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化粧と身体機能の関係性に関するイメージ画像
2024.06.28

化粧と身体機能の関係性【資生堂の化粧療法に学ぶvol.3】

化粧は、身だしなみを整えるだけでなく、心身にもさまざまな影響を与えます。

本連載企画は、株式会社資生堂にて、化粧療法の研究を行っている池山さんにインタビューを実施。化粧による効果を「心」「脳」「身体」「口腔」の4つの視点でご紹介します。


第3回目の本記事では、資生堂の化粧療法の特徴と化粧による「身体」への影響をお届けします。


過去の記事はこちら

化粧と心の関係性【資生堂の化粧療法に学ぶvol.1】

化粧と脳の関係性【資生堂の化粧療法に学ぶvol.2】


目次
・整容・スキンケアの大切さ
・化粧と身体機能(腕の筋肉)の関係性について
・使いにくいことにも目を向け、最後は褒める

執筆者画像
池山和幸さん
医学博士・介護福祉士・日本口腔ケア学会認定口腔ケアアンバサダー 専門は化粧療法学。三重県生まれ。京都大学大学院医学研究科にて学位(医学)取得。大学院在学中に介護福祉士の資格を取得。2005年資生堂に入社後、化粧療法研究に従事。著書には、『「粧う」ことで健康寿命を伸ばす化粧療法(クインテッセンス出版)』、『装いの心理学(北大路書房)』(分担執筆)、『化粧の力の未来(フレグランスジャーナル社)』(分担執筆)がある。 現在、資生堂ウェブサイト「化粧療法研究室」にてブログ公開中! https://corp.shiseido.com/seminar/jp/labo/index.html

整容・スキンケアの大切さ

――過去の記事では、資生堂さんの化粧療法の歩みや特徴についてお話を伺いました。化粧療法に近い言葉でメイクセラピーがあると思いますが、その違いはどのようなものでしょうか。


メイクアップセラピーはメイクアップが主役ですが、化粧療法は、メイクアップと同じくらいスキンケアを重視します。また、弊社が行う化粧療法では、清拭(顔や手を拭く)や整髪など身だしなみを整えることも重要な要素と考えています。


――化粧療法は、土台づくりのスキンケアが大切ということですね。


化粧療法には、整容(身だしなみを整える)という考え方がベースにあります。一般的には、身だしなみを整える順番としてスキンケアをしてメイクとなりますので、整容行為の最初のステップのスキンケアをしっかりしておくと化粧療法を続けやすくなります。スキンケアの土台をつくっておくことでメイクアップの効果もより活かされます。


――メイクとスキンケアは具体的にどのような違いがありますか。


スキンケアは自分自身に関心が向く“対自的機能”が働き、メイクアップは他者に意識が向く“対他的機能”が働くものです。つまり、自分自身に関心を持つか、他者に対して関心を持つかの違いになります。

そして、自分に興味を持たない方は外に出る機会が減っていくため、まずは自分に関心が向くスキンケアという行為が大切であるということです。実際に調査したところ、メイクをしない方よりもスキンケアをしない方のほうが閉じこもりがちになっていることがわかっています。

(対自的機能、対他的機能については「【資生堂の化粧療法に学ぶvol.1】」の記事で詳しく解説しています)


化粧と身体機能(腕の筋肉)の関係性について

―― ここからは、化粧による「身体」への影響を詳しく伺えればと思います。化粧の―連の動作と筋肉の関係性を教えてください。


人は化粧をするとき、主に5か所の腕の筋肉を使います。


化粧筋(化粧をするときに主に使う筋肉)
化粧をするときに主に使う筋肉

(参照:https://corp.shiseido.com/seminar/jp/labo/

三角筋、上腕二頭筋、総指伸筋、浅指屈筋、第一背側骨間筋です。そのうち三角筋と上腕二頭筋が化粧動作に関連し、総指伸筋・浅指屈筋・第一背側骨間筋が、容器を扱うときに関わってきます。

つまり、「容器を開ける→液体(化粧水)などを出す→顔に付ける」という一連の動作がそのままトレーニングになります。


――実際にどれぐらいの負荷がかかっているのでしょうか?

筋肉への負荷を表した図

対象者:70代女性10名(平均年齢73.9歳) 千葉大学との共同研究(2012年)
出典:日本生理人類学会 vol.19 No.3 2014一部改編
(参照:https://corp.shiseido.com/seminar/jp/labo/

化粧による動作は食事動作の2、3倍の筋肉を使うということがわかりました。食事は、箸やスプーン、フォークで食べ物を取り、口に運ぶ動作が主です。


一方、化粧は顔の上下左右に合わせた複数の動きが発生し、首回りまで及ぶことがあるため、可動域の広がりとともに筋肉への負荷も大きくなる。つまり、化粧療法を実践していくことで、化粧動作より筋力への負荷が小さい食事動作ができるようになり、食事の自立度が上がるのです。


――近年はユニバーサルデザインを意識している化粧品も多いと思いますが、高齢の方の使いやすさを追求しすぎると、逆に筋力への負荷がなくなるのではないでしょうか。


そうですね。ユニバーサルデザインへの改良は検討するものの、自立支援との兼ね合いを考えるとそのバランスが難しい部分ではあります。もちろん、お客様からさまざまな声をいただき、商品がより使いやすくなるように改善をしていくことは当然ですが、容器の形状をすぐに変えることが難しいという現状もあります。


使いにくいことにも目を向け、最後は褒める

インタビューに答える資生堂の池山さん

――使いやすいことは、必ずしも良いことばかりではないのですね。


「使いにくい=筋力に負担がかかっている」という側面で考えていただくと、使いにくい容器を使うことは、握力のトレーニングになります。介護予防を考えるなら、使いにくいと感じても愛着のある化粧品であれば、あえて使い続けていただくことをお勧めします。もし、どうしても使いにくくて化粧をしたくないと思ってしまうのであれば、使いやすい化粧品容器に詰め替えて使うことを考えましょう。


――他に大切なことはありますか。


ご家族やスタッフは、声掛けや見守りをしつつも、お手伝いはしすぎない。そして、できたことを褒めるということが大切です。

例えば、容器を開けることは、簡単なことのように思えるかもしれませんが、介護度の高い方が自分でできたときに、その動作を褒めることで本人の意欲につながります。肌が綺麗になったこと以外に、褒める部分をいかに探せるかが大切です。


重要なのはご本人に気持ちよく化粧・スキンケアをしていただくこと。


認知症や寝たきりの状態を予防し自立した生活を続けるために、体操やトレーニングを毎日積極的に行うことは難しいかもしれませんが、生活の一部である化粧なら続けやすいと思います。


スキンケアを続けることは自立した生活を続けることにもつながるのです。

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