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化粧と口腔ケアの関係性 TOP画像
2024.07.05

化粧と口腔ケアの関係性【資生堂の化粧療法に学ぶvol.4】

化粧は、身だしなみを整えるだけでなく、心身にもさまざまな影響を与えます。本連載企画は、株式会社資生堂にて、化粧療法の研究を行っている池山さんにインタビューを実施。化粧による効果を「心」「脳」「身体」「口腔」の4つの視点でご紹介します。


第4回目の記事では、介護現場における化粧の在り方と化粧による「口腔」への影響をお届けします。


過去の記事はこちら

化粧と心の関係性【資生堂の化粧療法に学ぶvol.1】

化粧と脳の関係性【資生堂の化粧療法に学ぶvol.2】

化粧と身体機能の関係性【資生堂の化粧療法に学ぶvol.3】


目次
・介護現場における化粧の在り方
・化粧が口腔ケアに与える影響
・まとめ_資生堂が化粧療法を行う理由

執筆者画像
池山和幸さん
医学博士・介護福祉士・日本口腔ケア学会認定口腔ケアアンバサダー 専門は化粧療法学。三重県生まれ。京都大学大学院医学研究科にて学位(医学)取得。大学院在学中に介護福祉士の資格を取得。2005年資生堂に入社後、化粧療法研究に従事。著書には、『「粧う」ことで健康寿命を伸ばす化粧療法(クインテッセンス出版)』、『装いの心理学(北大路書房)』(分担執筆)、『化粧の力の未来(フレグランスジャーナル社)』(分担執筆)がある。 現在、資生堂ウェブサイト「化粧療法研究室」にてブログ公開中! https://corp.shiseido.com/seminar/jp/labo/index.html

介護現場における化粧の在り方

化粧療法の様子

ADL向上のための整容講座の様子(資生堂ジャパン㈱提供)


――池山さんはこれまで、さまざまな介護施設で研究を行ってきたかと思います。介護現場における、化粧の捉え方をどのように感じていますか?


介護現場では、食事や排泄介助は重要視されますが、化粧への重要度は低いと感じることがあります。顔を洗って髪の毛を整えて終わり、という場面を目にすることも……。


また、介護現場の方々からは、「高齢の方々は、自分で化粧ができないだろう」という声も耳にします。「スタッフが介助しないとできない、本人たちは興味がない」といった思い込みや、ほかの業務の忙しさもあって、化粧への意識も薄れてしまう。


――他の業務や忙しさから、化粧への意識は低くなってしまいますね。


介護現場では、どうしても化粧の優先順位が低くなってしまいます。しかし、化粧は、ADL*やQOLの維持・向上につながる一つの手段であることを、ぜひ多くの方に知っていただきたいです。


*ADL(Activities of Daily Living)…食事・排泄・着脱衣・入浴・移動など日常生活を送るために必要な基本動作

ADL低下の流れ

(参照:https://corp.shiseido.com/seminar/jp/labo/

そのうえで、肌を清潔に保つうえで、化粧水をつけるなどのスキンケアは毎日することをおすすめします。一方、スキンケアの次にするメイクは、毎日しなくてもよいかと思います(落とすのが大変ですから)。誕生日やイベントのときなど、ハレの舞台にすると良いでしょう。


――実際に、介護施設で化粧療法を行う際、その大切さをどのように伝えていますか?


高齢の方々にはADLやQOLの維持・向上などと難しいことは言わず、シンプルに化粧の楽しさを伝えるよう意識しています。そして、一方で施設スタッフの方々には、化粧療法における各動作の効果や意味を伝え、健康維持のための一つの手段であることを意識してもらうようにしています。


――現場スタッフの方にも化粧の理解を深めていただくことが大切ということですね。


その通りです。日本では年齢を重ねると「こんな年だから……」と化粧に対して後ろ向きな気持ちを持つ方がいます。また、「いい歳して化粧なんて……」と言う方もいます。そのような価値観が残る現状を変えるためにも、まずは現場スタッフの方に化粧療法の効果を理解してもらうということが大切だと考えています。


化粧が口腔ケアに与える影響


――ここからは、化粧による「口腔」への影響を詳しく伺えればと思います。具体的にどのようなことが口腔ケアにつながりますか。


化粧療法による唾液の変化
化粧療法による唾液分泌量の変化図

2014年 長期療養型病院(同一対象者で実施) 平均年齢:87.8±6.4歳 平均介護度:3.6±1.3 N=16

出典:Dental Diamond,2:44-55,2017

(参照:https://corp.shiseido.com/seminar/jp/labo/


高齢になると、薬を服用する機会が多くなります。すると、薬の副作用でドライマウスになりやすくなり、誤嚥性肺炎などを起こすリスクが高まります。


そのため、口の中の乾燥を防ぐ必要があり、化粧療法にはその効果が期待できます。具体的には以下3つの状態を作り出すことで、唾液の分泌を促すといわれているので、それらを化粧療法の中で実施していくことで、ドライマウスを防ぐことにつながります。


①リラックスをする…化粧品の良い香りを嗅ぎながら、肌が気持ちよくなるため、リラックス状態になる。

②口を動かす…周囲の人と化粧について話をすることで、自然と口が動く。

③唾液腺マッサージをする…スキンケアをする過程で、唾液腺を意識して触れる。

※唾液腺…耳下腺:上奥歯あたりの場所、顎下腺:顎骨下内側あたりの場所、舌下腺:顎の真下あたりの場所


――口腔ケアの効果を高める化粧のポイントはありますか。


まずは、スキンケアの際に周囲の人が唾液腺の場所を伝えて、意識して触ることで肌と口の中が潤うことを実感してもらいましょう。そして重要なことは、楽しんで化粧・スキンケアを行うことです。楽しむことで、自然と会話が生まれ口が動きますし、リラックスしやすくなります。


――化粧と口腔ケアの関係性がとてもよくわかりました。


人が生きているなかで、最期まで残る動作は“食事と排泄”です。最期まで、ご本人が食べたいものを食べていただくためにも、口腔の機能維持・向上は大切なポイントとなります。


化粧は高齢になるほど離れてしまいがちですが、化粧を通じて口腔ケアのサポートをしていくことで、なるべく身近な存在であり続けたいと思っています。


まとめ_資生堂が化粧療法を行う理由

インタビューに答える池山さん

――捉え方を変えることで、化粧がいつまでも身近な存在になるのですね。


人々に「初めて化粧をしたのはいつ?」と聞くと多くの方が七五三と答えます。まさに化粧の“入口”です。その後、年齢を重ねるにつれ、結婚式をはじめとしたライフイベントがあり、化粧は日常の生活習慣となります。しかし、高齢になり、特に要介護や要医療状態になると化粧をしなくなる、できなくなるという化粧の“出口”に近づいていきます。


資生堂は、いつまでも化粧を通じて健康でいていただくために、化粧に対する“出口をつくらないサポートすること”を使命だと考えています。


――化粧療法を実施される背景にある思いを知ると、化粧に対する印象も変わります。さいごに、化粧療法を通じた今後の展望を教えてください。


資生堂は、BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORL(美の力でより良い世界を)というミッションを掲げています。加えて、SDGsの基本理念は「誰一人取り残さない」であり、その言葉を我々に置き換えたときには「化粧のちからで誰一人取り残さない」世界になればと思います。


人間誰もが生きていれば体調を崩したり、病気になることがあります。身体虚弱になると化粧との接点が自然と薄れてきますが、そんな方々に「できることはなにか」を考えてきました。資生堂は、今後も化粧療法を通じて高齢者のADLやQOLの維持・向上をサポート、そして健康寿命の延伸を目指していきたいと思っています。

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