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2023.03.28

ケアスタッフより、家族介護者の方へメッセージ~第8回~

いつも頑張っている家族介護者の方々へ向け、笑顔倶楽部からの応援を込めた連載をスタートしました。

日々介護をするなかでは、「このやり方で正しいのかな」と疑問や不安を感じたり、「こんなふうにしてあげたいのに、うまくできない」と悩まれたり、葛藤したりされたりする瞬間があるのではないでしょうか。

お一人おひとりに応じておこなう介護の正解は、ひとつではありません。しかし他の方のケア事例から感じ取れるヒントやメッセージもあるかと思い、本コラムでは経験豊富なSOMPOケアスタッフが経験してきた介護エピソードをご紹介します。


今回のテーマ「目や耳が不自由な方の在宅ケア」

今回ご紹介するのは、80代女性(Aさん)。独居でしたが全盲状態でお耳も遠く、認知症も進行していたため、朝・昼・晩と毎日3回、入浴や調理のお手伝いに伺っていました。

東京にいる娘さんは「ひとり暮らしは危ないから施設に入ってほしい」とお考えでしたが、60代の息子さんは、「できれば母の好きなようにさせてあげてほしい」とのご意見。息子さんは車で20〜30分の場所にお住まいで、何かあればすぐに来てくださったり、必要なものの購入をしてくださったりと、協力的にサポートくださっていました。


執筆者画像
SOMPOケア 東日本本部 北海道第2事業部  事業部長(介護福祉士) 秋保英里さん
訪問介護ひと筋12年、現在は北海道札幌市内の一部および北見市・石狩市の事業所をまとめる事業部長さんです。家族がケアスタッフ従事者で、ご自身も「高齢者の方が好き」だったことから、看護助手からキャリアをスタート。お宅でリラックスした状態の高齢者の方にいろいろなお話を聞かせていただけることが訪問介護の魅力、と語られていました。

危険は取り除きつつ、環境を変えない

Aさんは「亡くなった旦那様との家に住み続けたい」とのことで、在宅を続けていらっしゃいました。とはいえ目がまったく見えない状態で、耳もかなり遠くなっていたので、ヒヤリとしたことも。「在宅は限界かもしれない」と感じることもありましたが、ご本人の強い希望がありましたし、息子さんも「頑固で周りに合わせるのが難しい性分なので、施設には向かないと思う」とのご意見でした。


そこで随時ご相談をしながら、暖房機器を電気毛布に換えたり、手が挟まらない形の扇風機にしたりして対処を重ねました。息子さんが積極的に安全な家電を提案し、設置してくださったことも大きな力になりましたね。できるだけリスクを先回りする視点をもって、ケアをおこなうようにしていました。


失明される前から住んでいたお部屋の内装を「変えないこと」にも留意しました。移動の妨げになるドアを外す、といった大きな変更を加えてしまうと、逆に転倒のリスクが高まってしまう可能性があり、小さな変化にとどめながら室内環境を整えていきました。


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拒否があっても激昂されても、大丈夫

Aさんは時折、身の回りのモノを投げたり、服を引っ張ったりして激昂されてしまうことがありました。認知症になると警戒心が強くなる方は少なくありませんが、Aさんは目や耳の不自由があったので、よりその傾向が強かったように思います。毎日のケアをするなかで、急に声をかけたり、耳元で大きな声で話したりすると、Aさんの感情を刺激しやすいことがわかってきました。そこで遠くから声をかけたり、手を触れてから話しかけたり、手足が当たらない角度から声をかけたりなど、さまざまに工夫をしていました。


カンファレンス時、「怒鳴られても落ち着いて声かけしていこうね」というスタンスを共有していました。とはいえ落ち込んでしまうヘルパーもいましたが、「認知症の症状がそうさせているだけだよ、ご本人が悪いわけじゃないよね」「今日は大変だったね」などと努めて明るく、声を掛け合っていました。

事業所全体で「Aさんのためには、この部分をどうしたらいいかな」と共有しながら、より良いケアのヒントを模索。私たちが「どう工夫すればいいか」がわかってくると、Aさん本人もかなり落ち着いてケアを受けてくださるようになった印象があります。


少しでもお気持ちの安定につながればと思い、離れて暮らしている息子さんとAさんの仲をつなぐことも意識していました。お菓子を差し入れてくださったときには「息子さんが買ってきてくれましたよと何度かお声がけし、息子さんにも「喜んで食べていましたよ」と感想をお伝えしていました。

Aさんが感情的になられることについては「拒否はあります」程度にご報告し、実情の1/10くらいしかお伝えはしませんでした。息子さんを申し訳ない気持ちにさせてしまうのは、私たちも本意ではなかったからです。施設に入られるまでの2年間、Aさんは住み慣れたご自宅で過ごすことができました。

明日も笑顔になれますように。第7回「認知症の方の好き嫌い」

秋田県のSOMPOケア事業所で介護支援専門員(ケアマネジャー)を務める伊藤さんの実のお婆様のお話です。80歳代で認知症になり、在宅ケアを始め、最後は特別養護老人ホームでお看取りをされた在宅時代のエピソードをご紹介しております。

ケアスタッフからのアドバイス

Aさんのようなケースでもご家族とのかかわり、ヘルパー(社会資源)の活用により在宅生活が継続することができます。少しでも認知症の兆候があると、すぐに「施設入居」という選択肢を考えがちですが、火の心配や行方不明(ひとり歩き)などの不安な行動がおきたとしても在宅生活を継続していける、可能性はあると思います。ご本人が住み慣れたご自宅での生活を望んでいる限り、様々なサービスを検討し、サポートをさせていただきたいと考えています。


認知症は外部刺激が少なくなると、進行しやすいことが知られています。寝たきりで外出しない、誰からも電話が来ないといった状況では、認知症が進んでしまうことが少なくありません。朝と夜がわからなくなり、カーテンを閉めっぱなしのお部屋で一日中過ごされるようになる方もいます。「ヘルパーさんが来る」となれば、少し起き上がろう、着替えようというきっかけになりやすく、「今日の予定がある」という楽しみも生まれます。いろいろな方を見てきましたが、「日々の生活にハリがあるかどうか」は、薬よりも認知症の症状を左右するのではないか、と思うことが少なくありません。


ご本人でできていることがあれば、「自立支援」も意識しながら、お一人おひとりに応じたケアプランを立て、実行していきます。認知症のご家族の生活で少しでも心配なことがあれば、ぜひ気軽に相談をいただければ嬉しいですね。



次回のテーマは「おむつへの抵抗感」。おひとり暮らしをされていたBさんのエピソードをご紹介します。



取材/外山 ゆひら ・ 下村 涼子(SOMPO笑顔倶楽部)  文/外山 ゆひら  

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