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2021.10.21

認知機能低下予防と食べ物との関係とは? 免疫力が上がるバランスのいい食事はコロナ等の感染症予防にも効果的!

超高齢社会にともない、認知症になる方の数は年々増加しています。2025年には約700万人、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になるといわれており、今や世界中で治療や予防の研究がおこなわれています。

この記事では、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 老化疫学研究部長の大塚 礼先生に、認知機能の維持や低下予防になぜ食事が大切なのかについて、ご紹介いただきます。


脳と栄養は密接な関係にあり、認知機能の維持や低下予防には食事が大切

認知症予防には、毎日の食事が大切だと知っているものの、脳と日々摂っている食事や栄養がどのように関連しているのか、不思議に思う方もいるかもしれません。


脳の栄養として糖が必要ということは知られていますが、脳には「血液脳関門」という関所のような役割を果たす部位があり、簡単に物質が入らないようになっています。つまり、食べたものがそのまま脳に入っていくわけではないのですが、最近の研究では、血液脳関門にはいろいろな栄養素の受け皿となる部分があり、そこを通って様々な栄養素が脳の中に入っていき、脳の代謝に関わったり、脳や神経伝達物質の材料として利用されることがわかってきました。


また、脳は栄養を吸収する腸とも関係があることが明らかになってきており、腸の免疫細胞や迷走神経などを通じて、腸から直接脳に影響を与えているといわれています。

このように、ふだん食べているものと脳は、密接な関係があります。脳の健康にとって、栄養はとても重要なのです。


認知症予防のカギとなるDHAは、食品からの摂取が必要

毎日の食事が脳の健康に大きく関わっているのは、脳へのエネルギー補給という点だけではなく、脳を構成する物質にも理由があります。脳は、主に脂質とアミノ酸でできていて、とくに脂肪酸の中で多いのは「ドコサヘキサエン酸(DHA)」です。これまでのさまざまな研究から、DHAが脳の構造や機能を支えていることが判明していますが、DHAの血中濃度と認知機能にも相関関係があります。下記図1中の「ドコサヘキサエン酸(DHA)」の図では、DHAの血中濃度59-138㎍/㎖の群に対し、138-175㎍/㎖の群では、認知機能低下リスクが約8割も下がることが示されています。言い換えれば、DHAの血中濃度が低いと認知機能が下がりやすいという結果ですが、DHAは体内で作ることがほとんどできないため、食事から摂取する必要があります。


DHA以外に、認知症予防に効果がある栄養素としては、イコサペンタエン酸(EPA)やα-リノレン酸などがあります。DHAはさんまやさば、まぐろなどに、EPAはさばやいわし、にしんなどに、α-リノレン酸はアマニ油やエゴマ油などに多く含まれています。

実際の食事の目安ですが、たとえばDHAの血中濃度を高めたい場合は、青魚などDHAが多く含まれる食材を、週に1、2回(1日3回食事をするとして)程度は取り入れ、肉食に偏らず、魚介類も毎日1食品は食卓に取り入れてみることをお勧めします。


脳は脂質の多い臓器で酸化されやすいため、抗酸化作用のある栄養素も認知症予防に効果的です。抗酸化作用のある栄養素としては、ポリフェノールやビタミンなどが挙げられます。ポリフェノールは赤ワインやコーヒー、緑茶に含まれていて、緑茶については、1日1杯飲む人より1日2、3杯程度飲む人のほうが認知機能の低下が防げるという研究結果が出ています(下記図1参照)。赤ワインについては、元々お酒が飲めない人が無理に飲む必要はありません。


抗酸化作用を持つビタミンとしては、まず、にんじんやほうれん草、鶏レバー、豚レバー、バターなどに多く含まれるビタミンAが挙げられます。ビタミンAのうちβ-カロテンなどのカロテノイドは、にんじんやほうれん草などの緑黄色野菜に多く含まれます。ブロッコリーやパプリカ、いちご、さつまいもなどに豊富に含まれるビタミンC、豚肉、バナナ、赤身魚、鶏レバーなどに多いビタミンB群、大豆・大豆製品やナッツ類、アボカド、オリーブ油などに多く含まれるビタミンEなども抗酸化作用があり、認知症予防効果が見込まれます。


図1 認知機能低下リスクを抑制する栄養学的要因



ドコサヘキサエン酸(DHA)と認知機能低下リスク

多くの食品群をバランスよく。認知機能低下リスクに差が出る食事とは?

では、これらの栄養素を、実際の食事にどのように取り入れるのがいいのでしょうか。国立長寿医療研究センターでは、老化や老年病の予防法を探るための研究(正式名称:「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」を行っています。この研究で、食事に占めるいろいろな食品群のバランスを見る指標「食の多様性スコア」を使い、食の多様性と認知機能の関連を調べたところ、食の多様性が高い人=いろいろな食品群からバランスよく摂取している人は、食の多様性が低い人=いろいろな食品群から摂取していない人に比べて、認知機能低下のリスクが下がるという結果が明らかになりました。


図2中にある「食多様性スコア上昇に伴う認知機能低下リスク」の図では、食の多様性が低い人の認知機能低下リスクを「1」として、それに対し、食の多様性が高い人では、認知機能低下リスクがどれくらい下がるかを示しています。調査にご参加いただいた60歳以上の方を多様性スコアの値によって4群に分けて研究をした結果、もっとも多様性が高いグループでは、もっとも多様性が低いグループに比べて、最大で約40%認知機能低下のリスクが低下することがわかりました。こちらも言い換えれば、食の多様性が低い人は、多様性が高い人に比べ、認知機能低下リスクが上がるということになります。


図2 認知機能低下リスクと栄養学的要因



食の多様性を実際の食事で見てみると、もっとも高い人の食事では、朝・昼・夕の3食がいずれも肉や魚、野菜、海草類、きのこ、大豆・大豆製品など、多くの食品群から構成されています。一方、低い人の食事ではパンやカレーライスなど単品メニューが多く、同じような食事内容が続いているのが特徴です。たんぱく質やマグネシウムなどの脳に必要な栄養素は、多様性が高い人ほど摂取できていますが、低い人ではエネルギー摂取量としては足りているものの、栄養素としては少ないことが見てとれます。


図3 食の多様性指標 低い群 60歳代男性の食事例



図4 食の多様性指標 高い群 50歳代女性の食事例


これらのことから、食の多様性が高い=栄養バランスのとれた食事を摂れていることが、認知症予防にいいといえるでしょう。

日本国内では、このほかにも食事のデータと認知症あるいは認知機能についての研究が行われています。九州大学が行っている「久山町コホート研究」では、「豆類や大豆製品、野菜・海藻類、乳類や乳製品を多く含み、米類は控えめな食事が、認知症発症予防にいい」と報告されています。東北大学が行っている「大崎コホート研究」では、「魚類や野菜類、きのこ類、海藻類、漬物、大豆製品、緑茶の摂取を含む日本型の食事が認知症発症予防にいい」と報告されています。この2つの研究結果からも、単一の食品ではなく、いろいろな食材を用いた栄養バランスのいい食事が認知症発症予防にいい、ということがわかります。


図5 日本人を対象とした主な栄養疫学研究



また欧米では、「季節折々の野菜・豆類、果物・種実類を多く摂取し、オリーブ油を主たる油脂として使い、魚介類や乳製品、鶏肉は適量を、赤み肉は少なめに、適量の赤ワインを摂取する食事」=「地中海食」がいいといわれています。日本とは食文化が違いますが、いろいろな食材を取り入れた食事という点では、同じような考え方をしていると思われます。


図6 認知機能低下を予防する食事



1品目をプラスすることから!高齢期はしっかり食事をすることも意識して

いろいろな食材を用いた食事というと、毎日続けるのは面倒だと思う方も多いかもしれません。しかし、先ほどお話しました「食の多様性スコア」の4つのグループ中で、最も食の多様性が低い人が、2番目に低いグループに入るように少し食生活を改善するだけでも、認知機能低下のリスクは下がります。まずはできるところからスタートすることが大切です。


いろいろな食材を取り入れることでたくさんの栄養素が摂取できますが、無理なく続けるには、一度にたくさん増やすのではなく、1つずつ増やしていくことがポイントです。1品目でいいので、普段使っていない食材を食事に足してみましょう。料理でなくても、果物のように食材そのものでもかまいません。魚介類や肉類、卵、牛乳、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、海草類、いも類、果物類などは、栄養バランスのいい食事のために摂取した方がいいといわれている食品ですので、1品目足すときの参考にしてください。


また、食事全般において気をつけていただきたいのは、高齢期では、フレイル予防のためにもエネルギーをしっかり摂取する必要があることです。今の高齢の方は、中年期に肉や脂質を避けて、メタボ予防対策をしっかり進めてきた方が多いと思いますが、脳の健康という観点からは、脂質は過度に避けないようにした方がいいでしょう。とはいえ、油そのものを摂る必要はなく、脂質も摂れる肉や魚を意識して食べるようにしてください。最近のコンビニやスーパーは、惣菜が充実しているので、それらを活用するのもいいと思います。


いっぽう、中年期においては肥満やメタボの予防が重要なので、食べ過ぎないように量を制限しながらもいろいろな食材をバランスよく摂取する必要があります。穀類などの糖質や肉類の脂質は控え、肉類を控える分、DHAやEPAが豊富な魚や、植物由来の大豆たんぱくなどを摂ることがおすすめです。特にDHAやEPAを含む魚については、もっと若い世代から摂取を心がけるといいでしょう。


コロナ感染症予防にもつながる、食生活をととのえる習慣をつけましょう

これまでお話ししたように、認知機能を維持するためには食生活が大事なのはもちろんですが、実は、普段の生活にもポイントがあります。心理学と認知機能の関連を調べる研究では、好奇心が高い人は認知機能が保持されていることがわかっていますから、面白そうだと思ったことを趣味にしてみたり、普段の買い物でも新しい食材を買ってみたりなど、日常生活の中で好奇心を持つことが認知機能の維持には大切です。


新型コロナウイルス感染症や冬はインフルエンザ予防などのため、外出する機会が減っているかもしれませんが、逆にそれをきっかけに在宅でもできることを工夫してみるのもいいと思います。これまでの食生活を見直してみたり、新しいレシピに挑戦してみたり、献立を考えてみたりすることは、認知症予防だけでなく、健康にもいい影響を与えるでしょう。


感染症予防のためには、健康的な体を保ち、免疫力を上げることが理想です。そのためには、やはり、毎日3食、いろいろな食材を取り入れた食事をすること、それに加えて、笑ったり、家族と話したりしながら、楽しく食べることも免疫力アップにつながります。このように、家で楽しく食事をとることを意識していけるといいのではないでしょうか。



大塚 礼先生

東京水産大学(現・東京海洋大学)水産学部食品生産学科卒業。食品メーカーの品質管理課に食品衛生管理者として勤務したのち、名古屋大学大学院医学系研究科の修士課程と博士課程を修了。2007年以降、国立長寿医療研究センターに勤務し、2021年からは老年学・社会科学研究センター 老化疫学研究部長として、老化や老年病の予防法を探るための研究「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究NILS-LSA(ニルス・エルエスエー)」に従事している。



取材・文/荒木晶子 構成/山本幸代(SOMPO笑顔俱楽部)

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