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2021.04.02

顔写真だけで認知症のスクリーニングが可能に!? 早期発見にも役立つAIモデルとは?

2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を発症するといわれており、認知症を早期に発見することの重要性が高まっているなか、身体的、経済的な負担が少なく、早期発見に役立つ方法として注目されているのが、顔写真を使って認知症をスクリーニングするというもの。現在研究、開発を進めている、東京大学医学部附属病院 老年病科の亀山祐美先生にお話をお伺いしました。


亀山祐美先生

東京大学医学部附属病院 老年病科 助教[特任講師(病院)]

日本老年医学会(代議員、老年病専門医、指導医)

日本認知症学会(専門医、指導医)、日本老年精神医学会(専門医・指導医)



認知機能の低下を「顔」で判別。AI(人工知能)で顔写真を解析

認知症は早期に発見することが重要だとされているものの、認知症の診断のための検査は、高額、侵襲的など、さまざまな制約もあります。この問題を解決するひとつの方法として、亀山先生をはじめとするグループが研究を続け、発表したのが「認知機能低下患者の顔を見分けることができるAIモデルの開発」です。


「これまで20年以上、物忘れ外来で多くの患者さんと接するなかで、顔の表情が乏しくなったり、認知症中等度以上になると、なんとなく目がぼうっとしていたり目線が合わなかったり、口元のたるみが見られたりするなど、認知機能の低下が顔や表情に現れる印象がありました。 


以前、見た目年齢が実際の年齢よりも、認知機能と強い相関を示すことを先行論文として発表していた経緯もあり、『人ではなくAI(※1)に顔写真を読み込ませてみたら、さらに早期の段階での認知機能低下を見極められるのではないか』と、調査を始めたのです」 

※1:AI解析を行ったのは、東京都健康長寿医療センター放射線診断科 亀山征史氏。今回の研究ではAIのなかでもdeep learning【深層学習】を使用。


参加したのは、東京大学医学部附属病院 老年病科を受診している、軽度の認知症の患者121名と、東京大学 高齢社会総合研究機構が実施する、大規模高齢者コホート調査(柏スタディ※2)の参加者の中から同意を得た、健常な高齢者117名の計238名。これらの方々の正面、表情のない顔写真を使い、認知機能が低下した患者と、健常者の顔写真が見分けることができるかを、いくつかの種類にわけてAIで解析したところ、いい成績で判別ができたという結果が出ました。 

※2:2012年から千葉県柏市在住の高齢者を対象に実施。健康状態、身体の構造と機能、活動、社会参加、心理及び認知機能等の精緻なデータ収集及び解析を行っている。


「軽度の認知症の患者は男性が46名、女性が75名で平均年齢は81歳くらい。いっぽう健常な高齢者は男性50名、女性が67名で、平均年齢は75歳くらいと、少し平均年齢が低めになっています。この年齢差が優位に出てしまわないよう、年齢を入力せずに解析もしましたが、やはり年齢に関わらず、認知機能のスコアに相関していたというデータが得られました。ほかに、75歳以下、75歳以上など年齢で2つのグループにわけて解析もしましたが、どちらも高い確率で判別できました」 


AIが顔のどこを見ているかを知るためには、より多くのデータが必要だけれども……

顔写真で認知症のスクリーニングができるのは、とても画期的で期待も高まりますが、気になるのは、AIが顔のどんなところを見て判別しているのかについてです。


「AIワークステーションによる判断はブラックボックスの側面があり、今回のデータは対象数が240人くらいと少ないため、もっと大きな単位で解析を行わないと、顔のどの部分を見ているかは、正確に判断できないところがあります。 ただ、今回は数種類にわけて解析をしていて、なかでも興味深かったのは、顔の下半分と上半分で分けて解析をしたところ、下半分のほうがよりいい成績が出たことです。おそらく、ほうれい線が目立つようになったり、口腔の老化、例えば歯槽膿漏で歯が抜ける、口の中が萎縮してくる、嚥下機能の低下なども影響しているのかなと思っています」 


亀山先生が軽度の認知症の方の顔写真を撮り始めたのは、今から8~9年前。顔写真というと手軽に感じますが、たくさんのデータを得るには大きな壁もあるといいます。 


「2012~13年ごろから、物忘れ外来を受診している患者さんに同意をいただいたうえで顔写真を撮りだめてきましたが、顔というのは名前以上に個人情報を含んでいて、個人情報の管理や倫理上の問題で、たくさんの方の写真を集めるのは難しいのが現状の課題です。 今回はごく一部の方々を対象にした調査で、この結果が広く一般的に言えることなのかもわかりませんが、スクリーニングのひとつとしてこのような方法があることを知っていただき、多くの地域で取り組み、解析をしたら、より明確になってくるのではないかと思います」 


定期的なスクリーニングが早期発見につながる可能性も

将来的な実用化を目指し、これからも研究を深めていくという亀山先生。実際には、どのように活用することを想定されているのでしょうか。


「今、コロナ禍をきっかけにオンライン診療が進んでいますが、そこでもAIによるスクリーニングを活用することができますし、認知症に関する専門医がいない地域においても、スクリーニングのひとつとして補助的に使うことができればいいと思います。 今後もし、年1回の健診の際に顔写真を撮ってスクリーニングするようになったら、毎年撮影をすることで、1年ごとの顔の変化から認知機能の低下をキャッチできたり、認知症になってからも、症状が進行しているかなどの変化がわかるかもしれません。 


やはり、認知症は早期に発見することが大切で、運動療法や食事療法、脳トレなども早い段階からできますし、それによって発症や症状の進行を少しでも遅らせることができれば、ご本人はもちろん、ご家族にとっても幸せなことだと思っています。 


物忘れ外来を受診する患者さんの付き添いとして、患者さんの娘さんや息子さんが一緒にいらっしゃる際にもお伝えしていることですが、認知症の予防は高齢になってからするのではなく、40~50代から始めて、食事、運動、生活習慣病予防の3点を心がけることが大切です。 食事は魚や野菜中心のほうがアルツハイマー型認知症になりにくいという研究結果がありますし、運動や脳トレなども習慣的に行うことが大事です。そして、趣味を持つのも予防につながります。「楽しむ」という機会を、ぜひ若いころから持っていてほしいですね」 

取材・文/山本幸代(SOMPO笑顔倶楽部)


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