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アルバムの写真を見ている高齢者とその家族
2024.03.18

認知症の非薬物療法「回想法」とは|効果や実施方法を事例とともに紹介

認知症は、適切な治療やケアにより進行を穏やかにすることが可能です。とくに、薬を使用しない非薬物療法は、手軽に実施でき、適切な配慮のもと実施すれば副作用もなく、本人に生き生きとした時間をもたらします。


本記事では、認知症の非薬物療法のひとつである「回想法」について解説します。回想法の具体的な方法や効果などについて、そして具体的な事例とともにご紹介。認知症の本人の介護をしている方々はぜひ参考にしてみてください。


目次
・回想法とは
・回想法による効果とは
・回想法の種類と具体的な方法
・回想法を行う際の準備について
・回想法の具体的事例紹介
・回想法を行う際の注意点やポイント
・まとめ

執筆者画像
監修者 扇澤 史子 先生
老年期の精神疾患や認知症の本人・家族を対象とした心理支援、心理アセスメントの他、精神科リエゾン・認知症ケアチームなどの多職種協働、地域に出向くアウトリーチ等に携わる。臨床心理士/公認心理師。博士(心理学)。現在、東京都健康長寿医療センター主任技術員。  分担執筆として『認知症と診断されたあなたへ』(医学書院,2006年)、『認知症はこう診る』(医学書院,2017年)等が、編著として『認知症の心理アセスメントはじめの一歩』(医学書院,2018年)がある。

回想法とは

回想法とは、高齢者を対象に,本人の人生や思い出を受容的に聞くことで、その人の情動の安定や保持されている機能の活性化を図る心理療法の一つです。具体的には、認知症の方に対して、昔の記憶を思い出すことを促し、他者と共有することで脳を活性化させる手法です。


アメリカの精神科医であるButlerによって提唱され、20世紀後半にアメリカやヨーロッパで実践が広まりました。過去の思い出や経験を語ることには、現在の問題や気持ちを整理したり、新しい意味を見つける効果もあることが知られています。認知症になり、記憶障害が生じても、子ども時代や若い頃の記憶は比較的保たれているため、本人も安心して参加できます。



回想法による効果とは

過去の記憶を思い出すことは、人々の身体や心にさまざまな影響を与えます。ここでは、回想法がもたらす効果について、詳しく紹介します。


自分の存在意義を再認識

回想法を実践する中で、認知症の本人が昔の楽しかった出来事や経験を思い出すことで、自分の人生や歩みを振り返ります。そして、聞き手(介護者や家族)に支持的・受容的に受け止めてもらうことで、人生における価値や役割を再確認することができます。


その結果、意欲や自発性が活性化したり、自尊心を回復することもあります。また、自分の価値や存在意義を再認識することができ、自信を取り戻すきっかけになります。


コミュニケーションの促進と人間関係構築

回想法を少人数のグループで行うことで、参加者同士の思い出が共有され、コミュニケーションが促進されることがあります。生き生きした会話の機会が増え、互いに共感することで人間関係が構築されていきます。


不安をやわらげ、気分の安定に

回想法で自身の思い出を支持的に受け止められることにより、孤独感や不安感をやわらげることができます。認知症になると言葉による表出がうまくできなくなり、コミュニケーションが難しくなることもあります。しかし、聞き手(介護者や家族)にさりげなく会話を補ってもらうことで、生き生きとした交流ができるようになり、不安軽減や意欲・自発性の向上、気分の安定がもたらされます。


脳の活性化

国立長寿医療センターの研究によると、回想法を行っている高齢者は、過去の話をすることで脳の血流が増えることがわかりました。加えて、脳が活性化することで、認知機能や記憶が改善されたという報告もあります。回想法は、過去の記憶を思い出し他人に話すことで、脳を活性化する認知症のリハビリ療法としての効果も注目されています。

出典:https://www.ncgg.go.jp/ncgg-kenkyu/documents/29/29xx-33.pdf



回想法の種類と具体的な方法

回想法は、介護の現場でも広く取り入れられており、自宅でも簡単に実践することができます。ここからは、回想法の具体的な手法やその効果、注意点について紹介します。


個人回想法

個人回想法は、語り手(本人)と聞き手(介護者や家族)で行われる方法です。1対1のセッションとなるため、本人が安心して自分の思い出を話すことができます。個人の思い出や体験談に深く向き合うことができ、個人に即した記憶に焦点を当てることができます。


具体的な方法(例)

1.写真や思い出の物品を提示する
語り手(本人)の過去の写真や家族の写真、昔よく聴いていた歌謡曲、過去に使っていたものや触れたことのある品物を用意し、本人に提示します。

2.質問をする
聞き手(介護者や家族)は、写真や物品にまつわるエピソードを質問することで、回想を促します。写真であれば、「いつ、どこで撮影したものか」「写真に写り込んでいる場所でどんな体験をしたのか」「そのとき、楽しかったことやうれしかったことは何か」など、写真から読み取れる情報を質問するとよいでしょう。物品について質問をする場合は、「いつ・どこで買った(手に入れた)ものか」「どんな用途で使用していたものか」「なぜ大切にしていたのか」など、物品との思い出を聞くとよいでしょう。
ほかにも、懐かしい音楽を一緒に口ずさんだり、何歳頃聴いていたのか、テレビやラジオでどんな番組で流れていたのかを尋ねるのもおすすめです。

3.エピソードの話を広げる
「この頃は、〇〇という出来事がありましたね」「〇〇のような道具が使われていたようですね」など、当時のことを聞き手(介護者や家族)から提示することで、過去の経験や記憶を思い出すきっかけとなります。また、語られた内容について、関連する話題やテーマを広げることで、思い出される記憶にまつわる生き生きとした感情が賦活されていきます。


グループ回想法

グループ回想法は、数人の語り手(本人)と数人の聞き手(介護者や家族)で行われる方法です。同じ時間・場所で、決まったプログラムで実施するとよいでしょう。

参加者同士のコミュニケーションを促進するため、孤立しがちな方にとっては他者との交流を取り戻すきっかけになります。複数の人との共有を通じて、回想がより深くなるため、参加者同士の関係性を深めることもできるでしょう。


具体的な方法(例)

1.写真や思い出の物品を提示する
それぞれの語り手(本人)の方々が、過去の写真や家族の写真、過去に使っていたものや触れたことのある物品を持ち寄り、参加者に提示します。または、聞き手(介護者や家族)が語り手(本人)の方々に馴染みのある写真や物品を用意するかたちでも良いでしょう。

2.写真や物品のエピソードを語り合う
持ち寄った写真や物品について、お互いの思い出や記憶を共有しましょう。語り手(本人)のうち、話したい人に、自身の懐かしい写真や物から想起された思い出について、話してもらいます。聞き手(介護者や家族)は、他の人にも話題を向けますが、自分は話さずに聞いているだけでよいという人もいるので、無理に話さなくてもよいという雰囲気を大切にします。

3.クイズを出す
回想法の始まりに、クイズを出すことで、グループの緊張が解けることがあります。例えば、巾着袋(思い出袋と命名してもよい)の中に、懐かしい道具を入れて、何が入っているかを当ててもらうなどの方法があります。ほかにも、用意した物品が「いつ世の中に登場したものか」「どんな用途で使われるものか」など複数のクイズを用意しておくこと、それをきっかけに話が盛り上がったり、話の内容が広がったりすることもあります。


回想法を実践する際は、感情や思い出を尊重し、心理的に安心する場を提供することが重要です。思い出の共有は、介護の中での貴重なコミュニケーションとなるため、ぜひ取り入れてみてください。



回想法を行う際の準備について

回想法を実施するにあたり、事前準備をしておくことで、その効果をより高めることができます。ここからは、具体的な準備方法や必要な道具について紹介します。


1.テーマを決める

話のテーマを事前に決めておくことで、スムーズに進行します。例えば、学生時代の思い出、家族や友人との旅行、初めての仕事など、具体的なテーマを提示することで、語り手(本人)が当時の生き生きとした出来事を思い出しやすくなります。時に話が様々に展開し,当初設定したテーマから逸れて思わぬ話が語られることもありますが,これも回想法の醍醐味の一つです。無理に元のテーマに戻すことにこだわらず、脱線した話題の内容を一緒に楽しみましょう。


2.語り手の人柄や性格を知っておく

語り手(本人)の性格や趣味、興味、嫌いなことなどを知ることで、話しやすい環境を作ることができます。特に、聞かれたくないことや精神的に苦痛となるエピソードは控えるようにしましょう。


3.思い出の品や情報を準備しておく

過去の写真や手紙、日記、昔使っていた道具やおもちゃ、当時流行っていた音楽など、思い出が想起しやすくなるようなものや情報を準備しておきます。実物があることで、過去の記憶を呼び起こすきっかけとなり、回想法の効果を高めることができます。


4. 当時の社会的な情勢や出来事について学んでおく

語り手(本人)が体験した時代の社会的情勢や出来事について学んでおきます。例えば、当時のニュースや流行、社会の動きなど、時代背景を知ることで、より円滑な会話が期待できます。



回想法の具体的事例紹介

ここからは、介護の現場で実践されている回想法の具体的な事例を紹介します。

(過去の実施事例となりますので、現在は実施されていない場合があります)


身近な場所に回想法コーナーをつくる

回想法コーナー

「SOMPOケア そんぽの家 松葉公園」では、施設の一角に昔の懐かしい物品を集めた「回想法コーナー」を設置。レコードプレイヤーやメンコ、コマ、だるま落としなど、さまざまな娯楽用品を展示し、実際に体験できるようにしています。音を聞いたり、手で触れて遊んだりすることで、過去に遊んでいた時の記憶を思い出すことができます。

また、炊飯器やアイロンなど電化製品を飾ることで、かつて自宅で家事をしていた時のことや家族と過ごした時間を思い出すきっかけになるでしょう。

クイズ形式での回想法コーナー

「SOMPOケア そんぽの家 中村公園」では、クイズ形式での回想法コーナーを設置。過去に入居者の方々の身近になった物を写真とクイズで紹介しています。実際、施設の利用者の方々が廊下を行き来する際に、これらの写真を見ながら、会話をしている様子が見られたそうです。


読書会を通じた回想法

読書をしながら回想法をしている様子

「SOMPOケア そんぽの家 伊丹荒牧」では、読書をしながら回想法を実施。昔の物事を紹介した本を用意し、利用者の方々と一緒に見ながら、過去の様子や経験を思い出すことができます。本の内容によって、さまざまな会話ができるため、手軽にできる方法としておすすめです。



回想法を行う際の注意点やポイント

回想法は手軽に行うことができる方法ですが、注意したいことがあります。注意点を事前に理解しておくことで、語り手(本人)が安心して参加できます。


プライバシーに配慮する

回想法では、語り手(本人)が自身の経験や体験談を話すため、語られた内容にはプライバシー情報が含まれることも少なくありません。回想法を始めるときに、ここで話したことを他の場所で話さないようにするなど、適宜ルールを話し合い、共有しておくとよいでしょう。意図せずに、参加者(語り手)が他の場面で話すこともあるかもしれませんので、回想法で取り上げる話題に配慮しておくなど、聞き手(家族や介護者)が柔軟にサポートすることが望まれます。


また、話の内容によっては、個人の精神的苦痛に触れるものもあるでしょう。無理にその人の歴史を掘り起こさず、自発的に語られたことを大切に受け止め、その人のために活かす姿勢が大切です。


否定せず、支持的に受け止める

回想法を行っているなかで、さまざまな話が出ますが、語り手(本人)の話を否定しないようにしましょう。過去の思い出話を否定されると、本人は自分自身まで否定されたように感じてしまうかもしれません。前向きな言葉で反応する、相槌を打ちながら話を聞くなど、語り手(本人)が安心して参加できるルールや雰囲気づくりが大切です。


会話をしやすい雰囲気をつくる

聞き手(介護者や家族)の方は、参加者が話をしやすい雰囲気をつくるようにしましょう。決まった時間帯に同じ場所で行い、話題にちなんだ装飾にする、会の開始と終わりには同じ音楽を流す、お茶やお菓子を用意し飲食をしながら行う、などさまざまな工夫ができます。リラックスができる環境をつくることで、安心して参加でき、生き生きとした交流につながるでしょう。



まとめ

回想法は、認知症の非薬物療法のひとつです。日常のコミュニケーションの中に回想法を取り入れることで、認知症があっても穏やかに過ごすことが可能となります。

過去の思い出が、聞き手(介護者や家族)に支持的・共感的に受け止められることで、自己肯定感の向上、コミュニケーション能力の改善、心の安定、そして意欲・自発性の向上などの効果も期待されます。本人が自身の価値を再確認するだけでなく、周囲の人がその人の新しい一面を知るきっかけにもなるでしょう。

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