2020年現在、65歳以上の認知症の方は約630万人と推計されています。2025年には高齢者の約5人に1人にあたる約730万人が、そして、2060年には高齢者の3人に1人が認知症になる見込みです。認知症になられても、穏やかに過ごしている方はもちろんいますが、認知症により自身や家族の生活が一変する方が少なくないことや、急速に少子化が進行する現代において認知症高齢者の増加は介護職の人手不足に拍車をかけるなど、社会問題を増幅させる可能性もあります。
一人一人の生活の質(QOL)を高めるまたは維持するためには、個人個人が健康長寿への意識を持ち、予防トレーニングをはじめとした生活習慣に意識を向け、認知症の予防に努めることが大切なのです。
認知症を予防するにあたり、「認知症」と「認知機能の低下」の違いや関係性を知っておくと良いでしょう。認知症とは、何らかの病気が原因となって脳の認知機能などが低下し、日常生活に支障が出る状態のことです。認知症の症状は、「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」に大別されます。中核症状とは、記憶力の低下をはじめ、思考・判断力の低下、見当識障害など認知機能に関わる症状です。BPSD(行動・心理症状)は、感情面や行動面に現れる症状で、暴言や暴力、行方不明、妄想などが挙げられます。
一方、認知機能とは、記憶力や判断力、学習能力、計算力などの知的能力を指します。認知機能が正常に働いている状態であれば、自身の周りや物事の状況を理解して適切な行動をとることができます。認知機能は、加齢に伴う神経細胞の死滅によって衰えるため、年齢を重ねるとともに認知機能が低下する方は多くいます。しかし、その方々がすべて認知症なのかといえば、そうではありません。
認知機能の低下と認知症は、原因や現れ方なども違うものです。たとえば、昨日の夕食の内容が思い出せないのは、加齢による認知機能の低下です。一方で認知症の場合は、夕食を食べたこと自体を忘れてしまいます。
また、認知機能の低下に比べて、認知症は症状の進行が早いことも特徴に挙げられます。認知機能の低下を防ぎ、遅らせることが認知症予防につながるのです。