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2021.04.15

「あなたの夢は何ですか?」。 これからの人生、「もしも」のときのためにまとめておきたい、「夢結いのーと」誕生

「もしも」のとき、自分はどんな生活や医療、ケアを望むのか。


みなさんは、そんなことを考えたことがありますか? 厚生労働省の調査によると、人は命の危険が迫った状態になると、約70%の方が医療やケアなどについて自分で決めたり、希望を人に伝えることができなくなるといわれています。

SOMPOケアでは、こうした状況をふまえ、本人が前もって考え、周囲と話し合うためのツール「夢結いのーと」を制作しました。誕生のきっかけや込めた思い、使用実例などを、制作に携わった方々や、介護施設で活用されている方に伺いました。



(プロフィール)

西田努(にしだ つとむ)

SOMPOケア株式会社 地域包括ケア推進部企画グループ

2007年入社。介護付きホーム(特定施設)・サービス付き高齢者向け住宅の現場から管理者、エリアマネジャー等を経て現職。現在は施設事業・在宅事業・在宅老人ホーム事業の企画・支援に関する業務に従事しており、主にサービス付き高齢者向け住宅を担当。


中田美紀(なかた みき) 

SOMPOケア株式会社 東京本部 東京推進部 東京リスク管理課

2004年入社。居宅介護支援事業所管理者、地域包括支援センターで介護支援専門員・看護師として従事し現職に至る。現在はホーム・事業所を巡回し、サービス・コンプライアンス担当として現場支援を行う傍ら、医療・介護職の立場から終活の大切さを伝える活動を行っている。


濱本祐輔(はまもと ゆうすけ) 

SOMPOケア株式会社 東京本部 西東京第5事業部 SOMPOケア ラヴィーレ堀之内 

2012年入社。2013年より山梨県のホームの管理者として着任。2019年よりそんぽの家八王子小宮ホーム長として着任。2021年1月よりラヴィーレ堀之内にて、ホーム運営業務をメインに活動。



夢結いのーとって?

万一のときのために、本人が望む生活や医療、ケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合って共有する取り組みを「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」といいます。厚生労働省では、これを「人生会議」と名付け、普及・啓発を進めています。

「夢結いのーと」は、人生会議に取り組むきっかけとなるSOMPOケアオリジナルのエンディングノート。好きなものやきらいなもの、趣味・特技などから、これまで生きてきた歴史や宝物などを書き込む「わたしのこと編」と、これからの夢や希望する過ごし方などのほか、受けたい介護や医療ケアについて書き込む「これからのこと編」という2部構成になっています。



カスタムメイドケアを実現するために。「夢結いのーと」が誕生したきっかけ

夢結いのーとの誕生には、SOMPOケアの経営理念「人間尊重」が深く関わっています。


「人間尊重とは、本人の尊厳を守り、自己決定をサポートすることだと考えています。ただ、介護サービスを提供する際に、それだけでは漠然としていてわかりにくいので、何か具体化できるものがあるといいなと思ったことが、夢結いのーとを作ったきっかけです。 


私たちが提供する介護サービスでは “カスタムメイドケア”といって、一人ひとりに最適なケアを提供することが必要と考えておりますが、そのためには、本人の意思や希望、生活の仕方などを知っておく必要があると考えています。話せなくなったとき、だれに意思を伝えたいか、障害などで動けなくなったらどこで過ごしたいか。これからどう生きたいのか、最期はどのように迎えたいのか。人によって環境も違えば、希望も違うので、まずそれを聞くことを大事にする点が、この夢結いのーとにつながっていると思います。 


実際に夢結いのーとを使うのは高齢の方が多いですし、認知症の方もいらっしゃいます。その方々に私たちの意図が伝わらないとか、使いづらくて面倒くさいということになると意味がなくなってしまうので、制作にあたってはイラストを多めにしたり、文字をできるだけ少なくしたりして、見やすく書きやすいものにする工夫を重ねました」(西田さん) 


なぜ「夢結い」? 中には自分の夢を書く欄も

夢結いのーとは、岡山大学病院緩和支持医療科、岡山大学大学院ヘルスシステム統合化学研究科特任教授の松岡順治先生が監修し、SOMPOケアのスタッフ5~6人が作成。試作版を実際にSOMPOケアの施設で使ってみるなどブラッシュアップをくり返し、10か月ほどかけて完成しました。


実はほとんど完成というころ、松岡先生からの「世の中に出ているのは終末期のためのものだけど、今作ろうとしているのは“よりよい生活”のためのもの。その先に看取りがある」という言葉を受け、内容を再考することに。そのニュアンスが伝わるよう、修正に多くの時間を費やしたといいます。 

当初「結いのーと」という名称で考えられていたところに「夢」がつけられたのも、松岡先生の「ご利用者の夢って大事だよね。夢を入れたらどうか」というひと言からでした。


「“結い”には、ご本人と関わる全ての方が結び合わされて、その生活が彩り豊かになるように、ご本人が亡くなったあとも周囲がつながっていけるといいなという意味が込められています。 

 “人生の最期をどこでどんなふうに迎えたいかも大事だけど、これからの夢を聞くのも素敵だな”と、最終的に夢結いのーと、という名称になりました」(西田さん)



一般的なエンディングノートとの違いは「亡くなるまでの間、どう生きたいか」

市販されている一般的なエンディングノートは1冊にまとめられていますが、夢結いのーとは1ページずつダウンロードする形式。そのほかにも、一般的なエンディングノートとは異なる点があるのが特長です。


「市販されているエンディングノートは、葬儀やお墓、相続のことなど、その方が亡くなったあとのことを記入するようになっているイメージがあります。それに対して、夢結いのーとは、生きている間にフォーカスして、亡くなったあとのことは省いています。その方がどんなことが好きで、どんなことがイヤか。どこで生まれ育って、どんな生活をしていたかなど、これまでの生活歴について。亡くなる瞬間までどうしたいか。そういう、亡くなるまでに必要で、しかもふだんは話題にあがらない項目だけをピックアップしているのです。 

連絡先とか保険証券などは、とても手間がかかるけれど家の中を探せば、おそらくどこかにまとめられている可能性もありますが、これまでにどんな人生を送ってきたかは、家じゅう探しても出てきません。だからこそ、夢結いのーとではそこをわかるようにしました」(中田さん)


生活歴を大切にするのは、夢結いのーとが最後までその人らしく生きるためのものだから。生活歴を記入するところは、誕生から老年期まで、4つの年代にわけて記入できるようになっています。 


「私たちは介護サービスを提供していますが、ケアプランを作る時には必ず生活歴を伺います。なぜかというと、今までどのような生活を送られていたか、どういう性格かということも知らないと、その方と信頼関係を築き支えることはむずかしいと考えているからです。夢結いのーとでも、その部分はとても大事にしました。 

生活歴をお聞きするとき、病気や今困っていることを知るのは当然ですし、身体が不自由になってからのことはよくお話ししていただけます。でも、その方の人生には老年期の前もあります。生活歴の記入欄を幼年期、青年期、壮年期、老年期に分けたのは、きちんとその方のことを知るためです」(西田さん)



実は、夢結いのーとには元となる形があります。それは、中田さんが個人で作っていた「ライフログ」というオリジナルのエンディングノート。エクセルシートで1項目ごとにわけていて、全15項目がまとめられたものです。


「ケアマネージャーから終活分野を担当するようになり、終活のためのツールが必要だと思い、市販のエンディングノートを何十冊も読んでみました。でも、万人向けに作られているため余分なページがあったり、逆に必要な部分がなかったりしましたし、冊子形式のため必要ない部分を割愛することもできませんでした。そこで、オリジナルのエンディングノートを作ろうと思ったのです。エクセルシートならカスタマイズしやすく、あとで必要になった部分を足したり、やっぱりいらないと思ったところを削除したりするのも簡単です」(中田さん) 


現在、中田さんは終活カウンセラーなど終活に関する複数の資格を持ち、終活関連の活動も行っています。 


「地域包括支援センターから終活をテーマにした講座の依頼をいただき、終活の一般的な内容や人生会議の話をしたり、介護施設の職員さんの会議で話をさせていただくこともあります。過去には、介護施設が開催する終活のミニ講座やACPを考えていくきっかけになる、カードゲームの体験会をしたこともありました。 

そのほか、終活の新しい制度や関連する書籍の紹介など、毎月テーマを変えた社内ニュースレターの発行を3年間続けています。」(中田さん)



それまで秘めていた願いがかなったことも。施設ではこんな使い方も

実際に夢結いのーとはどのように使われているのでしょうか。施設での活用例を伺ってみました。


「現在、私がお話をお聞きして夢結いのーとにまとめる形で、ご利用者の4名の方が使用しています。そのうち3名の方とは日頃から良好なコミュニケーションをとれていたので、すぐにご自身のことをお話しいただけました。そのなかで大きな気づきだったのは、その方々のことはよくわかっているつもりでも、夢結いのーとを使ってお話を聞いていくと、初めて耳にすることがいくつもあったことです。今まで知らなかったことや発見があり、理解がいっそう深まりました。 


いっぽう、もう1名の男性の方とは信頼関係を築くところからスタートしました。最初は“忙しいから話す時間はない”と素っ気ない対応だったのですが、毎日お声がけして“あなたに興味があるんです。あなたのことが知りたいんです”とお伝えしていたら、1週間ぐらいして“次はいつ来るんだ”と尋ねられました。時間を答えると、“じゃあ、待ってるからな”と。その時、心を開いていただくことができたと感じました。 


そこから、その方のご家族のお話を聞いていくうちに打ち解け、少しずつ信頼関係が深まっていきました。その方はご家族と疎遠になっていらっしゃったのですが、仲の良かった弟さんがいたそうで、『会いたい』とおっしゃっていました。 


結局、夢結いのーとがあと少しで完成するところで病院へ入院になってしまったのですが、弟さんと会う夢はかなえることができました。人生の最期をどうしたいかについても、“今までかあちゃん(妻)に迷惑ばかりかけてきた。俺はわがまま言えないから、かあちゃんの言う通りに従ってくれ”とおっしゃって。もし、夢結いのーとがなかったら、そんな気持ちも聞けなかったかもしれませんし、本当に良かったと思いました。 

現場のスタッフにもその情報を共有し、より深いコミュニケーションがとれるようになったのも良かったと思っています」(濱本さん)



1ページだけで終わらないように。書き進めるためのワンポイントアドバイス

一般的に、エンディングノートを持っていてもすべての項目を書ける人は少ないともいわれます。途中で挫折しないためにはどうしたらいいのかを教えていただきました。


「エンディングノート全般にいえますが、結局1ページ目を書いて終わってしまうケースが多く、文章を書くのが得意、大好きな方でなければ、1人で書き上げるのはとても大変なことです。おすすめなのは、誰かと話しながらまとめていく方法。“これが自分が大事にしていることなんだ”と気づきを得ながら書くというのが、いちばんいい方法だと思います。 


ただ、そうはいっても施設に入居されていると家族となかなか会えなかったり、家族だからこそ話しづらいということもあります。エンディングノートや夢結のーとの伴走者は、友だち同士など、話しやすい人もいいのではないかと思います。 

親子は心の距離が近すぎるので、子どもにそのつもりがなくても“早く死んでほしいのか?”と親が受け取ってしまう場合もあって、なかなかむずかしいものがあります。家族ならお孫さんぐらいだと、適切な距離感が持てていいかもしれません。


また、書き始める時には、何のためにするのか、いつまでにするのかを決めるのもポイントです。いつまでも時間があると先延ばしにしがちなので、数カ月以内などある程度の期間を決めて取り組むのが、書き進めていくコツだと思います。 

きっちりキレイに書かなくてはと考える必要はありません。夢結いのーとを冊子形式にしなかったのは、印刷していつでも渡せるように、書き損じをしてもまた印刷できるようにです。もちろん、何かに下書きをしてから清書として使ってもいいですし、誰かに代筆をお願いするのもOKです。高齢の方は手を使うのがしんどくなっているので、人の手を借りたほうが進むかもしれません」(中田さん)

介護の現場で使った際には、「自分の話を聞いてもらう」ことに喜びを感じた方もいたそうです。


「書く作業を面倒に感じる方や、思いがありすぎてまとまらない方もいらっしゃいますので、順序立ててお聞きして、こちらがまとめたものを確認するようにしました。どの方も、ご自分のことに興味を持って聞かれるのをとても喜ばれ、ヒアリングはだいたい1時間ぐらいと考えていましたが、いつも時間をオーバーしていましたね。ある方は、とても嬉しかったらしく、他の方に“こんなことを聞かれてるのよ”と楽しげに話してくださっていました」(濱本さん) 


心の距離が近すぎてむずかしいとはいえ、親に書いてほしいと思う子世代も少なくありません。その場合は、ただ渡すだけではなく、ある心の持ちようが必要だといいます。


「1970年代ごろから自宅ではなく、病院で最期を迎えることが多くなったため、今の80歳前後の世代からは直接、“死”というものに触れてこなかった方が少なくありません。そのため、最期が近づいていることはわかっているけれど、その話題を出されるとストレスを感じることもあると思うのです。 


子どもの側はそこに配慮することも必要かなと思います。具体的には、“自分もやるから、一緒にやって”というように、巻き込むのがいいですね。“これをやってください”と突き放すのではなく、分かち合う姿勢を持っていただくことが大事です」(中田さん) 


取材・文/荒木晶子 構成/山本幸代(SOMPO笑顔倶楽部) 


■夢結いのーとはこちらよりダウンロードください(PDF形式)
https://www.sompocare.com/attachment/topic/1129/yumeyui_note.pdf

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