい者7名)、契約社員1名、派遣社員1名
・所管業務…女性活躍・育児・男性育休・障がい者採用/定着・介護・LGBTQ・外国籍社員フォロー・その他相談対応


目次
・社員の声から浮き彫りになった介護の課題
・両立のために最も重要なことは"情報提供"
・「介護はお互い様」の意識を醸成するために
・経営陣も含めて本気で取り組むことが大切
・社員から「安心して働ける」という声が増えた


社員の声から浮き彫りになった介護の課題


――大成建設さんは、早い段階から「介護と仕事の両立」に取り組んでいます。なぜ介護の課題にフォーカスするようになったのでしょうか?

インタビューに応える大成建設の北迫 泰行さん

人財いきいき推進室長 北迫 泰行さん


北迫さん(以下、北迫):2007年に女性活躍推進室(現:人財いきいき推進室)が設立され、社員にヒアリングをしたことがきっかけです。


建設業界での公共投資が減り、競争が激しくなる中で、女性活躍推進を本気でやらなければ企業として生き残っていくのが難しいという危機感がありました。 その取り組みの一つとして、会社の女性社員に「将来のキャリアについてどう考えているか?」をヒアリングしたところ、家族の介護を不安している社員が数多くいるということが分かりました。


また、男性社員も交えて「女性が活躍できる職場について」というテーマで議論をした際に、男性社員からも、「自分の親の介護が始まったとき、働き続けることができるのか」という不安が多く集まりました。一昔前なら自分の親の介護を配偶者にお願いするような家庭も少なくありませんでしたが、考え方は変わってきています。


――企業が取り組むべき人事課題はさまざまなものがありますが、育児と同様、介護も特に重要視していたのですね。


北迫:育休制度は当時からありましたが、より働きやすい環境作りをするために、介護の課題に注目しました。2007年当時は介護と仕事をどう両立するか考えるという段階でもなく、仕事と介護どちらに専念するのか選ばざるをえないという風潮があったように思います。


育児への取り組みは進んでいますが、介護の課題が後回しという企業は少なくありません。そこで、介護問題を会社として取り組む喫緊の課題として捉えました。


両立のために最も重要なことは"情報提供"


――具体的に、どのような取り組みで「仕事と介護の両立」を支援していますか?

大成建設の「仕事と介護の両立」を支援策

北迫:介護休業や介護休暇などの法律に則った支援はもちろん、仕事と両立するためにフレックス勤務制度や、未消化の有給休暇の利用も推進しています。


ただし、もっとも大切なのは、会社が介護そのものに関わるというよりも、本人が介護と仕事が両立できるための情報提供を行うことだと考えています。具体的には、5年以上前から、40歳になった社員全員に、介護保険制度の基本的な知識と会社の制度を記載した「介護のしおり」を送付しています。また、年に3回介護セミナーを開催したり、個別相談窓口を設けたりしています。


――情報提供を重要視している理由を教えてください。


北迫:介護はなかなか自分ごととして意識しにくいものの、ある日突然向き合うべきときがやってきます。その際、情報があることで事前の心構えにつながるからです。


私も過去に、会社の介護セミナーに参加したことがあります。そこで「何かあったときには地域包括支援センターに相談してください。介護に関わりがなくても、とりあえず行ってみてください」という話を聞きました。その後、父親が要介護状態になったとき、地域包括支援センターに相談すればよいという知識を得ていたので、スムーズに相談ができました。自分自身も「事前に知っておいて良かった」と実感しましたね。


――事前に情報を押さえておくことで行動しやすくなりますね。情報提供において工夫しているポイントを教えてください。


北迫:たとえば「介護のしおり」の中では、介護全体の流れを準備期から初動期、最後は調整・両立期という流れを示し、自分自身の状況を把握できるようにしました。まず全体像を把握してから、細かい項目を理解できるようにしています。

「介護のしおり」の表紙

また、ケアマネジャーに自身の状況や会社の制度を的確に伝えるために「仕事と介護の両立相談シート」や、介護休暇や介護休業の計画について上司や人事担当者と相談するために活用できる「面談シート」を作成しています。

ケアマネジャー向けの「仕事と介護の両立相談シート」

▲ケアマネジャー向けの「仕事と介護の両立相談シート」

上司・人事担当者と相談する際に使う「面談シート」

▲上司・人事担当者と相談する際に使う「面談シート」


――自分の状況を知り、会社や専門家のサポートを得るための工夫がなされていますね。


北迫:介護セミナーは、外部の方に協力いただき、年に3回実施。すでに介護に関わっている人、まだ介護に関わっていない人など、さまざまな状況の社員が参加するため、1回は基礎的な知識をテーマとし、残りの2回は応用編として開催しています。参加した社員にアンケートを取りながら、多くの社員が関心を持てるテーマを考えています。


また、オンラインで開催することで全国各地にいる社員が気軽に参加できるようにし、長期休暇で帰省した際に家族と話し合えるよう、ゴールデンウィーク前や夏休み前などの長期休暇の少し前の土曜日に開催しています。強制参加ではなく自由参加ですが、家族と一緒に参加することも可能です。


「介護はお互い様」の意識を醸成するために


――介護は、関わったことがなければ自分ごととして捉えづらい側面があると思います。社員に興味を持ってもらえるように取り組んでいることはありますか?


北迫:相談をする側の社員に対しては、介護セミナーや個別相談窓口の情報を社内イントラネットで発信することで「会社に相談窓口があるんだ」と認識してもらえるようにしています。もしも、より専門的なことを相談したい社員がいた場合は、外部法人に相談できる体制も整えています。


同時に、相談を受ける側となる人事担当者には研修を受けてもらっています。また、上司が受講する管理職研修の中で介護離職のトピックも設け、「介護離職防止は組織マネジメントとして重要な仕事であること。家族の介護の心配がないかを確認し、何かあれば会社に相談してほしいと部下との定期面談の中で伝えること」 と社内教育を行っています。


――特に若年層の社員にとっては、身近に感じてもらうのが難しいかと思います。


北迫:おっしゃるとおり、40歳未満の社員にとって、介護はまだ先の問題と思われがちです。そこで、介護セミナーのテーマも工夫し、「親が65歳になったら」「介護とお金」など、若年層も興味を持てる切り口に変えました。


――社員から相談を受ける際、プライバシーへの配慮は難しい部分かと思いますが、気をつけていることはありますか?


北迫:相手が言っていることをしっかり傾聴することを心がけています。また、相談を受ける際は、人事施策の一環ですので基本的にはフェアに扱うことが大事です。特殊な事例があった場合はどこまで認めるかという判断は必要ですが、基本的には会社の規定に則らなければいけません。ただし、規定の解釈の範囲内で助け舟を出すことはありますね。


介護休暇などの制度を利用する際には仕事の引き継ぎなどで迷惑をかけてしまうと思ってしまう社員も少なくありません。ですが、上司や同僚もいつか自分の家族の介護が必要になるかもしれない。私もあなたも「お互い様」の意識を共有することで、支え合える職場づくりを目指しています。


経営陣も含めて本気で取り組むことが大切


――経営陣は介護課題への取り組みについてどのように考えていますか?


北迫:多くの会社と同様、当社でも新たな社内規定を策定するときは最終的に経営会議や取締役会で決定します。経営層に介護に関する社員アンケートの結果や社員の声を伝えたところ、非常に真摯に耳を傾けてもらえました。なかには「実は自分も介護で悩んでいる」と経営層自身も当事者の視点で高い関心を持ちながら、方針を策定しています。


――2023年には社内報で介護離職防止の特集を組まれたそうですね。


北迫:社内報では、社長や有識者に登場してもらい、単に人事部の仕事としてやっているのではなく、会社として本気で介護に取り組んでいることを伝えたいという思いがありました。

社内報の内容イメージ

トップから社員に対してメッセージを発信すると、人事部門としても施策を進めやすくなります。介護は社員のプライベートなことですが、「仕事と介護の両立」は会社として取り組むべき組織マネジメントの一環です。もし他の企業様で取り組みをうまく推進できていないと感じていらっしゃる場合は、人的資本の確保という観点で、経営層にも協力いただくのがいいのかなと思います。


社員から「安心して働ける」という声が増えた


――さまざまな取り組みを行われていますが、効果測定はどのようにしているのでしょうか。


北迫:定期的に行っている「社員ストレスチェック」の際に、介護や育児のストレスに関するアンケートを追加しました。介護への関わり方や、関わる頻度を選択式で答えるようにし、状況を把握しています。また、介護休暇の取得者数や取得した社員の年代、男女比、内勤・外勤の比率も集計しています。

インタビューに応える大成建設の北迫さん

――取り組みを続けていく中で、社内にどのような変化がありましたか?


北迫:定量的な成果だと、セミナーの参加者数が増えました。以前は年3回の開催で、参加者数は各々数十名程度でしたが、今では1回で約150から200人が視聴することもあり、年間約500人が参加するようになりました。


窓口への相談件数も年々増えてきており、会社の取り組みについて細かく説明を受けた社員からは「働き続けることができる」「安心した」という声を多く聞いています。


――今後取り組んでいきたいことはありますか?


北迫:まだまだ会社の制度について知らない社員も多くいるため、周知をもっと徹底していく必要があると感じています。最近は、親の介護だけでなく、配偶者や子どもの介護を行うケースも増えてきています。そういった方々に対しても介護休暇制度が使えることを周知していく必要があると感じています。


加えて、介護休暇を取得する人の周りの業務フォロー体制の構築も大きな課題です。休む人も周りも、お互いにストレスなく両立できる仕組みを作っていかなければならないと考えています。

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