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介護老人保健施設の前に並ぶ利用者とスタッフ
2023.05.23

介護老人保健施設(老健)とは? 費用や利用条件、サービス内容を解説

介護老人保健施設とはどのような施設なのでしょうか? 高齢者向け施設は種類が多いため、受けられるサービスや利用できる条件などが分からない方もいるかと思います。この記事では、介護老人保健施設の特徴や利用条件をはじめ、他のサービスや施設との違いを解説しています。利用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。


目次
・介護老人保健施設(老健:ろうけん)とは
・介護老人保健施設の利用条件
・介護老人保健施設の種類
・介護保険で使える介護老人保健施設のサービス
・介護老人保健施設と特別養護老人ホームの違い
・介護老人保健施設で提供される具体的なサービス内容
・介護老人保健施設の利用でかかる費用
・介護老人保健施設を利用するための手続き
・まとめ

執筆者画像
【監修】理学療法士 佐藤敬太さん
回復期リハビリテーション病院を経験したのち、訪問リハビリテーション、デイサービス、地域包括ケアなど様々な領域で臨床へ従事。現在はwebメディアの運営やマーケティング知識を活かし、医療福祉の情報が正しく伝わるよう日々発信を続けている。

介護老人保健施設(老健:ろうけん)とは

介護老人保健施設は、病気や障害のある高齢者が自宅で生活するための準備をする施設です。略して、老健(ろうけん)とも呼ばれます。介護老人保健施設を理解するうえでは、介護保険や要介護認定などが大きく関わってきます。以下で詳しく解説します。

介護老人保健施設の特徴

介護老人保健施設は、原則として高齢者を対象とした在宅復帰や在宅生活支援のための地域拠点となる施設です。高齢者を対象とした施設はさまざまな種類がありますが、介護老人保健施設では家に帰るためのリハビリや体の機能の維持改善に特化しています。利用者一人ひとりに合わせたリハビリの目標を立てて、基本的な動作訓練や体力筋力の増強、活動や参加の促進、住環境の調整などを行い、生活機能の向上に取り組んでいます。これらの支援を集中的に取り組むことも介護老人保健施設ならではの特徴であり、入所の場合は3〜6ヶ月程度と期間を限定しています。


さらに、在宅での生活を継続するための介護予防・通所・訪問リハビリなどのサービスも提供しています。またリハビリに特化していることから人員体制の手厚さも特徴的です。看護師・介護士の配置はもちろんですが、医師の常駐やリハビリ専門職の在籍が義務付けられています。上記のように多数の職種による関わりがあるため、身体介護や生活支援はもちろんのこと、医療ケアに対応できることも大きなメリットです。医療ケアを受けながらリハビリを行えるため、在宅復帰を目指す方に適した施設といえます。

介護老人保健施設の利用条件

介護老人保健施設の利用は、原則として「65歳以上で要介護1以上」の方が対象となっています。ただし、40〜64歳の方でも若年性認知症などの特定疾病による要介護認定を受けていれば利用可能です。また、病気による長期入院の必要性がない状態であることも条件となっています。また、伝染病の有無などが問われる場合もありますが、施設により異なるためご注意ください。


認知症の人の場合は、原則として軽度であれば介護老人保健施設の利用は可能です。また、若年性認知症の場合も対象となります。認知症ケア専門士の資格を有している職員を多く配置している施設もあります。身体面の介護より認知症による症状が気になる場合は、認知症ケアに力をいれている施設を探すと良いでしょう。

介護老人保健施設の種類

介護老人保健施設の種類は5つの区分に分かれており、以下の項目により区分が変動します。


● 在宅復帰や療養支援の指標の点数

● 退所時指導

● リハビリマネジメント

● 地域貢献活動

● 充実したリハビリ


上記の要件をより満たしているものから順に、超強化型・在宅強化型・加算型・基本型・その他型、という区分になります。


介護保険で使える介護老人保健施設のサービス

リハビリを受ける高齢者女性

介護老人保健施設のサービスは、原則として介護保険を通して受けられるものです。サービスの種類は大きく以下の3つに分けられます。


● 入所

● ショートステイ

● デイケア


それぞれサービスの内容や対象者は異なるため、ここからは3つのサービスと類似するものや施設との違いを解説します。

施設サービス(入所)

介護老人保健施設の施設サービス(入所)は要介護1以上の在宅復帰を目指す方が対象です。入所中に受けられるサービス内容としては、日常生活の介護や看護、リハビリなどがあります。一般的に、入所期間は3〜6ヶ月程度です。ただし、多くの施設では入所後3ヶ月程度経過すると入所の継続の可否について審査され、受け入れ期間が変動します。

ショートステイ(短期入所生活介護)

上記の一般的な長期間の入所とは異なり、ショートステイは短期間だけ入所するサービスです。特別養護老人ホームだけでなく介護老人保健施設でも受け入れています。普段在宅で過ごされている方が、さまざまな理由で利用できます。一例としては以下の通りです。


● 介護者の病気・入院

● 冠婚葬祭・旅行

● 介護疲れなどによるレスパイト(一時休止、休息)


主に、一時的に在宅介護が困難となる時に活用されています。在宅介護の生活はいつまで続くか分からないものであるため、介護者が365日在宅でともに生活するのは大変なことです。そのため、介護者は特別な事情がある場合はもちろん、適度に休養や息抜きをするためにショートステイを利用するのは非常に有効な活用方法です。なお、サービス内容としては、上記の長期間の入所とほぼ変わりません。


ショートステイについての詳細は、以下の記事で紹介しています。

ショートステイとは?利用条件や費用、上手な使い方をご紹介

デイケア(通所リハビリ)

デイケアとは、通所リハビリを指します。上記の入所サービスと異なり、要支援1・2の方も対象となる点が大きな違いです。デイケアでは日中を介護老人保健施設で過ごします。1日の大まかなスケジュールとして、一例を以下に挙げます。


1. 朝、利用者宅から施設まで送迎

2. 介護老人保健施設に到着次第、健康チェック

3. 午前中の活動(リハビリなど)

4. (入浴を受けられる場合あり)

5. 昼食

6. 午後の活動(レクリエーション・作業活動など)

7. 夕方、施設から自宅まで送迎


介護老人保健施設では看護師だけでなく、医師も常駐しています。そのため、体調に変化があってもすぐに診察や医療処置を受けられるので安心です。また、リハビリは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といった専門職による機能訓練が受けられます。

デイケアとデイサービスの違い

デイケアもデイサービスも利用する時間帯はほぼ変わりません。異なる点は対象者やサービスの目的・内容、そして人員配置にあります。デイケアは要介護だけでなく要支援1・2の方も対象ですが、デイサービスでは要介護1以上の方が対象です(市区町村により、要支援1・2の方も同様のサービスを受けられることもあります)。心身機能の維持・他者との交流・介護者の負担軽減といった目的は両者共通していますが、デイケアでは医療行為を要する健康管理や日常生活支援も加わります。つまり、デイケアはリハビリや健康管理に重きをおいたサービスといえるのです。


これは、人員配置にも影響しており、デイケアでは上記の目的に沿って医師が常駐しているほか、理学療法士・作業療法士などのリハビリ専門職も在籍しています。そのため、デイケアでは一般的な病院と同様に医師の診察・指示を受けた上で専門職によるリハビリが行われています。よって、デイケアは病院を退院したばかりで、脳卒中や骨折などのリハビリをしっかり行いたい場合などに最適です。ただし費用はデイケアの方が若干高くなります。


デイケアとデイサービスの違いについて、以下の記事で詳しく紹介しています。

デイサービスの費用や種類、利用条件は?デイケアとの違いも解説

介護老人保健施設と特別養護老人ホームの違い

介護老人保健施設も特別養護老人ホーム(以下、特養)も、両方とも介護保険を利用して受けられる公的な施設介護サービスです。違いは利用目的・入所条件・期間・サービス内容にあります。介護老人保健施設は在宅復帰を目指す施設で、入所は3〜6ヶ月の期間限定です。一方で、特養は要介護3以上の方を対象とした長期間の入所ができる生活の場となっております。


リハビリに重きをおく介護老人保健施設と比較すると、特養は生活支援や介護サービスがメインとなり、リハビリ専門職の在籍も必須ではありません。機能訓練指導員は在籍していますが、その内容は施設によって異なり、リハビリよりもレクリエーションがメインのともあります。このように特養は、介護サービスや生活支援を受けながら長く入所する施設です。


特別養護老人ホームについての詳細は、以下の記事で紹介しています。

【特別養護老人ホームとは】特徴や入居費用、減免制度などを解説


介護老人保健施設で提供される具体的なサービス内容

入居者の入浴を見守る介護スタッフ

介護老人保健施設は在宅復帰に向けてリハビリを行いつつ過ごす施設です。提供されているサービス内容は以下の4つに大別されます。


1. リハビリテーション

2. 医療ケア・看護ケア

3. 介護・生活支援

4. 栄養管理


いずれも自宅での生活を目指す際には欠かせないものですが、リハビリや医療ケアが提供されている点が介護老人保健施設の特徴です。それぞれが具体的にどのような内容であるのか、以下で解説します。

リハビリテーション

介護老人保健施設では利用者の身体の状態を評価し、自宅の状況や希望をお聞きした上で、自宅に戻れるようにリハビリを立案・実施します。頻度としては1週間に3回以上のケースが多いようです。提供されるリハビリ内容は以下の通りです。


● 専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)による個別の機能訓練

● 集団リハビリ

● 在宅生活に向けてのサポート・退所前の自宅訪問


介護老人保健施設では少なくとも1人以上のリハビリ専門職が在籍しており、個別の機能訓練を行っています。たとえば、ベッド上での寝返り・起き上がり・座る・立つ・歩くといった基本的な動作の訓練をはじめ、日常生活活動(食事・着替え・トイレ動作など)の動作の訓練も行います。さらに、食事に影響する嚥下(飲み込み)の訓練も欠かせません。これらのリハビリでできるようになった動作を、実際の日常生活で行うための支援も行っていきます。


また、体の動きのリハビリだけでなく、認知症と診断された方を対象とした短期集中リハビリもあります。3ヶ月以内であれば1週間に3回まで認知症集中リハビリが行えますが、全ての施設で実施しているわけではないので、注意してください。

 医療ケア・看護ケア

介護老人保健施設は医師が常駐し、診察や医療処置にも対応可能です。また、看護ケアも充実しており、具体的に行えることは以下のように多岐に渡ります。


● 肺の病気などで度々必要となる酸素療法や人工呼吸器の管理

● 糖尿病と関係する血糖値の測定やインスリン注射

● 褥瘡(床ずれ)の処置・ケア

● CV(中心静脈栄養)の管理

● 痰の吸引

● バルーンカテーテル(尿の管)の管理や導尿


この他、医師による注射や点滴、処方箋の発行、人工透析などができるケースもあります。病気になって入院した場合、退院しても医療ケアや看護ケアが必要となることがあります。一般的な高齢者施設と異なり、介護老人保健施設では医療ケアも可能となるため、医療行為を受けながら在宅復帰に向けてリハビリに集中できます。ただし、施設によって対応できるケアも異なるためご注意ください。

介護・生活支援

介護老人保健施設では、介護や生活支援のサービスも充実しており、利用者の状態や必要性に応じて身の回りの介護や生活の支援が行われています。身の回りの介護の具体例としては、入浴・排泄(オムツ交換やトイレ介助)・着替え・食事の支援などが挙げられます。また、シーツ交換や居室の清掃といった生活支援もあります。


注意が必要なのは、利用者の衣類の準備です。着替えの洗濯は家族が適宜(入浴のタイミングなど)持ち帰り洗濯して持参するケースが多い傾向にあります。ただし、家族の来所や洗濯が困難な場合は、料金を支払ってクリーニングサービス等を利用することも可能です。

 栄養管理

定員100名以上の介護老人保健施設では栄養士を1人以上配置することが義務付けられています。利用者が健康な生活を送る上で、栄養士による栄養管理は欠かせません。経口で(口から)食事をとれる方であれば食事内容や形態などを利用者に合わせて調整します。塩分やタンパク質等の制限が必要なケースでは治療食を提供し、飲み込みが難しい方には、ミキサーにかけた形状・ゼリー状・刻んだ状態で調理するなど、一人一人の状態合わせた食事の提供も可能です。


さらに2021年より栄養ケア・マネジメントを充実させるべく、低栄養状態のリスクが高い利用者に対する食事の観察の強化や利用者ごとの栄養状態等の情報を厚労省に提出している施設が増えています。安全・健康な食事のためには、栄養管理は必要不可欠なのです。


介護老人保健施設の利用でかかる費用

介護老人保健施設の利用でかかる費用は、大きく3種類に分けられます。


1. 居住費

2. 食費

3. 日常生活費等


「居住費」は、部屋のタイプと要介護度に応じて費用が変動します。1日あたりの利用者負担は部屋タイプや所得などによって変わりますが、数百円から2,000円程度です。また、入居一時金はありません。食費は所得などにより変わりますが、1日3食あたり数百円から千円程度であるため、1ヶ月でおよそ4万円程度が目安となります。日常生活費は洗濯・理美容院・新聞代などを含みます。月10,000円程度の予算と見積もる場合が多いようです。これらの費用を合わせると、1ヶ月あたり約5万〜10万円程度と考えておくと良いでしょう。


介護老人保健施設を利用するための手続き

介護老人保健施設を利用するための手続きは以下のような流れになります。


1. 要介護認定の申請

2. 入所の申し込み

3. 書類の提出・入所判定

4. 契約し入所


高齢者で介護が必要といっても、誰でも介護老人保健施設を利用できるわけではありません。原則として、対象は65歳以上の高齢者(若年性認知症などの特定疾患であれば40歳上)でなおかつ要介護1以上の方となるためです。

まずは居住地の地区町村窓口や地域包括支援センターに申請して「要介護認定」を受けましょう。


窓口で申請したら、訪問による認定調査が行われます。その後、主治医意見書作成してもらい、一次判定・二次判定により要介護度の判定があり、結果が通知されます。一連の申請から結果通知までにかかる期間はおよそ1ヶ月程度です。通知を受けて対象となれば、次は入所の申し込みです。利用者本人もしくはその家族が施設に直接申し込みをすると、面談があります。普段の生活状況・体の状態・医療ケアの有無・要介護度などを聴取されるため、簡単に話す内容をまとめておきましょう。


面談が済めば、必要書類を提出します。施設の申込書の他には、診療情報提供書(または健康診断書)、転院の場合は看護サマリー(利用者の病歴や看護上の注意点などを記載した書類。転院前の施設で作成してもらいます)が必要です。これらを元に審査し入所判定を行い、入所の判定となれば契約へと移ります。



まとめ

介護老人保健施設は、在宅復帰を目的としており、医療ケアに対応できて専門職によるリハビリも行われています。一般的に介護老人保健施設の入所は3〜6ヶ月と限定的ですが、在宅復帰した後はショートステイとしての利用も可能です。利用を検討しているのであれば、まずは対象となるかどうか要介護認定を確認してみましょう。


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