{{ header }}
{{ body }}
スキップ
セミナーで話をするロッテの菅野さん
2024.09.06

【セミナーレポート】“噛むこと”と健康~食事と認知機能の関係性~

2024年7月、岐阜県大垣市に本店を置く大垣共立銀行にて、SOMPO笑顔倶楽部と株式会社ロッテ 中央研究所「噛むこと研究部」(以下、噛むこと研究部)による共催セミナーが開催されました。


セミナーの前半は、噛むこと研究部の主査:菅野 範さんが登壇し、「“噛むこと”と健康~食事と認知機能の関係性」をテーマにお話いただきました。セミナーの後半は、参加者の方々に、SOMPO笑顔倶楽部が提供しているサービス「認知機能チェック」を実施いただきました。

本記事では、当日のセミナーの内容をダイジェスト版でお届けします。


目次
・噛むことと健康の関係性
・噛むことによる身体への影響
・正しく噛むためのポイント
・噛む力や認知機能の状態を知ることが健康のきっかけに
・まとめ


噛むことと健康の関係性

日本は高齢化が進んでおり、2022年時点の日本人の平均寿命は男性81.1歳、女性87.1歳であり、2050年には女性の平均寿命は90歳を超えるといわれています。また、2023年12月時点で100歳以上の人口は約9万人であり、まさに人生100年時代を迎えています。

平均寿命のグラフ

(参照:内閣府 高齢社会白書)

高齢化が進むなかで、人々の生活に大きく関わってくるのが“介護”や“自立”といったキーワードです。


ある研究によると、80歳以上の男性の約90%/女性の約100%の方が、日常生活におけるなんらかの動作の手助けが必要になるといわれています。では、年齢を重ねるとどのように自立度が変化していくのでしょうか。

人の自立度の変化パターンを表したグラフ

(参照:秋山弘子. 科学2010:80(1);59-64.)

自立度の変化パターンは、主に3つのグループにわけられます。1つ目は病気や生活習慣病などにより「急激に自立度が低下するグループ」。2つ目が筋力低下などにより「緩やかに自立度が低下するグループ」。3つ目は、援助を必要とせず「自立度が高いグループ」です。


グラフを見ると、女性に比べて、男性のほうが自立度が高い傾向にあることがわかります。その理由としては「男性のほうがもともと筋力量が多いこと」などが考えられます。自立度を維持するためには若いころから筋力のベースを高める、あるいは筋力等の低下をなるべく緩やかにすることが重要です。


自立度の低下と口腔機能の関係性

自立度の低下にはさまざまな要因がありますが、お口のささいな衰えである「オーラルフレイル」が要因となり、自立度が低下する場合もあります。たとえば、定年退職した男性のケースを考えてみましょう。

介護予防と口腔機能の関係を表した図

(参照:鈴木隆雄他. 老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業実施報告書(2014)より作図)

定年退職にともない人と会う機会が減ると、口腔内の清潔さや口臭を気にするきっかけがなくなり、口のケアがおろそかに。するとむし歯や歯周病のリスクが高まり、歯の喪失や噛む力の低下といったオーラルフレイル状態につながります。かたい食品が噛めなくなると、やわらかいものを好むようになり、さらに噛む力が弱くなってしまう悪循環となるのです。


加えて、やわらかいものばかりを食べていると、栄養バランスのかたよりが生まれ、筋力低下や活動量の減少をまねきます。結果として、なんらかの日常生活の支援が必要な状態につながっていくのです。


このように自立度と“噛むこと”や“噛む力”は密接に関係しています。自立した生活を送るためには、口腔内を健康に保ちなんでも食べられる状態を維持することが大切だといえるでしょう。


噛む力と認知機能の関係性

ここからは“噛む力”に注目し、「噛む力を維持している場合」と「維持できなかった場合」で、具体的にどのような違いがあるかもみていきましょう。


ある研究では「義歯の使用を含めて歯が健康な方」と「歯がなく義歯も未使用の方」の健康状態を調査しています。結果として「歯がなく義歯も未使用の方」は、「義歯の使用を含めて歯が健康な方」と比較して身体的健康リスクが約10倍、認知機能も含めた精神的健康リスクが約3倍高まるという結果が出ました。

歯・義歯の重要性を表した図

(参照:嶋崎義浩. 九州歯会誌1996:50(1):183-206.)

この調査により「機能する歯を20本以上保有する方は、身体的、精神的な健康状態が高く保たれる」ことがわかりました。


また、認知症と噛む力については別の方法でも研究が行われています。この研究は平均80歳の認知症を発症している女性と認知症ではない女性、それぞれ44名を対象に「噛む力」「噛み合わせ面積」を比較したものです。

噛む力と認知機能の関係性を表した図

(参照:Miura H et al. J Oral Rehabil 2003:30(8);808-811.)

これにより認知症の方は噛む力が弱く、噛み合わせの面積もせまいことが認められました。噛む力の弱さが必ずしも認知症につながるわけではありません。しかし、噛むことは脳への刺激や、血流量の上昇にもつながることがわかっています。そのため、認知機能低下につながる可能性は否定できません。


噛むことによる身体への影響

ここまでは、噛むことが日常生活や健康にどんな影響があるのかをお伝えしました。ここからは、噛むことによる身体へのポジティブな影響を紹介します。


ガム習慣を噛む習慣がある方とそうでない方の違い

ガムを噛む習慣がある方は、身体機能が高いことが報告されています。その研究では、ガムを噛む習慣がある方を「週30分以上ガムを噛んでいる方」と定義しています。

ガムを噛む習慣がある人の健康状態を表したグラフ

(参照:Kawamura J et al. Geriatr. Gerontol. Int. 2024:24;68–74.)

高齢者1000人以上を対象に「ガムを噛む習慣がある方」「ガムを噛む習慣がない方」にわけて身体機能や認知機能を比較しました。


すると、ガムを噛む習慣がある方は、口腔機能がおとろえている割合が40%も少ないことがわかったのです。また、認知機能や身体機能についても、「ガムを噛む習慣がある方」が高いことも確認されました。


噛むことはストレス軽減につながる

噛むことによるストレス軽減を表した図

(参照:Sakanoshita N et al. 薬理と治療 2020:48(1);31-38.)

噛むことはストレスにも影響します。百貨店の従業員346名の方を対象に1日4回/6週間、休憩時間にガムを噛んでもらいました。


すると、心の落ち込みの改善、ストレス症状ではなくなった人が増加していることが確認できたのです。噛むリズム運動により幸せホルモンといわれるセロトニンが増加することも報告されています。


噛むことで免疫物質の分泌が増加

ガムを噛むことによる免疫分泌効果を表したグラフ

(参照:松井美咲他. Jpn Pharmacol Ther 2020:48(12);2161-2166.)

唾液には、免疫物質である免疫グロブリンA(IgA)が含まれており、ガムを噛むことで唾液の分泌量が増加するため、結果としてIgAを増やすことになるのです。実際に、研究によりガムを摂取した5分間の唾液中に含まれるIgAは約2.5倍になっていました。


噛むことで頭皮の血流上昇、フェイスラインの引き締め効果も期待

噛むことによる頭皮血流の増加を表した図

(参照:松井美咲他. 薬理と治療 2022:50(9);1605-1609.)

噛むことで、頭皮血流が増加する研究結果も得られています。ガムを噛むことにより頭頂部、前頭部の頭皮血流がそれぞれ144%、147%増加しました。血液は毛髪に酸素や栄養を運ぶ役割があるため、頭皮血流の増加は髪の毛に影響を与える可能性が考えられます。

噛むことによるフェイスラインの引きしめを表した図

(参照:松井美咲他. アンチエイジング医学 2023:19(3);49-53.)

また、フェイスラインに影響があることも認められています。これは、8週間、1回2粒×10分間、ガムの咀嚼を毎食前に1日3回する「ガム咀嚼群」と「無摂取群」にわけて研究した結果です。すると、ガム噛んでいる方の方が、左右のフェイスライン角度が増えることが確認できたのです。


正しく噛むためのポイント

噛むことは、さまざまな点で身体に良い影響をもたらします。食べるときのポイントについてもご紹介します。


正しく噛むには、背筋を伸ばして軽くあごを引きやや前かがみにすることが大切で、姿勢を正すことは誤嚥予防につながります。噛むときは口を閉じて、左右の奥歯をバランスよく使って食べましょう。噛むときは、あごを左右に動かして奥歯で食べものをすりつぶす「グライディング咀嚼」が大切です。


噛む行為自体も重要で、1口当たり30回噛むことがよいとされています。そのためには、食物はやわらかいものだけではなく、噛みごたえのあるものを食べましょう。


噛む力や認知機能の状態を知ることが健康のきっかけに

咀嚼チェックガムの詳細を表したスライド

(資料:株式会社ロッテ中央研究所「噛むこと研究部」)

セミナーのなかでは、参会者の方々に「咀嚼チェックガム」が配られました。咀嚼チェックガムは、噛む力に応じて色が変わり、咀嚼能力を誰でも簡単にチェックできるものです。参加者の方々は、実際にガムを噛み、色の変化を見ながら自身の咀嚼力がどのような状態なのか、興味を持っていました。

認知機能チェックのイメージ図

セミナーの後半では、自身の認知機能を知ってもらうために、参加者の方々は認知機能チェックを実施。SOMPO笑顔倶楽部のサイトにある「あたまの元気度チェック」を行い、日々の生活で使われる主だった5つの認知機能を簡単な問題でチェックしていただきました。


参加者の方々からは、「自身の認知機能の状況を知ることで認知症と向き合うきっかけになった」「認知症に対して以前よりも興味が沸いた」といった声をいただきました。


まとめ

噛むこと(食べること)は、日常生活を営む上で必要不可欠な動作です。普段、誰もが無意識に行っている動作ですが、日ごろの意識やケアによって将来の健康状態にも良い影響がもたらされます。同様に、認知症に対しても、日ごろの予防やケアが大切であり、たとえ認知症になっても適切な対応によって進行を遅らせることができます。本記事を参考に、あらためて、噛むことや認知機能の状態に目を向けてみてはいかがでしょうか。

「噛む」ことで記憶力がUPする!? 研究者に聞いた、食事の工夫

楽しく、あたまの元気度チェック(認知機能チェック)をしましょう

あたまの元気度チェックへ

メール会員のおもな特典

メール会員には、「あたまの元気度チェックの結果記録」に加え、以下のような特典があります。

身長や体重・運動習慣等を入力するだけで、将来の認知機能低下リスクをスコア化できます。

認知症や介護に関する最新のニュースやお役立ち情報を月2回程度お知らせします。

関連記事