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車椅子を押す介護スタッフ
2023.05.23

【認知症の親の介護】お互いの負担を軽減し長く一緒に過ごすために

「もし親が認知症になったらと思うと不安」「今、家族の介護をしているけれど負担が大きくて大変」といった状況の方も多いでしょう。あらかじめ、準備しておきたい資金や、頼るべき行政のサービスなどについて知っておくことで、より良い介護が実現できます。本記事では、親の介護で起きやすい問題点や、準備をしておくべきこと、利用できる制度、介護の負担やストレスを軽減させるための方法などについて解説します。大切な親ができるだけ長く充実した日々を過ごせるように、参考にしてみてください。


目次
・親の介護の問題
・親の介護のための準備
・親の介護のアドバイス
・親の介護で認知機能の低下を遅らせる方法
・まとめ

執筆者画像
【監修】理学療法士 佐藤敬太さん
回復期リハビリテーション病院を経験したのち、訪問リハビリテーション、デイサービス、地域包括ケアなど様々な領域で臨床へ従事。現在はwebメディアの運営やマーケティング知識を活かし、医療福祉の情報が正しく伝わるよう日々発信を続けている。

親の介護の問題

親の介護が必要になると、家族にもさまざまな負担が増えてきます。目を離すことができず、仕事に支障が生じたり、介護費用が膨らんでいったりなどの問題もあります。また、介護方法は複数あり、在宅で介護するか施設に預けるかでも悩むでしょう。まずは、介護で起きやすい問題点について解説します。

親の介護に携わる人の負担

親の介護が始まると介護者は身体的にも時間的にも負担がかかるため、家族の誰が行うかで揉める場合がでてきます。現代では家族の人数が少ないうえ、家族全員が仕事をしていることも少なくありません。介護者の仕事をどうすべきか、介護で働けない間の生活費はどのように負担すれば良いのかなど、考えなければならない問題は山積です。介護者の孤立の問題もあります。最近はひとりで親の介護をするという方も多く、仕事を辞めて社会から離れてしまい、孤独を感じてしまうという方もいます。

親の介護に必要な費用

親の介護における心配事のひとつが費用の問題です。必要になる介護費は地域や介護の程度などでも差がありますが、令和3年4月の場合、厚生労働省のデータによると全国平均でひとり当たり年額17万4,900円となっています※。その内容としては次のようなものがあります。 - 訪問通所費用 - 福祉用具貸与 - リハビリテーション - 短期入所費 - 地域密着型介護予防サービス 以上のいずれかのサービス、または組み合わせて活用することで、費用が発生します。そのほかにも、住宅の改修やおむつ代、介護食代も必要になるかもしれません。介護保険が利用できるとはいえ、介護では自己負担も少なからず発生します。あらかじめ、介護への備えをしておくことが重要です。

※参考:厚生労働省

親の介護は在宅介護か施設介護?

介護が必要になったとき、親の状態や家族の状況などの理由で、施設に入居させるか否かを悩む人も多いと思います。親を施設に入れることに後ろめたさを感じる人も多く、できれば在宅介護を続けたいという人もいるでしょう。 とくに認知症の場合、本人の意思を確認できない場合があり、施設を利用すべきか悩むところです。なかには新しい環境に適応できないというケースもあります。 しかし、認知症が進むと家族の負担が大きくなるだけではなく、日常生活に支障をきたすことも多く、身体的なケガを負ってしまうかもしれません。負担が大きいと感じて施設を選ぶことは決してネガティブな選択ではありません。できれば早めに家族で相談し、グループホーム(認知症対応型生活介護)や、大人数が苦手な認知症でも暮らしやすいユニット型の特別養護老人ホーム、有料老人ホームについて、親の意思を聞いておくと良いでしょう。

親の介護のための準備

父親の介護をする息子

仕事と介護の両立を検討している方に向けて、有給休暇とは別で取得できる「介護休暇」という制度があります。ここからはいざ親が介護になったときのための準備について解説します。


・利用できる介護保険や介護制度

・自宅介護で必要な設備や用具

・介護に必要な知識と技術

・現在の勤め先で利用できる介護休暇

親の介護で利用できる介護保険や介護支援制度

親が日常生活をそのまま送ることが難しくなった場合、介護保険や介護支援制度を検討する必要が出てきます。介護保険は国の制度で40歳を超えると加入が義務付けられ、65歳以上になり要介護状態、要支援状態と認められると、程度によって以下のような介護サービスが受けられます。


・訪問介護員(ホームヘルパー)による訪問介護
・看護師が医師の指示を受けて行う訪問看護
・車いすやベッドなどの福祉用具がレンタルできる福祉用具貸与
・デイサービス(通所介護)、デイケア(通所リハビリテーション)を利用した日帰りのサービス
・短期入所などの宿泊サービス
・特定施設入居者生活介護
・特別養護老人ホームへの入所
・通いと短期の宿泊、訪問を組み合わせた小規模多機能型居宅介護
・定期的な巡回などのサービスが受けられる定期巡回・随時対応型訪問介護看護

親の介護に必要な設備や用具

在宅介護では、自宅をリフォームしたり、用具をそろえたりする必要がでてくる場合があります。


設備
・玄関や階段、浴室などの手すり
・車いすで移動できる広さの廊下、入口、玄関スロープ


用具
・車いす
・介護ベッド
・ポータブルトイレ、成人用紙おむつ
・杖、歩行器
・食べやすく危険が少ない食器


設備や用具については、親ができるだけ介助を必要とせずに、自立して生活できるように工夫することが大切です。必要な箇所に手すりをつけるなど、安心して歩行ができるようにしましょう。食器については鋭利なものや割れやすいものを避けます。高額なものでなくても、100円ショップで売っているようなストロー付きのコップなども便利です。

用具については購入とレンタルがあります。要介護度によって金額の上限があるものの、介護保険を活用して無料でレンタルできるものもあります。また、設備を整えるための家の改修でも介護保険が適用できる場合があります。さらに自治体によって紙おむつなどの介護用品を、支給・支援しているところもあるので、ケアマネージャーなどに相談してみてください。


親の介護に必要な知識や技術の習得

親の介護をするために、知識や技術を身に着けておくことも大切です。とくに親が認知症の場合、認知症になる前と同じ接し方だと混乱をさせてしまう場合があります。トラブルを防ぐためにも正しいスキルの習得が必要です。親の介護の場合でも、初任者研修の資格勉強が役に立ちます。介護業務で必要な最低限の知識や技術などを身に着ける研修ですが、介護の職に就く予定がない方でも受講が可能なので、挑戦してみても良いでしょう。

親の介護のために取得介護休暇

育児・介護休業法に基づいて、職場では家族の介護が必要な際、年間93日まで休業ができます。条件を満たしていれば雇用保険から休業前の賃金の4割もハローワークから支給されます。さらに、ひとりにつき1年で5日まで、介護休業や年次有給休暇とは別に休暇を取得できます。

介護休暇については以下の記事で詳しく触れているので、そちらもご覧ください。

介護休暇とは?種類や条件、手続き方法など丨取得するデメリットについて

仕事と介護の両立を検討している方に向けて、有給休暇とは別で取得できる「介護休暇」という制度があります。この制度を利用することで、仕事を続けながら介護に充てる時間を増やすことができます。こちらの記事では、介護休暇の取得条件をはじめ、申請方法やメリット、デメリットについて解説しています。

親の介護のアドバイス

親の介護は長期化する可能性もあるため、できる限り無理がないようにしたいものです。負担が大きくなれば共倒れになる可能性もあります。そこで、負担軽減をするためのアドバイスをご紹介します。

親の介護に携わる人のストレスや負担を軽減する方法

「親が施設で大切に扱ってもらえるだろうか」となかなか施設の利用ができなかったり、「他人に頼らずに自分でがんばらなくては」とひとりで抱え込み、ストレスや負担が大きくなったりする人もいます。まずは他の家族とも相談し、ひとりで抱え込まないうにすると良いでしょう。 


また、同じように親の介護をしている方とつながることも一時的にストレスを解消する方法です。愚痴を言い合うだけでも心が軽くなる場合があります。すべてをひとりで行おうとはせず、ショートステイや介護保険外サービス、行政のサービスを利用するのもいいでしょう。施設の利用に不安を持っているならば、ケアマネジャーに相談することをおすすめします。ショートステイを親に利用してもらっている間に、たまには外食をしたり、友だちに会ったりすると気分転換にもなります。

事前に介護に関する親の希望を聞いておく

認知機能の低下が進むと円滑なコミュニケーションがとれなくなる場合があります。親の明確な希望が分からず、どうして良いか悩んでしまうかもしれません。そうなる前に、希望を聞いておくといいでしょう。親の希望を知っていると、施設などに預ける心理的負担が和らぎます。親が施設を拒否する場合もありますが、決して見捨てるわけではないことを分かってもらうように、愛情を伝えるようにしましょう。


住み慣れた環境から離れることを嫌がる場合もありますが、ショートステイを利用して様子を見る方法もあります。もし、認知症の疑いが出てきたら住まいの地域包括支援センターに相談することをおすすめします。症状が軽いうちに適切な治療を受けることで、少しでも長く一緒に暮らせるかもしれません。また、住み慣れた地域で暮らせるような配慮もしてくれ、いつでも会いに行ける環境を作れる可能性もあります。介護者も高齢になると、日々の介護で疲れてしまい、施設を利用することに躊躇してしまうことがあります。いざというときのために、早め早めに考えておくと良いでしょう。

介護する際に避けるべき言動と対処法

親の認知症が認められた場合、注意すべき言動があります。まず、認知症になると以前はできていたことができなくなり失敗が増えていくことがあります。そのときに、責めたり、叱ったり、大きな声を出してしまいがちですが、本人はなぜ怒られているのか分からず、混乱してしまいます。親ができないことが、だんだんと増えてくると、心理的に受け入れられないこともあります。しかし、そのようなときこそ「気にしなくても大丈夫」と語り掛けることが重要です。周囲が騒々しい環境は不安をあおるので、できるだけ静かな環境を保つことを心掛け、落ち着いて暮らせるようにしてあげてください。 


親の介護で認知機能の低下を遅らせる方法

掃除道具を持っている高齢者女性

現在、厚生労働省によると65歳以上の認知症は約600万人と推計され、さらに2025年になると高齢者の5人に1人は認知症になると予測されています※。アルツハイマー型認知症などの根本的な治療法はまだありませんが、早期に対応することで症状を軽くしたり、進行を遅らせたりできる可能性があります。

※参考:厚生労働省

認知機能の低下を遅らせる方法

1.認知療法や脳トレ

 脳を活性化させることで進行を遅らせるという方法です。人は加齢とともに計算力や注意力、判断力、記憶力などの認知機能が低下します。計算や音読、字を書き写す、間違い探し、脳トレなどをすると脳を活性化させられます。都道府県当てやパズル、間違い探しなども有効だとされています。また、指や手を動かすのも認知症に良いといわれ、指や手を使う手遊びが最適です。手遊びでは歌を歌いながらすると、より頭の活性化に役立つだけでなく、肺や呼吸の改善にも良いでしょう。なかには「健康マージャン」を予防に活用している地域もあります。指を動かして脳を使う上、グループで卓を囲みおしゃべりをすることも脳の活性化になります。

2.健康的な生活習慣

認知症のなかでも多く見られるアルツハイマー型認知症や血管性認知症は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病との関連も指摘されています。バランスの良い食事や無理のない適度な運動で健康的な生活習慣を送れるようにしましょう。運動を適度に行っていないと脚力が弱り、転びやすくなる可能性もあります。寝たきりになると余計に体全体が弱っていくので、歩ける方は散歩をし、車いすの方も手や足などで動かせる部分を動かすことが大切です。


また、睡眠不足は脳の疾患や高血圧などの生活習慣病と関係があるとされています。さらにアルツハイマー型認知症で脳に蓄積されるといわれるアミロイドβは、起きている間に蓄積し、ノンレム睡眠時に脳から排出されるとされています。しっかりとした睡眠がとれるようにするためにも、日中の運動は重要です。

3.本人ができることはしてもらう

暮らしの中でできることは、可能な限り親にしてもらうようにすることも大切です。つい「自分がやったほうが早い」「高齢の親にやらせるのは不安」と、身の回りのことをやってしまいたくなりますが、できるだけ本人に任せると良いでしょう。日常の活動はほど良い運動になるうえ、手を動かすので脳の活性化にもつながります。段取りを考えるのも脳の活性化に適しています。ただし、これらの方法で認知症は必ずしも進行を遅らせられるとは限りません。認知症の兆候に気付いたら、まずはかかりつけ医に相談しましょう。


まとめ

親の介護が必要となる前に考えておきたいのが自分や家族の負担、費用の負担などです。とくに費用については平均して月に17万円以上もかかるとされているので、介護保険の給付額も考慮に入れつつ、今のうちにいくらくらいの貯えが必要か考えておかなければなりません。また、仕事をしながら介護をする場合には、介護休暇などについても確認しておきましょう。認知機能の低下が進むと意思の疎通が難しくなる可能性があるので、施設の利用などについて家族で話し合っておくようにしてください。


現在、認知症の治療は確立されていませんが、日常生活のちょっとした工夫で、進行を遅らせることはできると考えられています。親と一緒にご自身も脳トレにチャレンジしたり、散歩のような適度な運動を楽しんだりして、脳の活性化に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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