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2023.04.25

地域包括ケアシステムとは? 実際の事例や現状の課題も紹介

高齢化が進む自治体の問題を解決する方法として、地域包括ケアシステムが注目されています。今回は、地域包括ケアシステムの5つの構成要素や課題、厚生労働省が発表している自治体の事例などをご紹介します。地域の方々がより豊かに暮らせる未来を目指すために、地域包括ケアシステムの課題をどのように解決するべきか考えましょう。


目次
・地域包括ケアシステムについて
・地域包括ケアシステムの5つの構成要素と4つの助
・地域包括ケアシステムのメリット
・地域包括ケアシステムの取り組み事例
・地域包括ケアシステムが抱える課題
・まとめ

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【監修】理学療法士 佐藤敬太さん
回復期リハビリテーション病院を経験したのち、訪問リハビリテーション、デイサービス、地域包括ケアなど様々な領域で臨床へ従事。現在はwebメディアの運営やマーケティング知識を活かし、医療福祉の情報が正しく伝わるよう日々発信を続けている。

地域包括ケアシステムについて

最初に、地域包括ケアシステムの概要や目的、中核機関である地域包括支援センターについて解説します。現在の介護・医療体制は国が中心となって推進したものですが、高齢化の進行状態は地域によって大きく異なります。


適切な体制を築くためにはサポート体制の主体を国から地方へ移行する必要があり、そのうえで欠かせないのが地域包括ケアシステムです。高齢者の支援を目的として、さまざまなサービスを地域で提供できるようにする仕組みのことを指します。地域ごとの自主性や独自性を重視したシステムを築くことで、高齢者が住み慣れた地域で快適に暮らせることを目指しています。政府は2025年までに、各自治体による地域包括ケアシステムの構築を目標としています。

地域包括支援センターとは

そんな地域包括ケアシステムを実現するために必要な中核機関が、地域包括支援センターです。福祉や保健医療、介護予防などの支援を行い、地域単位でのケアシステム構築を推進する目的で設置されています。令和4年4月末時点で全国に設置されているセンターの数は、支所を含めると7,409カ所です。


地域包括支援センターでは、主に介護予防支援事業と包括的支援事業を行っています。介護予防支援事業として行っているのは、要支援者や要介護者の予備軍に対する介護予防ケアプランの作成などです。包括的支援事業としては、地域に住む高齢者の相談窓口の設置や、認知機能が低下している方の金銭管理といった活動をしています。そのほか、地域の方々が住み慣れた場所で暮らし続けるために必要な支援を包括的に行っています。

地域包括支援センターについて詳しく知りたい方は、こちらの記事(地域包括支援センターの役割とは?活用方法や相談事例をわかりやすく解説)をご覧ください。

地域包括ケアシステムの5つの構成要素と4つの助

ここからは、地域包括ケアシステムを構成する5つの要素と、構築に必要な4つの助について見てみましょう。

5つの構成要素

地域包括ケアシステムは大まかに「住まい」「医療・看護」「介護・リハビリテーション」「保健・福祉」「介護予防・生活支援」という5つの要素から構築されています。


「住まい」…高齢になっても住居を確保できるよう、賃貸住宅の保証人を提供するサービスなどが実施されています。

「医療・看護」…主にかかりつけ医や病院などの地域の医療機関です。

「介護・リハビリテーション」…在宅介護や施設介護の形で地域の方々の生活を支えます。

「保健・福祉」…自治体による配食サービスやふれあいサロンの企画によって、地域の方々の健康的な生活をサポートします。

「介護予防・生活支援」…住み慣れた地域で暮らし続けられるように、尊厳ある生活を守ります。


地域包括ケアシステムにおける構成要素のあり方は、植木鉢に例えられます。植木鉢は鉢に土が盛られ、その土に根を張った植物が葉を茂らせるものです。上記5つの構成要素をそれぞれ植木鉢の鉢・土・葉に例えると、以下のように表現できます。


鉢…全体を支える鉢の役割を果たすのが「住まい」の要素です。地域の支援がどれだけ充実していても、住まいが確保されていなければ安定した生活は送れません。
土…土に例えられるのが「介護予防・生活支援」の要素です。最低限の健康を維持し、地域全体による生活支援を受けることで、いつまでも尊厳のある暮らしを送れます。
葉…葉に例えられる「医療・看護」「介護・リハビリテーション」「保健・福祉」の要素では、それぞれ専門的なサービスが提供されます。これらの支援には、住まいや健康といった最低限の基盤が必要です。


このように、地域包括ケアシステムでは5つの構成要素が密接に関わり合いながら、地域の方々の健全な生活をサポートします。

4つの助

地域包括ケアシステムでは、4つの「助」による連携で課題を解決していく体制が構築されます。ここでいう4つの助とは「自助」「互助」「共助」「公助」のことです。


・「自助」とはその名のとおり自分自身を助けることで、介護予防に積極的に取り組みつつ、ご自身が健康維持のための努力をすることが求められます。慣れ親しんだ地域で暮らし続けるために、外部の介護サービスを利用することも自助の一環です。

・「互助」とは、ご近所や家族といった知人と自発的に助け合って生活する姿勢のことを指します。次の「共助」も互助とよく似た概念ですが、異なる点は共助では助け合いが制度化されているということです。医療や介護保険など、被保険者の負担によって成り立つサポート体制が共助に該当します。

・「公助」とは、上記3つの助では対応できない課題に対する、行政による社会福祉制度のことです。主に国民の税負担で成立しており、生活保護や高齢者福祉といった形で住民を守ります。


このように地域包括ケアシステムでは、自助での生活が難しい方を互助や共助、さらには公助でサポートできるような体制の構築を目指すことが重要です。


地域包括ケアシステムのメリット

地域包括ケアシステムが機能した場合、自治体の住民はさまざまな恩恵を受けられます。ここでは、地域包括ケアシステムの主なメリットを4つご紹介いたします。

自宅で過ごしながら医療・介護ケアを受けられる

地域包括ケアシステムのメリットは、医療や介護のケアを必要とされる方がご自宅でそれらのサービスを受けられるようになることです。 地域包括ケアシステムによって地域における医療・介護の連携が進めば、要介護の方もスムーズにサービスを提供できるようになります。ご自宅にいながら十分な医療・介護ケアを受けられる体制づくりが進むと、要介護認定を受けた後も生活の充実度が高まるでしょう。

認知機能が低下していても家族で暮らしやすくなる

地域包括ケアシステムによって、認知症の方を地域で支える体制ができていれば、認知機能が低下したとしてもご家族での生活を続けやすくなります。地域におけるこうした体制づくりに貢献しているのが「認知症サポーター」や「認知症カフェ」、「認知症初期集中支援チーム」の存在です。


 認知症サポーターとは、認知機能の低下に関する知識を備え、患者様やご家族を支える活動を行っている方のことです。認知症カフェでは、認知症サポーターや介護者、施設によっては認知症の患者様も集まって、情報交換などを行います。また認知症初期集中支援チームは各地域に設置されており、介護サービスの案内や介護方法に関するアドバイスなどを行っています。このように地域におけるサポート体制が広まれば、認知機能が低下した方も施設ではなく自分の家で暮らしやすくなるでしょう。

多様なサービスが生まれる

地域の方の暮らしを充実させる多様なサービスが生まれることも、地域包括ケアシステムのメリットのひとつです。システムの構築にともなって、ご自宅で生活する高齢者に対して適切なケアを提供するために、ニーズに合わせた多様なサービスが生まれます。24時間対応の介護サービスや買い物代行、住まいの提供など、暮らしを充実させる多様なサービスの登場することで、地域の方々の肉体的・精神的な負担を軽減し、より快適な暮らしが実現するでしょう。

誰もが社会参加しやすくなる

地域包括ケアシステムには、地域全体の絆を強め、高齢者の社会参加を促進する効果も期待されています。元気な高齢者が積極的にイベントやボランティアに参加して支援が必要な方をサポートするような体制ができれば、支援という社会的役割を感じられるでしょう。支援する側もその活動にやりがいをもつようになれば、いきいきと暮らせるだけでなく、ご本人の介護予防にもつながります。高齢者が活躍できる場が広がり、末永く元気に暮らせるような体制を築くことも、地域包括ケアシステム導入の目的のひとつです。


地域包括ケアシステムの取り組み事例

早い段階で地域包括ケアシステムを導入した自治体では、すでに地域活性化などの効果が表れています。ここからは、厚生労働省が発表している実際の取り組み事例を3つ紹介します。


埼玉県川越市の事例

埼玉県川越市では、認知機能が低下した方を地域ぐるみで支える取り組みを行っています。まず、認知機能の低下に関する正しい知識を地域に広める目的でパンフレットを作成しました。


さらに、地域包括支援センターが中心となって、介護するご家族をフォローする事業も開始しました。具体的には介護マークの貸し出しや、月1~2回の認知症カフェの開催などを行っています。また、市民後見人養成講座を開催し、定年退職者の社会貢献の場を作ることにも力を入れています。こうした取り組みの効果として、ご家族の介護をされている方は同じような境遇の方との出会いが増え、地域住民は認知機能低下についての理解を深めました。今後の活動としては認知症相談会の開催や「認知症支援について検討する会」の立ち上げなどが予定されています。


新潟県長岡市の事例

新潟県長岡市では、小地域において5つの構成要素を一体的に提供する取り組みを実施しています。長岡駅を中心として13カ所のサポートセンターを設け、それぞれのセンターで住まい・医療・介護・予防・生活支援に関するサービスを網羅的に提供。現在はサポートセンターの交流スペースで町内会の役員会などが行われており、地域住民との連携が強化されています。子どもたちも自然とセンターへ立ち寄るようになり、地域住民のコミュニケーション活性化にも役立っています。


鹿児島県大和村の事例

奄美大島の中央部に位置する鹿児島県大和村では、住民を主体とした互助システムづくりに取り組んでいます。大和村では高齢化が進み、住民同士の互助の意識が薄れて困りごとが解決できない状況が続いていました。そこで地域包括支援センターが事業を提案し、住民が主体となって介護予防や生活支援を行う体制の構築に乗り出しました。


手始めに、住民が世代を問わず参加して「地域支え合いマップ」を作り、問題点を議論してさまざまな取り組みを展開。高齢者の野菜づくりを支援したり、ご近所喫茶を設けたりするなかで、徐々に地域が活性化するようになりました。その結果、家にこもりがちだった方も畑づくりに参加し、自主サロンが始まるといった好影響が表れています。今後は現在の参加者だけでなく、村全体の活動へと発展させることを目指しています。


地域包括ケアシステムが抱える課題

地域包括ケアシステムを順調に導入している自治体もありますが、今後解決しなければならない課題も少なくありません。まず、医療と介護の連携をどのように進めていくのかという問題があります。高齢者は疾患を抱えている場合が多く、円滑なサポートを受けるためには医療と介護の協力体制が欠かせません。しかし、医療関係者と介護関係者のあいだには「メンタルバリア」と呼ばれる見えない壁があるといわれています。高齢者が住み慣れた地域で快適に暮らすためには、両者のコミュニケーションが活発になることは重要な課題といえるでしょう。


ケアシステム構築にあたって、地域ごとに格差があることも問題点のひとつです。地域包括ケアシステムの導入で住民の方を支える主体は国から自治体に移りますが、各自治体が保持する財源や人的資源には大きな差があり、提供できるサービスにも当然格差が生じます。その結果として、より充実したサービスを受けられる自治体へと住民が流出することも考えられるでしょう。そのほか、地域活動のボランティアの担い手不足なども指摘されています。各自治体には異なる特色が備わっており、課題解決への適切なアプローチは千差万別です。自治体には今後、主体性をもってシステムを構築していくことが求められています。


まとめ

地域包括ケアシステムは、少子高齢化が進む日本社会で高齢者の尊厳ある暮らしを守るうえで欠かせない考え方です。システムが正常に機能すれば、多様なサービスの登場や高齢者の社会参加など、地域にとって多くのメリットが生まれます。 すでに一定の効果を上げている自治体もありますが、医療と介護の連携、地域ごとの格差といった課題も少なくありません。よりよい暮らしのために、地域包括ケアシステムの目指す形を理解し、地域全体で協力していく姿勢が求められています。


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