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2024.10.25

ケアスタッフより、家族介護者の方へメッセージ~第25回~ 認知機能低下により暴言がある夫婦への対応

日々、介護をするなかで「このやり方で正しいのかな」と疑問や不安を感じたり、「こんなふうにしてあげたいのに、うまくできない」と悩まれたり、葛藤されたりする瞬間があるのではないでしょうか。


お一人おひとりの状況に合わせて行う介護の正解は、ひとつではありません。しかし、他の方のケア事例から感じ取れるヒントやメッセージもあるかと思い、本コラムでは経験豊富なSOMPOケアスタッフの介護エピソードをご紹介します。


目次
・今回のテーマ:認知機能低下により暴言がある夫婦への対応
・動けるはずなのに床ずれができた女性
・認知機能低下で変わった夫婦の関係性
・大切なのは「傾聴」とそこに至った「原因」
・ご本人の状況にあわせた支援を
・ケアスタッフからのアドバイス

執筆者画像
SOMPOケア郡山 訪問介護事業所 ケアマネジャー 田中華江さん
幼少期からおばあちゃん子だったこともあり、介護関係の仕事へ進むため福祉系の高校へ進学。高校卒業後に介護福祉士を取得し、特別養護老人ホームへ就職。20代での結婚を機に一旦離職。 30代になりジャパンケアサービス(現:SOMPOケア)へ、ホームヘルパーとして入職されました。当時はパートでしたが、半年で正社員となり、その後ヘルパーステーションの管理者に。訪問介護はひとりのお客さまに向けたケアができることが魅力、と語っています。

今回のテーマ:認知機能低下により暴言がある夫婦への対応

今回ご紹介するのは田中さんがヘルパーとして関わったAさんご夫婦のお話です。ご夫婦は80代後半の高齢者世帯。息子さんもいましたが、遠方に住んでいるため介護は難しい状態です。Aさんは認知機能低下による性格の変化や床ずれ(※1)を起こしており、日常生活をはじめとしたさまざまな支援が必要な方でした。


※1 床ずれとは:寝たきりなど体重で圧迫されている場所の血流が滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうことです。医学的に「褥瘡(じょくそう)」ともいわれています。

動けるはずなのに床ずれができた女性

認知機能低下にはいろいろな症状があります。もともとは穏やかな方でも、急に物を投げたり、人をたたいてしまう場合も。Aさんもそんな方のひとりでした。Aさん介入のきっかけは、ケアマネ(※2)から「しばらくお風呂に入っていないかもしれないので」と、入浴支援のご依頼をいただいたことでした。


当初は日常生活支援だけだと思っていたのですが、介入してみると「ご本人は動けるのに床ずれがある状態」という不思議な状態で。寝る体勢がいつも同じだったからだと思うのですが、床ずれができるまで気づかないのは、認知機能低下が関連していたのかもしれません。私たちが介入開始したときには認知機能低下の症状も進行しており、家の中でも場所がわからない状況でした。トイレにも「トイレ」と、大きく張り紙をしてようやくわかるぐらいです。


あと、トイレはなんとか行けていたのですが、お風呂は難しかったみたいで。ヘルパーが入浴支援に介入したときも、まず「どこに行くの?」からはじまり「どうすればいいの?」「ここでなにするの」という感じでした。「じゃあ、椅子に座ってください」と言うとできるぐらいです。


そのほかに、異食(※3)もありましたね。台所のスポンジや、お化粧用のスポンジも歯形がついていることがありました。


※2 ケアマネとは:正式名称はケアマネジャー(介護支援専門員)です。「要支援者」「要介護者」の相談に乗り、必要に応じて、市区町村では各サービス事業者とサービス調整を行います。詳細は、こちらの記事(ケアマネジャーの役割を知ってうまく付き合う方法)で解説しています。

※3 異食とは:通常食べものではない物を食べる行為です。きっかけのひとつとして、認知機能低下により食べ物の区別がつかなくなることがあげられます。詳細は、こちらの記事(異食症とは?異食が起こる理由や対処法、治療法を解説)で解説しています。

認知機能低下で変わった夫婦の関係性

もうひとつの問題はご主人との関係です。Aさんは、ご主人とお二人暮らしでした。息子さんもいたのですが遠方にお住まいで、介護は難しい状況です。ご主人はプライドが高くて、Aさんに暴言をはく人でした。それはヘルパーに対しても同じくでした。


ヘルパーが家事支援として掃除や洗濯をしても「なんだ、この干し方は! 」「基本ができていないだろ!」みたいな感じです。ご主人はAさんの掃除や洗濯のやり方が気に入っていたようで、ヘルパーのやり方が気に入らなかったのです。ただ、Aさんもご主人の言動から興奮してしまうようで、どんどん口が悪くなっていってしまいました。「せっかく来てくれたのになんでそんなこというの!!」という感じです。


私たちがいても夫婦喧嘩がはじまることも。ご主人に対してAさんが怒る、ご主人もAさんに怒るという状態がしばらく続きました。最初はなかったのですが、ヘルパーが入って半年以上経ってから、Aさんが急に暴言を吐くようになった感じですかね。認知機能が低下してきた印象もありました。ご主人も、Aさんの暴言がひどくなったせいか、だんだん不安が増して落ち込んでいかれたようでした。Aさんがどうしてそんなことを言うのか悩んでいたようです。


大切なのは「傾聴」とそこに至った「原因」

まずは、Aさんがなぜ暴言を吐くようになってしまったのか、原因を息子さんもふくめた関係者で話し合いました。すると、床ずれの痛みが暴言のきっかけになっていたことが分かりました。痛みのせいでうまく歩けず、ヘルパーにご飯の準備や洗濯物など、家事の準備をしてもらう「自分でできない状況」にイライラしていたようです。


また、認知機能が低下しており、感情が抑えづらくなっていたことも要因のひとつでした。トイレの場所や、お風呂の入り方もわからなくなっていたため、あらためてベテランのヘルパーに介入してもらい、できるだけご本人の力で日常生活が送れるように支援しました。


ご本人の状況にあわせた支援を

Aさんの認知機能低下については、病院受診ができておらず、お薬をうまく飲めていないことがきっかけになっているようでした。そのため、訪問看護が介入し薬を飲めるように支援を行いました。


痛みの原因になっている床ずれも、訪問看護によりアプローチすることで改善しました。介護面では、日常生活の支援はもちろんですが、暴言についてとにかく傾聴することを意識しました。ポイントは、Aさんとご主人の話を別々に聴くことです。個別にふたりの思いを聴き、仲をとりもつようにはたらきかけました。


こうした支援を続けることで、Aさんの暴言は少しずつなくなっていきました。それにともないご主人の不安も落ち着いていったように思います。


ケアスタッフからのアドバイス

おふたりと関わる上で気をつけたのは、とにかく「傾聴(※4)」です。ただ、話を聴くにしても、人間同士なので相性があると思います。Aさんからみて話しやすいヘルパー、ご主人からみて話しやすいヘルパー、のように関係性を考慮して接すると良いでしょう。


また、聴き手によってAさんやご主人の話す内容が違うので、ヘルパー間の情報共有をしていました。そこは、おふたりの話をきいて、両方が良くなるように考えなければいけないと思います。


※4 認知機能が低下した方の対応については、こちらの記事(【認知症の方への対応】こんなときどうする?介護の心がまえと接し方)でも詳しく解説しています。



取材/SOMPO笑顔倶楽部  文/藤本皓司


SOMPOケアでは、介護に関するさまざまなご相談をお受けしています。 お電話・またはお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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