国立研究開発法人国立長寿医療研究センター・予防老年学研究部長
島田 裕之先生
高齢者の認知症予防などを目指した健康増進に関する研究を行う。
専門はリハビリテーション医学、老年学。
高齢者の方の認知機能の低下パターンは大きく3パターンに分類することができます。1つはMCI診断後、認知機能が回復せずに認知症へ移行する「早期発症型」。一度正常に回復(もしくはMCIの状態を長期間維持)した後に移行する「遅延発症型」。正常に回復した後、認知症へ移行しない「非発症型」。「遅延発症型」や「非発症型」へと移行させるためにはMCIを早期に発見し、適切な対応をいち早く行うことが大切になります。
出典:「運動による脳の制御 認知症予防のための運動」
(編集:島田裕之)を基に作成
一度MCIと診断された後に認知機能が正常な状態へと回復する確率は16~41%ほどといわれています。
回復するためには適切な対応や取組みが必要です。
出典:日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」を基に作成
海外の研究結果では症状が軽い状態にある単一領域のMCIは、症状が進行し複数の認知機能に低下がみられる多重領域のMCIに比べて、健忘型、非健忘型を問わず回復率がかなり高いとの報告があります。この結果はMCIの予防と改善における早期発見と早期対応の重要性を示唆しています。
出典:「Brodaty H, Heffernan M, Kochan NA et al.(2013)Mild cognitive impairment in a community sample:
the Sydney Memory and Ageing Study. Alzheimers Dement, 9: 310-317.el」を基に作成
認知症の原因疾患の中には慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などのように、早期に受診し適切な治療を受けることで改善が見込めるものもあります。
症状が進行したときに備えて早い段階から家族や医師と今後の対策や希望について相談することができることも早期発見の大きなメリットです。