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被害妄想の家族を介護する女性
2023.11.16

被害妄想が激しい原因は?家族ができる対処法から病院受診についても解説

「高齢の両親の被害妄想が目立つようになってきたけど、対処法がわからない」「被害妄想が激しい場合は、病院を受診した方がいいの?」といったお悩みをかかえていないでしょうか。


家族の方は対処法がわからないと、不安になりますよね。この記事では下記の内容を解説しています。


● 被害妄想について(原因や種類)

● 被害妄想のある方との接し方

● 家族の方の負担を軽減させる方法

● 困ったときの相談窓口、病院受診についての紹介


本記事では、被害妄想の原因や、接し方をはじめとする具体的な対処法について解説しています。家族や周囲の方の負担を軽減する方法についても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

目次
・被害妄想とは
・被害妄想が出現する原因
・被害妄想以外の妄想の種類
・被害妄想は悪化するのか
・被害妄想のある方と接するときの4つのポイント
・家族の方の負担を軽減させる方法
・被害妄想について困ったときの相談窓口
・被害妄想がある場合の病院受診について
・被害妄想が強いと入院を要するケースも
・被害妄想がみられる方には不安を与えない接し方を心がける

執筆者画像
東京都健康長寿医療センター 岩田淳 医師
東京大学医学部附属病院神経内科の専門外来「メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD)やレビー小体病、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診断、治療に当たっていた。特に超早期段階でのAD、レビー小体病の診断、新薬の開発が専門。2020年4月より東京都健康長寿医療センターの脳神経内科部長として赴任。

被害妄想とは

被害妄想とは、事実ではないのにもかかわらず、自分が被害にあっていると信じ込んでしまう妄想のことです。また被害妄想がみられる方は、被害を受けていない証拠があったとしても、自分の考えを変えようとしないことも多くあります。


たとえば、被害妄想には以下のような種類があります。

被害妄想によって不安や恐怖などの感情を強く抱き、社会生活に支障をきたす方もいるでしょう。


被害妄想が出現する原因

被害妄想が出現する原因には、社会における孤立や不安といった心理的要因や、統合失調症や認知症などの疾患による影響も挙げられます。ここでは、被害妄想を起こしうる疾患である「統合失調症」と「認知症」について解説します。症状や特徴について心当たりがある場合は、病院受診を検討してみてもいいかもしれません。


統合失調症

被害妄想が出現する原因のひとつに「統合失調症」と呼ばれる精神疾患が挙げられます。統合失調症になると、脳のさまざまな働きをまとめることが難しくなります。そのため「幻覚」や「妄想」などの症状があらわれるのです。


被害妄想に対して周囲が誤っていることを指摘しても、本人は実際に被害にあっていると思い込んでいます。そのため、被害妄想の原因が病気であると気づくことは難しいでしょう。被害妄想以外にも、認知機能の障害や意欲の低下がみられる場合は、統合失調症かもしれません。高齢者が発症するケースは珍しいですが、統合失調症の治療は早く始めるほど回復も早いと言われています。周囲の方が異変に気づいた場合は早めに専門機関に相談してみてください。


認知症

認知症になると脳の細胞が正常に機能しなくなり、理解能力や精神活動にも影響がみられるため、症状のひとつとして被害妄想が出現する場合があります。


いくつかある認知症の種類のなかでも、「レビー小体型認知症」では幻視(実際には存在しないものが見える)がみられる場合があります。この幻視が原因で被害妄想が出現している可能性もあるでしょう。被害妄想に加えて、物忘れをはじめとする認知症の症状もみられる場合は、早めに専門機関に相談することをおすすめします。


認知症に関して詳しく知りたい方は、こちらの記事(認知症について知ろう)をご覧ください。


被害妄想以外の妄想の種類

被害妄想以外にも「妄想」にはさまざまな種類があり、原因となる病気によってみられる症状は異なります。ちなみに、妄想とは「ほかの人にとってはあり得ないと思えることを確信してしまう」ことです。被害妄想以外の妄想には、以下のような種類があります。

● 貧困妄想

● 誇大妄想

● 被影響妄想

それぞれについて「どのような妄想なのか」や「どのような病気の方でみられやすいのか」を解説します。


貧困妄想

貧困妄想とは、経済的に問題がないにもかかわらず、自分はお金を持っていないと思い込んでしまう妄想です。貧困妄想はうつ病の方に多くみられます。高齢者の場合は、認知症が原因でうつ病になっている場合もあります。貧困妄想や被害妄想がみられる場合は、早めに専門機関に相談してみてください。


誇大妄想

誇大妄想とは、実際の自分の価値や能力を過大評価する妄想です。具体的には以下のような内容の妄想が考えられます。

● 自分は高貴な家柄の生まれだ

● 自分は特別な才能を持っている

● 自分は世界を救える

妄想を否定する証拠があっても、自分の考えを変えようとしないため、社会生活に支障をきたす可能性もあるでしょう。

誇大妄想は、統合失調症や躁状態(気分が病的に高揚している状態)の方にみられやすい妄想です。


被影響妄想

被影響妄想とは「自分の思考や行動が他人によってコントロールされている」と信じ込む妄想です。具体的には以下のような内容の妄想が考えられます。

● 自分の考えは他人に植え付けられている

● 自分の行動は他人によって操られている

● 自分の感情は他人によって変えられている

被影響妄想によって、不安や恐怖などの感情を強く抱き、社会生活に支障をきたす可能性もあるでしょう。被影響妄想は、統合失調症の方でみられやすい妄想です。


被害妄想は悪化するのか

被害妄想は、家庭や職場などでのストレスや、適切な治療の中断などによって悪化する可能性があります。被害妄想を悪化させる具体的な要因には、以下のようなものがあります。

● 否定される

● 孤独を感じる

● プライドを傷つけられる

● 薬物療法やリハビリテーションを中断する

被害妄想が悪化すると、入院しなければいけなくなる可能性も出てくるでしょう。そのため、悪化させないための接し方や周囲の理解、適切な治療を継続するための支援が大切です。


被害妄想のある方と接するときの4つのポイント

被害妄想がある方と接するときは、以下の4つのポイントをおさえておくといいでしょう。

・否定しない

・本人の気持ちを理解する

・相手を責めない

・適切な距離感を保つ

それぞれについて解説します。


否定しない

被害妄想がある方は、嘘をついているわけではなく、自分が感じていることが現実に起きていると信じ込んでいます。信じていることを、頭ごなしに人に否定されたらどのように感じるでしょうか?被害妄想の内容を否定したり肯定したりするのではなく、共感するようにするといいでしょう。

具体的には以下のような相槌を打ち、共感しながら話を聞いてみてください。

● それは困りましたね

● 大変だったね

● 気になりますよね

また、言葉づかいや態度にも注意するといいでしょう。被害妄想がみられる方を見下したり、よそよそしい態度をとったりせずに、その人との関係性に合った言葉づかいや態度で接するように心がけてみてください。


本人の気持ちを理解する

被害妄想の方は「嘘をついているのではなく、信じ込んでいるんだ」ということを理解してあげましょう。自分の話を相手が理解してくれなかったら、悲しい気持ちになったり、孤独を感じたりすることもありますよね。


話を聞いている方が、話の内容について理解してくれている様子がなければ、被害妄想がある方は話をしてくれなくなるでしょう。ただし、「その気持ちわかるよ」と言いながら肩を叩いたり、体に触れたりするような行動は避けたほうがよい場合があります。気持ちを理解していても、あなたの言動が相手のプライドを傷つけてしまう可能性があるためです。


相手を責めない

被害妄想が原因で、家族や周りの方に対して酷い言葉を言ったり、犯人扱いをしたりする場面があるかもしれません。このような場合に、相手を責めるような接し方をすると、話がよい方向に進まなくなってしまうでしょう。


相手を責めたり否定したりするのではなく、相手の主張を明確化し、「穏やか」「丁寧」に接するといいでしょう。また話の話題を、テレビのニュースのような現実的な話題に変える方法もあります。そうすることで、相手の感情の高ぶりが落ち着いてくるでしょう。話を聞いている方は、酷いことを言われたとしても、病気が原因であると理解し、落ち着いて接するように心がけてみてください。


適切な距離感を保つ

被害妄想がある方と同居していたり、接する時間が長かったりする場合は、適切な距離感を保つことが大切です。1回や2回であれば我慢できることでも、頻度が多ければ「病気であること」を理解していても冷静な対応が難しくなるかもしれません。認知症がみられたり、高齢者であったりすれば、介護が必要な場面もあるでしょう。普段の介護疲れやストレスが重なると、寄り添った対応が難しくなることも考えられます。適切な距離感を保つためには、デイケアやショートステイなどを活用するといいでしょう。


ショートステイのサービス内容や利用の流れなどについては、こちら(ショートステイとは?利用条件や費用、上手な使い方をご紹介)の記事をご覧ください。


家族の方の負担を軽減させる方法

家族の方の身体的・精神的な負担を軽減するためには、介護保険サービスや精神科デイケアを利用する方法もあります。自分の家族を一時的にでも施設へ預けることに対して抵抗がある方もいるかもしれませんが、家族の方の休息時間も大切です。


家族の負担を減らすことで、一緒に居る時間を楽しく過ごせるでしょう。被害妄想がある方にとっても、家族といることが安心や休息につながることも多いはずです。介護保険サービス、精神科デイケアの利用方法は以下のとおりです。

介護保険差-ビス、精神科デイケアの詳細図

精神科デイケアは、主治医の同意がなければいけないため、まずはかかりつけ医に相談してみてください。介護保険サービスについて詳しく知りたい方は、こちら(認知症の介護サービスとは?介護サービスの種類や対象者、費用について詳しく解説)の記事をご覧ください。


被害妄想について困ったときの相談窓口

被害妄想について「どのように対応をしたらいいのか」「病院に行ったほうがいいのか」などと困った場合は、お住まいの地域にある「保健所」や「精神保健福祉センター」で相談できます。相談窓口は、厚生労働省のホームページから検索可能です。

対象者が65歳以上の場合は、お住まいの地域にある「地域包括支援センター」も活用できます。

全国で豊富な介護サービスを提供している「SOMPOケア」でも電話相談を受け付けているので、相談したい方はこちら(認知症サポートダイヤルのご案内)のページをご覧ください。


被害妄想がある場合の病院受診について

被害妄想がみられる場合は、考えられる原因によって受診する科が異なります。高齢者で認知症が疑われる場合は「もの忘れ外来」や「認知症外来」を受診してみてください。高齢者ではなく、認知症の可能性が低い場合は精神疾患が原因である可能性も考えられるので「精神科」や「心療内科」を受診してみましょう。


被害妄想が強いと入院を要するケースも

被害妄想が強い場合は、外来通院ではなく入院治療が必要になる場合もあります。

以下のような症状がある場合は、受診時に医師に相談してみてください。


● 自傷行為がある

● 食事を摂れずに体重が減少している

● 被害妄想が強くて生活に支障が出ている

● 被害妄想が強くて介護ができない


日常生活や社会生活に支障が出ている場合は、本人のためにも入院治療を考えたほうがいいかもしれません。


被害妄想がみられる方には不安を与えない接し方を心がける

被害妄想がみられる場合は、周囲の方々の接し方も大切です。被害妄想がある方は、自分が感じていることを現実のものであると信じ込んでいるので、それを否定されれば「不安」や「孤立感」などを感じるかもしれません。


家族や周囲の方がネガティブな感情で接すると、被害妄想を悪化させる可能性もあります。そのため、邪険に扱ったり子ども扱いしたりせずに、話に共感する、現実的な話題に変えるといった工夫が大切です。家族の方の負担が大きくなる場合は、介護保険サービスや精神科デイケアの利用を検討してみてください。

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