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高齢者の女性に道案内をする女性
2024.03.07

【独居高齢者(独居老人)とは】一人暮らし高齢者が安全に暮らすための対応

近年、少子高齢化や社会状況の変化により、一人暮らしの高齢者が増加しています。「高齢の親が、離れた場所に一人で暮らしている」「近所で一人暮らしの高齢者の姿をよく目にする」など、身近に感じている方も多いのではないでしょうか。


本記事では、一人暮らしの高齢者=独居高齢者(独居老人)に注目し、増加の背景や問題点、安全、安心な暮らしを実現するためのポイントを紹介します。


目次
・独居高齢者(独居老人)とは
・高齢者が独居になる理由
・独居と孤立の関係性
・一人暮らしの高齢者が安全に暮らすには
・一人暮らしの高齢者が利用できるサービス
・まとめ

執筆者画像
東京都健康長寿医療センター研究所 東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター 副センター長 植田 拓也 先生
老年学、公衆衛生学、介護予防、理学療法学など、さまざまな分野を研究。現在は、東京都健康長寿医療センター研究所に所属しながら、厚生労働省や東京都、また複数の市区町村の介護予防や介護保険に関する委員も務める。

独居高齢者(独居老人)とは

まずはじめに、独居高齢者の定義や近年の社会における状況について解説します。


独居高齢者(独居老人)の定義

一般的に、65歳以上で、配偶者や親族とともに生活しておらず、ひとりで日常生活を送っている人を独居高齢者といいます。


令和4年時点で、日本の総人口は1億2,495万人となり、そのうち65歳以上の人口は3,624万人となりました。総人口に占める65歳以上の割合は29.0%となっています。独居高齢者の増加は、高齢者の人口増加に加えてさまざまな要因が関わっており、本人はもちろん、家族や地域社会にも影響が出てくることから、注目を集めています。


日本社会における高齢者世帯、単独世帯の現状

高齢者世帯数の年度別推移

日本において、65歳以上の高齢者がいる世帯数は、1986年には約976万9千世帯でしたが2022年には約2,747万4千世帯と、約2.8倍に増加しています。全世帯に占める高齢者がいる世帯の割合は、1986年の26%から2022年は50.6%となり、近年は全世帯の約半分が高齢者世帯となっています。


加えて、独居高齢者の世帯数は、1986年は約128万1千世帯(65歳以上の方がいる全世帯の13.1%)だったものの、2022年は約873万世帯(65歳以上の方がいる全世帯の31.8%)と大幅に増加しています。


さらに細かく見ると、独居高齢者の約35.9%が男性、約64.1%が女性という結果になっています。男性は、65~74歳の割合が多く、女性は85歳以上が多くなっており、平均寿命などの観点から女性の方が長生きしやすいことが影響しています。


今後の変化予想

総人口における高齢者人口の割合は、2022年は29.0%ですが、その割合は年々増え続け、2070年には38.7%になると予測されています。独居高齢者世帯数も同様の傾向を示すと考えられます。

出典:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況

出典:内閣府 令和5年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)



高齢者が独居になる理由

高齢者が一人暮らしをする背景には、生活習慣や社会の変化が相互に影響し合っています。本章では、複数の要因を解説します。


未婚や配偶者との離死別

独居になる大きな要因の1つに、配偶者がいないことが挙げられます。未婚や配偶者との離別(離婚)、配偶が亡くなるなどの理由により、結果として一人暮らしになります。

また、未婚の高齢者は年々少しずつ増えており、1960年には未婚の割合は全体の約1%程度でしたが、2015年には男性5.3%、女性4.3%に上。加えて、離別(離婚)の割合は1960年に男性1.3%、女性1.7%だったものの、2015年には男性4.4%、女性5.6%に増えています。

出典:高齢社会白書


頼れる人がいない

核家族化の進行とともに、高齢の親と成人した子供が離れて暮らす風景は一般的になっています。子供は自身の生活があり、お互いに住み慣れた地域への愛着もあるため、結果として親が独居を選択するケースも多くあります。


一人暮らしにメリットを感じている

家族と一緒に暮らすことに幸せを感じる人がいれば、一人で自由気ままに暮らすことに心地よさを感じている人もいます。家族に干渉されることなく、自分がやりたいことを自分のペースで行う。ストレスなく過ごす日常を求めている高齢者もいます。



独居と孤立の関係性

近年、独居や孤立に関する研究がなされており、その関係性が明らかにされてきています。ここからは、独居が一つの要因として挙げられる孤立とそのリスクを解説します。


独居は高齢者の孤立の一要因

私たちの生活のさまざまな場面で、しばしば、独居がマイナスな印象にとらえられることがあります。しかし、最も重大なことは、家族や近隣から孤立してしまう状態に陥ることです。

孤立してしまう背景には、独居に加え、精神的な健康状態が低いこと、同居家族以外からのサポートが少ないことなど、複数の要因があります。独居は孤立の一つの要因でしかないため、必ずしも、独居=孤立ではないことに留意が必要です。


孤立することで起こる、リスクや問題点

ここからは、孤立した高齢者が増えることでの、本人・家族・社会への影響を説明します。


【孤立している本人のリスク】

フレイルの進行

社会的な孤立によって活動機会が低下することで、フレイルが進行する可能性があります。加齢による様々な生理的予備能や生活機能の衰えにより、外的なストレスに対する脆弱性が高まり、感染症・手術・事故などを契機として元の生活機能を維持できなくなる可能性があります。

フレイルについての詳細は、こちらの記事(フレイルとは? 症状や予防法、チェック基準をわかりやすく解説)をご覧ください。


認知症の発症、進行のリスク

社会的交流の減少や脳への刺激の低下により、認知機能の低下や認知症の発症の危険性が高まります。また、早期発見やケアの遅れにより認知症の進行を抑える治療が難しくなる可能性があります。


病気やケガの悪化

病気に対する気づきの機会の減少や、自己管理能力が低下することにより、小さなケガや病気への対処が遅れることで、重大な健康問題に発展してしまうかもしれません。


孤独死

突然の発作や事故が起きたときに助けを呼ぶことができず、発見が遅れることによって孤独死に至ってしまうケースがあります。


犯罪や消費トラブルに巻き込まれる

情報源が限定的になったり、周囲に頼れる人がいなくなるため、詐欺や悪徳商法などの犯罪に遭いやすくなります。令和4年の特殊詐欺の認知件数は1万7,520件だったが、そのうちの約86.6%が65歳以上の高齢者でした。加えて、金融リテラシーの低下や契約時の理解不足などによるトラブル等にも遭遇しやすくなります。

出典:令和5年版高齢社会白書


【家族への影響】

サポート・介護機会の増加

高齢の親が離れた場所に暮らし、地域からも孤立してしまうと、健康状態や体調の変化を把握することが難しくなります。病気やケガの兆候を見逃すことで、親の健康が悪化してしまうケースも少なくありません。すると、家族によるサポートや介護を必要とする場面が増えていきます。


孤独死による突然の別れ

高齢者の健康状態は、突然変化することがあり、最悪の場合、家族が気付かぬうちに、体調が悪化し亡くなってしまうこともあります。突然の別れによる後悔や悲しみはもちろん、孤独死による居住環境の整理などさまざまな対応が発生します。


犯罪や消費トラブルへの対応

一人暮らしの高齢者は犯罪や消費トラブルに巻き込まれやすくなりますが、その影響が家族に及ぶことがあります。本人だけでは対処しきれないことも多いため、家族が対応する必要が出てくる可能性があります。


【孤立した高齢者の増加による社会への問題】

地域のつながり・コミュニケーション機会の減少

高齢者の社会からの孤立は、地域コミュニティの活力低下を招く原因の一つとなります。孤立者が多いことにより、地域のイベントや活動へ参加する人が少なくなり、地域住民のつながりがさらに希薄になるというような悪循環になる可能性があります。


治安の悪化

独居高齢者は犯罪者の標的となりやすく、特に詐欺や窃盗などの犯罪の増加が懸念されます。すると、地域社会の治安も悪化につながってしまうかもしれません。



一人暮らしの高齢者が安心、安全に暮らすには

一人暮らし高齢者の対応ポイント

独居であっても、近隣や友人との関係が充実することで、孤立を防ぐことは可能であることが分かってきています。以下で、一人暮らしの高齢者が安心、安全に快適な日々を送るために、本人ができる対応や家族ができる対策、地域社会ができるサポートのポイントを示します。


本人ができる対応

働くこと

現在は、定年の見直しや再雇用制度の拡充など、雇用形態や多様な働き方の選択肢が増え、高齢者が働きやすい状況になっています。雇用による就労だけでなく、シルバー人材センターなど、働き方もさまざまにあります。仕事を通じて、人や社会とのつながりが生まれ、日々の活力や生きがいが生まれてきます。


積極的な外出とコミュニケーション

定期的にショッピングモールや公園、図書館など、人が集まる場所へ出かけ、近隣の人々との挨拶や会話を日常的に行うことが重要です。会話をすることで、情報収集や地域住民との交流のきっかけ、認知症予防にもつながります。できれば、外出は毎日1回以上がおすすめです。


趣味や好きなことを共有するグループ活動へ参加

地域の趣味クラブや通いの場、教養講座に参加し、同年代や異世代との交流を図ることで、生活意欲や生きがいを高めることにつながります。また、地域コミュニティのイベントやボランティア活動に積極的に関わることもよいでしょう。活動への参加は、できれば週1回以上がおすすめです。


自己管理の徹底

自宅でできる運動やバランスのとれた食生活、口腔ケアを心がけましょう。また、定期的に健康診断を受けたり、歯科受診するなど、自身の健康状態を把握するとともに、必要な医療情報を収集するようにするとよいでしょう。


家族ができる対応

家族自身のご負担にならない限りで、以下のことを本人と取り組むことや提案するとよいでしょう。ただし、押し付けになるとお互いにストレスになってしまうため注意が必要です。


定期的なコミュニケーション

家族は、定期的に電話やメール、テレビ電話をしたり、週末に訪問の予定を組み、定期的な対話を心がけましょう。家族のイベントや祝日を利用して、一緒に食事をしたり、旅行を計画することで、お互いにリフレッシュすることができます。


地域コミュニティへの参加促進

本人に地域とのつながりがないようであれば、地域のイベントや通いの場等のグループ活動に参加をおすすめすることで、社交の場を増やすことにつながるかもしれません。必要に応じて、家族が本人の趣味や特技を発揮できる、地域のグループ活動への参加を手伝うとよいでしょう。


健康管理のサポート

定期的な健康チェックの実施や医療アポイントメントの管理、必要に応じた医療機関への同行をすることで、家族も健康を把握することができます。厚生労働省のデータによると、健康状態がよい人ほど、生きがいを感じる傾向があるため、身近な人が健康状態をサポートすることはとても重要です。


見守りサービスの活用

たとえば安否確認サービスや見守りサービス、緊急通報システムなどを活用することで、家族は高齢の親の状況を把握することができます。


生活環境の整備

状況に応じて、自宅内での事故防止のために手すりを付けたり、段差を改修することも必要です。また、緊急時に備えた通信手段を確保すること、災害時の対応方法や防犯意識を話合っておくことで、生活するうえでのリスクを回避することができるでしょう。


必要であれば共同生活の検討

たとえば、本人の体調に不安があることや何らかの支援が必要そうであれば、家族が同居する考えも一つの選択肢です。同居が難しい場合は、家族が住んでいる近隣に引っ越してきてもらうことも選択肢です。ただし、本人が住み慣れた地域から見知らぬ地域に来ることになるため、新たなコミュニティへの参加などのサポートが必要になるかもしれません。また、要支援・要介護認定を受けることで、介護サービスなどの活用も可能となるので、必要に応じて活用するのもよいでしょう。地域コミュニティへの参加や介護保険に関する相談は、地域包括支援センターに問い合わせると対応してくれます。


地域社会ができるサポート

コミュニケーション機会を創出

挨拶や立ち話を通じて日常的にコミュニケーションを図ることを心がけましょう。その際、地域のイベントや集会情報などを共有することで、地域社会のつながるきっかけが生まれるかもしれません。また、会話のなかで、健康状態やお困りごとを聞き、本人の状態を把握することも重要です。状況に応じて解決策をアドバイスしたり、解決してくれる人を紹介するなど、一歩踏み込んで手を差し伸べることを意識するとよいでしょう。


地域行事への参加を促進

また、独居高齢者を地域の祭りやクラブ活動、食事会などに招待することで、本人も周囲とつながりを持ちやすくなります。その際に、高齢者本人にイベントの企画や運営に関わってもらうことで、周囲とのつながりが深くなるでしょう。


情報共有の強化

回覧板や地域の掲示板、SNSなどを活用し、高齢者にとって必要な情報を定期的に共有する仕組みをつくりましょう。その際、伝達漏れや状況把握のために、本人からの返事や確認サインをもらうことをおすすめします。


行政と連携した見守り

地域包括支援センターと連携して、定期的な安否確認の取組みを地域全体で行うようにしましょう。災害時の支援や情報提供の仕組みを行政と協力して実施すると、万が一の事態にも対応しやすくなります。見守る側と見守られる側ではなく、誰もが見守る側・見守られる側であるという意識のもと進めるとよいでしょう。


安心、安全な地域環境づくり

地域全体で、お互いさまの意識を共有し、お互いの自宅の見回りや安全点検を行い、必要に応じて掃除や管理を手伝うことで、外出時の安全を確保することにつながると考えられます。



一人暮らしの高齢者への支援やサービス

独居高齢者の増加とともに、本人や家族をサポートするためのサービスが増えています。


地域包括支援センターへの相談

地域包括支援センターは、高齢者の生活全般にわたる相談を受け、必要な支援をしてくれる場所です。高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすための総合相談窓口になっています。

地域包括支援センターについての詳細は、こちらの記事(地域包括支援センターの役割とは?活用方法や相談事例をわかりやすく解説)で解説しています。


都道府県や市区町村の見守り活動

全国の都道府県や地区町村が主体となり、地域内のボランティアや事業者と連携し、見守り活動を行っています。また、近年では、民生委員による見守りサービスなども行われています。

詳細は、お住まいの都道府県や市区町村へ問い合わせしてみてください。

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見守り・安否確認サービスの活用

警備会社や電力会社、電気機器メーカーなど、さまざまな民間事業が高齢者の見守りサービスや安否確認サービスを提供しています。

緊急時にボタン一つでスタッフが駆け付けてくれるサービスや人感センサーによる見守りサービスをはじめ、電気機器の使用状況から住んでいる人の状況をお知らせするサービスなどもあります。


シニア向け住宅(高齢者住宅)への入居

介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、住宅型有料老人ホーム、シニア向け分譲マンションなどは、一人暮らしができる元気な状態でも入居することができます。万が一の際には、介護サービスを受けることができるため、本人だけでなく、家族や周囲の方の安心にもつながるでしょう。


介護サービスの利用

家族や身近な方の支援が難しい場合、介護保険を使って介護サービスを受ける方法があります。訪問介護や訪問入浴などの自宅で受けるサービス、デイサービス・デイケア・ショートステイなど通いで受けるサービス、入所特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの入所サービス、と状況・目的に応じてさまざまなサービスがあります。

利用に際しては、地域包括支援センターに申請し、「要介護認定」を受ける必要があるため、詳細は、こちらの記事(要介護認定とは?制度概要や申請方法・介護保険サービスを利用するまでの流れを解説)をご確認ください。



まとめ

本記事では、独居高齢者の定義や増加の背景、独居によって生じる問題とその解決ポイントなどを解説してきました。独居は、孤立につながる一つの要因であり、独居高齢者への必要に応じた支援が必要な場合があります。その際には、本人や家族だけでなく、社会全体の理解とサポートが重要になります。日常生活のなかで、声をかけること、手を差し伸べるなど、小さな配慮が高齢者の安心、安全な一人暮らしにつながるのです。

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