認知症の方が、できるだけ長い間その人らしい生活をしていけるように支援をすることが認知症の介護です。認知症の方の立場に立って適切な対応ができるよう、認知症の基本的な情報や、介護をしていく上での心がまえ、症状ごとの接し方などを紹介しますので参考にしてください。
目次
・認知症の介護には正しい理解が大切
・認知症の方と接するときの心がまえ
・具体的な症状と対処法
・介護疲れや負担を軽減するには
・まとめ
認知症の方が、できるだけ長い間その人らしい生活をしていけるように支援をすることが認知症の介護です。認知症の方の立場に立って適切な対応ができるよう、認知症の基本的な情報や、介護をしていく上での心がまえ、症状ごとの接し方などを紹介しますので参考にしてください。
目次
・認知症の介護には正しい理解が大切
・認知症の方と接するときの心がまえ
・具体的な症状と対処法
・介護疲れや負担を軽減するには
・まとめ
認知症とは、さまざまな原因で脳の細胞が死んだり働きが悪くなったりすることで、記憶や判断力の障害などが起き、社会生活や対人関係に支障が出ることがおよそ6カ月以上継続している状態を言います。
認知症にはさまざまな種類があります。脳の神経細胞がゆっくりと変性していくことが原因の認知症に、「アルツハイマー型認知症」や「レビー小体型認知症」、「前頭側頭型認知症」などがあります。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で起きる認知症には「血管性認知症」があります。
認知症の症状には、「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の二つの症状があります。脳細胞が壊れることによって直接起きる障害である中核症状には、もの忘れなどの記憶障害や時間や場所がわからなくなる見当識障害、理解力や判断力の障害、遂行機能障害などがあります。さらに、うつ状態や妄想といった行動・心理症状が環境や本人の性格等など個人差がありますが、周辺症状として起こります。これらの症状は、認知症が進行するほど強く現れ、仕事や家事、身の回りのことが徐々にできなくなっていきます。
認知症のケアは、本人がその人らしい生活や人生を全うできるように支えていくことです。そのため認知症を正しく理解して、自分だったらどう生きていきたいかを考えながら、認知症の方への支援を行うことが重要です。認知症の症状に最初に気が付くのは、ほとんどの場合本人です。多くの人は進行していく病状を認識しており、大きな不安を感じています。そのため認知症の方に接するときは、本人の心情に寄り添いながら「①驚かせない ②急がせない ③自尊心を傷つけない」の「3つのない」を心がけましょう。
また、適切な接し方が認知症の状態を安定させたり向上させたりすることにつながるので、以下のことを意識しましょう。
■まずは様子を見守る
■声をかけるときはなるべく一人で
■後ろから声をかけない
■相手に目線を合わせてやさしい口調ではっきりと話す
■相手の言葉にじっくり耳を傾け、余裕をもって対応する
なお、接する時間が長い家族などに対して、症状がより強く出る場合があります。医師の診察ではしっかりと受け答えをするので、日頃の症状を理解してもらえず、家族が落胆するケースも見られます。信頼しているからこそ甘えが出るのだろうと考えて、気持ちをおだやかに保つことが大切です。
ここからは、認知症の症状ごとの対応方法を紹介していきます。すべての方に当てはまる対処法ではありませんが、参考にしてみてください。
同じことを何回も聞かれるとうんざりして、つい対応が雑になることもあると思います。ですが、本人に悪気はありませんので、ていねいに対応することが大切です。いい加減に返答をすることで本人の自尊心を傷つけてしまうことがあります。また、予定を何度も聞かれるようだったら、カレンダーに書いた予定を一緒に確認するような方法もいいでしょう。何かひとつのことにこだわり続ける場合は、話題を変えたり、外出したりするなどして関心をそらすことも効果的です。
「お金や貴重品が盗まれた!」「あなたが盗んだんだろう」などと訴えることがあります。認知症の症状で良く見られるもので、「もの盗られ妄想」と呼ばれる状態です。身近で介護をしている人間を疑うケースが多く、疑われた側は憤りを感じてしまうでしょうが、怒ったり否定したりすることは逆効果です。まずは話を良く聞き、「それは大変ですね」と共感し、一緒に探して本人が見つけ出せるように誘導するといいでしょう。「おやつを食べましょう」など、気持ちを他のことへ向けさせる声掛けも効果的です。
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病気の進行に対する不安や憤りなどから、大声を上げたり怒りっぽく攻撃的になったりすることがあります。そのようなときは、否定したり、叱ったりすることは余計に感情を高ぶらせて逆効果になる可能性があります。見ている方も辛い気持ちになりますが、まずは落ち着かせることを最優先しましょう。また普段から安心して過ごせるように、本人の自尊心を思いやったケアや、気持ちに寄り添った対応を心がけるのも大切です。
トイレの失敗は、本人にとっても大変ショックです。そのため自尊心を傷つけないような心遣いが大切です。中には失敗した恥ずかしさから汚れた下着をタンスに隠しているようなケース、さらに隠したことも忘れてしまっているケースがあります。介護者としても対応が大変な場面ですが、汚れた下着やトイレの始末はそっと行うようにしましょう。
また、失敗を未然に防ぐための対策として、場所がわからなくならないように大きく「トイレ」と張り紙をしたり、定期的に「トイレに行きませんか?」と声掛けをしたりしましょう。夜間に失敗が多いケースでは暗いところを怖がっていることがあるため、トイレまでの経路は夜でも照明をつけるなどの工夫が効果的です。
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自分が今いる場所がわからなくなって不安感が募ったり、外出の目的を忘れたりして、行方不明になることがあります。迷子や転倒、交通事故などの心配があるので、日頃から連絡先と名前などを記したものを身に付けるなど対策をしておきましょう。また玄関にセンサーを付けたり、ご近所の方に見かけたら声掛けをするようお願いしたりするのもいいでしょう。
本人が開けられないカギを付けたり、靴を隠して外出ができないようにしたりすると、怒ったり、窓から出ようとしたりすることがあるのでいい方法ではありません。また認知症の方で外出傾向のある場合は、地域にある行方不明者を発見保護するネットワークなどを調べて、いざというときのために登録しておくといいでしょう。
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介護する側のストレスは介護される側にも良くありません。介護は一人で行わずに複数人で分散化して行うようにしましょう。さらに相談できる人や利用できるサービスを確認しておきましょう。
認知症の介護は非常に大変です。困ったときは相談できる人や場所があります。家族だけで抱え込まず、かかりつけ医やケアマネジャーなどの専門家の手を積極的に借りるようにしましょう。以下に相談できる人や場を紹介します。
■医師……病気や薬のこと
■看護師、介護サービススタッフ……症状の対応や生活面での工夫など
■ケアマネジャー、地域包括支援センター、医療ソーシャルワーカー……介護サービスや生活全般について
■家族の会……経験談や介護に対する気持ちなど
どこに相談したらいいかわからないことがあったら、まずは地域包括支援センターへ相談しましょう。相談内容に応じて適切なサービスや制度につなげる支援をしています。地域包括支援センターはすべての市町村にありますので、地元の自治体に問い合わせるといいでしょう。
また、「公益社団法人認知症の人と家族の会」では、電話による認知症に関する知識や介護の仕方などの相談を受けています。
介護保険の被保険者は、市区町村が実施する要介護認定において介護が必要と認定された場合、さまざまな介護サービスが利用できるようになります。65歳以上の第1号被保険者は、原因を問わずに要介護認定または要支援認定を受けたときに、介護サービスを受けられます。また、40 歳から 64 歳までの第2号被保険者は、加齢に伴う疾病(16の特定疾病)が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに、介護サービスを受けられます。特定疾病には、初老期における認知症も含まれます。
介護が必要と判定されると、要支援1~2、要介護1~5のいずれかに認定されます。要支援は、日々の生活で何らかの支援が必要なものの、身の回りの介護はまだ必要ない段階です。数字が大きくなるほど、支援や介護の度合いが大きくなっていきます。
介護保険で受けることができるサービスには、以下のようなものがあります。
■介護の相談、ケアプラン作成
■自宅で受けられるサービス
・訪問介護(身体介護・生活援助)・訪問入浴 ・訪問看護 ・訪問リハビリなど
■施設などに通って日帰り、もしくは短期間の宿泊で受けるサービス
・デイサービス(通所介護) ・デイケア(通所リハビリ) ・ショートステイ(短期入所生活介護)など
■施設などで生活(宿泊)しながら、長期間又は短期間受けられるサービス
・特別養護老人ホーム ・介護老人保健施設 ・介護療養型医療施設 ・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)など
■福祉用具の貸与や購入
通所介護の中でも、認知症の利用者を対象にした「認知症対応型通所介護」というものがあります。一般の通所介護では、認知症の方がスタッフや環境になじめなかったり、施設側が対応しきれなかったりすることがありますが、「認知症対応型通所介護」は、認知症の方へのケアを目的としているため、専門的なケアを受けることができます。食事や入浴、排せつなどの介護を日帰りで行い、また、昔のおもちゃなどで遊ぶ回想法や、昔の童謡などを利用した音楽療法なども行われます。
これらは認知症の方の社会的孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の負担軽減も目的として実施します。利用者の自宅から施設までの送迎もサービスに含まれます。また、施設に入所して生活する形としては、「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」があります。認知症の方だけのケア付き住宅で、1つの共同生活住居に5人~9人の少人数の利用者が、介護スタッフとともに共同生活を送る形です。少人数で馴染みのある人間関係の中で、心身の状態を穏やかに保てるのがメリットです。利用者は、以前に行っていた役割、たとえば食事の支度などの家事を、スタッフの手を借りながらできる範囲で担います。家庭的で安定した環境で、失われかけた能力を再び引き出し、潜在的な力をのばすように働きかけ、認知症の症状の改善や進行の防止を目指します。
近年、高齢化や介護業界の人手不足などさまざまな要因が重なり、在宅介護をする人たちが増加しています。それとともに、介護者自身の健康管理やケアにも注目が集まっています。そんなときは、介護をしながら自分自身のケアをする「レスパイトケア」をおすすめします。
認知症の対応について解説してきました。認知症の介護は、病気の進行とともに問題や悩みが変わっていきます。何より介護は頑張り過ぎないことが大切です。相談できる人や場所、助けてくれるサービスがたくさんあるので、悩みや不安などは抱え込まず、積極的に専門家に相談をしてサービスを利用していきましょう。
楽しく、あたまの元気度チェック(認知機能チェック)をしましょう
あたまの元気度チェックへ身長や体重・運動習慣等を入力するだけで、将来の認知機能低下リスクをスコア化できます。
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