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2024.03.05

フレイルとは? 症状や予防法、チェック基準をわかりやすく解説

誰もが望む健康長寿、近年、この実現のためのキーワードとして、「フレイル」という言葉を耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか。


フレイルについては、さまざまな不安な面もありますが、適切に理解し対応をすることで、元気に健康的な日常を過ごすことができます。本記事では、「フレイル」の具体的な意味や原因、チェック方法や予防方法などを紹介します。


目次
・フレイルの定義について
・フレイルの種類と症状とは
・フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームの関係性
・フレイルになる原因・なりやすい人とは
・フレイルの基準とチェックリスト
・フレイルの予防方法や対応策
・フレイルに関する相談先や医療機関
・まとめ

執筆者画像
東京都健康長寿医療センター研究所 東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター 副センター長 植田 拓也 先生
老年学、公衆衛生学、介護予防、理学療法学など、さまざまな分野を研究。現在は、東京都健康長寿医療センター研究所に所属しながら、厚生労働省や東京都、また複数の市区町村の介護予防や介護保険に関する委員も務める。

フレイルの定義について

フレイルとは、加齢に伴い生活機能や予備能力が低下し、健康状態に対する脆弱性が増した状態を指します。健康な状態と要介護状態になる前の中間の段階を示す言葉として使われています。また、フレイルの一歩手前の状態をプレフレイルといいます。


フレイルは、要介護認定を受けるリスクが高い状態といえますが、一方で、適切な取り組みを行うことで、健康な状態へ回復することも可能です。


フレイルの種類と症状

フレイルには、複数の側面があります。主に、身体的フレイル、精神心理的フレイル、社会的フレイルが挙げられますが、昨今、オーラルフレイルという概念も提唱されています。これらの側面が互いに影響しあい、さらに生活機能の低下につながり、要介護のリスクが高まります。


「身体的フレイル」

日常生活を営むために必要な身体機能が衰えることを身体的フレイルといいます。加齢によって筋肉量が減少すると、歩行速度の低下や握力の低下など、身体機能が低下しやすくなります。また、身体機能の低下に伴う不活動は、心臓や呼吸器、消化器など臓器機能の低下にもつながる可能性があります。


「精神・心理的フレイル」

認知機能や判断力の低下、意欲の低下、抑うつなどの精神症状を精神・心理的フレイルといいます。年齢を重ねていくと、定年退職やパートナーとの別れなど、大きなライフイベントの変化が起こります。それにより、精神面・心理面で抑うつなどの状況に陥ることもあります。また、加齢に伴い認知機能の低下などの症状も出やすくなります。


「社会的フレイル」の症状

社会とのつながりが希薄化し、社会的孤立、独居、経済的困窮した状態などを社会的フレイルといいます。社会的フレイルは、フレイルな人の持つ社会的側面の課題ともとらえられます。家族や近隣住民とのコミュニケーション機会の減少や社会的なイベントへの参加機会の減少により、起こりやすくなります。一方、独居や経済的困窮は、容易に改善できない要素であり、社会的フレイルの構成要素としては議論があるところです。また、独居であっても、友人や近所づきあいがあれば、健康リスクは高くないということも分かっています。


「オーラルフレイル」の症状

噛む、飲み込む、話す、などの口腔機能の低下が低下した状態をオーラルフレイルといいます。口腔機能が低下すると、摂取できる食べ物の選択肢が狭まり、結果として栄養の偏りから、心身機能の低下にもつながります。


フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームの関係性

高齢者の健康状態を表す言葉で、フレイルと類似した「サルコペニア」や「ロコモティブシンドローム」という言葉を聞くことがあります。それぞれの違いや関係性を紹介します。


サルコペニアとは

サルコペニアとは、加齢により筋肉量が減少し筋力が低下した状態を指す言葉です。人間の筋肉量は、30歳代から年間1~2%ずつ減少し、80歳頃までには20歳代と比較して約30~40%の筋肉が失われると言われています※。加齢や活動量の低下、疾患や栄養不足が原因とされており、運動療法や栄養介入によってより具体的に対処されます。

※出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/29/2/29_81/_pdf


ロコモティブシンドロームとは

ロコモティブシンドロームとは、筋力低下、骨や関節の疾患、バランス能力等の低下によって転倒・骨折しやすくなり、自立した生活ができなくなるとともに、介護が必要となる危険性が高い状態のことを指します。日常的に段差や物につまずく、階段・段差を昇るときに手すりや手助けが必要な状態は、ロコモティブシンドロームの可能性があります


3つの言葉の関係性

フレイルは、身体的、精神神経的、社会的な側面を包含する広範な概念です。ロコモティブシンドロームは、身体的フレイルにおいて、運動機能の障害による身体機能が低下した状態を指します。サルコペニアは、フレイルやロコモティブシンドロームの基礎疾患と位置づけられます。

フレイル・サルコペニア・ロコモティブシンドロームは、それぞれが定義する言葉の意味や対象範囲が異なりますが、互いに密接な関連性があります。


フレイルになる原因・なりやすい人とは

フレイルは、身体的、精神心理的、そして社会的要素によって引き起こされます。ここでは、フレイルの原因を3つの側面から詳細に解説します。


身体的要因

筋力低下:加齢により筋肉の量や質が自然と低下し、フレイルの主要な身体的要因の一つです。

慢性疾患:糖尿病や心疾患などの慢性的な健康問題が、身体機能の低下を引き起こし、フレイルになる危険性を高めます。

多剤併用(ポリファーマシー):複数の薬剤を同時に使用することで、薬物の相互作用によってフレイルになる可能性があります。


精神・心理的要因

うつ病:高齢者のうつ病は活動量の減少や生活の質の低下をもたらし、フレイルを加速させます。

認知症:認知機能の衰えは自己管理能力の低下につながり、フレイルの可能性を高めます。


社会的要因

孤立:社会からの孤立は、活動機会の減少や周囲からの支援を受けにくい状態となり、フレイルの要因となり得ます。

経済的困窮:経済的な困窮により、栄養のある食事をとることが難しくなったり、外出機会が制限されるため、健康の阻害・活動意欲の低下へつながり、フレイルになる危険性が高まります。


フレイルの基準とチェックリスト

身近な高齢者がフレイルか否かを見た目では簡単に判断することはできません。そこで、自宅でも簡単にできるチェック方法を紹介します。

日本版CHS基準(J-CHS基準)

日本版CHS基準(J-CHS基準) フレイルチェックリスト

評価基準

・3項目以上に該当:フレイル

・1~2項目に該当:プレフレイル

・該当なし: 健常

(出典:Satake S and Arai H. Geriatr Gerontol Int. 2020; 20(10): 992-993, 日本語版:国立長寿医療研究センター. 佐竹昭介. 健康長寿教室テキスト第2版. P.2)


基本チェックリスト

厚生労働省が介護予防のために作成した基本チェックリストは、フレイル評価にも活用されています。

厚生労働省が介護予防のために作成した基本チェックリスト

出典:https://www.mhlw.go.jp/topics/2007/03/dl/tp0313-1a-11.pdf

評価基準

25項目の質問のうち4~7項目該当でプレフレイル、8項目以上該当でフレイルの可能性があります。


介護予防チェックリスト

介護予防チェックリスト

出典:東京都健康長寿医療センター研究所 「地域で取り組む!フレイル予防スタートブック」を基に作成

評価基準

各質問に、「はい」か「いいえ」で答え、赤文字の回答数を合計します。赤文字が4項目以上該当でフレイルの可能性があります。


サルコペニアの簡易型チェック_『指輪っかテスト』

下記の方法によって、フレイルとも関連性の深い、サルコペニアの危険度がわかります。

指輪っかテスト

両手の親指と人差し指で輪を作り、利き足でない方のふくらはぎの一番太い部分を力を入れずに軽く囲みます。


指で囲んだ時に、親指と人差し指がくっ付いて、その間に隙間ができる場合は、筋肉量が少なく、サルコペニアの危険度が高い状態です。親指と人差し指が隙間なくちょうど掴める場合は、サルコペニアに注意が必要な状態。親指と人差し指がくっ付くことなく、離れている状態は、サルコペニアの危険度が低い状態です。


フレイルの予防方法や対応策

フレイルは、早期発見と適切な対処をすることで、進行を遅らせ健康に近い状態に戻すことができると言われています。具体的な予防・対応方法を紹介します。


医療による疾病の治療と管理

糖尿病や心疾患などの慢性的な病気は、フレイルや要介護のリスクを高めるため、病気をお持ちの方は、まず、かかりつけ医での適切な疾病の治療と管理をすることが必要です。糖尿病、腎疾患などでは、栄養摂取の制限がある方・ない方など病気の状態により対応が異なります。そのため、病気の状態を踏まえたフレイルの対策を医師と相談し、どの程度の取組みをしていくかを決めることが大切です。


運動

運動は、フレイル予防において重要な役割を果たします。定期的な運動により筋力の低下を防ぐとともに、関節の柔軟性を保ち、転倒等を防ぐことにもつながります。また、生活習慣病や抑うつの予防になり、フレイルの根本的な原因を対処することができます。特に重要なのは、筋力トレーニングですが、バランス運動、有酸素運動など、複合的な運動を実施するとより効果的です。

スクワットの方法を示した画像

左:スクワット 右:椅子スクワット

代表的な運動の1つにスクワットがあります。手を胸の前で組むか、椅子の背もたれを持ち、足を肩幅に開きます。つま先とひざを同じ方向に向け、「1・2・3・4」のリズムでおしりを後ろに引きながら腰をおろし、「5・6・7・8」で元の姿勢に戻します。この動きを複数回繰り返しましょう。安全で正しい姿勢で行う際は、椅子スクワットがおすすめです。

出典:東京都健康長寿医療センター研究所 「地域で取り組む!フレイル予防スタートブック」を基に作成


食事

フレイル予防において、バランスの良い食事は重要な要素です。健康管理・体調管理に欠かせないビタミンやミネラル、エネルギー源となる炭水化物、筋肉の維持と再生を助けるたんぱく質、骨密度を保ち骨折リスクを低減するカルシウムなど、適切な栄養摂取によりフレイルの危険性を減少させることができます。


野菜、果物、全粒穀物、魚介類、乳製品など、さまざまな食品から栄養を取り、食品添加物の摂取をなるべく減らすことを意識するとよいでしょう。


外出と交流機会の増加

フレイルの予防には、身体活動の促進だけでなく、社会的交流も大きな役割を果たします。他者とのコミュニケーションはストレスを軽減し、精神的な健康を維持するのに役立ちます。また、自宅とは異なる環境で、家族以外の方とコミュニケーションを図ることで、脳に刺激を与え、認知機能の低下を遅らせることが期待できます。また、外出の機会を増やすことで、自然と身体を動かす機会を増やし、身体機能の維持に寄与します。


日常的な買い物による外出、文化活動や祭りなど地域イベントへの参加、同世代や異世代の人々と交流できる趣味活動や通いの場への参加、社会への貢献意識を高めることができるボランティア活動への参加などをおすすめします。


口腔ケア

口腔機能の低下は、栄養摂取の問題だけでなく、全身への影響を及ぼすことがあります。嚥下機能の障害は、食事時の窒息リスクや呼吸器系の感染症リスクを高めるため注意が必要です。


毎食後の歯磨きに加え、定期的な歯科受診による歯のメンテナンスと、口の機能低下予防の取組みが重要です。手軽にできる取組みとして「口腔体操があります。顔や口の周りの筋肉を鍛えます。その他に、唾液腺のマッサージを行うことで、老化によって低下しがちな唾液分泌を促すことができ、口内の乾燥防止、消化促進、食べ物を飲み込みやすくなるなどの効果があります。


ベロでひょっとこ体操

口腔ケアのベロでひょっとこ体操

指示をする人と体操をする人で分かれて行います。

指示をする人が、「右」と言ったら右ほほの内側をベロでぐっと押す、「左」と言ったら左ほほの内側をベロでぐっと押す、「上」と言ったら上唇の内側をベロでぐっと押す、「下」と言ったら下唇の内側をベロでぐっと押します。

出典:東京都健康長寿医療センター研究所 「地域で取り組む!フレイル予防スタートブック」を基に作成


フレイルに関する相談先や医療機関

フレイルには適切なアドバイスと支援が必要です。以下より、相談先や医療機関を紹介します。


かかりつけ医

体の変化や健康上の心配ごとについて、もっとも身近な相談先です。定期的な健康チェックや病気の早期発見、予防に関するアドバイスが受けられます。フレイル外来を設置している医療機関: フレイル専門の外来を持つ病院やクリニックは、専門的な評価や治療、リハビリテーションを提供しています。


地域包括支援センター:

地域の高齢者の生活全般に関する支援を担う施設です。生活で困ったことが出てきた場合の支援はもちろん、地域での介護予防活動団体等への支援や暮らしを支える体制づくりなど、要支援、要介護、認知症になっても望む暮らしを実現できる地域づくりの中核を担っています。

地域包括支援センターについての詳細は、こちらの記事(地域包括支援センターの役割とは?活用方法や相談事例をわかりやすく解説)で解説しています。


相談時に考慮すべきポイント

少しでも心配があるならばすぐに相談をしてみてください。その際に、フレイルの恐れがある方の生活状況や健康状態を可能な範囲で答えられるように把握しておくのもよいかもしれません。また、元気なうちから、活用できそうな支援サービスの内容や提供機関などの情報を事前に収集しておくのもよいでしょう。


まとめ

フレイルは、高齢者の健康と生活の質にさまざまな影響を及ぼす状態です。誰もがフレイルの状態になる可能性があり、決して他人事ではありません。しかし、運動や食事、口腔ケア、周囲との交流、病気の治療など日常生活での取り組みによって、予防や改善ができるため、本人はもちろん家族や地域住民と一緒に向き合うことが大切です。

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