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2023.04.24

ADL(日常生活動作)とは? 低下の原因や向上させるためのポイント

ご家族を在宅で介護する場合、どこまで介護が必要か迷うケースもあるでしょう。日常生活の一つひとつの動作に対してサポートが必要かどうか、その指標となるのがADLです。この記事ではADLの概要や低下する原因、自立度の評価方法、IADL・BADLとの違いなどをご紹介します。


ご家族のADLの低下を防ぐためには今の生活を続けて良いのか、それとも新たに対策を考えた方が良いのかなど、介護の方針を考える際の参考にしてみてください。


目次
・ADL(日常生活動作)とは
・ADL(日常生活動作)の種類
・ADLの評価方法
・ADL(日常生活動作)低下の原因
・ADLを向上させる・低下を防ぐためのポイント
・まとめ

執筆者画像
【監修】理学療法士 佐藤敬太さん
回復期リハビリテーション病院を経験したのち、訪問リハビリテーション、デイサービス、地域包括ケアなど様々な領域で臨床へ従事。現在はwebメディアの運営やマーケティング知識を活かし、医療福祉の情報が正しく伝わるよう日々発信を続けている。

ADL(日常生活動作)とは

ADL(Activities of Daily Living)とは、日常生活を送るために必要となる基本的な動作のことです。日常生活動作とも言われ、具体的には以下のような動作を指します。

・立ったり座ったりする動作
・移動する動作
・ベッドから車椅子などに乗り移る動作
・食事をする動作
・衣服を着替える際の動作
・排泄の動作
・入浴を行う際の動作
・身だしなみを整える動作


認知機能や身体機能、精神面の状態、社会環境などが悪化するとADLも低下します。 また、ADLの低下により身体機能が下がると身体的なバランス機能などが低下し、歩行が困難になったり食欲減退につながるため、体力面で日常生活に支障が出ます。さらには寝たきりのような状態にもなりやすくなるため注意が必要です。



ADL(日常生活動作)の種類

ADLは、主に2種類に分けられます。基本的日常生活動作と呼ばれるBADLと、手段的日常生活動作と呼ばれるIADLです。この2種類にはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの意味と違いについてご紹介します。

・BADL(基本的日常生活動作)とは

BADL(Basic Activity of Daily Living)は、日常生活を送る際に必要な食事や移動、入浴、更衣などの基本的な動作を指します。食事では、食べ物を自分で口まで運んで咀嚼し、飲み込むまでの動作が対象です。 更衣はシャツやズボンを自分で履いたり着たりするような動作を指し、移動は階段の上り下りや自立歩行の動作を指します。そのほか、立ったり座ったりする動作や排泄の動作、身だしなみを整える動作なども対象です。日本でADLといわれる動作は、BADLを指すことが多いといえます。


・IADL(手段的日常生活動作)とは

IADL(Instrumental Activities of Daily Living)とは、BADLよりも比較的複雑な日常生活動作を指すものです。具体的には、買い物やスケジュールの調整を行うことのほか、交通機関を利用た移動や金銭の管理、服薬の管理や調理などの動作が挙げられます。 食事では献立を自分で考えて調理し、配膳をして食べて片付けるまでの動作を指します。更衣では、季節や場所・状況などにふさわしい服装を選択することも含まれます。身だしなみを整えて着ることもIADLの対象になります。 移動では交通機関に一人で乗って出かけることや、必要な持ち物・本人が買いたい物を買って会計するまでが対象です。日常生活を自立的に送ることが困難になっていく場合は、まずはIADLが低下するケースが多く見られます。



ADLの評価方法

ADLの評価を行う際には、いくつかの指標があります。代表的なものとして挙げられるのが、BI(バーセル・インデックス)とFIM(機能的自立度評価法)です。ここでは、これらの2つの評価方法を中心に解説します。


BIとは?

BIはバーセル・インデックスと呼ばれ、本人ができる日常生活動作を測る方法として使われる指標です。世界的に普及しており、日本の看護現場や介護現場などでも活用されています。介護保険において、ADL維持加算を評価する際の指標にもなっています。BIで評価するのは以下の10項目です。


・食事
・移動(車椅子からベッドへの移動)
・整容
・トイレ
・入浴
・歩行
・階段の昇降
・着替え
・排便のコントロール
・排尿のコントロール


BIでは上記の各項目に対し、自立から全介助まで細かく点数をつけて全項目の合計点で判断します。点数は各項目で自立して行える事柄を15点から0点までの5点刻みで点数化し、100点満点で合計点から評価します。点数が高いほど自立度は高く、一般的には100点が全自立、60点になると部分自立(カットオフ)と評価され、40点では大部分介助、0点の場合は全介助となります。自立と評価されるのは85点以上です。


BIでの評価のメリットとして、採点が簡単で評価を早く行える点があります。また点数の高さで自立度を測れるため、わかりやすい点もメリットです。その反面デメリットもあり、点数が大まかであることや細かい能力の把握が難しいこと、採点の根拠が不鮮明であることなどが挙げられます。

FIMとは?

FIMは機能的自立度評価法と呼ばれ、日常生活を送るなかで実際に本人が行っている日常生活動作をもとにして評価を行います。項目の内容や合計点数、認知機能の有無などがBIとの違いです。本人が自立して行える本来の能力が現れやすい点が、この評価法の特徴です。FIMでは、運動項目で13項目、認知項目で5項目の合計18項目で判定されます。判定される具体的な項目は、以下のとおりです。


【運動項目】

セルフケア(6項目)
・食事
・整容
・清拭
・上半身更衣
・下半身更衣
・トイレ動作
排泄(2項目)
・排尿コントロール
・排便コントロール
移乗(3項目)
・ベッド、椅子、車椅子
・トイレ
・浴室やシャワー
移動(2項目)
・歩行、車椅子
・階段


【認知項目】

コミュニケーション(2項目)
・理解(聴覚・視覚)
・表出(音声・非音声)
社会認識(3項目)
・社会的交流
・問題解決
・記憶


これらの各項目について、すべて自立して行える状態が7点で、すべて介助が必要な状態では1点として採点します。点数が高いほど自立度は高く、すべての項目を自立して行える状態のときは126点、全ての項目を全介助の状態のときは18点です。FIMのメリットとして、どの疾患にも対応できることや、適応の年齢幅が広い点などが挙げられます。




ADL(日常生活動作)低下の原因

ADLが低下するとき、どのような原因が考えられるのでしょうか。身体機能の低下や生活習慣病、認知機能の衰え、気分の落ち込みなど、ADLが低下する原因はさまざまです。ここでは、ADLが低下する主な原因を要因別に詳しく見てみましょう。

身体機能の低下

歳を重ねるにつれ、基本的に筋力や体力は低下します。それにともなって外出や家事を行う機会が減少すると、運動の機会が減ってさらに筋力や体力が低下します。そのような悪循環により、身体機能の低下はADLを加速度的に進めてしまうことがあるため、できるだけ運動を取り入れるなどの対策が必要です。

生活習慣病

生活習慣病である糖尿病・高血圧などは、喫煙や飲酒、偏った食生活、ストレスなどが原因で発症しやすくなるといわれています。生活習慣病によって行動が制限されて運動の機会が減少すると、筋力が低下して関節の委縮なども起き、ADLの低下につながります。生活習慣病は寝たきりの状態を招く恐れもある病気です。生活習慣病の予防や食習慣の改善などの対策をすれば、ADL低下を予防できるでしょう。

認知機能の低下

認知機能が低下すると、それにともなう症状などにより日常生活が制限されます。身体を動かすことが思うようにできなくなると、歩行障害や食事・排泄などの行動も自立して行うことが困難になり、ADLが低下します。そのほか、料理の仕方や買い物、予定を立てて行動することなども難しくなると、ADLの低下に大きな影響を与えるでしょう。認知機能低下を予防する体操や脳トレを行うといった方法で、ADL低下の予防につなげられます。

気分の落ち込み

気分の落ち込みなど、精神が不安定になると日常生活にも影響が出やすくなります。外出をしたり人と会ってコミュニケーションを取ったりすることができなくなり、それがきっかけで認知機能や運動機能が低下し、ADLの低下につながる恐れもあるでしょう。意欲の低下なども重なると日常生活を送るうえでも大きな影響が出るため、気分の落ち込みが見られた場合には、ADL低下を防ぐためにも早めにケアしなければなりません。



ADLを向上させる・低下を防ぐためのポイント

ADLを向上させたり、低下を防いだりするためには、具体的に何を行えばよいのでしょうか。ここでは、ADLを向上させ、低下を防ぐためのポイントをご紹介します。

QOL(Quality of life)を高める

QOL(Quality of life)とは生活の質を指す言葉です。ADLの低下を予防するためには、QOLを高めることが効果的です。家族との生活のなかで自分の役割を担うことに加え、地域の活動で何らかの役割を引き受けたりするとコミュニティが増え、幸福感や満足感を得られます。体力に余裕があれば、短時間の就労を行うことも良いでしょう。ハローワークで高齢者向けの求人を探したり、シルバー人材センターに登録したりすると、生活や体力に合った求人を見つけられます。


働くことで社会とのつながりが増えれば日常生活におけるQOLが高まり、ADL低下の予防にもなります。働く以外にも趣味など日々の楽しみを見つけることも、生活の質の向上につながるでしょう。ご自身の生活の質を高める方法を見つけ、実践することが重要です。

過介護(介護のしすぎに)注意する

家族が日常生活を送るなかで、今まで普通にできていたことが困難になっている場面に直面するケースもあるでしょう。家族のADLが低下していると感じたとき、負担を減らす目的で何でも手伝ってしまうケースも多く見られます。しかし、過介護は自立して行動する機会を奪い、運動や自立して考える機会が減り、さらにADLが低下するきっかけになる恐れがあります。


自立した行動ができる間は今までより少々時間がかかっても、寄り添いながらできるだけ多くのことをご自身で行ってもらうよう心がけましょう。手助けが必要な部分と自立してできる部分を見極めながら、サポートしすぎず、必要最低限なところだけ介護を行うようにすれば、ご家族のADL低下防止につなげられます。

運動とバランスの良い食事

筋力や運動能力の低下は、ADLの低下にも直結します。ウォーキングやラジオ体操を日課にするなど、無理せずに行える範囲で運動を行いましょう。 運動は、体力や筋力の維持だけでなく、柔軟性を保つためにも有効です。体力に合わせて、階段を利用したり歩いて買い物に出かけたりすると、運動を行う意欲も高められます。


筋力・運動能力を維持するためには運動だけでなく、栄養バランスが整った食事も肝心です。歳を重ねると食が細くなり、食生活が偏りがちになります。たんぱく質を積極的に摂取して筋力を維持できるだけの栄養を補給できれば、ADLの低下も防止できます。

生活環境を整える

自立した生活を長く送るためには、生活環境の整備も大切です。屋内で行動しやすい環境づくりのため、玄関や浴室の段差の解消や引き戸の導入、階段・浴室・トイレなどに手すりを設置するなど、リフォームを行うと安心できます。 移動や移乗などの行動がスムーズになるほか、転倒などによる怪我の防止にも役立ちます。


また、外出の際には福祉用具の活用も効果的です。シルバーカーの導入や歩行補助杖の使用などにより、比較的手軽に外出できて引きこもりの防止になります。福祉用具には、シャワーチェアやスロープ・手すりなどもあり、レンタルが可能なものも多くあります。積極的に活用して、ADL低下の防止に役立てましょう。

福祉用具についての詳細は、こちらの記事(介護用品でそろえるべきものとは|必要な福祉用具を選ぶポイント)で解説しています。

リハビリテーションの活用

ある程度の介護が必要となったケースなどでは、リハビリテーションの活用も有効です。リハビリテーションを行えば筋力や体力の維持にも効果があるほか、リハビリ施設に出かける機会ができ、利用しているほかの方とのコミュニケーションも生まれてADL低下を防止できます。訪問リハビリでも、トレーナーと接することで認知機能の維持などの効果が期待できます。また介護保険を利用できれば、デイサービスなどの活用も効果的です。



まとめ

日常生活を送るうえで必要となるADLは、生活習慣の改善によって低下を防ぎ、症状によっては向上させることも可能です。自身で行動できる事柄まで介護してしまうとADLの低下が進んでしまう危険性があるため、よく状態を判断して適切な手助けを行えるよう心がけましょう。 また、実際に介護が必要となった場合にはADLの評価を確認し、現在の状況を把握することが大切です。


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