国立研究開発法人国立長寿医療研究センター・予防老年学研究部長
島田 裕之先生
高齢者の認知症予防などを目指した健康増進に関する研究を行う。
専門はリハビリテーション医学、老年学。
遺伝的性質
遺伝子の異常
糖尿病
高血圧
肥満・脂質異常
うつ傾向
転倒(頭部外傷)
不活動
対人交流の減少
危険因子
高等教育
抗酸化作用の高い食物摂取
適度な飲酒
身体活動の向上
認知的活動の実施
社会参加
対人交流の増加
保護因子
高等教育の中で「認知的予備力」を蓄えていることが、認知症の発症リスク低下につながると考えられています。
中年期に高血圧や糖尿病などの生活習慣病を患うと、将来の認知機能低下のリスクを高めるといわれています。
保護因子である社会参加や対人交流の充実は、うつ、閉じこもりといった危険因子の排除にもつながります。
現在認知症の確実な予防方法は存在しません。しかし、危険因子や保護因子の研究が進み、日常生活に取り入れることのできる予防活動について明らかになってきました。特別なことをする必要はなく、生活習慣病の予防や重症化予防、運動の習慣化、食生活の見直しなど、健康増進のために当たり前に行うべき行動が認知症の発症予防に向けた取組みとなります。
糖尿病や高血圧、肥満・脂質異常などの生活習慣病はそれぞれが認知症の危険因子であり、それらの抑制が発症予防における重要なファクターになると考えられています。ほかにも喫煙、過度な飲酒といった要素も認知症のリスクを高める可能性があります。
認知症に関係があると考えられている疾病や行動
運動によって身体を動かすことは、記憶や学習を司る脳の海馬の萎縮の抑制に効果があると考えられています。週3日以上の頻度で行い、ややキツいと感じる程度の負荷をかけることが推奨されています。
生活改善の一例
気軽に始められて安全性も高い有酸素運動は、取り入れやすい習慣です。
運動と認知課題(計算など)を組み合わせて行う「コグニサイズ」は、効率的な認知症予防活動として注目されています。
食事のパターンを複数持つことが認知症の発症リスク軽減に関係するといわれています。そのため予防には「和食」のように品数が多く、多様な食品をバランスよく摂取できる食生活を送ることが良いとされています。加えて予防に効果的な栄養素の摂取も大切です。
生活改善の一例
ポリフェノールやDHA・EPA、ビタミンEなどの抗酸化作用のある栄養素が
認知機能の低下予防に有効であると考えられています。
一汁三菜を心がけることで自然に食材の種類を増やすことができます。
新聞、読書、勉強などの知的活動に取り組み、日常的に頭(脳)を使う機会を増やすことは、認知症の発症リスクの軽減に一定の効果があるといわれています。
生活改善の一例
好きなことに熱中して取り組むことが脳の活性化につながります。
金額の計算など日常生活で頭を使うことを習慣づける「コグニライフ」も脳の活性化を促す効果的な取組みの一つです。
家に閉じこもらずに、毎日を活動的に過ごして人とのつながり・コミュニケーションを持つことや、社会における自分の役割を見いだして生活全般を活性化させることが認知機能の低下を防ぐといわれています。
生活改善の一例
うつは認知症の発症に大きく関係しており、高齢者の閉じこもりや社会的に孤独な状態は非常に危険。
犬の散歩、買い物、地域ボランティアへの参加など、外に出る目的を作ることが大切です。