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2024.03.27

ケアスタッフより、家族介護者の方へメッセージ~第18回~「介護サービスを利用したくても本人が拒否する際の対処法」

日々、介護するなかで「このやり方で正しいのかな」と疑問や不安を感じたり、「こんなふうにしてあげたいのに、うまくできない」と悩まれたり、葛藤されたりする瞬間があるのではないでしょうか。

お一人おひとりの状況に合わせておこなう介護の正解は、ひとつではありません。しかし、他の方のケア事例から感じ取れるヒントやメッセージもあるかと思い、本コラムでは経験豊富なSOMPOケアスタッフの介護エピソードをご紹介します。

執筆者画像
SOMPOケア 雀宮 居宅介護支援 ケアマネジャー 比留間 恵美さん
6年前にケアマネジャーとしてSOMPOケアへ入社。介護職を目指したきっかけは、友人が介護職員初任者研修資格(ヘルパー2級)を取得したことにより「私も」とヘルパー2級を取得。その後デイサービスで経験を積み介護福祉士を取得し、ショートステイ、特養を経験した後、ケアマネジャーの資格を取得。介護の信念は、誰に対しても誠実であること。行動の判断軸として、相手の立場で「自分だったらどうか」と置き換えて考えることを大切にしている。

今回のテーマ「もの盗られ妄想(※1)をともなう認知症」

今回お話しするのは80代のご夫婦のお話です。おふたりは80代で、奥様(Aさん)はアルツハイマー型認知症(※2)があり、「もの盗られ妄想」や「夫を敵視している言動」がみられました。


日常の生活動作は「調子が良いときは入浴できるぐらい」で、日中はほとんど寝て過ごしていました。病院へ連れ出すのも拒否があり難しい状態です。また「盗む人がいるから」と、荷物を入れた段ボールを目の届く範囲において生活されていました。日常生活のお世話は基本的にご主人で、被害妄想の標的になり疲弊している姿を見かねて、離れてくらしている娘さんが心配されてご依頼がありました。


(※1)もの盗られ妄想とは:認知症に見られる症状のひとつ。認知症による記憶障害や判断力の低下が原因といわれており、身近な人を疑いやすいという特徴があります。

詳しくは、「「盗んだ」と疑われた場合はどうする? 物盗られ妄想の原因や対処法を解説」をご覧ください。

(※2)アルツハイマー型認知症とは:認知症の中で発症する方が多い型のひとつです。症状は個人差がありますが記憶障害や、見当識障害、判断力の低下などを起こします。詳しくは 「アルツハイマー型認知症とは|認知症の基礎知識」 をご覧ください。


夫を忘れた妻

Aさんはアルツハイマー型認知症で、一緒に住んでいるのが「夫」という認識もなくなっているようでした。ご主人へ向かって、「○○(ご主人のお名前)はどこ?」と呼びかける場面もあったようで、「それ、おれだよ」といっても分からず。


いつもそうではありませんが、「夫と暮らしている」と思うこともあれば、目の前の男(ご主人)を泥棒の一味だと思うときもあったようです。ご主人も悩んでいるようで、困ったことがあると私のところへ電話があって「来てもらいたい」「辛いです」と。Aさんが自宅から出て行ったこともあったそうで、近くの電信柱に掴まって助けてー!助けてー!」と動こうとせず。そのときは隣人の協力もあって落ちつかれたのですが、そんなAさんを見てご主人も辛かったと思います。


今思えば、認知症カフェ(※)や、認知症家族の集まりなどにご主人に行っていただいて、対応などを学んでいただければよかったと思います。ただ、コロナ過でそういった活動がない時期だったため、それも難しい状況でした。


(※)認知症カフェとは:認知症当事者や家族が集まるいわゆる「認知症サロン」を指します。介護士や看護師も参加することがあり、介護の相談ができる場でもあります。

認知症カフェについては「認知症カフェとは?概要や行われていること、参考事例などを紹介」でも解説しています。



「家」にいたい妻

娘さんもいるのですが、ご家庭もあり、一緒に生活するのは難しい状況でした。引き取ると言われてマンションを用意して連れていこうとしたこともありましたが、暗くなるとAさんが「帰る!」と言われ困る場面も多かったようです。そのためAさんのお世話はご主人がほとんど見ていました。車の運転もされていたので、お買い物や、訪問診療が入る前は病院の送り迎えもされていました。ただ、家から連れ出すことが大変でした。


先日、ご自宅でAさんが転倒されたとき、ご主人が救急車を呼んだのですが、結果としてAさんは大暴れ。Aさん本人からすれば「知らない男の人たちが入ってきて連れて行かれる」と思ったので当たり前かもしれません。Aさんはもともと家に執着があったようです。調子が良いときは家の掃除や調理をするのですが、「働かないとこの家から追い出されちゃう」という思いがあったようです。幼少期からおばさんの家に奉公に出されていたので「家で仕事しないと追い出されてしまう」という思いが根底にあったのかもしれません。


サービスが介入してもうまくいくとは限らない

Aさんは排便が20日出ていないと話されていることもあったので、訪問看護を入れて健康状態の把握と、排便コントロールをできるようにしました。


ほかにも、家に一人でいるのも身体面、精神面的によくないと判断し、デイサービスを週1回いれました。加えて、床で寝ていましたので起き上がりが大変だろうと思い介護ベッドを借りました。ただ、デイサービスでは「食事をとらない」「入浴もしない」「トイレも行かない」とケアを拒否して、結局2〜3時間滞在して帰宅することもあったようです。


娘さんからの手紙

サービス介入後、そうこうしているうちに転倒して骨折、入院となりました。本人の状態から自宅に帰るのは難しく、ほかの病院へ転院となりサービスは終了になりました。


実は、Aさんがショートステイを利用したことがあり、そのときに娘さんからお手紙をもらいました。そこには認知症の母をなんとかここまで介護できたことへの感謝と、両親への想いが綴ってありました。


【娘さんから比留間への手紙】

比留間さま
この度は母のためにお気遣いいただきありがとうございました。さきほど初めてのショートステイに母を送り出しました。
こうして以前から拒否していたショートステを利用できたのは、比留間さんに関わっていただけたおかげだと感じています。今回のショートステイの利用が母にとっても良い結果になることを祈っています。また、それにより父へのあたりが少しは柔らかくなってくれるのではないでしょうか。
母は今年で84歳になります。認知症は大変な病気ですが、ここまでこられたのも比留間さんのおかげです。本当に感謝しております。今後もどうぞよろしくお願いします。


このときは、私がAさんに介入してから1年ほど経ったころです。今、考えれば難しい事例ではありましたが、少しでもご本人やご家族の力になれたのではないでしょうか。


ケアスタッフからのアドバイス

大切なのはとにかく「傾聴」することです。Aさんご本人はもちろんご主人の話をよく傾聴していましたね。かかえこまないこと。つらいことを吐き出してもらうことです。できる限り「一人じゃない」とわかってもらうように対応していました。


今回の事例では、介護者であるご主人も「もうどうしたらいいか分からない」とかなり参っている様子もあったので、私をはじめとした関わった周囲の人間もそちらをフォローできるように気をつけていましたね。



次回はパーキンソン病がある女性のお話です。認知症があり、言葉は理解できていますが、自分の思いを表現するのが難しく、こちらが思いを汲み取る必要がありました。



取材/SOMPO笑顔倶楽部  文/藤本皓司

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