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2022.07.27

ケアスタッフより、家族介護者の方へメッセージ~第1回~「奥様の看取り~最期まで一人でがんばりたい~」

いつも頑張っている家族介護者の方々へ向け、笑顔倶楽部からの応援メッセージとして、連載コラムをスタートしました。日々介護をするなかで、疑問に感じたり、迷ったり、他の人はどうしているの? と気になる事がたくさんあると思います。ここでは、経験豊富なSOMPOケアのスタッフが今まで担当したご家族のお話や、介護に関するエピソードをご紹介します。同じ症状でも、家族によって悩みや対応は様々。介護に正解はありません。少しでもヒントになれたら幸いです。



今回のテーマ「奥様の看取り~最期まで一人でがんばりたい~」

ともに80歳代のAさんご夫婦です。奥さん(Aさん)はリウマチで介護認定を受けましたが、リウマチだけでなく、その他の病気で手術を繰り返し、骨折も多かったため寝たきりになってしまいました。ご主人は「自分が倒れる寸前までは頑張りたい」と24時間つきっきりで介護をされていましたが、そんな大変な状況でも常に明るく、いつも周囲に感謝をしながら奥さんの看取りをされたお話です。



執筆者画像
SOMPOケア 東京推進部 東京新規事業課 本郷 公子さん
穏やかな口調と優しい雰囲気の本郷さん。介護現場での経験も長いためとても頼りになります。現在はケアマネジャーとしては現場から離れていますが、長年の経験を活かし、居宅介護支援事業所運営支援やシニア住宅相談事業の業務を担当されております。

倒れるまでやりとげたい

Aさんは寝たきりになったあと自分で体を動かすことができなくなり、体の向きを変えるときはご主人にお願いしていました。でも、リウマチ等の病気により、体を動かすと、Aさんには強い痛みが伴います。ご主人もそのことはよく理解していましたので、痛くないように、そ~っと体を動かしますが、それでも時々「痛い!!」と強く言われることがありました。そんな時でもご主人は、優しくAさんの気持ちを全て受け止めていました。


ご主人は、日中は、Aさんのベッドの横で趣味の俳句を書いて過ごし、家中にゆったりした椅子をいくつか置き、時間のある時や疲れた時はどこでも休めるような工夫をしながら、24時間Aさんにつきっきりで介護をしていました。そんな大変な状況ではありましたが、お二人はとても仲がよく、例えばAさんが、ご主人に介護をされていることに対して「昔、散々苦労をかけさせられたから、今は介護をさせてあげているの」と言うと、ご主人はそれに対して笑顔で「介護させていただいています」と返事をし、いつまでも恋人同士のような雰囲気でした。


ご主人は、Aさんの病気のことで不安があれば医師や看護師に。介護に関することは私にすぐに相談していました。不安な事は溜め込まず、すぐに解決することにより、精神面での負担は軽減できていたと思います。ただ、寝たきりのAさんを24時間つきっきりで介護されていたため、身体的な負担は限界にきていたと思います。実際「腰が痛い」とよく言われていましたので、ホームヘルパーの利用などを提案したこともありますが、

「まだ大丈夫。自分が倒れるぎりぎりまでは介護をしたい。最期までやり遂げたい」という強い意志をお持ちでしたので、ご主人の意志を尊重し、ご本人の介護を見守ることにしました。ただ、ご本人から要望があった時に、すぐに対応できないと困るので、いつでも緊急時や夜間に対応できるよう、準備だけはしていました。

結局、ご主人はほとんど介護サービスを利用されないままAさんを看取り、約10年間の介護生活を終えました。




【新田恵利さんインタビュー】 「後悔はしたくない」。介護を経験し自身の人生に対してもポジティブに

2014年、突然始まった実母の介護。それからの6年半の間には、ともに暮らす母への思いはもちろん、新田さんの心にもたくさんの変化がありました。介護を経験したからわかったこと、今ひとつだけ「後悔」していること、そして介護生活を送っている方々に伝えたいこととは。


ケアスタッフからのアドバイス

ケアマネジャーなどに「辛い」「大変」と相談をすると、すぐに介護サービスを勧められるのではないか? と思われるかもしれません。

しかし、今回ご紹介したAさんのご主人のように、実際は、すぐにサービスに繋げるわけではなく、状況をみて対話しながら介護サービスを利用されるか判断しています。Aさんのご主人の場合は、体力的な「限界」は超えていましたが、限界を超えてでも看たいという気持ちをまずは尊重しました。


私達ケアマネジャーは介護サービスを提供することだけが仕事ではありません。一番は、ご本人さま、そしてご家族さまのご希望が叶うよう、最大限のサポート(お手伝い)をすることだと思っています。大事なことは、大変さを人に『伝える』ことです。「まだ大丈夫。だけどここは辛い」と口に出すだけでも辛くなくなることがあると思いますし、その結果ケアスタッフや看護師等、職種を超えた連携がとりやすくなります。また、「辛い」だけでなく、「ありがとう」など感謝の言葉を口に出す事も、重要だと思っています。Aさんはいつも、ご主人に感謝の言葉を言われていました。ご主人はAさんの「ありがとう」の言葉で元気になり、「明日も頑張ろう!」と思えたのではないかと思います。「伝える」ことで大きく何かが変わることはないかもしれませんが、伝えることで何かのきっかけになることはあると思います。


次回のお話は「在宅介護を続けるコツ~がんばりすぎないことが大事~」。奥さんの前で「父の介護は全て僕がする!」と宣言した息子さんのお話です。



取材・文/下村涼子(SOMPO笑顔俱楽部)

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