~定義・原因疾患・症状~
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター・予防老年学研究部長
島田 裕之先生
高齢者の認知症予防などを目指した健康増進に関する研究を行う。
専門はリハビリテーション医学、老年学。
認知症とは記憶や思考などの認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や仕事に支障をきたすようになった状態のこと。このときに意識障害がないことも診断の要件となります。
神経細胞が死滅し脳が萎縮
血管が詰まったり破裂することで細胞の一部が死滅
加齢に伴うもの忘れは体験の一部を忘れる(例:旅行に行ったことは覚えているが旅先の風景が思い出せない)のに対して、認知症のもの忘れは体験そのものを忘れてしまいます(例:旅行に行ったこと自体を覚えていない)。
認知症には数多くの原因疾患や病態があり、原因によってあらわれやすい症状も異なります。最も多いのは「アルツハイマー型認知症」で認知症全体の約7割を占めます。次に多いのが脳血管障害が原因で起こる「血管性認知症」。この2つに「レビー小体型認知症」と「前頭側頭型認知症」を合わせて4大認知症と呼ばれています。
出典:厚生労働科学研究費補助金 認知症対策総合研究事業「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(平成23年度~平成24年度 総合研究報告書)を基に作成
アミロイドβやタウタンパクというたんぱく質が原因となって、脳の急激な萎縮が起こることで発症するといわれています。記憶障害が顕著にあらわれるのが特徴です。
脳内の血管が詰まったり、出血したりすることで、脳細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなると、脳細胞が破壊されて発症します。障害を受けた部位によって症状が異なります。
「レビー小体」と呼ばれるαシヌクレインというたんぱく質の固まりが大脳皮質に沈着することで起こる認知症。妄想や幻覚、手の震えといった症状があらわれます。
前頭葉と側頭葉の神経細胞が減少し、脳が萎縮することで引き起こされる認知症です。感情の抑制がきかなくなる精神症状や行動障害などの症状が特徴です。
記憶や見当識、実行機能、言語、判断などの認知機能の低下から起こる問題。
新しい出来事が覚えられなくなったり、過去の記憶を失ってしまいます。アルツハイマー型では体験自体を忘れてしまう“エピソード記憶”、前頭側頭型では言葉や物の意味を忘れる“意味記憶”の障害が中心となってあらわれます。
時間や場所、人との関係性の判断がつかなくなります。
物事を段取りよく進めることができなくなります。
考えるスピードが遅くなります。
言語の理解や物の知覚、目的に沿った行動が困難に。
中核症状に伴ってあらわれる精神・行動面における症状のこと。
身体疾患、生活環境、心理状態(うつ状態)などの影響で起こるといわれています。