認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)において認知症の危険因子の一つとして「難聴」が挙げられているのをご存知でしょうか。今回は、難聴と認知症の関係についてご説明します。
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)において認知症の危険因子の一つとして「難聴」が挙げられているのをご存知でしょうか。今回は、難聴と認知症の関係についてご説明します。
日本耳鼻咽喉科学会²⁾によると、難聴とは「音源より生じた空気の振動を感じることで、人は音を認識しています。耳の機能により、音の振動は脳で感じるための電気信号に変換されます。音により生じた鼓膜の振動は、鼓膜の奥の小さな骨(耳小骨)を伝わって内耳に到達します。内耳で振動は電気信号に変換され、聴神経を伝わって脳へ到達し、音として認識されます。難聴は、このプロセスが障害されることで生じます。」とされており、以下のような分類があります。
①伝音難聴
鼓膜に穴が開いている、耳小骨が欠けているなどにより音の振動がうまく伝わらないために起こります。鼓膜穿孔(こまくせんこう)や中耳炎、耳小骨先天異常などにより起こる場合があります。
②感音難聴
内耳が音の振動を電気信号に変換できないことで起こる場合や、聴神経がうまく電気信号を伝達できないために起こります。突発性難聴や内耳炎、加齢性難聴、聴神経腫瘍などにより起こる場合があります。また、難聴と言うと、高齢者に起こると思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、最近はヘッドホン難聴(イヤホン難聴)と呼ばれる難聴もあります。爆発音あるいはコンサート・ライブ会場などの大音響などにさらされるほか、ヘッドホンやイヤホンで大きな音を聞き続けることによって起こります。
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)において「難聴」が認知症の危険因子の一つとして挙げられている理由には以下のようなものがあります。
1つ目として、高齢者の場合、主に感音難聴による場合が多いです。音を感知する電気信号がうまく伝わらず、高い音を聞き分けることが難しくなります。そのため、高い声や早口で話されると、聞き取りにくい・聞き間違いをする・理解するまでに時間がかかります。そして、あいまいな返事をしてしまったり、聞き返すことで相手に不快にさせてしまうのではないかという気兼ねにより、相手とのコミュニケーションを図ることを避けてしまいます。
2つ目として、耳垢閉塞(耳垢が溜まりすぎている状態)により、栓をしている状態になります。本来、耳垢は自然に排出されます。しかし、高齢者の場合、耳垢を排出する力が弱くなり、溜まりやすくなると言われています。その結果、耳垢によって栓をしている訳ですので、聞こえが悪くなります。
このような理由により、コミュニケーションを図る機会が減ってしまうことにより、社会から孤立してしまうだけでなく、音の刺激や脳に伝わる情報が少なくなると、脳の萎縮や神経細胞が弱まり、認知症につながると考えられています。
感音難聴の場合、落ち着いた声のトーンで、ゆっくりはっきり話しましょう。聞き間違いがみられる場合は、単語だけでもメモに書いて目と耳で確認できるようにしましょう。耳垢が気になる場合は、自分で耳かきをして傷つけてしまう場合もありますので、耳鼻咽喉科に受診することをお勧めします。
また、補聴器をつけることも大切です。例えば、一人で出かけている時にクラクションの音が聞こえにくいため、交通事故に至る危険性もあります。また、今まであいまいな会話だった人が補聴器をつけたことで会話がスムーズになった、積極的にコミュニケーションをとるようになった、外出に積極的になった、という方もいらっしゃいます。その結果、認知機能の低下を予防することにつながります。
補聴器に難色を示す方もいらっしゃるかもしれませんが、補聴器は毎日の生活を守ってくれる重要な機器です。耳鼻咽喉科に受診をして、自分に合った補聴器を選びましょう。
参考文献:
3)厚生労働省 e-ヘルスケアネット ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)について
認知症ねっと 2019年10月29日掲載「難聴と認知症の関係とは?」より
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