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悩んでいる高齢者の男性
2023.12.11

認知症とは違う?健忘症の症状・原因・種類を解説

もの忘れが多くなると「もしかして認知症なのかな?」「健忘症と認知症は違うの?」などと不安や疑問を感じていませんか?

この記事では、健忘症の症状や原因だけではなく、下記の内容も解説しています。


● もの忘れ・認知症・健忘症の違い

● 健忘症のセルフチェック

● 健忘症になった場合の対応策

● 病院受診に関して


健忘症について理解しやすいように、具体的な事例も交えながら解説しています。ぜひ最後までご覧ください。


目次
・健忘症とは
・健忘症になる原因
・健忘症の種類
・もの忘れ・認知症・健忘症の違い
・健忘症のセルフチェック
・健忘症になった場合の対応策
・健忘症は治るのか
・病院受診について

執筆者画像
国立長寿医療研究センター 精神科 部長 安野 史彦 先生
大阪大学医学部卒。同大学院博士課程修了後、独立行政法人放射線医学総合研究所、米国国立精神衛生研究所を経て高次脳機能障害と認知症の診断と治療を学び、2007年より筑波大学附属病院精神科、2012年より奈良県立医科大学精神科に赴任し、地域に根差した高齢者の診療に従事。2018年より国立長寿医療研究センター精神科に赴任。現在、精神科部長として認知症の認知機能および精神行動症状に関して診療を行っている。日本精神神経学会認定精神科指導医・専門医、日本老年精神医学会認定・老年精神医学専門医、日本老年精神医学会評議員、日本神経精神医学会評議員、日本認知神経科学会評議員、日本神経心理学会評議員。

健忘症とは

健忘症とは、日々の出来事の記憶の病的障害のことです。出来事以外の知識などの記憶や、他の脳機能(読み書きや計算など)は保たれます。「顔はわかっているが、名前が思い出せない」「財布をしまった場所を忘れる」など、新しいことを覚えられなかったり、昔の記憶を思い出せなかったりします。


健忘症の多くのケースで、忘れていることは自覚されます。(心理的ストレスに基づく心因性健忘などでは、自覚がない場合もあります)

健忘は認知症の重要な要素ですが、それのみでは認知症とはみなせません。記憶障害とそれ以外の複数の高次脳機能障害を伴い、日常・社会生活に障害をきたした時点で認知症とみなされます。


認知症の場合は、多くのケースで症状の進行とともに忘れたこと自体を自覚できなくなります。同じことを何度も言ったり、ヒントをもらっても思い出せなかったりしますが、そのことに無自覚になります。


健忘症と認知症は症状や原因、対応策が異なりますので、正しく理解することが大切です。


健忘症になる原因

健忘症になるはっきりとした原因は解明されていませんが、脳梗塞や脳出血により特定の脳領域に損傷を生じた場合に生ずることがあり、記憶の神経回路の機能不全と何らかの関連があると考えられます。

記憶の神経回路の機能不全の原因として、下記のような要因が関与することもあります。


● ストレス(心因性健忘または解離性健忘)
● 頭部外傷(外傷性健忘)
● 薬の副作用(薬剤性健忘)


その他にも「慢性のアルコール乱用」「てんかん」などでも、健忘症になる可能性があります。


ストレス(心因性健忘または解離性健忘)

「友人関係でのトラブル」「ショックな場面に遭遇してしまう」など、精神的に大きいストレスを受けたことをきっかけに、健忘症になる場合があります。このような心的外傷やストレスによって、引き起こされる健忘症を心因性健忘または解離性健忘ともいいます。


特徴的な症状は、特定の期間に関連する記憶が「思い出せない」または「部分的にしか残っていない」ということです。

解離性健忘は「新しいことを覚えられない」といったタイプの記憶障害ではありません。


頭部外傷(外傷性健忘)

交通事故やスポーツで、頭部に強い衝撃を受けると、新しいことを覚えるのが苦手になったり、見当識障害(時間や人、場所などの認識が難しくなる)がみられたりします。


外傷性健忘では、頭部外傷の範囲に応じて、記憶障害以外にも次のような高次脳機能障害(脳の一部が損傷を受けて起きる障害)が認められる場合もあります。

高次脳機能障害の種類と概要例

外傷後健忘の回復までの期間は、障害の程度によってさまざまです。


薬の副作用(薬剤性健忘)

睡眠薬や抗不安薬(ベンゾジアゼピン系の薬など)を服用すると、健忘症を引き起こすことがあります。アルコールと併用された場合は、そのリスクが高まります。昔の思い出や出来事を想起することは可能ですが、薬の服用後からの記憶障害が特徴的です。


もし、ベンゾジアゼピン系の薬を内服してから記憶障害を感じた場合は、主治医に相談してみることをおすすめします。


健忘症の種類

健忘症には下記のような種類があります。


● 前向性健忘(新しく記憶するのが難しい)
● 逆行性健忘(過去のことを思い出せない)
● 一過性健忘(一時的に記憶障害が起きる)


それぞれの特徴を具体例を交えながら解説します。


前向性健忘

前向性健忘とは、脳の損傷や病気になって以降、新しいことを覚えられなくなることです。

具体的には下記のような症状が考えられます。


● 会話の内容を覚えられない
● 約束を忘れてしまう
● 道に迷う
● ものを置いた場所を忘れる
● 今日あった出来事を覚えていない


前向性健忘は日常生活に支障をきたす場合が多いため、早期に原因を特定し、適切な治療を受けることが大切です。


逆向性健忘

逆行性健忘とは、過去の出来事に関する記憶を思い出せなくなる状態のことです。たとえば、「交通事故を起こした前後の記憶が思い出せない」「自然災害に遭った期間の記憶が思い出せない」などがあります。発症の原因としては、交通事故やスポーツなどで脳に損傷を受けたり、ショックな出来事により心的外傷を受けたりすることなどが考えられます。


一過性全健忘

一過性全健忘とは一時的な記憶障害のことで、24時間以内に元に戻ります。基本的には記憶障害以外の異常はあらわれません。一過性全健忘のはっきりした原因は解明されていませんが、下記のような出来事がきっかけで起こるとされています。


● 精神的ストレス
● 痛み
● 医学的な処置(内視鏡検査や脳血管造影など)


一過性全健忘の診断基準としては、認知機能の障害がないことや、直近での頭部外傷、けいれんがないことなどが挙げられます。


もの忘れ・認知症・健忘症の違い

記憶障害は健忘症だけではなく、認知症の中心症状でもあります。また加齢とともに生理的な変化として、もの忘れが多くなる場合もあります。もの忘れ(生理的健忘)・認知症・健忘症の違いをまとめたので、どれに当てはまるのかを確認してみてください。


 
原因
主な症状とその他の障害
忘れていることに気づいているか
生活への支障
もの忘れ思い当たる出来事はない 主な症状は記憶障害のみ気づいている大きな支障はない
認知症思い当たる出来事はない。または、脳血管障害、パーキンソン病などの既往がある。記憶障害、身体機能の低下、判断力の低下、計算能力の低下など気づいていないある
健忘症頭部外傷や、大きなストレス(心的外傷)、ベンゾジアゼピン系薬の服用など主な症状は記憶障害のみ気づいているある

認知症の特徴に当てはまる場合は、こちらの記事(【認知症とは】基本を知ろう!原因・症状・治療や予防法についてをご覧ください。認知症の症状や種類について解説しています。

65歳未満の方で認知症の特徴に当てはまる場合は、こちらの記事(若年性認知症(若年性アルツハイマー)とは? 原因や症状、治療法を紹介をご覧ください。高齢者の認知症との違いについて解説しています。


もの忘れ

「テレビのリモコンをどこに置いたかな?」「何を取りに来たんだっけ?」などのもの忘れは、誰でも経験したことがあるでしょう。


生理的老化(加齢により誰にでも起きる変化)によるものなので、気にしすぎる必要はありません。しかし、日常生活や仕事に支障が出る場合は、健忘症や認知症の可能性があるので、早期に病院の受診を検討しましょう。


認知症

認知症における記憶障害は、「薬を服用したことを忘れる」「会話が噛み合わなくなる」などと日常生活に支障をきたします。ある程度進行した認知症の方は忘れている自覚がないため、ヒントを与えても思い出せません。また、認知症の方は記憶障害以外にも見当識障害(日付、場所がわからない)や、判断力の低下など、他の症状もみられる場合が多くあります。


一方で健忘症の主な症状は記憶障害であり、意味記憶(一般的な知識の記憶)や手続き記憶(自転車の乗り方や泳ぎ方などのからだで覚える記憶)は基本的に障害されません。家族の方は、本人に対して日常生活に支障をきたす記憶障害を感じた場合は、早期受診を勧めてみてください。


健忘症のセルフチェック

下記項目に、何個当てはまるかチェックしてみてください。


● 昨日あるいは数日前に言われたことを忘れている。言われないと思い出せない。
● ものを置いた場所を忘れてしまったり、無くしてしまったりした。
● いつもしまってある場所を忘れて、違う場所を探すことがある。
● ある出来事が起こったのを、いつだか忘れることがある。
● 必要なものを持たずに出かけたり、置き忘れたりしたことがある。
● 自分で「する」といったことを忘れる。
● 前日の出来事のなかで重要と思われることを忘れていることがある。
● 以前に会った人の名前を忘れていることがある。
● 誰かが言ったことの詳細を忘れ、間違って理解していることがある。
● 1度話した内容を、再度言うことがある。
● 直前に言ったことを繰り返し話したり「今、何を話していましたっけ?」と聞いたりすることがある。
● 以前、行ったことのある場所への行き方を忘れたり、よく知っている建物のなかで迷ったりすることがある。
● 何かしている最中に注意をそらす出来事があった後、自分が何をしていたか忘れることがある。


多くの項目にチェックが付く場合は、健忘症や認知症の可能性があるので、病院受診を検討してみてください。認知症を疑っているかたは、こちら(あたまの元気度チェック)でチェックできますので、ご活用ください。


健忘症になった場合の対応策

健忘症は、忘れている自覚があるので日常生活に工夫をすると、生活への支障を軽減できます。健忘症になった場合の、具体的な対応策について紹介します。下記の方法をぜひ参考にしてみてください。


● カレンダーやメモ帳を活用する
● しまってある物の名前を「ラベル」に書いて貼る


ここでは、それぞれの方法について、詳しく解説します。


カレンダーやメモ帳を活用する

約束の日時や、その日にやるべきことなどを忘れてしまう場合は「メモ帳を持ち歩く」「カレンダーに記入する」などの習慣をつくってみてください。


最初のうちは、メモしたり・カレンダーに記入したりすることを忘れる場合があるので、家族のサポートも必要です。

メモ帳は置いた場所を忘れないように、なるべく持ち歩くようにしましょう。また、カレンダーは目に付きやすい場所に設置することをおすすめします。


しまってある物の名前を「ラベル」に書いて貼る

ティッシュボックスやゴミ袋などの日用品のストックの保管場所には、「ラベル」を貼って整理することをおすすめします。または、ホワイトボードに記入しておくのもいいでしょう。


大切なポイントは「何がしまってあるのかを目に見える形にしておくこと」です。生活パターンに合わせて、必要な情報が可視化できるように工夫してみてください。


健忘症は治るのか

健忘症のなかでも、記憶に関連した脳神経回路の損傷ではなくアルコール、薬剤性、心理的ストレス要因などに基づく脳神経の機能不全が原因である場合は、その原因を解決することで健忘症の改善が見込める場合があります。


しかし、記憶に関連した脳神経の損傷に伴う健忘症では、その損傷自体を回復させる治療方法が確立していないため、記憶機能そのものを改善することは難しい場合が多いでしょう。しかしながら、リハビリテーションによって、記銘力や想起の改善は困難であっても、それに関連する残存機能を向上させることで日常生活の問題が軽減できる可能性はあります。


健忘症で生じる日常生活上の問題点の改善については、様々な介入方法が考案されてきましたが、最近の主流は、メモリーエイド(例:メモ帳や電子機器などの外的記憶補助手段)ないしスマートフォンやタブレット端末を用いた認知トレーニングによる介入となっています。


また、リハビリテーションにおいては、「誤りなし学習」の概念が重要視されています。健常者では試行錯誤を繰り返しながら記憶を定着させていきますが、健忘症患者では間違えるほど、その誤りを修正できず、誤りに引きずられて学習効率が低下します。日付が覚えられない人に対して、「今日は何日ですか?」と聞くのではなく、「今日は〇日です」と正しい日付を教えてカレンダーを見るように促すほうが、問題の改善に有効であると考えられます。


病院受診について

健忘症を治すには、まず関連しているであろう要因を探す必要があります。


健忘症の要因には、脳の機能障害や薬の副作用、ストレスなどのさまざまなものが考えられるため、まずは専門医がいる病院を受診してみましょう。転倒や事故などで頭をぶつけた場合は、脳になんらかの異常をきたしている場合があるため、脳神経外科を受診してみてください。

とくに思い当たる節がなく、記憶障害により日常生活に支障がでている場合は、認知症の可能性もあります。その場合は、もの忘れ外来や認知症外来を受診してみましょう。なにかショックな出来事をきっかけに記憶障害が起きている場合は心療内科を受診してみましょう。

全国の医療機関の検索はこちら(厚生労働省:医療機能情報提供制度について)で可能です。


脳神経外科

もし、ここ2ヶ月ほどの間に事故や転倒などで頭をぶつけた場合は、脳神経外科を受診してみてください。そのときは問題がなくても、微細な出血により時間をかけて血液がたまることで、脳を圧迫して記憶障害をきたしている可能性があります。


もの忘れ外来

もの忘れ外来では、記憶障害が生理的老化によるものなのか、認知症や健忘症など病的な変化なのかを、専門医が診察・治療してくれます。

健忘症になる原因に心当たりがない場合や、認知症の可能性を感じる場合は、もの忘れ外来を受診してみてください。

認知症の疑いがある場合は、早期受診・治療が大切です。認知症に関する医療機関の検索はこちらから可能です。


心療内科

ショックな出来事をさかいに思い出せない場合は、心因性健忘が考えられます。そのため、心の病気の治療を専門にしている心療内科を受診してみてください。


認知症と健忘症ではもの忘れの仕方が異なります


健忘症の主な症状は記憶障害で、下記のような種類があります。


● 前向性健忘(新しいことを覚えられない)
● 逆向性健忘(昔の記憶を思い出せない)
● 一過性全健忘(一時的に記憶障害が起きる)


健忘症の明確な原因は解明されていませんが、要因にはストレスや頭部外傷、薬の副作用などが挙げられます。

単なる加齢に伴う生理的なもの忘れとは異なり、健忘症と認知症による病的な記憶障害では、日常生活に支障をきたす場合があります。

ただ、健忘症の場合は多くは忘れてしまうことを自覚しているため、忘れないようにメモをとったり、カレンダーに記入したりするなどの対策が可能です。


病院の受診を検討している場合は、健忘症の原因が何かによって、もの忘れ外来や心療内科などの診療科が異なります。日々の症状に不安を感じている方は、病院の受診を検討してみましょう。


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