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2023.06.28

ケアスタッフより、家族介護者の方へメッセージ~第11回~

日々介護をするなかでは、「このやり方で正しいのかな」と疑問や不安を感じたり、「こんなふうにしてあげたいのに、うまくできない」と悩まれたり、葛藤したりされたりする瞬間があるのではないでしょうか。

お一人おひとりに応じておこなう介護の正解は、ひとつではありません。しかし他の方のケア事例から感じ取れるヒントやメッセージもあるかと思い、本コラムでは経験豊富なSOMPOケアスタッフが経験してきた介護エピソードをご紹介します。


今回のテーマ「老老介護〜ご主人が奥さまのケアをされるとき〜」

今回ご紹介するのは、ご夫婦で暮らしていた80歳のご夫婦。奥さま(Aさん)は、身体はお元気でしたが、認知症がかなり進行していたため、ご主人(Bさん)がひどく過敏かつ不安になっておられました。そのため生活のサポート以外にも、家のなかの雰囲気を明るくできるようなケアに努めました。

【老老介護とは?】問題点と介護負担を減らすには

高齢化が進む日本では、老老介護は決して他人事ではありません。身近な問題だからこそ、早めに正しい知識と対策を知ることが重要です。本記事では、老老介護の現状や問題点、また介護する側の負担を軽減させる対策などについて詳しく解説します。

執筆者画像
SOMPOケア 北陸事業部 金沢笠舞 訪問介護事業所 介護福祉士 坂上 敦子さん
温泉施設に入浴に来ていた車イスの高齢女性の方が、ヘルパーさんと手を取り合って生活されている姿を見て、人に役立てる介護職にやりがいを見出し、介護の世界へ。そして「介護職を専門職として育てる」というSOMPOケアの方針に強く共感し、58歳の折に入社。61歳で介護福祉士の資格を取得。「人生経験があり、お年寄りの気持ちに寄り添えることが私の強み」と年齢を重ねたヘルパーならではの誇りを胸に、「若い世代が憧れを持って入ってきてくれる業界に変えたい」といった使命感も持って取り組んでいるケアスタッフさんです。

第三者の存在が、ガス抜きになることも

「聞いてよ、大変なことがあったんだよ!」

その日、Bさんは開口一番、そうおっしゃいました。聞けば、昨日お墓参り用に買っておいた切り花が、バケツの中からなくなっていたとのこと。

「奥さまが食べちゃったんですか?」私は思わずそう聞き返しました。「いやいや、そんなことはないよ。墓参り用だと忘れて、茎を短く切って花瓶に飾っちゃったんだよ」とBさん。

「それなら全く問題ないですよ、だって花を花だとちゃんと認識できているんですから。もしお花を食べられたときは教えてくださいね!」そんなふうに笑顔で返すと、Bさんは笑ってホッとされたご様子でした。


Aさんはご自身が認知症であることは自覚しておられませんでしたが、元看護師ということもあり「自分の状態は自分で理解ができている」という気持ちを強く持っていらっしゃいました。Bさんが症状に言及すると「あなたは黙ってて!」「どうしてあなたが怒るのよ!」などと反論されることもしばしば。近所に住んでいる娘さんが心配してよく顔を出してくださっていたのですが、自分を気遣う家族の干渉をありがたいような、煩わしいような、そんなご様子で受け止めていらっしゃいました。「娘と孫が来てうるさかった」と言っていたかと思えば、来てくれたこと自体を忘れてしまい、Bさんと「昨日来たじゃないか」「知らない」と口論になることもありました。


Aさんの一挙手一投足にBさんがイライラを募らせてしまうご様子が見てとれたので、ケアにおいては、明るい空気を作り出すことを何よりも心がけていました。「大丈夫です、たいしたことないですよ」「一つひとつの行動に神経質にならず、全体を見ましょう!」などとポジティブなお声がけと笑顔を心掛けていました。


精神的に張り詰めてしまいがちな老老介護ですが、私たちのような第三者が介入することで、そのガス抜きができることは少なくないと感じます。ご家族の症状を第三者にオープンにされることは、ご本人のためだけでなく、ご家族全員のためにもなる、と考えていただけたら、私たちも大変嬉しく思います。


家族だから負担になってしまうケアもある

AさんBさんご夫婦もそうでしたが、奥さまが認知症になられた場合、入浴や排泄のケアにお困りになるご夫婦は少なくありません。ご主人の側に抵抗がなくても、奥さまのほうが「恥ずかしい、嫌だ」と抵抗感を訴えられるケースもあります。そんなとき、ご主人に「お風呂だけはデイサービスで入りませんか?」「ご主人は家のお風呂にゆっくりひとりで入られてください」と提案し、肩の荷をひとつ下ろしていただけることもあります。


排泄の失敗にお悩みであればお手伝いもしますし、使いやすい紙おむつやパッドなど、ケアの負担を減らすための具体的なご提案もさせていただきます。「他人だからこそ、ご本人が抵抗なく頼れるケアもある」ということはぜひ心に留めておいていただき、上手に私たちを利用していただけたらと思います。


またAさんのケースでは時折、思い立ったように出かけようとされる傾向もありました。身体はお元気でしたし、看護師時代の記憶から「今日は夜勤の日だから行かなくちゃ!」とバッグに荷物を詰め始めるのです。そんなときは「もう仕事は辞めたでしょう?」と冷静に引き留めるより、「今日は日曜だから、病院もお休みですよ。」などとお声がけしたほうが、ご本人が納得されたうえで、行動を思いとどまっていただけることが多いです。これはほんの一例ですが、プロとして多くの事例を見てきたからこその、生きたケアの知恵やノウハウはたくさん心得ているつもりです。少しでも対応に困った際には気軽にお話しいただけたらと思います。

【関連記事①】ケアスタッフより、家族介護者の方へメッセージ 第10回「本音の意見にも、ひるまない」

おひとり暮らしをされていた80代の女性(Aさん)。Aさんは認知症の影響で「毎日同じ時間に同じコンビニに出かけて、同じメニューを作って食べる」という習慣を繰り返しており、コレステロール値が上がってしまったそうです。栄養の偏りを心配され、私たちに「食事調理のサポートや薬の介助をしてほしい」と娘さんよりご依頼をいただきました。

家のことがわからず、困り果てるご主人も

また、奥さまが認知症になった場合、「家の中のことがわからない」とご主人がお困りになるケースがしばしばあります。奥さまが家のことを管理しているご夫婦が多いこともありますが、家事をされるご主人であっても「奥さまの靴下がどこにしまわれているか」といったことは、意外と知らないものです。


認知症になると整理整頓が難しくなり、ご本人もご本人のものがどこに置いてあるかがわからなくなることが多いです。靴下を出してあげたくて場所を聞いても奥さまはわからない、ご主人も困り果てて、愚痴をこぼして喧嘩になってしまう……。生活のなかの小さな不便が引き金になって、家のなかがネガティブな空気になってしまうこともしばしばあります。


そんなとき、私たちはまず家の中のあらゆる棚や引き出しに、大きなラベルを貼ることを提案します。引き出しに「くつした」「ゴミ袋」などというラベルを貼っておけば、ご主人も「ここに片づければいいのだな」「ここから取れば良いのだな」とご自分で判断でき、日々のイライラをひとつ減らすことができます。


またAさんは冷蔵庫内の傷んだ食品を食べてしまうこともありましたが、冷蔵庫内の傷んだ食品を食べたことを責めるのではなく、「台所のお掃除を一緒にしましょうか!」と働きかけ、周りが心配になる行動をせずに済むような環境づくりにも注力しました。家庭環境をより良く整えることも、私たちの仕事です。「家のなかの環境を整える」だけで、ケアをする人・される人の心身の負担を減らせることがあることも、家族介護者の皆さんにぜひ知っていただきたいケアのポイントです。



【関連記事②】認知症の人が記憶をなくす順番は?症状の進行と早期発見のポイント

年齢を重ねると、誰にでももの忘れは起こりますが、認知症によるもの忘れは加齢によるもの忘れとは異なります。認知症によるもの忘れでは、家族や友人など身近な人を忘れることもあります。こちらの記事では、認知症の方がどのような順番で記憶をなくしていくのか、また、加齢によるもの忘れとの違い、認知症の方への対応方法、接する際の心がまえなどについて説明します。

ケアスタッフからのアドバイス

単身の高齢者さまの場合、人手が足りない分、ヘルパーは在宅ケアに入りやすいのですが、ご夫婦で介護をされている場合、「人さまの手を煩わせてはいけない」「自分がやらなくては」と、おひとりで背負ってしまわれる方も少なくありません。あるいは「掃除だけお願いします」など、ご家族のケアには立ち入らせていただけないケースもあります。家に他人が入ったり、認知症のご家族を他人に見せたりすることには抵抗がある、というお気持ちはよくわかります。しかし、そのようにおひとりで背負い、周囲に助けを求められなかった結果、限界に至ってしまうケースも数々見てきました。


その点、今回のケースではご主人であるBさんの姿勢に大変助けられました。

「奥さまがどんな状態になってもありのままに伝えてください、そうすればいくらでも一緒に考えることができますから」「おひとりで抱え込まないようにしてくださいね」などと伝えると、Bさんは「ほやな」と耳を傾けてくださり、ご自身の体調不良なども開示してくださっていました。「認知症のことがわかる人が、週1回でも来てくれたら助かる」と歓迎してくださるので、積極的にケアに入らせていただくことができました。


男性は特に、できない自分を責めてしまったり、他人に頼るべきではないと考えたりされている方が多い印象がありますが、私は「どうぞプロに任せてください」と常々お伝えしています。日頃のお悩みや愚痴を話せる相手がいる、というたけでも役立てることがありますので、ぜひ気兼ねなく頼っていただけたらと思います。



※今回お話を伺った坂上さんは、2022年に介護プライドの精神をもったケアスタッフを認定する、SOMPOケア独自の制度「介護プライドマイスター」にも認定されました。

介護プライドマイスター制度についてはこちらの外部サイトをご覧ください。https://www.sompocare.com/kaigopride/



次回のテーマは「自責の念で悩まれているご家族へ」。少し特殊な認知症状が出ていたCさんのエピソードをご紹介します。



取材/外山 ゆひら ・ 下村 涼子(SOMPO笑顔倶楽部)  文/外山 ゆひら  

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