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2023.09.25

【認知症当事者 本人の声 vol.10】認知症の診断から退職、そして新たな活動へ

認知症の発症によって、日常生活や仕事にさまざまな影響が出ます。とくに、仕事については、さまざまな要因で退職をせざるを得ないケースもあるようです。


今回、ご登場いただく平井さんは、56歳の時MCIもしくはアルツハイマー型認知症の初期段階との診断を機に当時の仕事を退職し、現在は、若年性認知症当事者・家族のピア相談、集いの場づくりに取り組んでいます。そんな平井さんの、発症当時のことや現在の活動についてのお話をお届けします。


(公益社団法人 認知症の人と家族の会が発行する会報誌『ぽ~れぽ~れ』より、本人の体験談記事「私らしく仲間とともに」をご紹介します。)


目次
・頭の後ろ半分に違和感あり、受診
・精密検査によって確認された脳の萎縮
・電車ホームで転落事故
・苦しみの原因がはっきりして、新たな方向へ
・「若年性認知症フォーラム」を機に“きずなや”と出会う
・ピアサポート活動を業務として展開

執筆者画像
平井正明さん
56歳の時MCIもしくはアルツハイマー型認知症の初期段階との診断を機に退職し、2018年(一社)SPSラボ若年認知症サポートセンターきずなやで活動を開始。また、当事者自らが活動する団体『まほろば倶楽部』を設立し、2020年より奈良県委託事業『若年性認知症サポートセンター』のピアサポート活動に従事し、若年性認知症当事者・家族のピア相談、集いの場つくりに取り組んでいる。

頭の後ろ半分に違和感あり、受診

私は51歳の時に学校卒業以来勤務していた電機メーカーを中途退職して中小企業に管理職として再就職しました。何かおかしいなと感じるようになったのは、それから2年ほど経過した2015年春、54歳の頃です。そのころ、頭の後ろ半分が宙に浮いたようなふわっとした感じが常にするようになりました。痛みや締め付けられるような頭痛とは異なる変な感覚でした。


次第に考えがうまく纏められないような状態になってきて、うつ病になったのではないかと思い精神科の医院を受診、先生からは一度専門の先生に診てもらったほうがいいとのことで大きな病院の脳神経内科を紹介され受診しました。


精密検査によって確認された脳の萎縮

そこでも特に異常は認められず、長谷川式(長谷川式認知症スケール)の検査も行われましたが点数は満点と聞かされました。


念のため脳のMRIは撮ってみましょうということで、撮った脳画像を先生が見られて一瞬びっくりされました。頭頂葉に私の年齢では通常起こり得ない萎縮があるとのことで、続けて行った脳血流検査(SPECT)では、頭頂葉の右側に血流低下がはっきり出ていました。この状態から個人的に若年性認知症かもという感覚を持っていました。しかし、この時点では経過を見ましょうとのことで、はっきりしない悶々とした状態が続きました。


電車ホームで転落事故

その後も定期的に受診しながら、仕事は続けていました。翌2016年7月出勤途中電車を乗り換える時、カーブで広く空いていたホームと電車の隙間に転落し肩を骨折しました。その時、自分は真っ直ぐ歩いているつもりが、左方向へ寄って行っている状態になっていたことに気付きました。


その頃から体のふらつきや業務の遅延が次第にひどくなり、2017年5月に医師の指示で1カ月の休養、その間に受けた画像検査で進行が認められたことから、6月に“MCIもしくはアルツハイマー型認知症の初期段階”という結構曖昧な診断名が付きました。今の状態を悪化させないためには仕事でのストレスを無くすことが一番との考えで、診断を機に退職しました。


苦しみの原因がはっきりして、新たな方向へ

今振り返ると、確定診断が出る前の2年間が一番苦しく辛い時でした。自分が苦しんでいる原因がはっきりしたことで、これから進んでいく方向を自分なりに再構築できました。この頃は、どうして2年もかかったのだろうと思っていたのですが、今は、ごく早期の認知症は一回の検査結果だけでなく、経過も見て時間をかけないと正しい診断は難しいということを理解できるようになりました。2017年6月に56歳で退職した後は、まずは毎日体を動かし体調を整えることから始めました。


「若年性認知症フォーラム」を機に“きずなや”と出会う

2018年1月に奈良県生駒市主催の若年性認知症フォーラムが行われました。丹野智文さんの講演と、「奈良県の若年性認知症に関する取り組み」という内容で奈良県若年性認知症サポートセンター事業を受託している“SPSラボ若年認知症サポートセンターきずなや”若野代表理事のお話がありました。私は生駒市在住ではないので、そのフォーラムを全然知らなかったのですが、後日その録音を聴くことが出来ました。


このフォーラムから自分自身が活動していくことの大切さと、奈良にそれが出来そうな場所があるということを知ることが出来、翌月きずなやへ直接お電話し、2月末に訪問しました。再建中の梅林、休耕地を開拓した広場、近畿大学農学部との協業を目にして、ここがこれから自分が活動していく場所であると即確信しました。


ピアサポート活動を業務として展開

認知症当事者の方々と集合写真を撮影する平井さん

当事者が集う交流イベントでの集合写真


活動を始めてすぐに、当事者主体の活動を形として示すことを目的に“まほろば倶楽部”という任意団体を設立しました。集いの開催、学生との交流、仲間の個別支援、相談などに取り組むなか、専門性を高めたピアサポートが自分の目指す方向であると思うようになりました。約2年間の活動ときずなやの皆さんのご尽力により、2020年度より奈良県の若年性認知症サポートセンター事業委託内容にピアサポート事業を加えていただくことができ、ピアサポート活動を業務として取り組むという活動の形が出来上がり今に至っています。



※この記事は『ぽ~れぽ~れ』(発行元:公益社団法人 認知症の人と家族の会)2023年8月・9月号より抜粋・一部修正したものです。 公益社団法人 認知症の人と家族の会ホームページはこちら

【認知症当事者の体験談 まとめ記事】~当事者が語る、認知症との歩み~

認知症は、「100人いれば100通りの症状がある」と言われています。一人ひとり、症状が異なるため、発症のきっかけや症状の変化、日々のケア方法なども異なります。 本記事では、認知症当事者の方々のさまざまな体験談を紹介します。日々の予防やケア、認知症の当事者の介護の参考にしてみてください。

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