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2022.04.22

家族の介護ストレスを解消するには? 認知症介護の負担を軽くする方法を紹介

高齢者介護は、介護をする側である介護者にも身体的な負担や精神的なストレスがかかる可能性があります。中でも認知症の介護は先が見えにくく、症状の進行とともに対応が難しくなりますので、長期間に渡る場合は、介護者に相当な疲労やストレスが蓄積されていくこともあります。その結果、介護者自身の健康が損なわれてしまうことも珍しくありません。ここでは、介護負担を軽減し、ストレスをなるべくため込まないようにする方法を解説します。記事を参考にストレスの原因を理解して、自分に合った解消方法を見つけてください。


目次
・介護の疲労や悩みがストレスの原因に
・介護ストレスが引き起こす「介護うつ」とは
・介護ストレスを軽減するポイント
・ 介護サービスを積極的に活用しよう
・まとめ

執筆者画像
【監修】精神科、心療内科医、認知症診療医 ブレインケアクリニック名誉院長 ・一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所所長 今野裕之先生
順天堂大学大学院卒業。老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。大学病院や精神科病院での診療を経て2016年にブレインケアクリニック開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立。 著書・監修に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術(青春出版社)」など。医師+(いしぷらす)所属。

介護の疲労や悩みがストレスの原因に

認知症の介護者にはさまざまな負担がかかっています。具体的にはどのようなものでしょうか?

例えば、長時間の介護や夜間の介護による睡眠不足、起床や寝返り、移動の介助などによる「身体的な負担」、要介護者の予想外の行動に対する対応や、介護スタッフとのやり取りなどの「精神的な負担」、さらに、介護用品代やデイサービスの利用料、介護離職に伴う収入の減少など「経済的な負担」があります。

これら、身体的、精神的、経済的負担から介護ストレスを抱え、心身に不調をきたしてしまう介護者も珍しくありません。特に介護疲れやストレスが引き起こす「介護うつ」は大きな問題になっています。

介護ストレスが引き起こす「介護うつ」とは

「介護うつ」は正式な病名ではなく、介護が原因となって起こるうつ症状全般を指す言葉です。介護うつは、自覚症状があまりないまま進行するといわれています。また、介護によるストレスが原因であっても介護をやめるわけにはいかず、ストレスの原因から離れることができない点も、介護うつへの対処を難しくしています。

もし介護による疲れやストレスを感じていて、次の症状のうち心当たりが4つ以上あり、かつ2週間以上症状が続く場合は「介護うつ」の可能性があるかもしれません。早めに心療内科や精神科などの専門医を受診しましょう。


 ✓食欲がない
 ✓気分が落ち込む
 ✓好きだったことに興味がなくなる
 ✓寝つきが悪かったり、熟睡できなかったりする
 ✓だるい、疲れが抜けない
 ✓イライラしたり、攻撃的になったりする
 ✓集中力、注意力が低下した
 ✓不安感や焦燥感がある
 ✓自己肯定感がなく、ネガティブ思考になる
 など


介護ストレスが引き起こす問題は、介護うつだけではありません。他にも「要介護者への虐待」や「介護放棄」という問題が生じる場合もあります。自分はもちろん、大切な家族を傷つけないようにするためには、とにかく疲れやストレスをため込まないこと、ひとりで抱え込まないことが大切です。

介護ストレスを軽減するポイント

介護ストレスをためないためには「無理をしないこと」が大切です。介護者があれもこれもと世話をしすぎてしまうと、要介護者にとってもかえって良くないことがあります。自分自身を大切にしながら介護を続けるためのストレス解消方法を紹介していきます。


ひとりで頑張り過ぎない

介護うつになりやすい方の特徴のひとつに、責任感の強さや完璧主義が挙げられます。認知症介護はゴールが見えづらく長期戦になることが多いため、適度な息抜きを意識的にしていくことがポイントです。

介護をしながらこれまで通りの家事ができないのは当たり前だと構えて、介護以外の部分は「手抜きもあり」にするなど、完璧を目指さずにゆったりとした気持ちでいることができるように心がけましょう。


相談相手を見つける

誰かと話をすることはストレスの軽減に役立ちます。友人や家族に弱音や愚痴は話せないという方は、ケアマネジャーなど介護の専門家に話したり、地域の相談窓口を利用したりする方法もあります。日々の介護で発生する不満や不安、悩みなどのストレスはひとりで抱え込まずに、誰かに話をすることで発散していきましょう。身近に相談できる相手がいると安心です。介護生活が始まったら、早期に相談相手を見つけておいてください。


例えば、認知症の方ご本人やご家族が参加され、都道府県ごとに月1回程度開催されている「つどい」に参加されることもお勧めいたします。

「つどい」情報はこちらから


休養や睡眠を十分に取る

夜中のトイレ介助やおむつ交換など、介護者が夜間に睡眠を十分に取ることができなくなってしまうことが多くあります。

睡眠不足になると、体力だけでなく精神力も減退してしまいます。認知症の介護では、生活の時間帯が不規則になってしまいがちですが、ストレス軽減のためには介護者自身が十分な休息を取る必要があります。ベッドのマットレスを好みのものに変えたり、リラックスできるアロマを炊くなどして、短時間でもなるべく質の高い睡眠を取れるように心がけましょう。夜間に睡眠が十分とれない場合は、日中に短時間仮眠を取るだけでもある程度疲れが取れます。また、時には家族に介護を交代してもらったり、後述する介護サービスを利用するなどして、介護者が気分転換する時間を設けることも重要です。

介護サービスを積極的に活用しよう

認知症介護はひとりで続けていくことは非常に困難です。そのため積極的に周囲の助けを借りながら介護を続けられる環境を整えることが重要です。介護保険制度では、65歳以上の高齢者(第1号被保険者)で介護が必要と認定された方、あるいは40〜64歳(第2号被保険者)で特定疾病により介護が必要と認定された方が介護保険サービスを利用できます。地域包括支援センターなどに相談し、介護サービスを積極的に活用していきましょう。

地域包括支援センターについて詳しく知りたい方は、こちらの記事(地域包括支援センターの役割とは?活用方法や相談事例をわかりやすく解説)をご覧ください。

ホームヘルパーや民間サービスを利用する

介護保険サービスを利用するためには、基本的には要介護認定を受けるための申請が必要です。現在の介護負担を少しでも減らすために、まずは申請を考えてみてはいかがでしょうか。

介護保険で受けられる介護サービスにはさまざまなものがあり、認定された要介護度(要介護1〜5、要支援1〜2)によってもサービス内容は異なります。例えば、自宅で利用できる介護サービスには、訪問介護、訪問看護、福祉用具貸与があります。訪問介護の内容としては、ホームヘルパーによる入浴、排せつ、食事介助などの他、洗濯や掃除など家事サービスもあります。

なお、介護認定を受けていない方がこれらのサービスを利用できる場合もあるため、地域包括支援センターなどに相談してみることをおすすめします。

その他、要介護認定に関係なく利用できる民間のサービスもあります。「付きっきりの介護はまだ必要ない」という場合でも、外出時の見守りや通院の同行、日常の家事や生活のサポートなど、自立した生活を自宅で送るためのサービスを利用して負担を軽減するのもひとつの方法です。


ショートステイやデイサービスを利用する

日帰りで利用できる「デイサービス」や「デイケア(通所リハビリテーション)」、短期間の宿泊ができる「ショートステイ」などの介護サービスもあります。これらのサービスの目的は、介護家族の負担を軽減することです。「介護があるから出かけられない」「介護に休みはない」と自分の生活を制限しすぎることなく、これらのサービスを上手に利用して介護の負担を軽減していきましょう。

デイサービスとデイケア、ショートステイについて、以下に簡単に紹介します。


▼デイサービス

日帰りで利用できる介護サービス。健康状態の確認や、入浴、食事、生活機能向上のための機能訓練、レクリエレーションなどを行います。認知症対応型のデイサービスではより専門的なケアを行ってもらえます。

デイサービスについての詳細は、こちらの記事(デイサービスの費用や種類、利用条件は?デイケアとの違いも解説)で紹介しています。


▼デイケア(通所リハビリテーション)

日帰りで利用できる介護サービス。理学療法士、作業療法士などが利用者の心身機能の維持、回復を目的にリハビリテーションを行います。


▼ショートステイ

短期入所型の介護サービスで、連続利用日数は30日までです。介護者の病気や仕事など、一時的に自宅で介護できない場合などに利用できます。健康状態の確認や、入浴や食事、生活機能向上のための機能訓練、レクリエレーションなどを行います。

ショートステイについての詳細は、こちらの記事(ショートステイとは?利用条件や費用、上手な使い方をご紹介)

で紹介しています。

介護施設への入所を検討する

認知症の症状が進行するとともに介護負担は大きくなっていき、ご自宅でご家族による介護が困難になっていくことがあります。そのようなケースでは、介護者、要介護者双方の心身の健康を守るためにも、介護施設への入所は選択肢のひとつとなってきます。それなりの費用がかかりますが、介護の負担は格段に軽減されます。


さまざまな介護施設がありますが、認知症の場合は、本人の希望や意思をくんだ施設選びが症状の進行とともに難しくなっていきます。介護生活が長くなると、介護者の疲れも相当なものとなり、そのような状態での施設探しはさらに心身を疲弊させます。「まだ介護施設の検討は必要ない」と思うかもしれませんが、できるだけ早いうちから、本人の希望や意思を確認し施設選びを始めることをおすすめします。


また、終わりが見えない介護では、気が付かないうちに頑張り過ぎてしまいます。認知症がどれくらい進んだら、どれくらい介護が大変になったら、など介護施設への入所タイミングをあらかじめ考えておくことも、精神的な介護ストレスを軽減するポイントです。常に介護が必要で、自宅での介護が困難な場合に入所できる「特別養護老人ホーム」は、要介護3以上の方が対象となっています。入所のタイミングに悩んでいる場合は、これを目安に、ケアマネジャーなどの専門家に相談してみるといいでしょう。


近年は、介護者自身のケアをする「レスパイトケア」に注目が集まっています。詳細については、以下の記事で紹介しています。

レスパイトケアとは? 受けられるサービスの種類や費用、注意点を紹介

近年は、介護者自身の健康管理やケアにも注目が集まっています。介護をしながら自分自身のケアをする「レスパイトケア」をおすすめします。

まとめ

認知症の介護は長期戦になる覚悟が必要です。とはいえ、介護者が頑張り過ぎて心身の健康バランスを崩してしまったら、介護自体に支障をきたします。ご家族による介護では、介護者、要介護者双方がストレスフリーであることが理想です。介護する人の幸せが介護される本人の幸せである、ということを心に留めて「頑張り過ぎない持続可能な介護」ができる環境を目指してください。介護保険制度や民間の介護サービスを上手に利用して、負担を軽減するようにしましょう。


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