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夫の介護をしている妻
2023.09.29

レスパイトケアとは? 受けられるサービスの種類や費用、注意点を紹介

近年、高齢化や介護業界の人手不足などさまざまな要因が重なり、在宅介護をする人たちが増加しています。それとともに、介護者自身の健康管理やケアにも注目が集まっています。そんなときは、介護をしながら自分自身のケアをする「レスパイトケア」をおすすめします。


本記事では、レスパイトケアの基本的な概要から、利用できるサービスの種類、費用、注意点などを解説。介護をする人はもちろん、介護を受ける人や家族にも良い効果をもたらすためのポイントを紹介します。

目次
・レスパイトケアとは?
・レスパイトケアによる効果や影響
・介護保険適用 レスパイトケアのサービス
・介護保険適用外のサービス
・レスパイトケアを利用する際のポイントや注意点
・レスパイトケアを利用する際の準備について
・まとめ

執筆者画像
SOMPOケア 教育研修部 岩瀬 美菜子 さん
2006年より介護職として高齢者介護施設にて勤務。その後社員教育の部署に異動し、主に認知症ケアやコミュニケーションなどの研修教育を担当。現在はSOMPOケア社内ユマニチュードインストラクターとしてユマニチュード研修を実施。認知症ケア上級専門士、認知症サポーターキャラバンメイトとして地域の認知症啓発にも力を入れている。また自身も家族介護をしており、介護家族の相互支援グループを運営。

レスパイトケアとは?

レスパイトケアとは、「レスパイト=小休憩・休息・息抜き」が示すように、介護をする側の人たちが一時的に介護状況から離れて休息を取ることです。在宅介護などに長期間関わっていると、肉体的・精神的な疲労を感じてしまうため、それらを和らげるに考えられたものです。具体的には、普段、自宅で介護を受けている方が、ショートステイやデイサービスなど一時的なサービスを利用し、介護者が休息をとることが一般的です。


レスパイトケアは、心身の健康を保ち、継続的な介護を行っていくうえで不可欠です。それぞれの家庭状況に応じたサービスを選ぶことで、介護をする方と受ける方の双方にとって、より良い状態を実現することができるのです。


レスパイトケアによる効果や影響

レスパイトケアは、介護者の負担軽減が大きな目的ですが、それだけではありません。ここからは、介護者と介護を受ける方の双方の視点で、効果や影響を紹介します。


介護者への効果

● 休息やリフレッシュ

長期間にわたって在宅介護をしていると、介護者は定期的な休みを取っていても、疲労が回復しないこともあるでしょう。レスパイトケアを利用することで、一時的に介護の状況から離れるため、より効果的な休息につながります。それによって、普段は行くことがない場所に出かけたり、他者との交流を持ったりすることで、気分もリフレッシュするでしょう。


● 自身の生活や介護状況を見直すきっかけに

在宅介護をしていると、時間に追われてせわしなく一日が過ぎていくこともあります。一時的に介護の状況から離れることで、休息の時間を取るとともに、落ち着いた状況で生活状況や介護状況を見直すことができるでしょう。


● 介護に対する視野が広がる

レスパイトケアの利用に伴い、他の介護者との交流や専門家からのアドバイスを得ることができます。すると、新しい視点や気付きを得ることができます。


● 介護の質向上と安定化

介護の状況から離れて休息を取ることで、介護者自身の身体を健康的に保つとともに、介護に対する視野も広がり、介護の質を高めることにもつながります。結果、質の高い介護を継続的に行うことができるでしょう。


介護を受ける方への効果

● 他者の介護を受けてリフレッシュに

介護者が休息を取る間は、別の方が変わって介護をすることになります。すると、介護を受ける方はいつもとは異なるコミュニケーションや対応を受けることができ、リフレッシュにもつながるでしょう。


● 専門的な介護サービスを受けることができる

介護者が休息期間中、介護を受ける人は一時的にショートステイなどで施設に入所することもあります。より専門的な介護を受けることができ、日頃の在宅介護で感じていた悩みや不安を相談する機会にもなるでしょう。


介護者・介護を受ける方への共通効果

在宅介護を行っていると、介護をすること・されることが習慣化されることがあります。レスパイトケアによって、お互いが顔を合わせない時間を設けることで、相手のことを考えるきっかけになります。すると、当たり前だった日常の会話や対応が特別なものに感じられ、お互いがより良い関係になっていくでしょう。


介護保険適用 レスパイトケアのサービス

レスパイトケアでは、介護保険が適用されるサービスを利用することがあり、代表的なものとして、レスパイト入院、訪問介護、デイサービス、ショートステイなどがあります。それぞれのサービスには特徴があり、個々の状況やニーズに応じて、選択することをおすすめします。


レスパイト入院

介護者が休息を取る際、代わりに介護をしてくれる人を見つけることが難しいことがあります。その際活用したいのが、レスパイト入院です。介護当事者が医療機関をはじめとした施設に入所して、医師や看護師の監督下で、安心して介護を受けることできるサービスです。食事や排せつ、入浴などの介助に加えて、その人に必要な医療管理が行われます。介護者の休息目的以外にも、家族の急な病気やケガ、冠婚葬祭など一時的に在宅介護が難しいときに利用されています。


対象者

介護当事者が介護保険によるショートステイの利用が困難で、在宅療養しており、医療的な管理や介助を必要としている方が対象になります。


利用期間・時間

通常は数日から2週間程度での利用が一般的です。


費用

(公的な機関が発表している情報に基づく)

一泊あたりの費用は約5,000円〜10,000円前後です。その他にも、食事代などが別途かかる場合があります。

※費用は介護保険の認定状況や利用者の年齢、施設によって異なる場合がありますので、事前に確認が必要です。


訪問介護

訪問介護は、利用者の自宅にホームヘルパーが訪問し、食事や入浴、掃除、着替えなどの身体介護・生活援助を行うサービスです。自宅でのケアを希望する方々にとって、負担を軽減し、家庭環境に合わせたサポートが提供されます。


対象者

要介護認定を受けており、自宅で生活している方が対象になります。なお、利用者が要支援1と要支援2のいずれかの認定を受けている場合は、「介護予防訪問介護」という形式になり、利用回数が制限されます。(要支援1の方は週2回まで、要支援2の方は週3回まで)


利用期間・時間

要介護者と家族の都合に合わせ、柔軟に調整可能。


費用

(公的な機関が発表している情報に基づく)

1時間あたりの費用は約3,000円~4,500円程度。

※費用は介護保険の認定状況や提供するサービス内容によって異なる場合があるため、詳細は各事業者に確認が必要です。

訪問介護についての詳細は、以下の記事で紹介しています。

訪問介護とは/サービス内容や料金、利用に向いている人とは


デイサービス(通所介護)

デイサービスは、通所介護とも呼ばれ、日帰りで介護施設への通所が中心のサービスです。送迎から食事、入浴、リハビリ、リラクゼーション、各種活動プログラムの提供など多岐にわたるケアが提供されます。それぞれの利用者の健康状態や好みに合わせたサービスを受けることができ、他の利用者との交流によって、心の健康も促進します。家族が仕事などで不在の間も安心して利用できるでしょう。


対象者

以下の3つの条件に当てはまる人が対象になります。

・要介護認定を受けている人

・医療行為が必要ない人

・施設の送迎範囲内に住んでいる人


利用期間・時間

平日の日中、週に数回程度の利用が一般的


費用

(公的な機関が発表している情報に基づく)

 基本的な料金に加えて、食費・消耗品費・サービス費用などを合わせて、1日あたり約1,500~2,000円程度がデイサービスを利用する際の目安となる費用です。

※費用は要介護認定の認定状況や施設、サービス内容によって異なる場合があるため、詳細は各事業者に確認が必要です。


デイサービスについての詳細は、以下の記事で紹介しています。

デイサービスの費用や種類、利用条件は?デイケアとの違いも解説


ショートステイ

ショートステイは、短期入所生活介護の一形態で1泊から30日間の施設入所ができ、食事、入浴、医療サポート、レクリエーション活動などさまざまなサービスを提供しています。家族の負担軽減や緊急時の対応、あるいは家族介護者の休息を目的として利用されます。利用者にとっては、短い期間ながら、新たな交流や活動を通じての刺激を得ることができます。


対象者

要支援や要介護認定を受けている方が対象になります。要支援1~2または要介護1~5のうち、いずれかの認定を受けていれば要支援、要介護の度合いは問われません。介護保険適用のショートステイを利用するには、ケアマネジャーが作成するケアプランが必要です。


利用期間・時間

1泊から最大30日間


費用

一泊あたりの費用は約5,000円~10,000円程度。

※費用は介護保険の認定状況や地域、施設の設備などにより異なるため、詳細は各事業者に確認が必要です。


ショートステイについての詳細は、以下の記事で紹介しています。

ショートステイとは?利用条件や費用、上手な使い方をご紹介


介護保険適用外のサービス

レスパイトケアには、介護保険適用外で利用できるサービスもあります。例えば、地域の公的機関、介護施設、専門家やボランティアなどにより運営されている認知症カフェは、気軽に利用できるものです。

認知症の人やその家族、地域の人や専門家などの方々が集まり、情報交換や相互支援を行っており、介護者はもちろん、介護を受けている当事者も参加することができます。個々の悩みや疑問解決とともに、交流やリフレッシュの場としても活用されています。


認知症カフェについての詳細は、以下の記事で紹介しています。

認知症カフェとは?概要や行われていること、参考事例などを紹介


レスパイトケアを利用する際のポイントや注意点

レスパイトケアは、突発的に利用してしまうと、介護を受ける人や周囲の家族にマイナスな影響を与えてしまうことがあります。ポイントや注意点を理解して行うことで、介護に関わる人たちが安心して生活でき、その効果も高められるでしょう。


家族全員が休息の大切さを理解する

在宅介護の現場では、家族が介護における休息の必要性を理解しておくことが大切です。介護者は休息をとることで後ろめたさを感じることがあるため、必要に応じて周囲が促してあげましょう。介護に関わるみなさんが「レスパイトケアが前向きな選択である」という認識を持つことが重要です。


そのほかにも、休息の計画や予定などの詳細をみなさんが把握することもポイントです。いつからいつまで、休息をとるのか。休息にあたって、どこでどのようなサービスを利用するのか。具体的な計画を共有することで、関係する人たちの不安もなくなります。


定期的に、正直に、コミュニケーションを図る

在宅介護の状況について家族間で話をする場合、それぞれの状況や感情が交錯し誤解が生まれることがあります。レスパイトケアを始める前には、その目的や方法などをみなさんが理解することが重要です。その際、お互いの感情を素直に話し合うことで、理解が深まるでしょう。また、一度の会話で終えるのではなく、定期的に時間をかけて、進捗や気持ちの変化などを共有していくことで、介護に携わる全員が協力し合い、支え合う環境が出来上がっていきます。


身体や気持ちの変化に注意する

レスパイトケアを利用する際、介護者と介護を受けている当事者は普段とは違う環境やリズムで生活をすることになり、予想外の変化が起こることもあります。家族や関係者を含めてお互いの変化に目を向けることも大切です。介護者も介護を受けている当事者も日常とは違った環境で過ごすことになるため、身体や気持ちにさまざまな変化が表れやすくなります。慣れない状況を経験することで、かえってストレスを感じてしまうこともあるため、注意が必要です。また、介護者は休息を取っていながらも、介護をしていない状況に不安や罪悪感を感じることもあるため、必要に応じて家族や周囲から声かけると良いでしょう。


レスパイトケアを利用する際の準備について

レスパイトケアの各サービスを利用する際、早めにスケジュールを確認し、必要に応じて施設などに予約をすることが大切です。利用したいサービスの予約や手続きについて、事前に調査・計画を行い、予約のタイミングや手続きに注意して余裕を持って準備をしましょう。


● 情報収集
するサービス提供施設はどこにあるのか。その施設でサービスを利用した場合の内容、料金などを調査します。必要に応じて、事前に施設見学することをおすすめします。

● サービスの選定
介護を受ける当事者の要望に加えて、家族の状況に合ったサービスを選ぶことをおすすめします。

● 必要書類の準備
予約に必要な書類や情報を準備しておくことで、効率よく手続きを進めることができます。

● キャンセルポリシーの確認
万が一のキャンセルに備えて、キャンセルポリシーを事前に確認しましょう。

予約
利用したい日程を計画し、余裕を持った予約を心掛けましょう。特に人気のあるサービスなどは、予約が埋まってしまうこともあるため、早めの予約が重要です。なお、予約内容の確認メールや書類があれば、保存しておくと安心です。

まとめ

レスパイトケアは単なる”介護の一時的な代替”ではなく、介護者自身の心身の健康だけでなく介護を受ける人々にとっても新しい体験や視点を提供します。適切な利用により、介護の質の向上とともに家族全体の生活の質の向上が期待できるのです。


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