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2021.08.17

【幻聴や幻視は認知症を疑うべき?】幻覚症状と認知症の関係

認知症の方に見られるBPSD(認知症の行動・心理症状)の一つに「幻覚」があります。幻覚とは、実際には存在しないものが見えたり、聞こえたりすることで、認知症の中でも起こりやすいのはレビー小体型認知症ですが、アルツハイマー型認知症で見られることもあります。


幻覚を起こしているところを見かけると、一緒に生活する家族は「認知症かも?」と不安になるかもしれません。「どのように対応したらいいかわからない」「幻覚がひどくなったらどうしよう」と心配になることもあるでしょう。

この記事では、認知症による幻覚症状の原因や症状、治療、対応方法などの基本を解説していきます。いざという時に適切に対処できるよう、知識を身につけておきましょう。


【関連記事】認知症の主な症状 BPSD(行動・心理症状)


認知症による幻覚症状とは

「幻覚」とは、実際には存在しない感覚(知覚)を体験してしまうことをいいます。幻覚には、実在しないものが見える「幻視」や、実際には聞こえないものが聞こえる「幻聴」などがあります。


幻覚とよく似たものに「錯覚」がありますが、錯覚は幻覚とは異なり、実際に存在するものを実際とは違う感覚として認識してしまうことをいいます。人だと思ったら人形だったとか、玄関のチャイムが鳴ったと思ったらドラマ内の出来事だった、などがこれに当たります。認知症によってこうした錯覚も起こりやすくなりますが、単なる見間違えや聞き間違えの場合もあります。本人が間違えたと認識していない場合、幻覚である可能性が高くなります。


幻覚症状の原因は?

幻覚症状が出るのは、認知症だけが原因ではありません。幻覚が起こる代表的な病気としては、統合失調症が知られています。統合失調症の症状では、幻視が見える、幻聴に対して話す(周りの人には独り言を言っているように聞こえる)、実際には起こっていないことによる不快な感覚を体に感じる「体感幻覚」などが見られます。

統合失調症以外にも、PTSD(心的外傷後ストレス障害)でトラウマとなったできごとが幻覚としてよみがえってきてしまったり、アルコール依存症や薬物依存症、入院や手術、薬剤、病気などが原因で起こるせん妄などでも、幻覚症状が出ることがあります。


認知症の中で幻覚症状との関連性が高いのは、「レビー小体型認知症」です。レビー小体型認知症は、脳の大脳皮質に「レビー小体」と呼ばれる「αシヌクレイン」というタンパク質が蓄積することで、運動機能や認知機能が阻害されて起こります。初期には認知機能の低下はそれほど目立たず、情報処理をつかさどる後頭葉の神経細胞が壊されることで、幻覚が起きやすいとされています。レビー小体型認知症の幻覚症状では、幻聴も症状として出ることがありますが、もっとも多いのは幻視です。

また、アルツハイマー型認知症の場合は、物の置き忘れやもの忘れなどから妄想に発展したり、幻聴が現れたりすることがあります。


【関連記事】レビー小体型認知症とは アルツハイマー病やパーキンソン病との違い


認知症による幻覚の主な症状

ここでは、レビー小体型認知症に見られる幻覚症状について説明します。


幻視

レビー小体型認知症で見られる幻視は、「知らない人が廊下にいる」「子どもがカーテンの向こう側に隠れている」「ねずみが家具の隙間にいる」「虫がたくさんいる」などが代表的です。「亡くなった妻(夫)がいる」と言ったりする場合もあります。いずれの場合も、本人には実体感を持ってはっきりと見えています。


幻聴

よくある幻聴は、「自分の悪口を言っている」というものです。幻視と同様、本人にははっきり聞こえています。幻聴はアルツハイマー型認知症でよく見られる症状で、レビー小体型認知症では、幻視に比べるとそれほど多くありません。


その他の幻覚症状

幻覚には、幻視や幻聴以外にもさまざまな症状があります。


「体感幻覚」は、「腕に虫がたくさんついている」とか、怪我や病気ではないのに「体が痛い」と言うなど、事実でないにもかかわらず、体に感じる幻覚のことです。体に虫やヘビなどがついていると訴える場合には、手で払う動作をしたり、大声を上げたりすることもあります。体感幻覚は統合失調症やアルコール依存症、薬物依存症などで多く見られますが、レビー小体型認知症でも見られることがあります。


そのほかにも、口に何も入れていないのに「気持ち悪い味」などと言ったり、特に何もにおわないのに「変なにおいがする」と言ったりすることがあります。これらは「幻味」や「幻臭」という幻覚症状です。


錯視

「錯視」とは、実際に存在するものを他のものと見誤ることで、洗濯物が人に見えたり、天井の木目を見て顔だと言ったりします。レビー小体型認知症では、幻視以外にこのような錯視も多く見られます。


妄想

レビー小体型認知症では、幻視から妄想に発展することもあります。「玄関に知らない人がいる」という幻視を見て犯罪者だと思いこんだり、「テーブルの下にねずみが見える」という幻視から「お菓子をかじられた」と信じたりといった形で起こります。

一方、アルツハイマー型認知症では、物の置き忘れや物忘れなどの記憶障害から「お嫁さんが指輪を盗んだ」「息子が財布を取った」といった被害妄想や物取られ妄想が生じることが少なくありません。


【関連記事】アルツハイマー型認知症とは



幻覚や妄想が現れたときの対応法

認知症による幻視や幻聴などが起こった場合、当然ですが家族や周りの人には見えたり、聞こえたりしていないので戸惑うことが多いと思います。どのように対応するのが認知症当事者にとっていいのか、対応法をご紹介します。


否定は禁物

幻視や幻聴は、本人にははっきりと見えたり、聞こえたりしています。そのため、「どこにもいないでしょ」「何も聞こえないよ」などと言うと、本人は「わかってくれない」と思い、ストレスを感じてしまいます。本当だと伝えようとして興奮し、ケガをしたり、暴れたりすることもあるので、否定しないことが大切です。受け入れられたと安心すれば、興奮もおさまってくるでしょう。その上で、「おやつを食べない?」「テレビを見ようか」などと、気分転換ができるように声をかけてみるのもいいでしょう。


安心できる声がけや対応を

幻視や幻聴など、幻覚症状がある本人にとっては、幻覚によって見えているもの、聞こえていることは、自分にとってイヤなもの、危害を加えるものであることが少なくありません。そのため、怖がってパニックになり、家から飛び出したりして事故に遭ったり、転倒してケガをしたりする可能性もあるので、本人の話を聞いたうえで安心させてあげることが第一です。

「誰かいる」と言われたら、「もういないから大丈夫」と伝えたり、「動物が入ってきた」「虫がいる」と言われたら追い払うふりをしてみるなどして、危険がないことを教えてあげましょう。それでもおさまらない場合は、本人と一緒に確認してみると、納得してくれることもあります。また、近づくと消えることもあるので、一緒に近づいていったり、触るふりをしたりするのもいいでしょう。


住環境を整える

加齢によって認知機能が低下したり、目や耳が悪くなると、不安やストレスを感じやすくなります。認知症ではそうしたことから幻覚を起こすことがあるので、住環境を整えることが効果的です。


・照明を明るくする 幻視は夕方から夜間にかけての薄暗い時間帯に起こることが多いといわれます。影が幻視を誘発する原因になるので、部屋や廊下の照明は明るくしましょう。


・部屋の中を片付ける 家具が多かったり廊下に物が置いてあると、その陰から何かが見えるなど、幻視が起こることがあります。また、壁や鴨居に洋服や洗濯物がかかっていると、実際にあるものを他のものと見誤る、錯視が起こりやすくなります。部屋の中をスッキリ片付けて、見通しをよくしておきましょう。


・部屋の点検を 特定の音によって錯覚が誘発されることもあるので、家の中を点検して、錯覚を起こしそうなものがあればとり除いたり、隠したりしましょう。



幻覚症状は薬で治せる?

レビー小体型認知症の幻覚や妄想は、「非定型抗精神薬」という薬で改善する場合があります。非定型抗精神薬は、従来の抗精神薬に比べて副作用が少ないもので、幻覚や妄想に効果的なクエチアピン(商品名:セロクエル)やオランザピン(商品名:ジプレキサ)などが処方されます。


ただし、レビー小体型認知症の場合、薬に対して過敏な反応を示し、用法通りの服用量でもさまざまな副作用が出ることがわかっています。市販されているかぜ薬や胃腸薬など一般的な薬で体調が悪くなったりするだけでなく、抗精神薬で幻覚や妄想などの症状が一層悪くなったり、レビー小体型認知症の他の症状が悪化するようなケースも見られます。そのため、薬の投与にあたっては、専門医でもむずかしいといわれています。症状がやわらぐ必要最低限の服用量を見きわめることが重要で、眠気や体のだるさ、ふらつきなどの「過鎮静」の状態にならないかなどを注意深く見ていく必要があります。


認知症では、リハビリテーションや認知機能訓練なども、本人の精神状態を安定させる効果があります。薬による治療と併せて、このような非薬物療法も行なうことが大切です。


まとめ

幻覚症状はレビー小体型認知症の初期に見られることが多く、特に幻視が多い傾向があります。見間違いや聞き間違いではない様子がある場合は、レビー小体型認知症の可能性が高いので、受診を検討しましょう。幻覚症状は薬の投与で症状を和らげることができますが、レビー小体型認知症は薬に対して過敏に反応してしまうため、慎重な投与が必要です。家庭ではまず話を聞いて安心させるとともに、幻覚を起こしにくい住環境を整えましょう。


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【監修】伊藤たえ

脳神経外科、脳卒中専門医として、都内クリニックにて脳ドック、頭痛、認知症、頭部外傷、脳卒中などの診療に励む。

仕事も育児もがんばるママさん女医。

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