現在の日本において、介護保険制度で要介護または要支援の認定を受けた人は2015年度末で606.8万人となっており、2003年度末から236.4万人増加しています。その中でも65歳以上の要介護者等について、介護が必要になった主な原因は「認知症」が最も多く、18.7%を占めています(※1)。
現在の日本において、介護保険制度で要介護または要支援の認定を受けた人は2015年度末で606.8万人となっており、2003年度末から236.4万人増加しています。その中でも65歳以上の要介護者等について、介護が必要になった主な原因は「認知症」が最も多く、18.7%を占めています(※1)。
順天堂大学大学院の研究グループによると、認知機能が低下するリスク因子として、加齢に伴う骨格筋量と筋力の減少を示す「サルコペニア」や、体重や体脂肪量の増加を示す「肥満」が考えられ、このサルコペニアと肥満が合併した「サルコペニア肥満」は、欧州ではサルコペニア単独よりも日常生活活動の低下を引き起こすと報告されています。つまり、体重の低下がないにも関わらず、骨格筋量と筋力が低下している状態により、要介護リスクが高まっていると考えられるのです。しかし、サルコペニア肥満と認知機能低下の関連は、これまで明らかになっていませんでした。そこで研究グループは、都市部在住高齢者を対象とした調査研究Bunkyo Health Study(文京ヘルススタディー)(※2)において、サルコペニア肥満と認知機能低下との関連を調査しました。
※1 内閣府 平成30年版高齢社会白書より
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_2_2.html
※2 Bunkyo Health Study(文京ヘルススタディー)
東京都文京区民1,629名の高齢者を対象として、認知機能・運動機能などが「いつから」「どのような人が」「なぜ」低下するのか?「どのように」早期の発見・予防が可能となるか?などを明らかにする研究。
https://research-center.juntendo.ac.jp/sportology/research/bunkyo/
この研究では、東京都文京区在住高齢者のコホート研究Bunkyo Health Studyに参加した65~84歳の高齢者1,615名(男性684名、女性931名)を対象とし、身長・体重測定、握力測定、認知機能検査を実施しました。
まず、身長と体重から算出されるBMIが25kg/㎡以上を「肥満」と定義。その一方で、日本の高齢肥満者で、骨格筋量と筋力の両方が低下しているサルコペニアを合併している人はほとんどいないため、今回の研究では筋力低下のみを基準として用いることにし、握力が男性で28kg、女性で18.5kg未満を「サルコペニア」と定義しました。
次に、肥満もサルコペニアも該当しない「正常」、肥満のみ該当する「肥満」、サルコペニアのみ該当する「サルコペニア」、両方とも該当する「サルコペニア肥満」の4群に分類し、各認知機能検査(※3)の点数や軽度認知機能障害、認知症の有病率を比較しました。その結果、正常、肥満、サルコペニア、サルコペニア肥満の順で、各認知機能検査の点数が低下し(図1の棒グラフ)、軽度認知機能障害、認知症ともに有病率が増加している(図1の折れ線グラフ)ことも明らかになりました。
※3 認知機能検査
判断力や記憶力を確認する検査。今回の研究では、軽度認知機能障害のスクリーニング検査として、MoCA(Montreal cognitive assessment)、認知症のスクリーニング検査としてMMSE(Mini-mental state examination)の日本語版を使用。
また、年齢や教育歴、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を調整した結果、サルコペニア肥満は正常と比べて、軽度認知機能障害のリスクが約2倍、認知症のリスクが約6倍になることが示されました(図2)。また、認知症ではサルコペニアだけでも正常の約3倍のリスクになることが明らかになりました。
今回の研究により、都市部在住高齢者におけるサルコペニア肥満では、軽度認知機能障害や認知症のリスクが高い可能性が明らかになりました。また、この研究では握力やBMI(身長・体重)といった簡便な方法によって、認知機能低下の早期発見に役立つことが示唆されましたが、サルコペニア肥満と認知機能低下が関連するメカニズムや認知機能低下の原因など不明な点が多く残されており、今後の研究に期待が集まっています。
■詳細は以下の外部リンクをご覧ください。
https://www.juntendo.ac.jp/news/20220415-01.html
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