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診察を受けている高齢者の男性
2023.03.27

認知症検査の長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは|やり方や評価項目、点数基準を解説

認知機能が低下して日常生活にも支障が出る状態を認知症といいます。脳の一部が委縮していくアルツハイマー型のほか、血管性、レビー小体型、前頭側頭型などがあります。認知症は早期発見・早期治療が重要なので、自分や家族に認知症が疑われるときはできるだけ早く検査する必要があります。


根本的な治療が難しい認知症もありますが早期の対応で進行を遅らせることができます。実際にどのような検査が行われるのか、事前に詳しく知りたい方もいるのではないでしょうか。認知症の診断に用いられる検査はさまざまありますが、日本では長谷川式認知症スケール(HDS-R)やMMSE(ミニメンタルステート検査)などの認知機能テストが主に使われています。


今回は、長谷川式認知症スケールについて、設問内容や採点方法、評価ポイントなどを解説していきます。


目次
・長谷川式認知症スケールとは?
・長谷川式認知症スケールの評価項目
・長谷川式認知症スケールのやり方と算定・評価方法
・何点から認知症?点数の基準について
・長谷川式認知症スケールを使用する際の注意点は?
・まとめ

執筆者画像
【監修】医療法人ミチラテス 理事長 ファミリークリニックあざみ野 院長 石井道人先生
北里大学医学部卒。東京都立多摩総合医療センターで救急医療、総合診療を学ぶ。 2013年より北海道・喜茂別町で唯一の医療機関、喜茂別町立クリニックに管理者として赴任。乳幼児健診から看取りまで、町民二千人の健康管理を担う。2020年神奈川県横浜市にて開業。 日本プライマリ・ケア連合学会認定指導医 日本救急医学会認定救急科専門医 日本内科学会認定内科医 日本医師会認定健康スポーツ医 日本医師会認定認知症サポート医 キッズガーデンプレップスクール嘱託医

長谷川式認知症スケールとは?

人や物の名前が思い出せない、最近物忘れが増えたという状況は加齢とともに誰にも起こります。単なる物忘れなのか、認知症の兆しなのか、この検査で何がわかるのでしょうか。また、MMSEとの違いや病院でしかできない検査なのかを解説します。


認知症スクリーニングが目的の認知機能テスト

「長谷川式認知症スケール」は、一般の高齢者の中から認知症の高齢者をスクリーニングすることを目的に用いられる簡易的な認知機能テストです。記憶を中心とした大まかな認知機能障害の有無を調べます。1974年に聖マリアンナ医科大学・神経精神科教授だった長谷川和夫氏らによって開発され、今では認知症の診断にあたって信頼性の高い評価方法として、日本国内の多くの医療機関で使用されています。


1974年の開発当初は「長谷川式簡易知能評価スケール」の名称でしたが、1991年に質問項目と採点基準の見直しが行われ、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」に改訂されました。また、2004年に疾患名が「痴呆症」から「認知症」に変更されたことにより、「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」と呼ばれるようになっています。

HDS-Rとは、開発者である長谷川和夫氏の名前を含めた「Hasegawa Dementia Scale-Revised」の略症です。


MMSEとの違いは?

長谷川式認知症スケールとともに行われている認知症の評価方法に「MMSE(ミニメンタルステート検査)」という認知機能テストがあります。アメリカで開発されたため世界でも広く使われているテストですが、問題の数が長谷川式認知症スケールより多く、10~15分程度かかります。時間と場所の見当識、計算、文章復唱、図形模写など11の評価項目で構成されています。回答方法が、口頭以外に文章の記述や図形描写などもある点が、口頭のみの長谷川式認知症スケールと異なります。


MMSEについての詳細は以下の記事にて紹介しています。

【MMSEについて】具体的な評価項目や採点基準、カットオフ値は?


長谷川式認知症スケールの評価項目

長谷川式認知症スケールは、記憶力の評価に重点が置かれた検査です。評価項目は以下のように全部で9つあり、30点満点で構成されています。20点以下だった場合、認知症の可能性が高いとされています。


1.年齢

自分の年齢が答えられるかの検査


2.日付に関する見当識

日付や曜日を聞くなど自分が置かれている状況を把握する能力があるかの検査


3.場所に関する見当識

現在いる場所を聞くなど自分が置かれている状況を把握する能力があるかの検査


4.言葉の記銘

3つの単語(「桜、電車、猫」または「梅、犬、自動車」)を覚えてもらう。新しいことを覚える力があるかの検査。後で聞くことも伝える


5.計算

簡単な引き算ができるかの検査


6.逆唱

質問者が言う数字を逆から言えるかの検査


7.言葉の遅延再生

4の設問で覚えてもらった単語を聞き、もう一度答えられるかの検査


8.物品再生

時計や鉛筆、メガネなど5つの品物を見せた後に隠し、何があったかを答えてもらう検査


9.言葉の流暢性

知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってもらう検査


テストにかかる所要時間は5分~10分程度です。研修などで評価方法をしっかり学べば、誰でも簡単に行うことができるため、医療現場だけでなく介護現場でも認知症の評価を行うため活用されています。 医療機関を受診する前にご家庭で行う場合は、後で紹介する注意点を参考にしてください。


なお、認知症の初期にはどのような症状があるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。

認知症の初期サインを理解しましょう

認知症は、初期の時点で適切に受診し、治療を受けることが急速に進行させない上で大切です。そのためにも、認知症の初期の症状を理解しておくことが重要です。

長谷川式認知症スケールのやり方と算定・評価方法

ここからは、長谷川式認知症スケールの具体的なやり方と、実際の設問内容や評価方法を見ていきましょう。


準備するもの

検査を行う際は、「評価用紙」「筆記用具」「検査の際に見せる5つの品物」を事前に準備する必要があります。5つの品物は、例えば、「時計、マグカップ、歯ブラシ、鍵、鉛筆」など身近なものの中から互いに関連のないものを選択します。

長谷川式認知症スケールの評価方法

長谷川式認知症スケール質問内容

(参考:一般社団法人日本老年医学会「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」)

「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」は、先ほど紹介したように見当識や記憶力、計算などの認知機能を評価するための9つの項目から構成されています。テスト方法は、口頭で問題を問いかけ、回答してもらう、というやり取りで行います。設問内容と、評価項目、評価ポイント、点数は以下の一覧表を参考にしてください。1つの質問に正解したら1点が加算されますが、問題によっては、自発的な正解で2点、ヒントによる正解で1点が与えられるなど設問ごとに評価ポイントが異なります。


何点から認知症?点数の基準について

長谷川式認知症スケール 点数基準表

長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、30点満点で構成されていて、20点以下だと認知症の疑いが高いと判定されます。認知症でない人の平均は24点前後、19点前後であれば軽度の認知症、15点前後であれば中等度、10点前後であれば重度とされています。


しかし、この点数だけで認知症の診断はできません。テスト当日の体調や精神状態が影響して点数が低く出る可能性もあります。実際は、教育歴や職歴、生活歴、視覚や聴覚障害の有無、精神疾患や服薬状況などの背景情報、脳画像検査なども認知症の診断材料となり、総合評価により診断が決まります。 


 なお、生活に大きな支障はないが記憶力などが低下し、正常とも認知症ともいえない状態を「軽度認知障害(MCI)」といいます。5年以内に認知症になる確率が高く、早めの対応で進行を遅らせられる可能性があるとされています。長谷川式認知症スケールはMCIの診断においては明確な基準がないとされており、ほかの検査方法を組み合わせて行われます。


長谷川式認知症スケールを使用する際の注意点は?

注意したいのが、認知症であっても高得点が出るケースがあることです。長谷川式認知症スケールは、記憶に関係した評価項目を中心に構成されているため、初期段階では記憶障害が現れにくいレビー小体型認知症や、前頭側頭型認知症に関してはあまり感度のよい検査結果が出ないといわれています。


また、家で行う場合は以下の点に注意して行うようにしてください。


・静かな環境で行う
・正しい評価のために事前練習をしたり内容を覚えるほど何回も実施したりしない
・耳の聞こえが良くない場合は大きな声でゆっくり質問する
・精神状態が良くないときは家で行わずに医療機関を受診する
・本人の自尊心を傷付けるなど負担が予想されたり、本人が拒否したりするときは無理に行わない


認知症かどうかは、1つの検査だけでわかるわけではありません。専門の機関で複数の検査を組み合わせて行うことにより総合的に判断されます。ご家族や身近な人が、同じことを何回も聞いたり料理の手順を間違えたりなど行動に変化が現れたときは、必ず医療機関を受診するようにしましょう。 


 認知症の相談や診察が可能な医療機関については以下の情報を参考にしてください。

認知症に関連する医療機関検索

認知症の相談・診察等が可能な医療機関の情報をご案内しています。

まとめ

認知症は、早期発見・早期治療が重要です。早めに治療や対策を講じておけば、症状の進行を遅くすることができるかもしれません。「最近もの忘れが多いかも」など、ちょっとした異変でも気になったら早急に医療機関を受診するようにしましょう。

医療機関での検査内容、そのほかの検査方法については、以下の記事で紹介しています。

【認知症の検査方法とは】検査の内容や流れ、病院を紹介


病院へ行くのは気が引ける、という場合は、まずはご自宅で長谷川式認知症スケールを使ったセルフチェックをしてみてもいいでしょう。しかし、あくまでもセルフチェックであり、結果の判断は難しいため、認知症が疑われる20点以下でなくても、本人や周囲の方が気になることがあれば医療機関で検査を受けることをおすすめします。



加齢による物忘れと認知症の違いは

物忘れに気づいたとき、「もしかして認知症かも…」と心配になったことはありませんか? もしくは「歳のせいだから」と気にしないようにしている方もいるかもしれません。 しかし、認知症による物忘れと、加齢による物忘れは別物です。

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