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2021.03.12

【認知症の人と家族の会 鈴木代表理事 インタビュー】 「家族介護者を孤立させない」コロナ禍で見えてきた可能性と忘れたくないもの

新型コロナウイルス感染症の流行により、それまで継続的に行ってきた「つどい」をはじめ、この一年間は、さまざまな活動を自粛せざるを得ない状況が続いた、公益社団法人 認知症の人と家族の会(以下、家族の会)。日々模索するなかで生まれた課題や、コロナ禍だからこそ見えてきた、新たな可能性とは。家族介護者へのメッセージをふくめ、鈴木代表理事にお伺いしました。


公益社団法人 認知症の人と家族の会

代表理事 鈴木森夫さん


1952年愛知県生まれ。愛知県立大学卒業後、愛知県や石川県内の病院で医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーとして勤務。1984年「呆け老人をかかえる家族の会」石川県支部結成に携わり、事務局長、世話人などをへて2015年「認知症の人と家族の会」理事、2017年には代表理事に就任。精神保健福祉士。 


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コロナ禍で電話相談が増加。家族のやるせない思いが募って……

昨年4月に第1回目の緊急事態宣言が発令される前後から、新型コロナウイルス感染症予防のための外出自粛や三密の回避など、それまであたり前にあった人とのふれあいに変化が生じました。「家族の会」が開催する、認知症本人や介護者の交流の場となる全国各地の「つどい」などにも影響が生じ、中止や延期となるいっぽう、「これだけは」と強い思いで続けてきたのが電話相談だったといいます。


「緊急事態宣言下において、とくに東京都支部など、支部の事務所に行くことすら難しい状況だったときをのぞき、電話相談だけは足を止めずに続けていこうと、それまで2人体制だったのを1人に変更するなどして、なんとか継続してきました。 


本部、支部に共通していることですが、コロナ禍において相談件数は明らかに増えていて、以前とくらべて1.5倍ほどの相談を受けた支部もあります。初めて電話相談された方が多くなっている印象ですし、お話をする時間もこれまでより長くなっていると聞きます。 


在宅介護をされている方は、認知症ご本人の散歩や出かける機会が減って閉じこもり状態となり、体を動かさない、人とも会わない状況で、認知症の症状が進んでしまうのではないかという不安を抱いていることが多く、ほかにも手洗いやマスクができないなど、ご本人が感染予防をしてくれないことへの心配もあります。 

また、感染するのを恐れてデイサービスの利用をご家族のほうから自粛するなど、家に一緒にいる時間が長くなり、お互いにストレスがたまってしまうという声もあります。


いっぽう、病院や施設の面会が制限されていることへの心配や不安などの相談は、今でも多く寄せられます。「家族の会」でも、面会を全面禁止ではなく、会える方向でと国に働きかけてきましたし、昨年の10月からは原則禁止だったのが、病院や施設の判断による形となりました。しかし、年末年始からの感染拡大の第3波の影響で、面会が再度厳しくなってしまったところもあり、思うように進まないのが現状です。 


認知症も介護もそうですが、先行きが見通せない不安というものがあります。さらに新型コロナウイルス感染症の流行と二重になった状況においては、辛さや大変さが増しているのは容易に想像できます。ひとつひとつの困りごとがコロナによって重くなり、解決の道が見つからない状況に加え、コロナ禍が長引いていることで、心配や不安などが日ごとに大きくなっているのだと思います。 

今は、友達と会ったり認知症カフェに行くなど、直接語り合ったり相談する機会が極端に減っているので、介護をしている方の思いが行き場をなくし、電話相談の増加という形に表れているのではないでしょうか」



「ひとりじゃない」「仲間がいる」とメッセージを伝え続けるために

認知症のご本人だけではなく、介護をする家族なども日々の行動を制限し続けているこの1年。社会とのふれあいの場や時間が減るなか、鈴木代表が危惧しているのは介護者の「孤立」です。


「ソーシャルディスタンスなど物理的な距離を取らなくてはいけない今だからこそ、社会とは密接に関わるようにしないといけないと思っていますが、コロナによって社会と疎遠になってしまい、孤立してしまうご家族はいます。 

心身ともに閉じこもってしまうのは、私たち「家族の会」がいちばん心配していることで、会員の方に手紙を送ったりしていますが、『こういう状況下でもひとりじゃないんだよ』『人とつながる方法はあるんだよ』ということが伝わるよう、インターネットなどで仲間がつながりあえるような工夫もしています。


認知症の方の介護をしているのは圧倒的に高齢者が多く、パソコンなどインターネットを利用することに慣れていない方もたくさんいますが、なかには、お子さんやお孫さんに教えてもらい、うまく使っている方もいます。「家族の会」の世話人のみなさんも、何回も練習するうちに、Zoomでの会議や情報交換をあたり前のように行えるようになってきました。 


だからといって、パソコンやインターネットに抵抗がある方や、インターネット環境下にいない方をそのままにはしておけません。もちろん新しい技術も大切ですが、手紙などで思いやはげましの気持ちを伝えるなど、アナログな結びつきも大事にしていきたいなと、改めて実感しています」 

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仲間との出会いやつながりを広げるには。「家族の会」としてのこれからの課題

認知症本人や介護者が仲間や社会とのつながりを保てるよう、「つどい」をリアルに開催できるための方法を考えたり、インターネットを活用したセミナーや交流を開催するなど、さまざまな工夫をしながら1歩ずつ前進してきた「家族の会」。未知なることへ多くの挑戦をしながら、新たな発見や可能性を見出すこともできたそうです。


「つどいもはもともと、予約をしなくても参加いただける場でしたが、密を避けるために予約制にして人数を制限したり、広い会場で開催するなど、全国の支部の方々が試行錯誤しながらできる限り維持しています。 

やはり、同じ場で直接語り合えるのに越したことはありませんし、インターネットでは温度が伝わらないのもあると思います。ただ違う視点に立つと、つどいや講演会などはその場へ行くための時間や金銭的な問題が生じる場合もありますし、仕事をしながら介護をされている方などは、つどいに参加できないこともありました。


昨年10月、完全オンラインの全国研究集会を開催したところ、オンタイムで参加くださった方はおよそ1,600人、YouTubeでの見逃し配信では約3,000人の方が視聴してくださいました。これまで、オンラインやYouTubeを利用することは考えもしませんでしたが、在宅介護などでふだん講演に行けないご家族や看護学校の学生さんたち、八丈島在住の保健師さんなどから、「勉強になった」「参加できてよかった」という声をいただきました。 

インターネットでのつどいやセミナーなら、これまでつながりを持てなかった人にも可能性が広がりますし、今後もさまざまな方法を用意していく必要があると思っています。


今は介護のスタイルが多様化していて、それぞれ悩みや知りたいことが違いますので、自分と同じような環境にある方々との情報交換は大切になると思います。地域のつどいなどで、いろいろな方の経験談を聞くことも大事ですが、同じ状況のもとで介護をしている同士なら、より理解しやすい部分もありますので、そういったつながりを作ることは、「家族の会」としても大事な課題かなと思います。 


「家族の会」は誕生してから今年41年目を迎え、全国に支部があり1万人を超える会員の方がいらっしゃいます。いろいろな場で発信をしていますが、とくに認知症の初期段階の方の介護をされていて、『これからどうしよう』と不安を抱いている方などへ、『仲間がいるよ』『力になれるよ』という「家族の会」のメッセージや存在がまだまだ伝わっていないと感じています。 


認知症の人やそのご家族と寄り添いながら、一緒に自分の問題として考えていきたい人がたくさんいるんだ、ということを知るだけでもすごく心強いものです。「家族の会」は、ひとりぼっちにしない、孤立させないことを目標にしています。「家族の会」に限らず、さまざまな人がつながり、発信したり参加できることは希望につながりますし、この1年間のコミュニケーションツールの進化に関しては、その可能性が広がるとも感じています」 


状況の変化に対応する経験を生かしながら、今は少し心と体を休めて

認知症の介護とコロナで、さらに大きくなった不安や心配を抱えながらの日々。先が見えない状況だからこそ、自分自身をいたわることも必要だといいます。


「ひとつの例としてですが、施設や病院にいる家族に面会したいけれど今はそれが難しいならば、できないと割り切ることもときには必要なのかなと思います。病院や施設ではガラス越しの面会など、感染予防を万全にしつつ個々の状況に合わせて対応してくれるところもありますが、施設の中でクラスターが発生したらさまざまなことが機能しなくなりますし、慎重にならざるを得ない部分もあります。今は、この先会えるようになったときに備えてご家族が心身を休める、少し心にゆとりを持てるような、自分を大切にする時期だと気持ちを切り替えるのもいいのではと思います。 


認知症の介護もコロナも初めて経験することなので、どう対応すればいいか難しいものでもあります。どちらも未経験で未知のことというのは同じで、そういったものへ柔軟に対応する力が、これまで介護をされてきたご家族には備わっていると思っています。大変さのなかの喜びを知っていたり、介護者同士でつながりあったり、ある部分は割り切ったり、また自分自身の楽しみを持ったり、そうやって介護を続けてこられた方は、このコロナ禍でもきっと、うまく立ち向かっているのではないでしょうか。 

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認知症を正しく理解し、自分ごととして捉えられる社会に

コロナ禍での変化は、本人にとっても介護する側にとっても大変なことや苦労があります。しかし今のこの状況が、認知症に対する正しい理解のある社会になるきっかけになればと、鈴木代表は思いを抱いています。


「マスクをしてくれないなど感染予防の問題は、ご本人への伝え方を工夫したり、必要性をきちんと伝え、習慣化することをあきらめずに続けていくことが大事です。しかし認知症だけではなく、障害をお持ちの方や病気などで、マスクをつけるのが難しい場合もありますし、そのために外出ができない、なんてことは避けなければいけません。 

いちばん悲しいのは、『認知症だから感染予防ができない、できていないはず』という偏見が生まれることで、そもそも認知症に対する正しい理解がないと、こういった偏見を助長してしまう可能性もあります。


「わけがありますく」(https://www.wakega-arimask.com/)というWEBサイトでは、理由があってマスクをつけられない方々がいることを、多くの人へ知ってもらうための方法のひとつとして、「マスクをつけられません」という文字とイラストが描かれた意思表示カードを掲載し、無償で提供しています。これをキーホルダーやカードホルダーに入れて活用するのですが、みんながこのように知恵を出し合い、情報交換をしながら今の時期を乗り切っていきたいですね。 


認知症は恥ずかしい病気ではないのだから、周囲などに認知症だと伝えることで苦労をしなくてもいいはずです。このコロナ禍を機に、いろいろな人がいてもいいという社会、『私はこういうことで困っているのだ』とさりげなく示すことで理解してもらえる社会になってほしいと思います。コロナも認知症も、誰でもなり得る自分事として捉えられる、いい方向へ進んでほしいという期待があります。 


今の状況をマイナスに捉えて暗い方向へ考えればきりがないですし、だからといって楽天的に考えるわけにもいきません。認知症もコロナも手ごわいけれど、一緒に生きていくためには、情報を交換したり共有したりしながら付き合い、困難に立ち向かえる力をつけていくことが必要で、ご家族の方々は、そういう視点でこれまで介護をされてきたと思います。ぜひこれからもそういう気持ちや希望を失わないようにしていただきたいです」 


認知症の人と家族の会 https://www.alzheimer.or.jp/


取材・文/山本幸代(SOMPO笑顔倶楽部)


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