年齢を重ねると、誰にでももの忘れは起こりますが、認知症によるもの忘れは加齢によるもの忘れとは異なります。認知症によるもの忘れでは、家族や友人など身近な人を忘れることもあります。この記事では、認知症の方がどのような順番で記憶をなくしていくのか、また、加齢によるもの忘れとの違い、認知症の方への対応方法、接する際の心がまえなどについて説明します。
年齢を重ねると、誰にでももの忘れは起こりますが、認知症によるもの忘れは加齢によるもの忘れとは異なります。認知症によるもの忘れでは、家族や友人など身近な人を忘れることもあります。この記事では、認知症の方がどのような順番で記憶をなくしていくのか、また、加齢によるもの忘れとの違い、認知症の方への対応方法、接する際の心がまえなどについて説明します。
もの忘れから認知症に気づくケースは多いものですが、認知症の症状はそれだけではないため、注意が必要です。認知症によるもの忘れと加齢によるもの忘れとの違いや、認知症のもの忘れはなぜ起こるのかについて見ていきましょう。
認知症が見つかるきっかけとなる代表的な症状にはもの忘れがあります。しかし、実はもの忘れ以外にもさまざまな初期症状が見られます。
もの忘れはもっともよく知られている認知症の症状で、アルツハイマー型認知症に多く、「友だちとの約束を忘れる」「昼食を食べたことを覚えていない」などの症状が出ます。
「今日の日付がわからない」「自分がいる場所がわからない」など、時間や場所がわからなくなる「見当識障害」が現れます。
記憶障害などが起こることによって、ものごとを理解したり、判断する力も低下します。そのため、話しかけられても内容が理解できなかったり、お米の炊き方など料理の手順がわからなくなることなどが発生します。
理解力や判断力が低下することで、今まで自然に行っていたことが次第にできなくなります。「洗濯物をしまうのに時間がかかる」「はさみが使えなくなる」など、日常生活に支障が出ます。
もの忘れが増えたり、今までできていたことができなくなったりすることで、不安を感じることが多くなります。また、前頭葉の機能が低下すると、欲求や感情を抑えることが難しくなって興奮したり、ちょっとしたことでイライラしたり、怒りやすくなります。
高齢になると、脳の記憶を呼び出す機能が低下し、もの忘れが増えます。「カギはどこに入れたっけ?」「キッチンの電灯をつけっぱなしにしてしまった」などということは、誰にでもあるものです。忘れたという自覚があり、ヒントがあれば思い出すことができるこうしたもの忘れは、加齢に伴う自然な老化現象で、認知症のもの忘れとは違います。
認知症では、記憶する機能そのものが低下するので、「カギを入れたこと」「キッチンの電灯をつけっぱなしにしたこと」自体を覚えていません。そのため、ヒントがあっても思い出すことができないのです。そのことで日常生活に支障が生じたり、もの忘れを自覚していない場合には、認知症の疑いがあります。
認知症の症状には、脳の神経細胞が壊されることで直接起こる「中核症状」と、脳の障害によって二次的に起きる精神症状や行動の異常である「行動・心理症状(BPSD)」があります。新しいことを覚えられなくなり起きたことを忘れてしまう記憶障害や、時間や場所、人がわからなくなる見当識障害、理解力や判断力の低下などは中核症状で、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など、ほとんどの認知症で見られます。
一方、行動・心理症状(BPSD)には、妄想や抑うつ、不安感などの精神症状と、行方不明や興奮、暴力などの行動の異常があります。本人の性格や環境、人間関係などが複雑に関係して起きるため、症状は人によって異なるうえ、その場の状況や接する人によっても違ってきます。
認知症の症状には、脳の機能が落ちることで必ずみられる中核症状と、それに伴って二次的に出現する様々な症状、BPSD(行動・心理症状)があります。周囲にとっては「なぜそんなことをするの?」と思ってしまう行動も出てきますが、どれも本人にとっては理由があるのです。この記事では具体的な症状を解説します。
認知症の症状のうち、もの忘れを起こすのは「記憶障害」や「見当識障害」といった代表的な中核症状です。どのような記憶がどんな順番で失われるのか、確認してみましょう。
記憶障害では、自分の過去の体験やできごとを思い出せなかったり、新しい知識やできごとを覚えることができなくなったりします。
「記憶」は、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚という五感から得た情報を覚える「記銘」、覚えた記憶を維持する「保持」、必要に応じて思い出す「検索(想起・再生)」という3つの段階で構成されています。記憶している時間や情報の種類によって、短期記憶や長期記憶、エピソード記憶や意味記憶、手続き記憶などに分類されます。
ついさっき話したことなど、直近の記憶です。新しい記憶を保管する脳の海馬の機能が低下することによって障害が出ます。
自分の学歴、家族の名前など、数カ月単位の近い過去も含めた過去の記憶です。
家族旅行でハワイに行った、サッカーの試合を見に行ったなど、自分が過去に体験したできごとの記憶です。
動物・植物の名前や言葉の意味など、勉強したり、本から得たりした知識の記憶です。
自転車に乗る、パソコンのキーボードをブラインドタッチするなど、練習や学習により一度身につけた記憶で、体が覚えていて一般的に忘れづらい記憶のことです。
一般的に認知症の症状の進行につれて、記憶障害も進行していきます。多くは短期記憶の低下から始まって、やがて長期記憶、エピソード記憶へ広がるようになりますが、意味記憶や手続き記憶はどちらかというと失われにくい傾向があります。
時間や季節、場所や空間、人などを正しく認識する力が「見当識」です。見当識障害が起こると、今日の日付がわからない、自分が今どこにいるかわからない、誰と話をしているのかわからないなどの症状が出ます。
最初に現れることが多いのは、時間や季節がわからなくなるという症状です。今日が何月何日か、何曜日か、朝なのか夜なのかなどが認識できないため、昼夜が逆転したり、通院予約をすっぽかしてしまったり、季節に合わせた服装ができなくなったりします。その次に現れやすいのは場所がわからなくなる症状です。普段通院している病院の場所がわからなくなって迷子になったり、外出しても帰り道がわからなくなって帰宅できなくなったりします。家の中でもトイレの場所がわからずに間に合わないといった場面が増えてきます。
さらに症状が進むと、人の認識ができなくなることが多くなります。一緒に暮らしている家族や普段から付き合いのある友人などの顔がわからなくなり、息子を夫と思ったり、「知らない」と言ったりすることもあります。
時間や場所、人の判断がつかなくなっていく見当識障害は、認知症の中核症状のひとつです。当識障害とはどのような症状なのか、また症状に対してどのように適切に対応するといいのかを解説しています。
親やパートナーに対して、「もしかしたら認知症かも?」と思っても、どうしたらいいのかわからなかったり、これから先について不安に思う人は多いでしょう。そんなとき、どのように対応したらいいのでしょうか。
まずは、本当に認知症かどうかを確認することが必要です。かかりつけ医や地域包括支援センターに相談し、疑わしい場合は専門医を紹介してもらいましょう。同じ認知症といっても、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症などの種類があり、適切な治療によって治る認知症もあるため、きちんと診断してもらうことが大切です。
認知症に対する正しい知識を身につけることも欠かせません。認知症の種類によって症状や進行の仕方も異なるので、よく知って対応に活かしましょう。認知症の方の言動の裏にある理由を知ることで、介護する側も対応しやすくなって不安が軽減されることもあります。
1. 怒ったり、責めたりしない
トイレがわからなくなって間に合わなかったときなどに、「どうしてそんなことをするの!?」と言っても、本人はなぜ怒られているかがわからないので、余計に混乱してしまいます。
2. プライドを傷つけない
間違えたり、できなかったりしたことに対して、「違うでしょ」「そうじゃないって言ったよね」などと言うと、「受け入れられない」と感じて、かえって固執するなど、逆効果になることもあります。
3. 本人のペースに合わせる
介護する方にとっては、時間がかかってイライラすることもあるかもしれませんが、せかしたり、無理にやらせたりすると、認知症の方は指示や状況を理解することができずパニックになってしまいます。
認知症になったら何もわからないわけではありません。ひとりの人間として尊重し、認知症の方の行動は、その行動をとる本人なりの理由があることを理解して対応することで、コミュニケーションがうまくとれ、ケアがスムーズにできるようになります。
「公益社団法人 認知症の人と家族の会」のホームページには、初めて認知症の人に接する際の心がまえとして、以下のような「認知症の人のために家族ができる10カ条」が掲載されています。ぜひ参考にしてください。
(公式ホームページはこちら)
1. 見逃すな「あれ、何かおかしい?」は大事なサイン
2. 早めに受診を。治る認知症もある
3. 知は力。認知症の正しい知識を身につけよう
4. 介護保険など、サービスを積極的に利用しよう
5. サービスの質を見分ける目を持とう
6. 経験者は智恵の宝庫。いつでも気軽に相談を
7. 今できることを知り、それを大切に
8. 恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう
9. 自分も大切に、介護以外の時間を持とう
10. 往年のその人らしい日々を
少し前に話したことを何度も話したり、通院の日を忘れてしまったりすることが続くと、介護している方はストレスを感じることがあるかもしれません。もの忘れへの対応方法をケース別にご紹介します。
「朝ご飯、食べたっけ?」などと何度も聞かれたり、ついさっき話した内容をまたすぐに繰り返したりすることが重なると、「さっきも言ったでしょ」「もう何回も聞いたよ」などと言いたくなってしまいます。でも、認知症の方にとっては「常に初めて」なのです。
回数を決めてその回数までは話を聞き、それ以上は多少聞き流しながらあいづちを打ったり、トイレに行くなどして席を外したり、本人が興味のありそうな違う話題に変えたりするといいでしょう。ヘルパーに訪問してもらったり、本人の友だちに来てもらったりして、話し相手を増やすのも一つの方法です。
毎日のように「メガネがない」と探したり、家のカギをバッグに入れたままにして忘れてしまったりといったことは、認知症の方ではよく起こります。この場合も、「どこに置いたの?」「どうしてちゃんとしないの」と言っても、本人は忘れているので意味がありません。
まずは一緒に探してみましょう。見つかったら、自分が隠したと誤認させないよう、できるだけさりげなく渡してください。探しても見つからない場合は、「テレビでも見てから、また探してみよう」など気分転換を図ってみて、それでも探しているようなら、時間を見計らってまた声をかけてみましょう。
見当識に障害が出ると、アナログの時計がわからなくなることがあります。その場合は、デジタル時計にすると、時間がわかりやすくなるのでおすすめです。今日が何日か、何曜日かなどもわからない場合は、日にちと曜日のみが大きな文字で書かれているカレンダーを使いましょう。ホワイトボードに1週間の予定を書き入れておくのもわかりやすく、本人が安心できます。
自分の部屋やリビング、トイレの場所がわからない場合には、それぞれのドアに「○○の部屋」「リビング」「トイレ」などと書いた紙を貼り、ひと目でわかりやすいようにします。特にトイレは、ほかの場所で用を足してしまうと、介護する方の負担が増えますので、あらかじめ対策することが重要です。トイレまでの経路にも「トイレはこの先⇒」「トイレはここを右」などと貼り紙をするといいでしょう。
認知症の方が、できるだけ長い間その人らしい生活をしていけるように支援をすることが認知症の介護です。認知症の方の立場に立って適切な対応ができるよう、認知症の基本的な情報や、介護をしていく上での心がまえ、症状ごとの接し方などを紹介します。
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の場合、早期に発見できれば薬物治療によって症状の進行を抑えることが期待できます。生活習慣の見直しや認知機能のトレーニングも早く始めるぶん効果が見込め、その結果、自立して過ごせる時間が長くなります。介護する側にとっても、時間的な余裕を持ってケアの態勢を整えたり、心がまえをすることができますし、本人の意思も確認ができるため、本人の意思を尊重した介護プランを考えることも可能になります。
また、「認知症かも?」と思っても、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など、他の病気だったということもあり、治療を受ければ完治できるケースも見られます。服用中の薬の影響による一時的な症状であることも考えられないことではありません。早期発見するためには、「何かおかしいな」と感じたら、かかりつけ医に相談したり、専門医をすぐに受診することが大切です。
「公益社団法人 認知症の人と家族の会」が会員の経験を集めてまとめたチェックシート「家族がつくった認知症早期発見のめやす」を活用するのも有効です。医学的な診断基準ではありませんが、いくつか当てはまるものがあった場合は、受診を考えるといいでしょう。
(公益社団法人 認知症の人と家族の会 「家族がつくった「認知症」早期発見のめやす」はこちら)
認知症の診断には、長谷川式認知症スケール(HDS-R)やMMSE(ミニメンタルステート検査)などの認知機能テストが主に使われています。この記事では長谷川式認知症スケールについて、設問内容や採点方法、評価ポイントなどを解説します。
認知症によるもの忘れは、脳の細胞の機能が障害される、あるいは細胞そのものが壊れることで起こる認知症の中核症状の一つです。加齢によるもの忘れとは違い、体験したことそのものを忘れてしまい、ヒントがあっても思い出せません。まずは少し前のことを思い出せない短期記憶の低下から始まり、やがて過去のできごとを忘れるエピソード記憶が失われていきます。また、時間、場所、人の順にわからなくなる見当識障害も起こります。異変に気づいたら早めに受診し、正しい知識を身に着けて適切に対応することが大切です。
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