公益社団法人 認知症の人と家族の会が発行する会報誌『ぽ~れぽ~れ』より、家族介護者の体験談記事「支部だよりにみる介護体験 北から南から」をご紹介します。今回登場するAさんは、認知症のお母さまを自宅で10年近く介護し、その後施設(特養)に入所となりました。自宅で介護している間の葛藤と思いについてのお話です。
公益社団法人 認知症の人と家族の会が発行する会報誌『ぽ~れぽ~れ』より、家族介護者の体験談記事「支部だよりにみる介護体験 北から南から」をご紹介します。今回登場するAさんは、認知症のお母さまを自宅で10年近く介護し、その後施設(特養)に入所となりました。自宅で介護している間の葛藤と思いについてのお話です。
私は、自宅で認知症の母を一人で10年近く介護し、その後施設(特養)に入所させました。母の施設での生活も4年以上になります。 母は、80歳を過ぎた頃から、物忘れや繰 り返し同じことを聞くなどの認知症の症状が出てきました。本人も気にして「私はバカになった。自分の父親(やはり認知症で母と祖母で介護、60年以上前で大変な介護だったと思います)と同じになるのか、ヤダ ヤダ!」と繰り返し言ってました。私はとにかく否定はしないで、「大丈夫、大丈夫、誰でも年を取ると忘れるんだから」と言い続けましたが、本人は父親のトラウマで不安が大きかったようです。
私も「大丈夫」と声かけはしていたものの、四六時中母の不安な状態に付き合うのは、自宅で仕事をしていたこともあって、ほとほと疲れてストレスが溜まっていきました。それに、早い段階から私のことを娘ではなく、姉さん(一番大好きだった6歳上の姉、63歳で亡くなる)になってしまい、ベタベタと甘えてくるのもうんざりしていました。当時の日記を見るとこんな風に書いています。
『また怒ってしまった 怒っても文句を言っても、何も分からなくなってしまったと分かっていても、イライラして己れのいらだちを、どこにも持って行きようのない腹立たしさを、何もわからなくなってしまった人間にぶつけてしまう。あとで悔やむのに、あとで己れ自身に「バカ」とつぶやくのに』
母はよく「私は8人兄弟の末っ子で、ネコのしっぽ、甘やかされて育ちわがままです」と言っていました。確かにとてもわがままな人で「私のわがままはそういうわけで仕方がない」と正当化しているようでした。性格的には社交的で、その場を明るく楽しくする人でもあり、私も子ども心に「母と子でなく友達関係なら好きかな」と思ったりもしていました。 いろいろな事情があって、弟の事故死の後、母と二人の生活になりましたが、母が突然「アパートを建てよう」と言い出し、私は3千万円の借金をして建て、20年をかけて返済しました。家に戻り母と同居するようになって30年。その間に母は認知症になり、自宅介護をしていた10年近く、母に振り回された日々でしたが今は懐かしく思い出されます。
※この記事は『ぽ~れぽ~れ』(発行元:公益社団法人 認知症の人と家族の会)2021年8月号より抜粋・一部修正したものです。
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