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2023.03.17

失語症とはどんな症状?原因やリハビリ、認知症との違いなどを解説

失語症とは、言葉を使ったり理解したりするのが難しくなる障害です。発症するとコミュニケーションがうまく取れなくなるため、本人だけでなく家族をはじめ周囲の人にも大きなストレスになる可能性があります。コミュニケーションがスムーズに取れず、殻にこもって生活範囲が狭くなってしまうケースもあるため、失語症を正しく理解することはとても重要なのです。
この記事では、失語症の原因や症状をはじめ、失語症の種類やリハビリ、失語症の方とのコミュニケーションで意識したいポイントをまとめました。 身近に失語症の人がいる方は、ぜひ最後まで読んでサポートする際にお役立てください。

目次
・失語症とは
・失語症になると生じる主な症状
・失語症には主に4種類ある
・失語症はリハビリを重ねることで改善が望める
・失語症のリハビリにおけるポイント
・失語症の人とのコミュニケーションで意識したいこと
・失語症の人が利用できる社会福祉制度
・まとめ

執筆者画像
【監修】医療法人社団 赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック 東京脳ドック 院長 伊藤たえ 先生
脳神経外科、脳卒中専門医として、脳ドック、頭痛、認知症、頭部外傷、脳卒中などの診療に励む。患者様が安心でき、笑顔になれるよう丁寧な説明がモットー。

失語症とは

失語症は言語障害の一種で、「聞く」「話す」「書く」「読む」といった日常生活におけるコミュニケーションが困難になることです。

失語症の症状に関して詳しくは後述しますが、全ての機能に影響が出るケースが多く、例えると、言葉の通じない外国にいるような感覚です。

失語症の症状

失語症の具体的な症状の例は、下記のとおりです。

●言い間違えが多い
●うまく発音できない
●文字を思い出せなくて書けない
●話しかけられた内容を理解できない
●文字を読めても意味を理解できない など

他の言語障害との違いとは

失語症と似ている言語障害には、運動性構音障害や失声症などが挙げられます。運動性構音障害は口唇や舌、あご、声帯などの音を作る器官やその動きに問題が生じ、うまく発音できなくなる言語障害です。
一方で、失声症は発声器官や脳に異常はありませんが、主にストレスや心的外傷などの心因性の原因で声を発せられない状態です。運動性構音障害と失声症の方は口頭での会話が難しい場合でも、筆談でコミュニケーションを取れるという点で失語症と異なります。


認知症と失語症は全く別物!見分け方は?

認知症と失語症はよく混同されますが、症状は全く違います。失語症は認知機能に問題はありませんが、言葉を使ったコミュニケーションが難しい脳の機能障害です。
一方で、認知症は新しい物事を記憶できず、「いつ」「どこで」「誰が」といった状況把握ができなくなる認知機能障害です。 たとえば「朝ごはんは食べましたか」という質問に対して、失語症の方は何を食べたか把握しているものの、言葉でうまく伝えられません。一方で、認知症の方は何を食べたかが分からない状態です。ただし、失語症と認知症の見分け方は難しいため、病院での検査結果に加えて周囲からの情報も踏まえて総合的に評価することが大切です。


失語症の原因

失語症は、言葉を司る大脳の言語中枢(言語野)が損傷されて起こります。言語中枢が損傷する原因の一例を見てみましょう。

●脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)
●脳腫瘍
●転倒や交通事故による頭部外傷 など

また、一般的に脳卒中は高血圧や糖尿病などをもつ中高年に多く発症するため、失語症も中高年で発症するケースが多く見られます。ただし、なかには事故などの外的原因によって、若くても失語症を発症する場合もあります。

失語症と同時に生じやすい症状

次は、失語症と同時に生じやすい症状は表のとおりです。

さらに、失語症の発症で疎外感を感じたり、苛立ちや混乱、焦りが見られたりするなど精神面で不安定になるケースもあります。一方で、性格や記憶力、判断力などは失語症を発症しても大きく変わりません。

失語症になると生じる主な症状

困っている夫婦

失語症の主な症状を「話す」「聞く」「書く」「読む」の4つの場面に分けて、ご紹介します。

話す場面における症状

話す場面における失語症の主な症状は、下記5つが挙げられます。

●喚語困難
●錯語
●復唱障害
●新造語
●ジャーゴン(ジャルゴン)


喚語困難は、何か話そうとした際にすぐに言葉が出てこない症状です。失語症ではない方でも、経験のある方が多いかもしれませんが、失語症の方は特に顕著に表れます。錯語は言葉を言い間違える症状で、「りんご」を「お皿」のように全然違う言葉に言い間違えてしまうケースなどが当てはまります。その他、相手が言った言葉を復唱できない復唱障害や、日本語にはない新しい言葉で話してしまう新造語、さらに新造語が羅列して全く意味が通じない言葉を話してしまうジャーゴン(ジャルゴン)などの症状があります。

聞く場面における症状

聞く場面においては、失語症の方には下記の症状が見られます。

●話している言葉は聞こえるが、意味を正しく理解できない
●数字や名詞などを聞き間違える
●頷いたり、復唱したりできても理解できない など


全く理解できないケースや、日常会話程度なら問題ないケースなど症状の重さは人によってさまざまです。

書く場面における症状

書く場面において、失語症の方には下記の症状が見られます。

●文字を思い出せない
●名詞や漢字などを書き間違える
●単語は書けても文章に書き起こすのが難しい など


失語症の症状が比較的軽い場合は、文章を書けても、難しい漢字を思い出せないケースがあります。症状が進行すると、自分の名前が書けなくなるケースも見られます。

読む場面における症状

読む場面においては、失語症の方には下記の症状が見られます。

●短文は理解できても長文は理解しにくい
●音読が難しい
●単語の意味が理解できない


読めますが、複雑な文章になると理解するのが難しくなる傾向があります。失語症の症状が重くなると、多くの場合は文章だけでなく単語の意味を理解するのも困難になります。

失語症には主に4種類ある

次は、失語症のタイプをご紹介します。失語症の種類は主に4種類あります。それぞれ症状が異なるので、適切にサポートできるよう確認しましょう。

運動性失語(ブローカ失語)

運動性失語(ブローカ失語)は、聞いた言葉を理解する能力は比較的高いものの、話す能力は低下しているのが特徴です。話し方がたどたどしかったり、発音を間違えたりする他、話す量が少なく、単語や決まり文句を言えるだけなど非常に短い言葉で会話する傾向も見られます。同時に、書く能力も低下しており、文字の形が崩壊していたり文法に誤りが見られたりするのも特徴です。


感覚性失語(ウェルニッケ失語)

感覚性失語(ウェルニッケ失語)は、話を聞いて意味を理解するのが困難な状態です。話し方はスムーズですが、言葉がすぐに出てこない喚語困難が目立つケースが多くあります。その他にも言いたい言葉が他の言葉に置き換わってしまう錯語や、意味の通じないジャーゴンなどの症状が表れて、コミュニケーションが難しい傾向にあります。 さらに書く能力が低下するケースもあります。


健忘失語(失名詞失語)

健忘失語(失名詞失語)は、物の名前が出てこない症状です。比較的軽度の失語症で、話を理解する力はあり会話も口頭でできますが、人や物の名前が出てこずまわりくどい話し方になり、自分の伝えたいことを伝えるのに時間がかかるのが特徴です。
例を挙げると「みかん」という単語が思い出せず、「オレンジ色の丸い物」のように抽象的に表現してしまいます。


全失語

全失語は脳の広範囲に損傷が広がり、「聞く」「話す」「読む」「書く」の全ての言語機能が重度に障害されている状態です。全く話さないか、その場に合わない無意味な一言を発することが多い点が特徴に挙げられます。全失語の改善を目指すには、長期的なリハビリが必要になります。

失語症はリハビリを重ねることで改善が望める

医師に相談する男性

個人差はありますが、本人の努力や周囲の協力によってリハビリを重ねることで、失語症は改善する可能性があります。 実際に重度失語症の65歳の方がリハビリを重ねたことで、少しずつ発語できるようになり、「読む」「聞く」面でも改善が見られた症例が報告されています。職場復帰できるほど回復する人もいれば、コミュニケーション機能を取り戻すまでに長期間かかる人もいて、回復の程度は人によってさまざまです。
多くの場合は、改善まで数年を要します。一般的には発症から期間が経てば経つほど改善に限度が出てくるため、発症した場合はなるべく早くリハビリを始めることが大切です。 失語症の方のリハビリを担当するのは言語聴覚士で、希望や検査結果に応じてそれぞれに合ったリハビリを実施します。

失語症のリハビリにおけるポイント

失語症は発症から経過に応じて、3つの期間に分けられます。

●急性期
●回復期
●維持期


経過に応じて適切なリハビリ方法は異なるので、ポイントを確認しましょう。

急性期のリハビリ

急性期はリハビリをなるべく早く行うほど、早く回復できる傾向があります。 ただし、急性期は全身状態が安定しない時期であり、体調や精神状態に合わせて無理なく進めることが重要です。急性期は突然言語障害になって本人が戸惑っている時期のため、本人の気持ちに寄り添いながらリハビリしましょう。急性期はコミュニケーションを取ることを重視して、正確性はそれほど重視しなくてかまいません。

回復期のリハビリ

回復期は全身状態が安定して、座っていられる時間も長くなり、リハビリの効果が期待できる時期です。

●絵を見て名前を言う
●日記を書く
●簡単な文を読んでもらって内容を質問する など


上記のような言語機能訓練やコミュニケーション訓練、家庭・職場復帰に向けた環境調整などのリハビリを中心に行います。 なお、ここで紹介するリハビリはごく一例であり、それぞれの症状や回復度に合わせてメニューを組みます。

維持期(生活期)のリハビリ

維持期(生活期)は、生活に沿ったコミュニケーション能力や活動・社会参加を試みる時期です。実際の生活に即して最適なコミュニケーションが取れるように、家族や周囲の方にも指導を行います。
また、社会参加を促すために、言語リハビリだけでなく趣味に打ち込むといったサポートも実施するといいでしょう。自宅だけでなく、デイサービスや外来リハビリなどを利用し、継続することが大切です。

失語症の人とのコミュニケーションで意識したいこと

失語症の方の話を聞く際に意識したいポイントは、次の5つです。

●相手の言葉を先回りせずにゆっくり待つ
●姿勢や動作、表情からも伝えたいことを汲み取る
●ジェスチャーや写真、指差しをうまく取り入れる
●繰り返し言ったり、別の表現を使ったりする
●文字や数字を書いて合っているかどうかを確認する


を聞く際に、聞いても分かりにくい場合は紙に書き出してみると、コミュニケーションが円滑に進む場合があります。 個人差はありますが、ひらがなよりも漢字を使った方がヒントになるケースもあります。

失語症の人に話しかける際のポイント

失語症の方に話しかける際に意識したいポイントは、次の5つです。

●ゆっくりと分かりやすい言葉で話す
●ひとりの大人として対等に接する
●焦らずにゆっくりと時間をかけて会話する
●話題を急に変えない
●答えやすいように質問は二択にする


相手がうまく話せないからといって、決して子ども扱いをしてはいけません。また、目線を合わせてお互いの顔が見える静かな環境で会話しましょう。

失語症の人が利用できる社会福祉制度

失語症は身体障害手帳の工工夫対象で、3級または4級を取得可能です。また、状態によっては、障害者年金の対象になる可能性があります。障害者年金の認定基準は、表のとおりです。

参照:https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/shougainintei.files/leaflet3.pdf


さらに、失語症の方は、自治体による意思疎通支援も受けられます。



まとめ


失語症を発症すると、今までのようにコミュニケーションを取れなくなり、日常生活に影響をもたらす可能性があるため、症状に応じて適切な方法でリハビリする必要があります。尊厳を保ちつつ、気持ちに寄り添いながら本人のペースに合わせて、無理のない範囲でリハビリすることが大切です。
リハビリは年単位で長期間かけて行うケースが多いため、焦らずじっくり取り組みましょう。言葉に頼ったコミュニケーションだけでなく、あくまでも周囲の人と意思疎通できるようになることが重要です。個人に合わせた工夫を盛り込み、コミュニケーションを取る楽しさを感じられるのを目標とすると無理なく続けられるでしょう。

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