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2023.04.25

世帯分離とは?手続き方法やデメリット、注意点などを解説

ご家族と同居して世帯を同一にしている方のなかには、ご両親との世帯分離を検討するケースがあるでしょう。しかし、世帯分離は適している場合と適さない場合に分かれ、世帯分離を行うことで悪い影響を受けるケースがあり注意が必要です。本記事では世帯分離の説明とそのメリット・デメリット、手続きを行う際に理由をどのように説明するか、世帯分離できない場合や扶養から外れる場合などについてご紹介します。ご自身の家庭には世帯分離が必要かどうか、この記事を参考にしてみてください。


目次
・世帯分離とは
・世帯分離のメリット
・世帯分離のデメリット
・世帯分離の手続き方法
・世帯分離の注意点
・世帯分離が適しているか否かを見極めるには
・まとめ

執筆者画像
【監修】看護師 那賀嶋幸恵さん
新卒で急性期病院へ従事したのち、デイサービスや特別養護老人ホームなど様々な看護の場を経験。現在は訪問看護ステーションにて在宅医療の現場をみつつ、医療福祉のあり方を日々発信中。

世帯分離とは

世帯分離のイメージ図

世帯分離とは同居している状態を保ちながら、住民票の世帯を親と子のように別々に分けることを指します。住民票の世帯を別々にするためには、住民票のある市町村役場の窓口で書類を提出するといった手続きが必要です。世帯分離の本来の目的は所得が少ないご家族の所得税を抑えて、経済的負担を減らすことにあります。ご家庭によって、一定の条件が揃った場合は世帯分離を行う方が良いケースは多く、親と子の世帯分離は主に親が要介護状態になった場合に検討が必要です。


また、介護サービスの負担額はご本人の所得額と世帯の所得額によって決まります。世帯分離によって本人と世帯の所得額が変わると、介護サービス料の負担が軽減される場合があるでしょう。現在、介護サービス料の自己負担額が2割や3割という家庭では、世帯分離を行えば自己負担額を1割に下げられる可能性があるため、確認してみましょう。さらに世帯分離は住民税の軽減につながることもあります。世帯分離によって親世代の収入が減って住民税非課税世帯となった場合、国民健康保険料や介護保険料の負担が軽減され、高額介護サービス料の負担上限も下げられます。


世帯分離のメリット

世帯分離のメリット一覧表

世帯分離を行うことで、さまざまなメリットがあります。ご自身やご家族がどういったケースに当てはまるのか、確認してみましょう。


介護費用の自己負担額を減らせる

介護費用の自己負担額は、本人の収入または世帯の収入によって決められるケースがほとんどです。高額介護サービス費や高額介護・高額医療合算制度は、同一の世帯で発生した介護費用や医療費用を合算した制度であるため、世帯分離を行って親世帯の所得が下がれば、介護費用の減額が可能です。また、世帯収入をもとに介護費用の算出が行われる場合は、世帯分離によって世帯収入を減額でき、介護費用を減らすことにもつながります。自己負担割合が2割や3割の家庭では、世帯分離によって負担割合を減らせる可能性があります。


介護費用の自己負担額の上限が下がる

高額介護サービス費制度は、1カ月に使った介護費用が自己負担額の上限を超えたとき、超過分の払い戻しを受けられる制度です。自己負担額の上限は5段階に分かれています。世帯の所得が低ければ上限額も低額に設定されるため、世帯分離を行って世帯年収を下げることで自己負担額の上限を下げる効果が期待できます。


国民健康保険料が安くなる

ご自身やご家族が国民健康保険に加入している場合、保険料が下がる可能性もあるでしょう。国民健康保険の負担額は、前年の所得をもとに計算されます。世帯分離を行って前年の世帯所得を下げられれば、その分負担額も軽減されます。ただし、世帯分離によってすべての世帯が負担額を減らせるわけでない点には注意が必要です。ひとつの世帯単位では負担額が下がっても、世帯分離した2世帯の合計ではむしろ保険料が上がってしまうケースもあります。世帯分離が有効かどうか、事前にシミュレーションするのがおすすめです。


介護保険施設の費用を軽減できる

介護保険施設を利用すると、居住費や食費なども含めてさまざまな出費が発生します。そして介護保険にある負担限度額認定制度を利用することで、そのような費用の減額が可能です。世帯分離を行うことで、この負担限度額認定制度を活用できる場合があります。負担限度額認定制度での利用者負担限度額は、所得に応じて決定されます。世帯分離によって世帯の所得が下がれば負担限度額の段階が下がり、月額の負担額が軽減される可能性があるでしょう。入居型以外の施設でもこの制度の対象となります。


後期高齢者医療制度の費用を抑えられる

75歳以上になると、後期高齢者医療制度を利用できます。また、特定の障害がある場合など、条件によっては65歳から利用可能です。後期高齢者医療制度は基本的に自己負担額が1割で、保険料を納付して利用します。この保険料も世帯の所得に応じて異なり、所得が低ければ保険料の負担額もそれに応じて下がります。そのため、世帯分離によって世帯の所得を抑えられた場合、負担額軽減につながる可能性があるでしょう。ご自身の世帯の総所得額を確認して、実際に負担額が減らせるかどうか照らし合わせる必要があります。


世帯分離のデメリット

世帯分離のデメリット一覧表

世帯分離はメリットだけではありません。世帯によっては、現状維持の方が費用面などで適している場合もあります。ここでは、世帯分離のデメリットを解説します。

国民健康保険料が高くなる場合がある

国民健康保険に加入している場合、保険料を支払うのは世帯主です。世帯が同一であれば1人が支払いますが、世帯分離した場合それぞれの世帯主が保険料を支払わなければなりません。その際、世帯単位での支払額を減らせても、もともと同一であった世帯の支払額と合計すると、むしろ負担額が増えている場合もあります。世帯分離によって保険料負担を抑えられるかどうかは、世帯の構成や収入などによって異なります。事前に、世帯分離した場合の負担額を十分確認して、負担額を想定しておくことが大切です。


扶養手当や家族手当が使えなくなる

世帯によっては、ご両親を自らの勤務先で扶養に入れているケースもあるでしょう。扶養手当や家族手当を利用している場合、世帯分離を行うと対象の家族が扶養から外れてしまい、扶養手当や家族手当を受けられなくなるケースがあるので注意が必要です。例えば、扶養手当が毎月1万円支給されていた場合、扶養手当がなくなれば年間12万円の収入減となります。また扶養から外れなかった場合にも、世帯分離によって支給額が減る可能性もあります。世帯分離を検討する際には、まず健康保険組合をはじめとする、ご自身が所属している組合・団体に確認しましょう。


健康保険組合を利用できない

勤務先の健康保険組合で同居しているご両親などが扶養に入っている場合にも、世帯分離によってデメリットが生じる恐れがあります。健康保険組合のなかには、扶養に入る条件として同居を求めているケースがあります。世帯分離を行って扶養から外れてしまうと、外れた方はご自身で保険料を支払わなければなりません。ご家族を介護している場合、費用負担軽減のために、そのご家族を健康保険組合の扶養に入れておいたほうが良いケースも考えられます。


手続きに時間がかかる

世帯分離を行うためには、さまざまな手続きを行わなければなりません。役所で住民票などの必要書類を取得して、所定の書類に必要事項をすべて記入します。また、ご家族が高齢により手続きが難しい場合は、代わりに手続きを行うために委任状の用意も必要です。手続き完了までには時間がかかるうえに、手続きそのものも煩雑です。世帯分離を検討する際は、申請から実践までの時間も考慮しなければなりません。


世帯分離の手続き方法

世帯分離の手続きをする夫婦

ここからは、実際に世帯分離の手続きをする際の流れを紹介します。手続きに必要なもの、提出先を知っておくことでスムーズに手続きを進めることができます。

手続きに必要なものを準備する

世帯分離の手続きに必要なものは、以下の4つです。

①本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
 
※健康保険証・介護保険証・年金手帳などの場合は、2種類以上の書類が必要になります。
②世帯変更届(窓口にて発行)
③国民健康保険証(加入している場合に必要)
④印鑑


ご両親の手続きを代理で行う場合は、同一世帯であっても委任状が必要です。

市区町村役場の窓口に行き、書類を提出する

世帯分離の手続きは、居住している市区町村役場の窓口に出向いて行います。上記の必要なもの(代理の場合は委任状)を用意して窓口に行き、必要書類を提出します。提出できるのはご本人のほか、世帯主(世帯分離後の世帯主も可能)、代理人、同一世帯の方です。市区町村によっては代理人だけでなく、同一世帯の方の場合もご本人以外は委任状が必要となります。詳しくは各自治体のページで確認できるので、事前に調べておくと安心です。


世帯分離の注意点

世帯分離の本来の目的は、保険料や自己負担額の軽減ではありません。あくまで生計を別にすることで所得の少ないご家族の税負担を軽減することです。また、ご両親の所得が低く世帯分離をすると生活が困難であると判断された場合も、申し出が受理されないケースがあります。そのほかに、世帯分離を申請した場合は重要事項が変更されるため、後々その他書類の申請や手続きがスムーズに進まない場合があることも、想定しておきましょう。


世帯が異なると、住民票の交付や介護保険証・所得証明書などの書類を申請する際に、都度本人の委任状が必要になります。世帯分離後は元に戻すことも可能ですが、世帯合併の届出を市区町村役場の窓口に提出しなければなりません。また手続きに時間がかかるため、世帯分離の判断は慎重に行いましょう。


世帯分離が適しているか否かを見極めるには

世帯分離にはメリットとデメリットが存在します。メリットをうまく活かすためには、世帯分離を正しく理解しておかなければなりません。ここでは、メリットとデメリットを踏まえたうえで、どのような家庭が世帯分離に適しているのか解説していきます。

世帯分離が適している家庭

世帯分離が適しているご家庭の特徴として、まずは親世代が現役を引退していて収入が少なく、同居している方の収入が高い場合が挙げられます。次に挙げられるのは、ご家族が施設で介護サービスを受けるケースです。施設でサービスを受ける際には利用料が必要ですが、仮にわずかな利用料であっても、長期的な合計額にすると大きな負担になります。世帯分離のメリットを活かせば、介護サービス料の負担を軽減できます。


また、同居するご家族の介護度が高い場合も、世帯分離のメリットを受けやすく効果的です。介護度が高く負担額が上限である1割に設定されている場合、世帯分離によって上限を下げられれば、負担額の軽減につながります。

世帯分離が適していない家庭

次のような場合は、世帯分離がかえって逆効果になる恐れがあるため注意が必要です。まず要介護者である方の収入が高いご家庭では、世帯分離は適しません。年齢が高くとも仕事に精を出す方は多くいます。しかし世帯分離の観点からは、要介護の方の所得が高ければ負担軽減の恩恵は受けにくくなるでしょう。


また、親子で介護サービスを受けている場合などは、高額介護・高額医療合算制度による世帯合算ができなくなるため、世帯分離には適しません。そして、勤務している会社で親世代などを扶養家族としている場合には、世帯分離によって扶養から外れる場合があります。

扶養から外れると手当や組合のサービスなどが受けられなくなるため、デメリットの影響の方が大きくなり、世帯分離には適さないといえます。

まとめ

同居する家族の介護が必要になったときなどに、世帯分離は負担軽減のための有効な手段として考えられます。しかし、世帯分離にはメリットだけでなく、デメリットもあるので注意が必要です。また世帯分離の目的は、所得の少ないご家族の税負担の軽減ということも念頭に置いたうえで、申請を検討しましょう。各ご家庭の状況に合わせて、適した選択をする必要があります。


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