国立研究開発法人国立長寿医療研究センター・予防老年学研究部長
島田 裕之先生
高齢者の認知症予防などを目指した健康増進に関する研究を行う。
専門はリハビリテーション医学、老年学。
本人や家族から認知機能の低下の訴えはあるものの、日常生活は問題なく送ることができている状態のことをMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)といいます。MCIは認知症ではありませんが、認知機能の低下が起きており、放置すると症状が進み認知症へと移行してしまう可能性が高い状況です。高齢者のMCIの国内有病者数は2012年時点で約400万人と推定されています。
高齢者(65歳以上)の認知症当事者と
MCI当事者の人口推定(2012年)
出典:厚生労働科学研究費補助金 認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(平成23年度~平成24年度 総合研究報告書)を基に作成
MCIの診断では症状によって4つのサブタイプに分類されます。
出典:「基礎からわかる軽度認知障害(MCI)効果的な認知症予防を目指して」(監修:鈴木隆雄、編集:島田裕之)を基に作成
MCIの診断では、記憶障害の有無とそのほかの認知機能(言語、注意など)障害の有無でタイプ分けされます。記憶障害がある場合は「健忘型MCI」、注意などに障害がある場合は「非健忘型MCI」に分類され、さらに単一または複数の機能障害の有無によって「単一領域」と「多重領域」へと細分化されます。
健忘型MCIと違って記憶障害がなく会話にも支障がないことから、家族も異常に気づきにくいため注意が必要です。
MCIの症状が進行して認知症へと移行する確率の平均値は年間約10%※とされています。
※2004年に報告された研究結果。5~10%、10~15%と報告している研究もあります。
出典:「Frisoni GB, et al : Mild cognitive impairment in the population and physical health. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 55 : M322-M328, 2000」を基に作成