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2023.07.27

ケアスタッフより、家族介護者の方へメッセージ~第12回~

日々、介護をするなかで「このやり方で正しいのかな」と疑問や不安を感じたり、「こんなふうにしてあげたいのに、うまくできない」と悩まれたり、葛藤されたりする瞬間があるのではないでしょうか。

お一人おひとりの状況に合わせておこなう介護の正解は、ひとつではありません。しかし、他の方のケア事例から感じ取れるヒントやメッセージもあるかと思い、本コラムでは経験豊富なSOMPOケアスタッフの介護エピソードをご紹介します。


今回のテーマ「自責の念で悩まれているご家族へ」

今回ご紹介するのは、単身で暮らされていた70代女性(Cさん)。Cさんは病院を受診し、脳の一部である前頭葉や、側頭葉の萎縮によって発生する「前頭側頭型認知症」と診断を受けました。アルツハイマー型認知症のように、物忘れなどの記憶障害はほとんどみられない特殊な認知症ということもあり、ご家族が気づかれたのは症状がかなり進まれてからでした。

執筆者画像
SOMPOケア 北陸事業部 金沢笠舞 訪問介護事業所 介護福祉士 坂上 敦子さん
温泉施設に入浴に来ていた車イスの高齢女性の方が、ヘルパーさんと手を取り合って生活されている姿を見て、人に役立てる介護職にやりがいを見出し、介護の世界へ。そして「介護職を専門職として育てる」というSOMPOケアの方針に強く共感し、58歳の折に入社。61歳で介護福祉士の資格を取得。「人生経験があり、お年寄りの気持ちに寄り添えることが私の強み」と年齢を重ねたヘルパーならではの誇りを胸に、「若い世代が憧れを持って入ってきてくれる業界に変えたい」といった使命感も持って取り組んでいるケアスタッフさんです。

「気付けなかった自分」を責めないで


「私が異変に気づいて、ちゃんと病院に連れて行かなかったから」


ケアに入られた当初、娘さんは涙を流されていました。同じ県内に住んでいるものの、Cさんがいつも電話で「元気よ」と言っていたため、それを信じ込んでいたそうです。ひとり娘なのに忙しくてなかなか会いに来られず、様子が少しおかしいと思っていたのに母を放っておいた、こんなにひどくなるまで気づかなかった……と自分を責めておられました。


前頭側頭型認知症は、一般的な認知症とは症状が異なるので、娘さんも理解しづらかったのだろうと思います。割合で言えば、全体の100人に1人にしか現れない珍しい種類の認知症で、社会性の欠如や自発的な言葉の低下、抑制力の低下など、特徴的な症状が現れることで知られています。


「こういう症状が出るのも認知症のひとつなんですよ。まずは受診してみましょう」

とご提案し、正式に病名がわかることとなりました。物忘れがあったり、片付けができなくなったりなど、いわゆる認知症のような症状が見られることもありますが、この種類の認知症で代表される特徴的な症状は、同じ行動の繰り返しや社会性の欠如です。特定の行動をひたすら繰り返したり、法律や交通ルールを守れなくなったり、見だしなみに無頓着になったり、といった症状が出るため、地域や近所の方との不調和が起こされることもあります。


Cさんも同様でした。毎日必ず同じ時間にバスに乗って、お年寄りの集まるクラブに出かけていらっしゃいましたが、雨の日でも、日曜でも、クラブが開催されない日でも休むことはありませんでした。クラブに参加できても、同じ話ばかりすることでメンバーの方々から困った人扱いをされてしまい、それを受け入れられずに周囲の悪口を言うようになるなど、情緒が不安定になっていらっしゃいました。


ヘルパーにも「何しに来たの、あなたたち」「自分でできるのに、何のために来るの?」と毎日のように仰っていましたが、「娘さんが心配されているから、様子を見にきたんですよ」と明るくお伝えし、食事の準備や薬の服薬を見届けるようにしていました。


前頭側頭型認知症の場合、ケアや環境を変えるだけでは効果がないと言われています。病院から処方されたお薬で症状を緩和しますが、認知症が進行すると、薬でも効果が出なくなります。Cさんも最終的には毎日乗っていたバスの時間がわからなくなり、警察の方にお世話になるなどして、施設入所が決まりました。

明日も笑顔になれますように 第11回「老老介護〜ご主人が奥さまのケアをされるとき〜」

80歳代のご夫婦。奥さまは、身体はお元気でしたが、認知症がかなり進行していたため、ご主人がひどく過敏かつ不安になっておられました。奥さまの一挙手一投足にご主人がイライラを募らせてしまうため、生活のサポート以外にも、ご主人の心の負担を軽減できるようにポジティブなお声がけと、笑顔で家のなかの雰囲気を明るくすることからはじめてみることにしました。


ケアスタッフからのアドバイス

Cさんのケースでは、娘さんのお母さまを思う気持ちがとても印象に残っています。強い後悔を抱えていらっしゃいましたが、「離れて暮らしていたら当然です、おひとりで背負われないでくださいね」「申し訳ないと思う必要ありません」「ご家族が思い詰めなくて済むように介護保険制度があるんです」などと繰り返しお伝えすることで、微力ながら寄り添わせていただきました。


久しぶりに会ったCさんの変化にも戸惑われておられましたが、認知症になられると、誰しも周りの人の表情に敏感になります。責められたり怒られたりすることが増えるので、ご自身も不安感情が増し、怒りっぽくなっていきます。以前はできていたことがスムーズにできなくなり、「最近、自分は変だ」とふさぎ込んでしまい、うつ状態になってしまうケースも非常に多いです。そんなときは、「メモを取りましょう」「ここにシールを貼ってみませんか」などと提案し、まずは環境を整えます。自分で思い出せることが増えると、ご本人の自信につながるからです。


併せて、忘れていることを責めない、という心がけも大変有効だと思います。「忘れても周りの人に聞いたらいいのよ」と温かく返していると、ご本人も安心されて感情が落ち着くこともあります。私も「ヘルパーさんが来ること、忘れとった」などとよく言われますが、「私が覚えているから大丈夫ですよ、家にいてくれさえすれば十分です」とお返しするようにしています。


そしてケアスタッフは、プロとしてご本人が笑顔で、穏やかに過ごせる工夫を考えるお手伝いだけでなく、「ご家族にも笑顔でいてもらえる状況を作りたい」という思いを持っています。

ご家族が心身に負担を抱えてしまった結果、一緒におつらい状況に至ってしまった事例も見てきました。そうならないために、事業所のスタッフ皆で相談し合いより良いアイデアを出し合ってケアに臨んでいます。

専門家のようにすぐに気付けなくても、手に負えないことがあっても当たり前です。そのときに誰かの手を借りることは、恥ずかしいことでも、悪いことでもありません。ご家族を含めた皆さんをお手伝いするために、私たち介護のプロがいる、ということをぜひ覚えておいていただけたら嬉しいです。


※今回お話を伺った坂上さんは、2022年に介護プライドの精神をもったケアスタッフを認定する、SOMPOケア独自の制度「介護プライドマイスター」にも認定されました。

介護プライドマイスター制度についてはこちらの外部サイトをご覧ください。https://www.sompocare.com/kaigopride/



次回のテーマは「早期診断のメリット」。身体症状から現れ始めた70代のDさんのエピソードをご紹介します。



取材/外山 ゆひら ・ 下村 涼子(SOMPO笑顔倶楽部)  文/外山 ゆひら  

SOMPOケアでは、介護に関するさまざまなご相談をお受けしています。 お電話・またはお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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