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2023.11.16

異食症とは?異食が起こる理由や対処法、治療法を解説

子育てや介護をしていると、お子様や高齢者が食べ物以外のものを口に入れて食べようとすることがあります。そのような場面に出くわすと、不安を感じてしまうことも少なくないでしょう。


本記事では、食べ物以外のものを口にする「異食症」について、紹介します。異食症の概要や原因、対処法、治療法などを紹介。身近な方の健康を守るための知識として、ぜひ参考にしてみて下さい。


目次
・異食症とは
・異食症が起こる原因とは
・異食症の具体的な症状と身体への影響
・異食症の原因と起こりやすい人
・異食症が起こったときの対応法
・異食が起こらないようにする方法
・異食症は医療機関に受診すべき?
・まとめ

執筆者画像
東京都健康長寿医療センター 岩田淳 医師
東京大学医学部附属病院神経内科の専門外来「メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD)やレビー小体病、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診断、治療に当たっていた。特に超早期段階でのAD、レビー小体病の診断、新薬の開発が専門。2020年4月より東京都健康長寿医療センターの脳神経内科部長として赴任。

異食症とは

お子様や高齢者、妊婦の方が食べ物ではないものを何度も継続的に口にしてしまう行動を「異食症」といいます。異食症の主な特徴は以下の2点です。


● 食べ物ではないものを日常的に食べる行為

● 2歳以上の人が特定のものを1カ月以上続けて摂取する状態


異食症は、幼児期にはよく見られる行動ですが、2歳を超えても継続する場合は注意が必要です。また、高齢者においても同じような行動が見られることがあります。このような行動は、心身に何らかの不調や欠如感があることを示しているため、注意が必要です。


異食症が起こる原因とは

異食症の背景にはさまざまな要因が考えられます。食べ物以外のものを口に入れる行動には、その人自身が抱える心身の問題や生活環境、習慣などが大きく関わっています。


● 栄養不足:体が必要とする栄養素が不足していると、普段食べないものを摂取しようとすることがあります。

● 精神的ストレス:ストレスや不安を感じると、食べ物以外のものを口にする行動が見られることがあります。

● 病気や障害:特定の疾患や障害が原因となって、異食症のような行動が引き起こされることが考えられます。


異食症の具体的な症状と身体への影響

異食症は複数の症状に分かれ、身体へもさまざまな影響を及ぼします。万が一異食症が起こったときのために、詳しい情報を知っておくことをおすすめします。


代表的な3つの症状

異食症は、食べるものによって、症状が分かれます。代表的な3つの症状(氷食症、土食症、食毛症)について紹介します。これらの症状が見られた場合、早めの対応が必要となるでしょう。


氷食症

氷を過度に好んで食べる行為を氷食症といいます。夏などの暑い時期に一時的に氷を食べることとは異なり、日常的に大量の氷を食べる行動を指します。鉄分不足や貧血が背景にあることが多く、身体が鉄分を求めるサインとして氷を食べることが考えられます。過度に氷を摂取することで歯や歯茎にダメージを与える可能性があるため注意が必要です。


土食症

土や粘土を食べる行為を土食症といい、特定の土の味や食感を好む場合もあります。鉄分不足やカルシウム不足が背景として考えられることが多いものの、土には細菌や寄生虫、化学物質が含まれる場合があり、健康を害するリスクが高まります。


食毛症

髪の毛や毛糸を食べる行為を食毛症といいます。精神的なストレスや不安、過去のトラウマなどが背景として関連することが多いといわれています。毛糸を食べることで、消化器系に毛玉ができて詰まると、痛みや消化不良を引き起こす場合があります。重篤な場合は手術が必要になることもあるので、注意が必要です。


日常生活の中でこれらの症状を家族や知人が示している場合、早めに専門家の意見を求めることをおすすめします。そして、無理にその行為を止めさせるのではなく、理解とサポートを心掛けることが大切です。


身体へ起こる影響とは

食べ物以外のものを摂取することは、身体の機能に悪影響を及ぼす場合が多く、留意する点が多数あります。以下に、異食症によって身体に生じる主な影響やリスクを詳しく解説します。


消化管の閉塞

異食症によって、大きな異物や、消化が難しい物質の摂取することで異物が消化管内に詰まることがあります。すると、食べ物や飲み物の通過が困難となる可能性があります。強い腹痛や吐き気などの症状が現れる場合があり、重篤な場合、手術が必要となることもあります。


便秘

異物を摂取すると、それらが大腸内で固まり、便として排出されにくくなることがあります。結果、排便が困難になり、便秘を引き起こします。長期間の便秘が続くと、腸の健康を害するリスクがあり、慢性的な腹痛や腹部の膨満感などの症状が現れることがあります。


鉛中毒

塗料片や古い玩具、家具から取り外した部品などには、鉛を含む遺物を摂取した場合、中毒症状を起こすことがあります。神経系、消化器系、血液系に悪影響を及ぼす場合があり、子供の場合、学習障害や日常行動に問題が生じることもあります。


寄生虫感染症

泥や土のなかには、寄生虫の卵や幼虫が生息していることがあり、それらを体内に入れてしまうことで、寄生虫に感染するリスクが高まります。腹痛や下痢、体重減少などの症状が現れ、感染が進行すると、臓器にダメージを受ける可能性があります。


異食症による身体への影響は、摂取する異物の種類や量、摂取頻度によって異なります。これらのリスクを回避するためには、異食症の早期発見と適切な対処が必要です。

異食症の原因と起こりやすい人

異食症は、さまざまな要因によって引き起こされる摂食障害の一つです。この摂食障害が発生する背景には多様な原因が存在します。また、特定の年齢層や状況にある人々が異食症を発症しやすいことが知られています。以下に、異食症になりやすい人とその原因ついて詳しく解説いたします。


小児の場合

小児の場合、異食症の背景にはさまざまな原因や要因が潜んでいることが考えられます。以下に、小児の異食症の主な原因や注意点を詳しく解説します。


精神遅滞・知的障害

認知や判断の発達が平均的な子供に比べて遅れていると、食べられるものと食べられないものの区別が難しいことがあります。さらに周囲の環境や人々の反応を適切に理解し対応することが難しいため、異食の行為を繰り返すことがあります。


保護者のネグレクトが影響

十分な食事や栄養素が不足すると、子供は空腹感を持ち続け、食べ物以外のものを口にすることがあります。また、愛情不足などの感情的なネグレクトが続くと、子供は安心感や愛情を求めて異食行為を行うこともあります。


ストレス発散としての異食

子供は大人とは異なり、ストレスや不安を言葉で適切に伝える能力がまだ発達していません。そのため、異食行為を通じて、感じているストレスや不安を発散しようとすることがあります。


妊婦の場合

妊娠は女性の体にとって特別な時期であり、心身の変化が激しくなる時期です。以下、妊婦の場合の異食症の原因やその影響について詳しく説明します。


栄養不足が原因

妊娠中は栄養素の不足が生じやすい状態でありながら、体内の鉄分や亜鉛の需要が増えることから、異食症が起こりやすくなります。特に、鉄分は酸素の運搬を担うヘモグロビンの主要成分であり、赤ちゃんへの酸素供給にも影響がでてきます。そのため、食べ物から接種できない状況が続くと、他の方法で接種しようとする可能性があります。


満腹中枢障害や体温調節障害

妊娠中はホルモンのバランスの変動により、食事の量や頻度が変わることがあります。この変動が満腹中枢に影響を与えると、食べるものの選択や量に異常が出ることがあり、その結果、異食症の妊婦は普段とは異なるものを食べたくなることがあります。また、妊娠中の体温調節機能の変化は、異食症の原因となることがあります。たとえば、体温が上がりやすくなるため、氷などを食べたくなる「氷食症」の症状が現れることがあります。


認知症の人の場合

認知症は、記憶や認識、判断能力の低下といったさまざまな認知機能の障害を伴う状態です。このような認知機能の低下が、異食症を引き起こすことがあります。


具体的には、認知症の進行により、日常的な判断や物の区別が難しくなり、食べ物と食べ物でないものの区別がつかなくなることがあります。また、記憶障害により、過去の経験や知識が失われ、食べ物の知識や安全な食事の方法を忘れてしまい、結果、異物を摂取してしまうことがあります。

認知症についての詳細は、こちらの記事(【認知症とは】基本を知ろう!原因・症状・治療や予防法について)をご確認ください。



異食症が起こったときの対応法

異食症に直面したとき、家族や介護者は混乱や不安を感じることが多いでしょう。しかし、適切な対応をとることで、症状を和らげることができます。この章では、異食症の対応法について、具体的な事例を交えて紹介します。


大声を出したり、怒ったりせず、優しく誘導しましょう

もしも異食症の現場に遭遇したとき、感情的になりやすいですが、怒ることは避けましょう。突然の大声や驚かせる行動は、患者をさらに混乱させる可能性があります。静かな声で優しく話しかけることを心がけましょう。

患者が非食物を口に入れた場合、無理に取り上げるのではなく、吐き出すように優しく誘導してみてください。


「高齢の父が新聞の切れ端を口に入れているとき」の対応法

父に直接接触する前に、深呼吸をして自分の感情を落ち着かせます。そして、父の目を見て「大切な新聞の記事だね。でも、それは食べ物ではないから、口から出してみようか」と優しく声をかけます。


「認知症の母が花の土を食べているとき」の対応法

まず、母を驚かせないように接近し、「お花を育てるための土だよ。一緒にお花を見に行こう」と提案し、注意をそらすよう努めます。


「小さな子供が玩具の部品を口に運んでいるとき」の対応法

子供の目線に合わせて接近し、「それは面白いおもちゃだね!でも食べ物じゃないよ。一緒に遊ぼう」と声をかけ、玩具を遊びとして利用するよう誘導します。


異食が起こらないようにする方法

異食症の原因は多岐にわたるものの、特定の予防策や家庭内の工夫により、発症のリスクを減らすことが可能です。この章では、異食症を予防するための方法や家庭内での注意点について具体的に探っていきます。


安全な環境作り

家庭内での安全対策はもっとも基本的な予防策のひとつです。小さな子どもや認知症の高齢者がいる家庭では、飲み込める小物や粘土、観葉植物などを手に届くところに置かないことが重要です。


食べ物と食べ物でない物をわかりやすく区別する

食べ物と食べ物でない物を明確に区別することで、誤認のリスクを低減させることができます。たとえば、食品用の容器に食品でないものを入れない、キッチン以外の場所で洗剤や薬品を保管するなどの工夫をしましょう。


食事の回数を増やす

適切な食事回数や食事の質は、異食症の予防に有効です。空腹感や栄養不足が異食の原因となることがあるため、小分けの食事を頻回に取ることで、これを予防することができます。


生活リズムを整える

定期的な生活リズムや適切な睡眠は、体調を整えるだけでなく、心理的な安定にも繋がります。特に、夜間の異食行為を防ぐためには、夜の就寝前のリラックスタイムを設けるなどの工夫が効果的です。


ストレスを取り除く

異食症はストレスや心的な不調が原因となることもあります。リラクゼーションや趣味の時間を持つこと、ストレス原因となる要因を見直すことで、予防に繋がります。


異食症は医療機関に受診すべき?

異食症の症状のその度合いや原因はさまざまです。軽度の場合は日常生活の工夫や家族間の対応で改善できることもありますが、深刻な場合や長期間にわたって異食行動が見られる場合、医師に相談することを推奨します。そこで、いつ医療機関の受診を考えるべきか、その判断基準や適切な医療機関の選び方、治療法の概要について詳しく解説します。


受診の判断基準

異食症の症状が見られた場合、医療機関に行くか否かを迷うことがあるでしょう。以下のいずれかの状態が見られた場合は、医療機関で相談することをおすすめします。


持続的な異食行動

非食物の物質を摂取する行動が1カ月以上にわたって続いている場合。一過性のものでなく、継続的に異食行動が見られる場合は、深刻な状態である可能性が高まります。


実践しても改善されない

異食症の改善法や予防法を実践しても症状が改善されず、さらにその頻度が増加している場合。これは、単なる一時的な行動ではなく、背後に深刻な原因が隠れている可能性があります。


体調の悪化

異食行動後に体調の変化が見られる、たとえば吐き気や腹痛、下痢など。これは非食物の摂取による身体への影響を示唆しています。


特定の非食物への執着

特定の非食物、特に危険な物質や有毒なものへの執着や摂取が見られる場合。たとえば、鉛のペンキや電池、釘などは特に危険です。


受診するべき医療機関

かかりつけ医やケアマネジャー

まず、症状の初期段階や軽度の場合、かかりつけの医師やケアマネジャーに相談することを推奨します。症状や背景を把握し、地域の最適な専門家を紹介してくれるでしょう。


心療内科・精神科

異食症は、心理的要因が大きく関与することが多いため、心療内科や精神科の受診を検討することが効果的です。本人の精神状態を評価し、適切な治療法を提案してくれるでしょう。


治療法

異食症の治療法として、「行動変容法」と「カウンセリングやセラピーセッション」を紹介します。

行動変容法

異食症の治療法は確立されていない中、行動変容法が効果的であることが多いとされます。この方法は、異食行動を引き起こすトリガーや状況を特定し、それに対する対処法を習得するものです。対処法の例としては、異食行動を抑制するための代替行動の習得や異食行動の原因となる環境の調整を行い、摂取するリスクを最小限にします。


カウンセリングやセラピーセッション

精神的な背景やストレスが異食症の原因である場合、カウンセリングやセラピーセッションが効果的です。これにより、患者は感情やストレスの取り扱い方を学ぶことができます。


まとめ

異食症に対する理解を深めることで、家族や周囲の人々の健康や安全を守ることができます。また、その背後にある感情やストレスを理解することで、患者とのコミュニケーションも円滑になります。異食症を持つ人々の支援のために、正しい知識の習得と適切な対処法の実践を心がけましょう。

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