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理学療法士が調査票に記載している様子
2024.11.29

IADLとは?ADLとの違いや評価方法、改善ポイントをご紹介

介護現場では、利用者の日常生活の機能を評価する際に、IADLという言葉を聞くことがあります。


IADLとはどのような意味なのか、日常生活のどこまで含まれているのか気になる方もいるのではないでしょうか。IADLは、より応用的な日常動作のことで、ADLよりも幅広い意味合いを持っています。医療・介護現場でもよく使用され、その方らしい生活を送ってもらうには、IADLの維持・向上に向けた対策をすることが重要です。


この記事では、ADL・QOLとの違いやIADLを維持・改善するための方法についてご紹介します。IADLの重要性を知ることで、より実生活に向けたアプローチを実践できるでしょう。


目次
・IADLとは?
・IADLとADL・QOLの違い
・IADLを評価する方法
・IADLを維持・改善するための7つの方法
・IADLを把握して機能低下の予防に努めましょう

執筆者画像
理学療法士 内藤かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 2021年より、Webライターとして独立。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。

IADLとは?

IADLとは、「Instrumental Activities of Daily Living」の略称で、「手段的日常生活動作」という意味です。手段的日常生活動作とは、日々の生活を送るうえで必要な、より複雑で応用的な動作のことです。具体的には、以下のような動作があげられます。


• 買い物
• 食事の準備
• 服薬管理
• 金銭管理
• 交通機関の利用 など


このように、IADLは日常生活だけでなく、社会生活を送るためには欠かせない能力も多く含まれています。その方が自立した生活を送れるかどうかの指標として、このIADLが大きく関わっているのです。


評価を通じて個人の能力や課題を把握し、適切な支援やリハビリを提供することで、IADLの維持・改善につながります。


IADLとADL・QOLの違い

IADLに似た言葉として、「ADL」と「QOL」があげられます。どの言葉もそれぞれ意味は異なりますが、IADLに密接に関係しています。ここでは、ADLとQOLの意味と違いについてみていきましょう。


ADLとは動作の範囲が異なる

ADLとは、「Activities of Daily Living」の略称で、「日常生活動作」を指す言葉です。日常生活動作とは以下のような、生活を送るうえで必要な基本動作のことです。


• 食事
• 排泄
• 入浴
• 着替え など


IADLとADLは、対象としている日常動作の範囲に違いがあります。IADLはより複雑で応用的な動作を評価している関係上、ADLのほうが対象範囲は狭いといえるでしょう。


ただし、ADLは動作の土台となる部分でもあるため、どちらも重要であることに変わりはありません。その方の自立した生活を支援するためには、ADLとIADLの両方に注目することが大切です。

ADL(日常生活動作)とは? 低下の原因や向上させるためのポイント

ご家族を在宅で介護する場合、どこまで介護が必要か迷うケースもあるでしょう。日常生活の一つひとつの動作に対してサポートが必要かどうか、その指標となるのがADLです。この記事ではADLの概要や低下する原因、自立度の評価方法、IADL・BADLとの違いなどをご紹介します。

QOLはIADLを包括している

QOLとは、「Quality of Life」の略称で、「生活の質」や「人生の質」を表している言葉です。生活の質とは、その方らしい充実した生活を送れているかという、より主観的で包括的な概念です。QOLは身体機能や日常動作だけでなく、以下のようなさまざまな要素が含まれています。


• 身体的状態
• 精神的状態
• 経済状況
• 生活環境
• 社会的つながり など


そのためIADLやADLは、QOLの一部といえるでしょう。いずれにせよ、QOLを高めるにはADLやIADLの維持・改善が重要です。高齢者のケアでは、基本的な動作を支援するだけでなく、IADLの維持とQOLの向上を総合的に考える必要があります。


IADLを評価する方法

医療・介護の現場で、IADLを評価する方法はさまざまです。ここでは、代表的なIADLの評価方法について解説します。


Lowtonの尺度

IADLを評価する方法の1つとして、「Lowtonの尺度」があげられます。Lowtonの尺度は、以下の8つの項目(動作)を評価し、それぞれどの程度行えるのかを採点します。


1. 電話を使用する能力
2. 買い物
3. 食事の準備
4. 家事
5. 洗濯
6. 移動
7. 服薬管理
8. 金銭管理
※男性の場合、3〜5の項目は省略


各項目の点数は0〜1点で、合計の最高得点が8点(男性の場合5点)です。具体的な基準は設けられていませんが、点数が高いほどIADL能力があり、自立していると判断できます。それぞれの項目の詳細や点数は、以下の表のとおりです。

Lowtonの尺度の表

出典:科学技術振興機構|手段的日常生活活動(IADL)尺度


老研式活動能力指標

老研式活動能力指標の表

老研式活動能力指標とは、以下の3つで構成された評価指標のことです。


• IADL
• 知的能動性
• 社会的役割

項目は13個あり、それぞれ「はい(1点)」か「いいえ(0点)」で回答してもらいます。


質問内容は以下のとおりです。


【IADL】
1. バスや電車を使って一人で外出できますか
2. 日用品の買い物ができますか
3. 自分で食事の用意ができますか
4. 請求書の支払いができますか
5. 銀行預金、郵便貯金の出し入れが自分でできますか

【知的能動性】
1. 年金などの書類が書けますか
2. 新聞を読んでいますか
3. 本や雑誌を読んでいますか
4. 健康についての記事や番組に関心がありますか

【社会的役割】
1. 友達の家を訪ねることがありますか
2. 家族や友達の相談にのることがありますか
3. 病人を見舞うことができますか
4. 若い人に自分から話しかけることがありますか


点数が満点に近づくほどIADL能力が高く、自立した生活を送れていると評価します。


出典:厚生労働省|別添資料 2-3 IADL:老研式活動能力指標


IADLを維持・改善するための7つの方法

散歩をする高齢男性

リハビリや普段の生活で工夫をすることで、IADLの維持・改善は十分に見込めます。そのための方法として、おもに以下の7つがあげられます。


IADLの維持・改善方法

1. 必要以上の介護を控える
2. 運動習慣をつける
3. 栄養管理をする
4. 脳トレをする
5. 実生活にもとづいた練習をする
6. 福祉用具を活用する
7. 家屋環境を整える


ここでは、それぞれの方法について詳しく解説します。


1.必要以上の介護を控える

1つ目は、必要以上の介護を控えることです。利用者ができることまで介護者や家族がサポートしようとすると、身体を動かす機会が減り、身体機能の低下を招く恐れがあります。動作に時間がかかるからといって、ついつい不必要な介護をしてしまう方もいるのではないでしょうか。


本人ができることはなるべく一人で行ってもらい、できない部分のみを介護するように意識しましょう。そのためには、利用者の身体機能やADL・IADLをしっかりと把握しておくことが重要です。不要な介護を避け、利用者が持っている身体機能を活かすことで、IADLの維持・改善につながります。


2.運動習慣をつける

2つ目は、運動習慣をつけることです。筋肉は加齢とともに衰えますが、適切な運動を継続することで、身体機能の維持・改善につながります。


運動不足によって筋肉量の減少が進むと、寝たきりや要介護状態のリスクを高める恐れがあります。とくに高齢者は、減少した筋肉量を取り戻すのに時間がかかりやすいので、予防的な取り組みが重要です。また、介護施設や医療機関でリハビリを提供していたとしても、そのほかの時間でなにもしていないと身体機能は低下しやすくなります。


リハビリの時間以外で活動性を高めるためには、自主トレの提供もおすすめです。実際に、筆者も医療機関で勤務していた時代、患者さんに自主トレメニューのプリントを積極的に提供していました。無理のない範囲で運動習慣をつけてもらい、活動量の向上を図りましょう。

おすすめの運動メニューはこちら(コグニサイズの紹介)


3.栄養管理をする

3つ目は、栄養管理をすることです。身体機能を維持するためには、適切なエネルギーや栄養の摂取は欠かせません。


栄養不足になると、身体は足りないエネルギーを補おうとして、筋肉を分解しようとします。たとえ運動習慣があったとしても、十分に栄養が摂取できていないと筋肉量の維持や増加が難しくなります。その結果、身体機能が低下してIADLの低下につながるのです。


実際に、筆者も低栄養状態の患者さんに対するリハビリに難渋した経験がありました。そこでNST(栄養サポートチーム)と相談し、食事内容の変更や間食の追加などをした結果、リハビリ効果の向上につながったケースがありました。バランスのよい食事と十分な摂取を心がけてもらい、IADLの維持・向上に努めましょう。


4.脳トレをする

4つ目は、脳トレをすることです。IADLには複雑な動作も関わっているため、身体機能だけでなく認知機能も求められます。


前述したIADLを評価する「Lawtonの尺度」では、買い物や服薬管理などの項目があり、これらはある程度の認知機能が必要です。買い物では商品の選択やお金の計算が必要で、服薬管理では薬の種類や飲む時間を覚えなければいけません。


リハビリを提供する際は、以下のような認知機能を高めるようなトレーニングも取り入れてみましょう。


• 計算ドリルや数独パズルなどの机上課題
• 二重課題(歩きながら計算するなど)
• バリエーション豊富なリハビリ


机上課題であれば、リハビリ以外の時間でも実施できます。このように、リハビリや日常生活のなかで頭を使う活動を行うことで、認知機能の低下を予防し、IADLの維持・改善が期待できます。

【関連記事】高齢者におすすめの脳トレ13選 認知機能低下予防との関係も紹介


5.実生活にもとづいた練習をする

5つ目は、実生活にもとづいた練習をすることです。IADLには日常生活の複雑な動作が含まれているため、実際の生活場面を想定した練習が求められます。たとえば、その方が自宅で掃除機をかける必要がある場合、単純な筋トレだけでなく、以下のようなトレーニングを行うとよいでしょう。


• 施設にある掃除機を使用し、実際に掃除を行ってもらう練習
• 重いものを持ちながら身体を動かす練習
• 前方へリーチする練習


このように、利用者の生活に必要な動作にフォーカスした練習をすることで、IADLの向上につながります。また、可能であれば実際に買い物や公共交通機関を利用するのもおすすめです。筆者が勤めていた職場(回復期病院)では、外出訓練として患者さんに付き添い、公共交通機関を実際に利用することもありました。


6.福祉用具を活用する

6つ目は、福祉用具をうまく活用することです。杖や歩行器などの福祉用具は、身体機能の低下を補えるため、安全性の向上に役立ちます。適切な福祉用具を活用できれば、日常動作が安定しやすくなり、IADLの範囲を広げられるでしょう。


たとえば、歩行に不安がある場合、杖やシルバーカーを使用することで転倒リスクの軽減につながります。その結果、買い物や通院などがしやすくなり、外出の機会が増えるきっかけにもなります。個々の状況や身体機能などをしっかり評価したうえで、適切な福祉用具の提案をしてみましょう。

【関連記事】介護用品でそろえるべきものとは|必要な福祉用具を選ぶポイント

7.家屋環境を整える

7つ目は、家屋環境を整えることです。日常生活の自立度を高めつつ、自宅で安全に過ごしてもらうためには、家屋環境の整備は欠かせません。どのような対策が必要になるかは家屋によって大きく異なりますが、代表的なポイントとしては、以下のとおりです。


• 玄関(玄関前):手すりやイス、スロープの設置
• 廊下:手すりや滑り止めの設置
• トイレ:手すりの設置
• 浴室:手すりや滑り止めの設置


これらは転倒やふらつきが起きやすい場所なので、要チェックです。自宅での生活に困っている利用者がいる場合は、詳細を把握したうえで環境整備のための提案をしてみましょう。

【関連記事】高齢者が転倒する原因は?転倒予防のための4つの対策を解説


IADLを把握して機能低下の予防に努めよう

IADLは日常生活での複雑な動作のことで、ADLよりも幅広いのが特徴です。QOLにも大きく関わっているため、利用者のケアにおいてADLだけでなく、IADLの視点を持つことが重要です。


IADLを維持・改善するためには、運動や食事などによる身体機能面のアプローチがあげられます。そのほかにも、認知機能を高めることや、生活を安全に過ごしてもらう工夫も欠かせません。ぜひ今回の記事を参考にして、IADLに着目したケアを進めてみましょう。

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