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「介護をしながら働く私」タイトル
2025.03.03

介護をしながら働く私~介護は特別ではない。受け入れる職場環境が両立のきっかけに~

近年、介護をしながら働く人(=ビジネスケアラー)が増えています。しかし、介護は先の状況や変化が見通しにくく、仕事との両立は簡単ではありません。


ビジネスケアラーの人たちは、どのように仕事との両立を実現しているのか。本連載企画は、仕事と介護を両立しながら生活を送っているさまざまな人へインタビューを実施。これまでの歩みや両立の工夫、同様の境遇にある方へのメッセージをお届けします。


第1回目は、営業職として働くAさんのエピソードを紹介します。


Aさん
年齢:50歳代
M性別:女性
居住地域:福井県
職種:営業
介護経験年数:3年
介護をしている家族:父


目次
・わかっていながらも見過ごしていた父の変化
・戸惑いを感じるも介護が“自分事”にならない
・症状の進行により、私生活へ影響が広がっていく
・コンビニの駐車場であふれた涙
・上司・セミナー講師が与えてくれた“変わるきっかけ”
・声をあげ行動することで、介護が特別ではなくなる


わかっていながらも見過ごしていた父の変化

ある夏の暑い日、父がいつも通り散歩に出かけました。


普段と変わらない日常の行動に特に違和感を抱くことはありません。しかし、数時間後、警察から電話がかかってきて、父が脱水症状で倒れていたところを保護されたとのこと。当時は、たまたま熱中症になったと思い、特別に心配はしませんでした。


そこから、いつもと違う行動が少しずつ増え、ちょっとした違和感を感じることはあったものの、とくに気に留めることなく過ごしていました。1年ほどが過ぎ、何気ないきっかけからケアマネジャーさんと出会い、父の様子を話したところ、病院で診てもらうことを勧められました。すると、認知症という診断を受けたのです。


その後、父はデイサービスで通うようになったものの、環境の変化によって生活サイクルが少しずつ狂いはじめました。時間間隔がわからなくなったのか、「朝ごはんを食べたのに、食べたことを覚えていない」「昼間なのに布団に入って寝ようとする」など変化が出てたのです。


戸惑いを感じるも介護が“自分事”にならない

父の変化と同時に、介護がはじまりました。


時間の感覚を持ってもらうために何ができるかを考える日々。週末は、明るい時間に父と一緒に庭の草むしりをしたり、夕日が沈むころに散歩に行ったりするなど、父と一緒に行動をすることが増えていきました。

庭の草むしりをする父と娘

これまで頑固で周囲には無関心だった父。モノの置き場もしっかり決めていたような生真面目な父が、何も気にしなくなっていく。そんな変化をすぐに受け入れられるわけでもなく、目の前にいる姿に向き合い、戸惑いを感じる日々が続きました。


平日は仕事で一日が過ぎていき、週末は父と過ごし、気付けば一日が終わっている。父の状況は変わってきているけれど、まだ会話もできるし、平日は今までと変わらない日常に戻る。当時は、介護が自分事ではなかったですし、この状況を誰かに相談しようとも思いませんでした。


症状の進行により、私生活へ影響が広がっていく

その後、父親の認知症の症状が進行し、顔つきが変わりはじめました。


20時頃に布団に入って寝はじめたかと思えば、23時頃に目を覚まし、そこから朝まで起きている。私が寝ようと思っても、父が家の中を歩きまわり、台所で食べ物を探している。ひどいときは、お米をそのまま口に入れていることも……。


私が布団に入ってもそのような状況が続いているので、気になって寝れない日が続きました。来る日も来る日も、父の夜中の行動はおさまらない。悲しさよりも、「なぜそんなことをするのだろう」という腹立たしさや苛立ちに近い感情が抱くこともありました。


コンビニの駐車場であふれた涙

当時、一部の同僚との会話の中で、父の状態や認知症であることを話題の一つとして話すことはありましたが、介護の状況や抱いている気持ちを伝えることはありませんでした。どこかで、仕事と家庭(介護)のことは別のことと考えていました。


仕事は仕事で一生懸命やろう。そういう気持ちを持てば持つほど、感情が追い付いていきませんでした。そんなとき、こんな出来事がありました。

コンビニの駐車場にて、車の中で涙を流す女性

いつものように車を運転しながら営業先へ向かっていたある日。
営業先での会話を頭のなかに思い浮かべ、商談の段取りをおさらいします。でも、最近の父の様子や私の対応が浮かんでくる。仕事のことを考えようと思えば思うほど、介護のことが頭に思い浮かんでくる。

その瞬間、気持ちの糸がプチっと切れて涙が出てきました。

私は、何に対して泣いているのかもわからない。ちゃんと仕事をしようと思えば思うほど、自分の感情を保つことが難しくなっていました。

このまま営業先へ向かうわけにはいかない。コンビニの駐車場に車を止め、涙を拭きながら、気持ちを落ち着かせたこともありました。


子育てをしていたときは、大変なことや辛いことはたくさんありましたが、その先に楽しさがあり、前を向くことができました。でも介護はそうじゃない。1年後、5年後、10年後……先が見えないし、終わりも見えません。そんな状況で父に対して当たりが強くなっている自分。いろんな感情が混ざり合い、自然と涙が出てきました。


この段階になって、ようやく決心がつきました。このまま仕事を続けるのなら、この状況を周囲に伝えなければいけない、と。


上司・セミナー講師が与えてくれた“変わるきっかけ”

コンビニの駐車場での出来事から数日後、上司が声をかけてきました。


「コンビニの駐車場にいたね。●●●(営業先)に行ってたの?」


そのときに、父親の介護で悩んでいたこと、コンビニの駐車場で気持ちを落ち着かせていたことを話しました。上司は最後まで話を聞き、「こんなものがあるから参加してみたら?」と提案をしてくれました。それは、職場が開催している介護セミナーでした。


早速、そのセミナーに参加したところ、講師の方がこんなことを言っていました。


「仕事をしながら介護をすることになり、両立ができなくなって離職していく人はたくさんいます。しかし、その選択によって必ずしも幸せを得られるわけではありません。離職は解決策にならない場合もあります。時には、専門職に相談する・頼ることが大切です」


私は決してこの仕事が嫌いではなく、むしろ続けたい。でもこのままだと、前向きに仕事ができない。先が見えない状況のなかで、いつかはやめる選択をすることがあるのでは、と思っていました。講師の言葉にスッと心が軽くなり、介護に対する意識が変わりました。自分一人が抱え込んでも、良い方向に向かうものではない。であれば、人の力を借りることにシフトしようと。


声をあげ行動することで、介護が特別ではなくなる

それからは、特別な機会を設けるわけではなく、同僚や上司との日常会話のなかで、介護状況を少しずつ打ち明けていくようになりました。


すると、仕事の合間で、自然と介護のことについて声をかけてくれるようになったのです。はじめは、恥ずかしさや後ろめたさを感じていましたが、“伝えることが受け入れらえるきっかけになる”と感じています。

同僚や上司と日常会話をしている女性

私は今、仕事と介護を両立しながら生活をしています。


両立できている背景には、職場環境が大きく影響しています。たとえば、ケアマネジャーとの面談がある日にテレワークをすることを同僚に伝えると、それが特別ではないことのように反応してくれる。家庭環境や生活環境は人それぞれですが、職場の人が介護を特別なものと感じることなく、受け入れていることが両立につながっていると感じます。


最近では、会社内で介護経験がある方や介護に詳しい方に相談をしたり、介護コミュニティに参加したりするようになりました。そこでは、「自分だけじゃないんだ」、「こう思ってもいいんだ」と共感することがたくさんあります。第三者の言葉ではなく、同じ環境にいる仲間の言葉だからこそ、身近に感じ、心や行動の変化につながっています。



イラスト/ふくだ のぞみ

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