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高齢者を支える女性
2024.08.01

高次脳機能障害とは?5つの症状や回復過程・具体的な治療方法を解説

「高次脳機能障害ってなに?」「どのような症状があるの?」と疑問に思っていないでしょうか。


高次脳機能障害は脳の損傷に伴う後遺症のひとつです。意図した行動ができなくなったり、注意機能・記憶に障害が生じたりするため、日常生活に支障をきたします。

生活への支障を減らすには、症状を正しく理解し、適切な治療・対処をすることが重要です。


本記事では、高次脳機能障害に関する以下の内容を、医学的根拠をもとに解説します。


● 高次脳機能障害の症状
● 高次脳機能障害の回復過程
● 症状への対処法


高次脳機能障害がある方への接し方や、関連する悩みを解決できる内容になっています。症状や今後の生活に不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みください。


目次
・高次脳機能障害とは?
・高次脳機能障害で生じる5つの症状
・高次脳機能障害と認知症の違い
・高次脳機能障害の検査・診断基準
・高次脳機能障害の経過と回復過程
・高次脳機能障害の治療法
・高次脳機能障害の症状に対処する方法3選
・高次脳機能障害の症状を理解して適切な対処をしよう

執筆者画像
【監修】精神科専門医、精神保健指定医、認知症診療医、博士(医学)。 ブレインケアクリニック名誉院長 ・一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所代表理事・所長 今野裕之先生
順天堂大学大学院卒業。老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。大学病院や精神科病院での診療を経てブレインケアクリニック開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。認知症予防医療の普及・啓発のため日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立し、幅広く活動している。 著書・監修に「ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう 認知症診療医に教わる最強の生活習慣(世界文化社)」など。 医師+(いしぷらす)所属。

高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害とは、脳の部分的な損傷により、言語や思考、記憶などの知的な機能に障害が起こった状態です。


高次脳機能障害は、交通事故や脳卒中など、脳の損傷が原因で発症します。「公益社団法人 東京医師会」が公表している資料によると、高次脳機能障害を発症した原因の約8割が脳血管障害、約1割が頭部外傷となっています。


高次脳機能障害では記憶や注意機能に障害が起こるため、治療や退院後の生活に支障をきたす点が特徴です。歩行やトイレなどの基本的な行動は問題ありませんが、役所や銀行での手続き、交通機関の利用など、社会的な活動に支障をきたします。実際に障害があっても外見上はわかりにくいため、周囲から気づかれないケースは少なくありません。正確な診断が難しいため、本人自身も障害を十分に認識できていないことがあります。


高次脳機能障害は、治療や援助によって症状が改善、もしくは社会生活への適応が可能なケースがあるため、早い段階からの対処が重要です。


高次脳機能障害で生じる5つの症状

高次脳機能障害で生じる特徴的な症状は、以下の5つです。


● 注意障害
● 記憶障害
● 遂行機能障害
● 社会的行動障害
● 言語障害


高次脳機能障害に対する適切な治療や対応をするためには、症状への理解が重要です。具体的な事例を一緒に覚えておくと、状況ごとに適した対処ができるでしょう。


症状1.注意障害

高次脳機能障害では、注意力や集中力が低下する注意障害という症状が現れます。周囲の環境に気を配れなくなるため、作業ミスが多くなったり、空間認識ができなくなったりするのが特徴です。具体的には、生活内で以下のような支障をきたす可能性があります。


● パソコンを使った作業でミスが多い
● 人の出入りや音などの刺激が多いと気が散る
● じっと座っていられない


脳の損傷部位によっては、左右どちらかの空間だけ認識しにくくなる症状(半側空間無視)も現れます。

生活への支障を減らすには、こまめに休憩をとる、刺激の少ない環境にするなどの対処法が推奨されます。


症状2.記憶障害

記憶障害も高次脳機能障害の特徴的な症状のひとつです。記憶に関する機能が低下し、以前のことを思い出せない、新しいことを覚えられないといった症状が現れます。実生活に例えると、以下のような影響が出ます。


● 外出しようとするたびに家の鍵が見つからない
● 昨日約束したことについて聞かれても思い出せない
● 買い換えた家電の操作方法が何回聞いても覚えられない


高次脳機能障害によって生じる記憶障害では、特に脳の損傷時よりもあとの出来事が思い出せなくなります。生活への支障を減らすには、メモ書きをする、ものの置き場所を固定するなどの対処を行います。

記憶障害についての詳細は、こちらの記事(【記憶障害とは】原因や種類と対処法について)で解説しています。


症状3.遂行機能障害(実行機能障害)

高次脳機能障害では、一連の作業を行ったり計画を立てたりする機能が低下する、遂行機能障害が生じる可能性もあります。具体的には、日常生活に以下のような支障をきたします。


● 道具(歯ブラシやドライヤーなど)の使い方が理解できない
● 時間通りに行動できない
● 段取りを立てて料理ができない


なにかの目的を達成するために、適切な計画を立てられなくなるのが特徴です。

遂行機能障害は、段取りができなくなる反面、習慣化した行動は円滑に行えるケースが多いです。そのため、都度指示をしてもらう、行動を習慣化するなどの対処を検討しましょう。

遂行機能障害についての詳細は、こちらの記事(遂行機能障害とは/原因や症状、認知症との関連性を解説)で解説しています。


症状4.社会的行動障害

高次脳機能障害では、感情や行動、言動をコントロールする機能が低下する社会的行動障害が現れる場合があります。主な症状は、興奮して大声を出す、自己中心的になるなどです。具体的には以下のようなケースで支障をきたします。


● 退院後の環境変化に適応できず泣き始める
● 話しかけてきただけで怒鳴り始める
● 異性に対して性的な話や行動が止まらない


高次脳機能の障害による直接的な症状以外にも、注意障害や記憶障害によって思うように行動できず、二次的に生じている可能性もあります。社会的行動障害による支障を減らすには、ストレスのかかる環境を避ける、周囲に事情を説明するなどの対処を行います。


症状5.言語障害

高次脳機能障害では、コミュニケーションに支障をきたす言語障害が現れるケースもあります。言語障害は、うまく話せなくなったり、字の読み書きができなくなったりするのが特徴です。具体的には、以下のような支障が生じます。


● 言いたい言葉が出てこない
● 言葉は聞き取れるが内容を理解できない
● 本や資料の内容を理解できない


言葉を聞いたり、文字を判別したりすること自体はできるものの、意味を認識できなくなるのが特徴です。日常生活への支障を減らすためには、話し方を工夫する、絵や図形のような視覚情報を使うなどの対処を行います。


高次脳機能障害と認知症の違い

高次脳機能障害と認知症は、一部似た症状が現れるため混合されやすいです。高次脳機能障害と認知症には、主に以下のような違いがあります。

高次機能障害と認知症の違いを表した図

高次脳機能障害は、脳卒中や交通事故など、明確な原因のあるケースがほとんどです。一方、認知症は加齢による脳の変性で徐々に生じるため、多くの場合で発症時期が明確ではありません。


また、高次脳機能障害は治療によってある程度の回復が見込めるのに対し、認知症は少しずつ症状が進行していく点も異なります。ただし、高齢の場合は両者が影響している可能性もあり、明確に区別がつけられるわけではないため注意が必要です。

認知症について詳しく知りたい方は、こちらの記事(【認知症とは】基本を知ろう!原因・症状・治療や予防法について

)も参考にしてみてください。


高次脳機能障害の検査・診断基準

高次脳機能障害は、医学的に以下の検査項目を経て診断されます。


● 主な症状を確認する
● MRI・CTなどで客観的な所見を診る
● 除外項目に当てはまっていないか確認する


高次脳機能障害は、退院後の生活で発覚するケースが少なくありません。検査や診断の過程を理解しておくと、疑いのある症状が見られた際に、適切な対処ができるでしょう。


1.主な症状を確認する

高次脳機能障害が疑われる場合は、まず症状の確認を行います。高次脳機能障害の代表的な症状に関して問診を行ったり、評価尺度を用いて検査したりするのが一般的です。


記憶障害や注意障害、認知機能の低下など、高次脳機能障害によくある症状について包括的に検査を実施します。医師による問診の段階で、高次脳機能障害の疑いがある場合は、機器を用いた精密な検査が行われるでしょう。実際に障害がある場合は適切な受け答えが難しいため、本人の家族や一緒にいる方からの情報収集をもとに行われるケースが多いです。


2.MRI・CTなどで客観的な所見を診る

高次脳機能障害の診断には、MRIやCTを使った検査も行います。高次脳機能障害は、脳卒中や交通事故などが原因で発症することが多い疾患です。そのため、高次脳機能障害を引き起こす脳の損傷がないかどうかを確認します。


MRIやCTによる検査は、診断の目的以外に、どのくらい障害が残るかの指標としても用いられます。


3.除外項目に当てはまっていないか確認する

症状の確認や客観的評価のあとに、除外項目に該当しないか確認します。具体的には、似たような症状が見られる認知症や発達障害などとの区別を行います。


診断時に区別する理由は、それぞれの疾患ごとに対応が異なるからです。高次脳機能障害だと思って受診したものの、別の疾患だった場合は、専門的な治療や対処が必要になることもあります。


高次脳機能障害の経過と回復過程

高次脳機能障害は脳の損傷や変性によって生じるため、完治は難しいとされています。しかし、適切な治療を受けることで症状が回復する可能性があります。とくに、脳卒中のように脳の損傷が原因で高次脳機能障害を発症した場合は、発症早期の方ほどよくなる傾向が強いです。


ただし、高次脳機能障害を発症したすべての方が回復するわけではありません。発症(受傷)から年数が経った場合では、よくなる程度に限界があります。そのため、高次脳機能障害は発症早期に適切な治療を受けることが重要です。


高次脳機能障害の治療法

高次脳機能障害に対する治療法は、主に以下の2つが挙げられます。


● リハビリテーション
● 薬物療法


高次脳機能障害の改善には、医学的な対処が重要です。各治療法の特徴を理解しておくと、適切な内容を選択できるでしょう。


リハビリテーション

高次脳機能障害を発症した方には、多くの場合リハビリテーションが適応になります。国立障害者リハビリテーションセンターが公表している高次脳機能障害者支援の手引きによると、医療機関や身体障害者更生施設で医学的リハビリテーションを含む訓練を受けた方では、発症から6ヶ月で74%、発症から1年で97%の方に一定の改善が見られています。


高次脳機能障害に対するリハビリテーションの目的は、認知行動療法や代償訓練によって機能回復をすることです。具体的には、テストやドリルなどの机上の訓練を行い、高次脳機能の改善を図ります。また、症状自体の改善が困難な場合は、習慣化や環境支援などによって、日常生活に支障がないように適応させる訓練を行います。


リハビリテーションは症状自体の改善だけでなく、日常生活への支障を減らせる可能性がある治療法です。


薬物療法

高次脳機能障害がある方に対しては、薬物療法が行われる場合もあります。薬物療法の主な目的は、高次脳機能障害に関連する感情のコントロールや、副次的な症状を抑えることです。


高次脳機能障害に対する薬の影響を調査した研究では、薬物療法は注意機能障害や記憶障害を改善する効果が期待できると言われています。薬によって症状を一時的に抑えられると、日常生活への支障を軽減できるため、高次脳機能障害がある方には有用な治療と言えるでしょう。


また、高次脳機能障害は脳の損傷によって生じるため、脳自体の回復を補助したり、脳卒中の再発を予防したりする目的でも薬物療法は行われます。


高次脳機能障害の症状に対処する方法3選

高次脳機能障害の症状に対処する方法として、以下の3つが挙げられます。


● 症状を理解する
● 環境整備をする
● 医療・介護福祉のサービスを利用する


高次脳機能障害は日常生活に及ぼす影響が大きいため、症状と向き合う方法を知っておくことが重要です。それぞれの対処法を理解できると、本人・支援者ともにストレスの少ない生活が送れるようになるでしょう。


対処法1.症状を理解する

高次脳機能障害とうまく付き合っていくためには、まず症状を正しく理解する必要があります。症状の詳細がわかっていないと、なぜ生活に支障をきたすのか理解できないからです。


高次脳機能障害の症状は脳の損傷・変性部位によってさまざまです。そのため、症状に合わせた対処法を選択します。具体的には、習慣化をする、道具を利用するなどが挙げられます。また、高次脳機能障害がある方をサポートする際も、症状の特性を理解したうえで対応することが重要です。症状について理解を深めると、双方にストレスのない関わり方ができるでしょう。


対処法2.環境整備をする

高次脳機能障害には、環境整備による対処も効果的です。環境整備とは、障害があっても生活できるような住環境に整えることです。具体的には「動作をパターン化できるようにする」「メモを貼ることで視覚的に情報を得て行動できる環境にする」などが挙げられます。


国立障害者リハビリテーションセンターが公表している「高次脳機能障害支援マニュアル」でも、高次脳機能障害のある方が安心して行動できるような環境調整の重要性が述べられています。ひとりで生活する方や、仕事への復帰を目指す方には、とくに重要な対処法と言えるでしょう。


対処法3.医療・介護福祉のサービスを利用する

長期的に高次脳機能障害の症状と向き合っていくためには、医療や介護・福祉のサービスを利用することがおすすめです。公的制度のなかには、高次脳機能障害がある方に向けた支援制度が複数存在します。


医療費に関する制度や、身体障害者手帳の取得により受けられる支援など、その種類はさまざまです。たとえば、身体障害者手帳の取得によって受けられるサービスには、以下のようなものがあります。


● 医療費負担の軽減
● 国税や地方税の控除または減免
● 公共料金の割引
● ハローワーク・支援センターによる就労支援


また、介護保険を取得して訪問介護(ヘルパー)のようなサービスを利用すると、本人だけでなく、支援する家族の負担も軽減できる可能性があります。高次脳機能障害の症状は、心身ともに負担がかかることが多いため、制度やサービスを利用して、うまく付き合っていくことが重要です。


公的支援のなかで、介護保険サービスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事(要介護認定とは?制度概要や申請方法・介護保険サービスを利用するまでの流れを解説)も参考にしてみてください。


高次脳機能障害の症状を理解して適切な対処をしよう

高次脳機能障害は、脳の損傷や変性によって注意機能障害や記憶障害などの症状が現れる疾患です。高次脳機能障害の症状は、日常生活への支障をきたすだけでなく、学校や仕事など、さまざまな社会活動に影響を及ぼします。


高次脳機能障害は、早期に適切な治療を受けることで、回復する可能性がある疾患です。周囲の支援や公的サービスを利用すると、日常生活に及ぼす支障を軽減できるでしょう。

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