家族の介護では、身内だからこそ適切な距離感がわからず悩んでしまうこともあると思います。また、家族の介護に悩んでも、訪問介護サービスなどを受けることに抵抗があり、なかなか話が前に進まないなどということもあるかもしれません。
本コラムでは経験豊富なSOMPOケアのスタッフが相談を受けたご家族のエピソードをご紹介しています。在宅介護で、介護サービスが思うように利用できず悩んでいるという方は、ぜひケアスタッフのアドバイスを参考にしてみてください。
家族の介護では、身内だからこそ適切な距離感がわからず悩んでしまうこともあると思います。また、家族の介護に悩んでも、訪問介護サービスなどを受けることに抵抗があり、なかなか話が前に進まないなどということもあるかもしれません。
本コラムでは経験豊富なSOMPOケアのスタッフが相談を受けたご家族のエピソードをご紹介しています。在宅介護で、介護サービスが思うように利用できず悩んでいるという方は、ぜひケアスタッフのアドバイスを参考にしてみてください。
今回はケアマネジャー(以下ケアマネ)で経験豊富な菅原さんに、編集スタッフの知人の悩み相談を聞いていただきました。介護者は、在宅介護での悩みや不安を解決できない状況にいると、自分だけが一人で悩んでいるように感じ、孤立に似た感覚に陥ってしまうこともあるでしょう。今回のエピソードは、そのような方が実際にどんなことに困っているのか、それらのお困りごとをどうしたら解決できるのか、をご紹介します。実際に在宅介護に関わる方からも似たような悩みが多く聞かれるため、ぜひ菅原さんのアドバイスを参考にしてみてください。
知人、Aさんとそのご家族のお話です。
Aさん(80代)は要介護3と認定され、娘さん夫婦(60代)と一緒に生活をしています。旦那さんが亡くなり、心臓が悪いAさんを1人にするのが心配でもあったため、娘さん夫婦は住み慣れた自宅を売却。老朽化していた実家を建て替え、同居することにしました。
同居当初、Aさんは多少の認知機能低下がみられたものの、一通りの家事は可能な状態でした。次第に、娘さんは一日中家にいることが苦痛になり、仕事を始めたため、Aさんは日中ひとりでいる事が増加。しかし、家事は娘さんが全て担当していたことやAさんが腰を痛め行動する機会が減ったことなどが重なり、毎日ぼーっと過ごす日々が増えていくようになりました。すると、足腰も弱り、認知機能の低下も進み、排泄の失敗が増えていきました。
Aさんは、若い頃から毎日日本酒をコップ2杯飲んで寝るという習慣がありました。心臓に悪い為、同居を始めてから徐々に飲酒の量を減らしていましたが、ある時、夜中に一升瓶の半分くらい飲んでいたことがあったそうです(本人はなんともなかったようです)。
そのようなことがあり、本人の手の届かない場所にお酒を隠したところ、「お酒を買いに連れてって」と、多い時は一日に3回ほど、娘さんに言うようになりました。娘さんが連れていけないことを伝えると、Aさんは家から出て、自分でお酒を買いに行こうとすることも。しかし、自宅の前は急傾斜なため、腰が痛いAさんが一日に何回も往復することは体力的にも難しく、家までたどり着けず道路で寝ている事もありました。
そのため、同居してしばらく経ってからは、Aさんが家から出たくならないように工夫をしました。しかし、余計に外出をしたくなったようで、窓から出入りしたり、便失禁したまま動いたりしていたため、家の中が汚れることもしばしば。通常この状態であれば、デイサービス、ヘルパーを介入することが考えられますが、以下の2つの理由から介護サービスを利用できませんでした。
● 娘さんが自宅に他人を入れたくない
● 本人は車酔いするから行きたくない(一度試みたようですが、暴れて車に乗らなかったよう)
結果、状況は悪化していき、どうしたらよいかと悩む知人に、どうアドバイスをしたら良いか迷っています。
大変な状況ですね。家庭内での介護が成り立たない状況でも、本人が嫌がるなどの理由で介護サービスを利用しない事例は、今回相談いただいたケースだけでなく、意外と多いと思います。
娘さんが家の中に人を入れることに抵抗があるとのことでしたから、そうした場合はデイサービスなど、家にスタッフを入れない形のサービスを利用していきたいもの。まずは、Aさんが介護サービスを嫌がり、利用しない状態から利用する方向にうまく促すことが必要です。
そこで、このような方におすすめしているのが、「高齢者本人が信頼している相手に介護サービスの利用を促してもらう」ということです。例えば、主治医や息子さんなど、その方が「この人に言われると納得できそう」という人を想像してみてください。思い浮かんだ人に事前に状況を相談しておき、サービス利用を勧めるように協力してもらうのです。
そして、こういった方には、体験利用もおすすめしています。最近のデイサービスや入居型施設は、「まず1日行って体験してみる」という体験利用サービスを実施しているところが増えています。体験利用をしてみれば、雰囲気に合っているかどうかも判断できますし、実際に行ってみてから、本人が「想像していたよりよかった」と思ってくれるかもしれません。好感触であったら介護スタッフに協力してもらうこともおすすめです。例えば囲碁が好きな高齢者であれば、体験利用で囲碁の相手になってもらい「次来た時にコツを教えてほしいです!」とスタッフから言ってもらえば、次からの利用が楽しみになるかもしれません。
また、間違えてはいけないのが必ずしも介護サービスでなくても良いということ。
状況によっては、インフォーマルサービス※1を利用したり、近所の方の協力を得て、お茶などに誘ってもらったりするほうが良い場合もあるのです。介護サービスを利用することだけに固執せず、本人やご家族に合った方法を考えていくのが良いでしょう。
※1インフォーマルサービス…家族や地域社会などが提供する介護保険サービス以外のサービス。
その後、編集スタッフは知人を通じて、Aさんの娘さんに前述のアドバイスを伝えました。
アドバイス通り、Aさんが信頼する主治医に娘さんが相談してみたところ、レスパイトケア※2を兼ねてまずはショートステイの利用を提案されました。
※2レスパイトケア…介護をする側の人たちが一時的に介護状況から離れて休息を取ること
詳細はこちらの記事(https://www.sompo-egaoclub.com/articles/topic/1396)で紹介しています。
しかし、懸念点はAさんがそれを受け入れるかどうか。その悩みを主治医に相談すると、主治医は後日、Aさんにショートステイに行くように上手く促してくれたようです。最初は3日間の短期でしたが、娘さんは初めて介護から離れて身体を休めることができたそう。Aさん本人もスタッフと顔見知りになったことで、すんなり送迎車に乗るようになり、デイサービスに通うようになりました。
上記のように、対応次第では家族の介護負担を減らしながら、高齢者と適切な距離感で生活を安定させることができます。家族の介護をしている場合は特に、解決できない問題に悩んでしまうものだと思います。解決が難しく感じたら、地域包括支援センターやケアマネ、ケアスタッフに相談してみるのも良いでしょう。
取材/SOMPO笑顔倶楽部 文/中村亜美
【電話番号】0120-37-1865 【受付時間】9:00〜18:00 (年末年始を除く)
楽しく、あたまの元気度チェック(認知機能チェック)をしましょう
あたまの元気度チェックへ身長や体重・運動習慣等を入力するだけで、将来の認知機能低下リスクをスコア化できます。
認知症や介護に関する最新のニュースやお役立ち情報を月2回程度お知らせします。